64 / 148
第五章 ギルド圧政強化編
第64話 ギルドの横暴、ここに極まれり
しおりを挟む
まさかエリクスの口から師匠の名が出て来るとはな。
思ってもみないサプライズに、たまらず振り返って怒鳴ってしまった。
だがそれこそ思ってもみない話だ。
俺はその情報を今までずっと密かに探し回っていたのだから。
師匠の名を知る者と、あの方の所在を。
「でも信用してくれないというのなら教える義理もないよね。だから卿はもう帰るとするよ。ごめんね、時間を使わせてしまって」
「ま、待て! 待ってくれ……!」
「へぇ……やはりこの名前は君にとって特別なんだね?」
「ああ、俺の憧れで、目標で、感謝をささげたい恩人の名だからな」
「……なるほど、噂通り義理深い人なんだね君は」
一体誰の噂かはわからん。
そもそもどうやって俺の事を知ったのかも。
だがもうそんな事はどうでもいい。
師匠の事を知れるのであれば、あの方と会えるのであれば。
俺はそれだけで、この男の言葉を信じるに値すると言い切れる!
「だからこそ、その名を知るアンタを俺は信じようと思う。ただし結果が伴うまでの話とさせてもらうが」
「ベッレストゥリアッ!」
だからこその答えに、エリクスも嬉しそうに返事を跳ね上げた。
そして手を差し出しニコリと笑う。仲直りの握手のつもりだろうか?
――いいだろう、乗ってやる。
こうなったら拾った命だと思って、とことんまで付き合ってやるよ!
「よろしい、ではその説明を依頼主本人からしてもらう事にしよう」
「それまでは延命って事だな」
「フフッ、もとより君に手を出す気はないから安心したまえよ。では三日後だ。三日後にまた君の下へと訪れよう。それまで首を長くして待っていてくれ」
「ああ、楽しみに待たせてもらうするよ」
「それでは、また逢おうっ!」
「あっ、お、おいっ!?」
そうも決まるとエリクスの行動は早かった。
高台から飛び降り、あっという間に坂を跳ね降りてしまったのだ。
それでもう街中に消え、姿も気配も見えなくなってしまって。
「ったく、これだから勇者って奴は……だが、まぁいい。あの人にまた逢えるなら、俺はなんだって乗り越えてみせるさ」
しかし俺も一人になると心を打ち震わせずにはいられなかった。
師匠に逢えるかもしれない、そんな喜びが昂揚感をたまらないほどに溢れさせたから。
ああ、楽しみだ。あの方に逢えるかもしれないと思うと震えが止まらない。
逢ったら何を話したらいいだろう、何を伝えたらいいだろう。
もう心がそれだけで一杯になりそうだよ。
そんな喜びを胸に秘めたまま、俺も階段を駆け下りた。
ウーティリス達にもこの事を教えたいしな、急がないと!
もしかしたら今の俺の姿はまるで子どものように無邪気なのかもしれないな。
おかげで俺の姿を見た女の人が「フフッ」って笑ってしまっているし。
でも、それでも嬉しく思えてしまうぞ!
今の俺はもう絶好調だ! フゥーイェーッ!
そんな気分で家へと向かうのだが、ふとここで気付く。
たしか道中にはギルドがあるから、その前ではテンションを抑えなければ、と。
それでその通りへと差し掛かった所で徒歩へと切り替えたのだけど。
「ん、なんだあの人だかりは?」
途端、ギルドの前で何やら人が大勢集まっているのが見えた。
しかもそのほとんどが俺達ハーベスター仲間やそれ以外の底辺職ばかりだ。
逆に勇者はほとんどその姿を見せていない。
ギルドで何かあったのだろうか?
そう興味を示すまま近づく。
すると全員が掲示板に釘付けになっている事に気付き、目を向けてみる。
だがそこに貼られた紙には、信じられもしない内容が描かれていた。
「な、なんだと……!? 勇者とギルド員以外の業務報酬割合を軒並み四割減、だって……!?」
バ、バカな……四割も減らす!?
冗談を言うな!? 今でさえギリギリで生活もままならないんだぞ!?
ど、どうしてこんなとんでもない事を……。
「これもあのダンジョンブレイカーのせいか」
「宝が取れなくなって採算が合わないとか書いてあるな」
「それなら勇者の報酬を減らすべきじゃないか。これはひどい……」
なんだと!? まさか財宝を取れなくて稼げていないから、そのしわ寄せを他の職に押し付けているって事なのか!?
ふ、ふざけるなよギルドと勇者め……!
いくらなんでもそこまでするか!?
どうしても自分達の非を認めないつもりなのかよッ!!!
許せん、これは許せる訳がない!
こんなのどう考えたって横暴の極みだろうがあッ!!!!!
ああちくしょう、これならエリクスの相談が本物であってほしいとさえ願う。
あいつが持って来た話が真実なら、このクソッタレな悪状況を打開できるかもしれないからな……!
思ってもみないサプライズに、たまらず振り返って怒鳴ってしまった。
だがそれこそ思ってもみない話だ。
俺はその情報を今までずっと密かに探し回っていたのだから。
師匠の名を知る者と、あの方の所在を。
「でも信用してくれないというのなら教える義理もないよね。だから卿はもう帰るとするよ。ごめんね、時間を使わせてしまって」
「ま、待て! 待ってくれ……!」
「へぇ……やはりこの名前は君にとって特別なんだね?」
「ああ、俺の憧れで、目標で、感謝をささげたい恩人の名だからな」
「……なるほど、噂通り義理深い人なんだね君は」
一体誰の噂かはわからん。
そもそもどうやって俺の事を知ったのかも。
だがもうそんな事はどうでもいい。
師匠の事を知れるのであれば、あの方と会えるのであれば。
俺はそれだけで、この男の言葉を信じるに値すると言い切れる!
「だからこそ、その名を知るアンタを俺は信じようと思う。ただし結果が伴うまでの話とさせてもらうが」
「ベッレストゥリアッ!」
だからこその答えに、エリクスも嬉しそうに返事を跳ね上げた。
そして手を差し出しニコリと笑う。仲直りの握手のつもりだろうか?
――いいだろう、乗ってやる。
こうなったら拾った命だと思って、とことんまで付き合ってやるよ!
「よろしい、ではその説明を依頼主本人からしてもらう事にしよう」
「それまでは延命って事だな」
「フフッ、もとより君に手を出す気はないから安心したまえよ。では三日後だ。三日後にまた君の下へと訪れよう。それまで首を長くして待っていてくれ」
「ああ、楽しみに待たせてもらうするよ」
「それでは、また逢おうっ!」
「あっ、お、おいっ!?」
そうも決まるとエリクスの行動は早かった。
高台から飛び降り、あっという間に坂を跳ね降りてしまったのだ。
それでもう街中に消え、姿も気配も見えなくなってしまって。
「ったく、これだから勇者って奴は……だが、まぁいい。あの人にまた逢えるなら、俺はなんだって乗り越えてみせるさ」
しかし俺も一人になると心を打ち震わせずにはいられなかった。
師匠に逢えるかもしれない、そんな喜びが昂揚感をたまらないほどに溢れさせたから。
ああ、楽しみだ。あの方に逢えるかもしれないと思うと震えが止まらない。
逢ったら何を話したらいいだろう、何を伝えたらいいだろう。
もう心がそれだけで一杯になりそうだよ。
そんな喜びを胸に秘めたまま、俺も階段を駆け下りた。
ウーティリス達にもこの事を教えたいしな、急がないと!
もしかしたら今の俺の姿はまるで子どものように無邪気なのかもしれないな。
おかげで俺の姿を見た女の人が「フフッ」って笑ってしまっているし。
でも、それでも嬉しく思えてしまうぞ!
今の俺はもう絶好調だ! フゥーイェーッ!
そんな気分で家へと向かうのだが、ふとここで気付く。
たしか道中にはギルドがあるから、その前ではテンションを抑えなければ、と。
それでその通りへと差し掛かった所で徒歩へと切り替えたのだけど。
「ん、なんだあの人だかりは?」
途端、ギルドの前で何やら人が大勢集まっているのが見えた。
しかもそのほとんどが俺達ハーベスター仲間やそれ以外の底辺職ばかりだ。
逆に勇者はほとんどその姿を見せていない。
ギルドで何かあったのだろうか?
そう興味を示すまま近づく。
すると全員が掲示板に釘付けになっている事に気付き、目を向けてみる。
だがそこに貼られた紙には、信じられもしない内容が描かれていた。
「な、なんだと……!? 勇者とギルド員以外の業務報酬割合を軒並み四割減、だって……!?」
バ、バカな……四割も減らす!?
冗談を言うな!? 今でさえギリギリで生活もままならないんだぞ!?
ど、どうしてこんなとんでもない事を……。
「これもあのダンジョンブレイカーのせいか」
「宝が取れなくなって採算が合わないとか書いてあるな」
「それなら勇者の報酬を減らすべきじゃないか。これはひどい……」
なんだと!? まさか財宝を取れなくて稼げていないから、そのしわ寄せを他の職に押し付けているって事なのか!?
ふ、ふざけるなよギルドと勇者め……!
いくらなんでもそこまでするか!?
どうしても自分達の非を認めないつもりなのかよッ!!!
許せん、これは許せる訳がない!
こんなのどう考えたって横暴の極みだろうがあッ!!!!!
ああちくしょう、これならエリクスの相談が本物であってほしいとさえ願う。
あいつが持って来た話が真実なら、このクソッタレな悪状況を打開できるかもしれないからな……!
0
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる