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第五章 ギルド圧政強化編
第58話 エリクス=ストレイファー
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「なら仕方ないねぇ……コンバット・イミティションッ!」
突如現れた男が、勇者達と対峙する。
迫りくる相手にも動じる事無く、笑みさえも浮かべながら。
勇者どもめ、この男の放った光が見えなかったのか!?
あの光はまぎれもなく『命波』なんだぞッ!?
「一、二、三、四、五、ターゲット捕捉、コンバットシークエンスッ!」
「何をゴチャゴチャとぉぉぉ――」
だがもう遅かった。
先頭を切っていた勇者の体がもう、天井をブチ抜いていた。
男が急接近し、右拳で顎をカチ上げただけで。
しかもその瞬間、回し蹴り。
隣の勇者の側頭部を蹴りつけ、吹き飛ばして壁を突き破らせる。
そうしてさらに体をよじらせたままに手を伸ばした。
叉隣の勇者の頭を掴み、床へと強引に捻り潰したのだ。
そのまま逆立ちとなった足で、別の勇者の首を挟む。
するとまるで重力逆転のごとく互いが反転、勇者が床を突き破って落ちた。
そして最後の一人に面と向かい、両手でパァンと顔を挟んで叩く。
それだけで勇者は白目を剥いて倒れてしまった。
この間、僅か三秒。
秒殺である。
「「「ざわざわ……」」」
「いやぁ~お見苦しい所を見せてしまってすまないっ。修理の請求はクラウース政府復興庁によろしく頼むよ」
「は、はぁ……」
と、とんでもない奴だ。
一瞬にしてこの場の全員を黙らせちまった!
「ところで君、ケガはないかい?」
「大丈夫、れすぅ~~~」
「腕の方は大丈夫?」
「肩に触らないれ~~~ほしいれすぅ~~~」
おいおいニルナナカ、助けてくれた相手に失礼だろうが。
まぁ相手も「ははは」と笑って気にしていないようだからいいけど。
「何事かっ!」
「あ、ギルドマスター! 実はですねカクカクシコシコ」
「ええいメガネを止めろレトリー。なんとなく原因はわかっている。どうせ貴殿であろう? エリクス=ストレイファー卿?」
「やぁギルドマスター、久しぶりだねぇ。察しの通りさ。ちょっと子飼いの勇者達の躾がなっていないんじゃないかい?」
「これが我々のやり方だ。口を挟まないでいただこうか、S級勇者殿」
「「「え、S級……!?」」」
おいおい、しかもよりにもよってS級だと!?
国が雇った問題対策班の特別ランカーじゃねぇか!?
噂じゃ実力はA級とさほど変わらない。
しかし実績と能力を国に認められ、ギルド管轄から離れて国家所属となった。
ギルドが行わない、対処できない仕事を一挙に引き受ける特級存在。
そんな噂しか知らなかった存在が、今目の前に……!
「貴殿はもうギルド管轄ではない。余計な事はしないでいただきたいのだがな?」
「いやぁ、麗しき女性が危ない目に遭っているのに見過ごせる訳ないじゃないですか、はははっ!」
「まさかまたお前かハーベスター。貴様はよくもそう問題を連れてくる」
「すっ、すいやせんっ!」
ちい!? やっぱ俺まで咎められるか!?
もしかして目を付けられちまってるのかよぉ……。
「言うて彼は何もしていませんよ。勇者達が余計な事をしたまでで――おっとその説明は二人きりでいたしましょうか、ギルドマスター殿?」
「ふん、わかった。なら来てくれ」
お、おう、助かった。
どうやら俺達は見逃してくれたらしい。
「ではまたお逢いしましょう、ラング=バートナーさん」
「えっ……」
だがエリクスという男はこう呟いて傍を通り過ぎていった。
間違いなく俺の事を見て、微笑みながら。
なぜだ、俺の名前をなぜ知っている?
もしかしてレトリーが叫んだ時からずっといた?
いや、そんなはずはない。
俺は癖でこの部屋に誰がいるかを毎度確認しているから。
もしかしてそれでも見えなかったほどに気配を殺していた?
それとも、奴は俺の名前を最初から知っていたのか……?
――いや、まさかな。
たかがハーベスターの俺を調べる理由がないだろう。
ダンジョンブレイカーの正体はまだバレていないはずだし。
『あの男、思考が読めぬ』
何……?
ウーティリスでもか?
『厳密に言えば、思考の通りに語っておるのら。それ以外の事を一切考えておらんかのようにな』
つまり裏表がないって事だな。
そうとなると嘘はないから下手な勇者よりは信用できるか。
でも気がかりだ。奴には今後注意を払わないと。
下手に相手をすれば俺達の正体がバレかねんからな。
『うむ、用心せい。並々ならぬ存在感を感じるからのう』
『まるでぇ~~~人らない、ようれすぅ~~~』
ああ、あの動きは人のそれじゃない。
魔法を使っているかのような体術捌きだった。
魔法と体術……それが相反する能力にもかかわらず。
それを体現する実力、あなどりがたい。
そこで俺はひとまず家へと帰り、時間を潰す事にした。
ギルドでの騒動があったからな、少し落ち着くまではと。
とはいえニルナナカはそれでも歩き足りないようだから、夕暮れ前にでも彼女を連れて市場にでも行くとしよう。
あそこなら騒ぎになりにくいだろうしな。
突如現れた男が、勇者達と対峙する。
迫りくる相手にも動じる事無く、笑みさえも浮かべながら。
勇者どもめ、この男の放った光が見えなかったのか!?
あの光はまぎれもなく『命波』なんだぞッ!?
「一、二、三、四、五、ターゲット捕捉、コンバットシークエンスッ!」
「何をゴチャゴチャとぉぉぉ――」
だがもう遅かった。
先頭を切っていた勇者の体がもう、天井をブチ抜いていた。
男が急接近し、右拳で顎をカチ上げただけで。
しかもその瞬間、回し蹴り。
隣の勇者の側頭部を蹴りつけ、吹き飛ばして壁を突き破らせる。
そうしてさらに体をよじらせたままに手を伸ばした。
叉隣の勇者の頭を掴み、床へと強引に捻り潰したのだ。
そのまま逆立ちとなった足で、別の勇者の首を挟む。
するとまるで重力逆転のごとく互いが反転、勇者が床を突き破って落ちた。
そして最後の一人に面と向かい、両手でパァンと顔を挟んで叩く。
それだけで勇者は白目を剥いて倒れてしまった。
この間、僅か三秒。
秒殺である。
「「「ざわざわ……」」」
「いやぁ~お見苦しい所を見せてしまってすまないっ。修理の請求はクラウース政府復興庁によろしく頼むよ」
「は、はぁ……」
と、とんでもない奴だ。
一瞬にしてこの場の全員を黙らせちまった!
「ところで君、ケガはないかい?」
「大丈夫、れすぅ~~~」
「腕の方は大丈夫?」
「肩に触らないれ~~~ほしいれすぅ~~~」
おいおいニルナナカ、助けてくれた相手に失礼だろうが。
まぁ相手も「ははは」と笑って気にしていないようだからいいけど。
「何事かっ!」
「あ、ギルドマスター! 実はですねカクカクシコシコ」
「ええいメガネを止めろレトリー。なんとなく原因はわかっている。どうせ貴殿であろう? エリクス=ストレイファー卿?」
「やぁギルドマスター、久しぶりだねぇ。察しの通りさ。ちょっと子飼いの勇者達の躾がなっていないんじゃないかい?」
「これが我々のやり方だ。口を挟まないでいただこうか、S級勇者殿」
「「「え、S級……!?」」」
おいおい、しかもよりにもよってS級だと!?
国が雇った問題対策班の特別ランカーじゃねぇか!?
噂じゃ実力はA級とさほど変わらない。
しかし実績と能力を国に認められ、ギルド管轄から離れて国家所属となった。
ギルドが行わない、対処できない仕事を一挙に引き受ける特級存在。
そんな噂しか知らなかった存在が、今目の前に……!
「貴殿はもうギルド管轄ではない。余計な事はしないでいただきたいのだがな?」
「いやぁ、麗しき女性が危ない目に遭っているのに見過ごせる訳ないじゃないですか、はははっ!」
「まさかまたお前かハーベスター。貴様はよくもそう問題を連れてくる」
「すっ、すいやせんっ!」
ちい!? やっぱ俺まで咎められるか!?
もしかして目を付けられちまってるのかよぉ……。
「言うて彼は何もしていませんよ。勇者達が余計な事をしたまでで――おっとその説明は二人きりでいたしましょうか、ギルドマスター殿?」
「ふん、わかった。なら来てくれ」
お、おう、助かった。
どうやら俺達は見逃してくれたらしい。
「ではまたお逢いしましょう、ラング=バートナーさん」
「えっ……」
だがエリクスという男はこう呟いて傍を通り過ぎていった。
間違いなく俺の事を見て、微笑みながら。
なぜだ、俺の名前をなぜ知っている?
もしかしてレトリーが叫んだ時からずっといた?
いや、そんなはずはない。
俺は癖でこの部屋に誰がいるかを毎度確認しているから。
もしかしてそれでも見えなかったほどに気配を殺していた?
それとも、奴は俺の名前を最初から知っていたのか……?
――いや、まさかな。
たかがハーベスターの俺を調べる理由がないだろう。
ダンジョンブレイカーの正体はまだバレていないはずだし。
『あの男、思考が読めぬ』
何……?
ウーティリスでもか?
『厳密に言えば、思考の通りに語っておるのら。それ以外の事を一切考えておらんかのようにな』
つまり裏表がないって事だな。
そうとなると嘘はないから下手な勇者よりは信用できるか。
でも気がかりだ。奴には今後注意を払わないと。
下手に相手をすれば俺達の正体がバレかねんからな。
『うむ、用心せい。並々ならぬ存在感を感じるからのう』
『まるでぇ~~~人らない、ようれすぅ~~~』
ああ、あの動きは人のそれじゃない。
魔法を使っているかのような体術捌きだった。
魔法と体術……それが相反する能力にもかかわらず。
それを体現する実力、あなどりがたい。
そこで俺はひとまず家へと帰り、時間を潰す事にした。
ギルドでの騒動があったからな、少し落ち着くまではと。
とはいえニルナナカはそれでも歩き足りないようだから、夕暮れ前にでも彼女を連れて市場にでも行くとしよう。
あそこなら騒ぎになりにくいだろうしな。
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