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第五章 ギルド圧政強化編

第55話 どいつもこいつも見栄ばかり張りやがる(ギトス視点)

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 この僕がギルド出頭を言い渡されたから何かと思えば。
 まさかギルドマスターに加え、三人のA級がそろい踏みとはな。

 執務室に呼び出されたのはいいが、圧が辛い。
 やはりランク落ちは彼らにとっても衝撃的だったって事か。

「呼び出された理由は、君にならわかっているな? ギトス=デルヴォ」
「ええわかっているつもりです。僕の資質が偽物であるかどうかの真偽を確かめるため、ですよね?」
「うむ」

 そうだろうな、この話は彼等にも屈辱だから。
 自分達が判定してランクを上げさせた奴が落ちたのだから。

 A級昇格とは、各街のギルドマスター及び既存のA級が実力を見極め、ふさわしいと判断された者にのみ許される事だ。
 かくいう僕も才能を見出され、今目の前にいる彼らに引き上げてもらった。

 だがあろう事かクラウース共和国のお膝元においては「ふさわしくない」と判断されてしまったのだ。

 これは彼等にとっちゃ屈辱だろうさ。
 自分達の威信にかかわるくらいにな。

 ほら、さっそく議論が始まったみたいだぞ。

「君の実力は本物だと確信していたんだけどね。B級でありながら魔王に立ち向かい、しかも一瞬で勝利を収めた。あの光景は今でも忘れられないよ」
「同意! アーヴェスト殿に同じく、我の目に偽り無し!」
「でもでもぉー、それも嘘だったらどーすんのー? キャッハハ!」
「何か一時的に強くなるような外法薬などを服用したという可能性は?」
「どうだろう? だとしたら問題だけど……彼からそういう雰囲気は感じられない。錬金術学を学ぶ私からの見解では、その点はシロだと思うなぁ」
「その根拠は?」
「副作用が見られない。そういった薬は大概、まず体調に変調をきたすものだからねぇ」

 それでもアーヴェスト殿とデネル殿はまだ冷静に判断してくれている。
 その点に関しては感謝したいとも思うさ。
 だけど疑っている事に違いはないだろう。

 なにせ今の僕はC級並み――いや、それ以下の力しかない。
 武器の力も発揮できないし、以前のパワーも出せないのだ。
 そんな異常事態、今までにもなかっただろうからな。

「では外的要因で強くなっていた説はないか?」
「そんなはずはありません。僕にそのような道具や魔法を扱う技術はありませんから。もっとも、そういった要因があるなら今でも続けていますよ」
「たしかにな」
「アハッ、続けられなくなったってだけじゃないのぉー?」
「……そう言われると反論しようがないですね。たしかに今の僕は金欠気味ですし。金でランクを買う事もできないくらいに」
「「「……」」」

 そうだ。A級を維持するための金も足りない。
 それもあのダンジョンブレイカーが稼ぎのチャンスを奪いやがったから。
 順調ならあの上級ダンジョンでしっかり稼いで保険ができるはずだったのに。

「A級はね、僕の夢なんですよ。なにがなんでもあり続けたいと思うくらいに。だけどそれも叶わなくなった。それを自分で演出するなんてバカげていますよ」
「そうだな。だとするとそれこそ外的要因で能力を下げられた可能性も否めないか」
「提案! 立場をねたむ者の呪いといった類ではないか!?」
「んなわけないっしょー! だってぇ、キスティがまったくそういうの感じないもーん」
「魔導・魔術に精通するキスティがそう言うなら間違いないか」

 もしそうだったら犯人を真っ先に斬り殺してやるよ。
 ま、もっともその嫌疑対象が多過ぎて絞り切れやしないが。
 こいつらだってその対象かもしれないんだしな。

「念のため、所持物検査を行うとしよう。さっき君に脱いでもらった装備も持って来てある。全員に判定してもらい、不可解なこの現象の原因を探るのだ」
「「「了解」」」

 チッ、この期に及んでまだ僕を疑うか。
 やはりこいつらも僕の才能をねたんでいるんだ。
 じゃなきゃさっさと切り捨てて突き放すはずだろうしな。他の雑魚と同様に。

 ――こうして僕の身体検査と、所持品調査が始まった。
 ご親切丁寧に僕の家にあったものまで持ち出してきやがったよ。

 だが判定は白。
 僕の所持品からは何も疑わしき物は出なかった。当然だな。

「あとはこのアクセサリーだが、どうだねキスティ?」
「ただの貴金属の塊かなー? 妙に凝ってる気はするけどねー」

 それも当然だ。お前らにはその物の価値などわかるまい。

「ではなぜこれを君は身に着けていたか、教えてくれるかな?」
「それは僕の師匠が別れる前にくれたものですよ。僕の宝であり、師匠との絆の証でもあります。数多の試練に打ち勝った僕の事を第一に考え、喜んで渡してくださったのです」
「つまり弟子の証という訳かね」
「いいえ違います」
「む?」
「いつか同志となる者への目印です」
「そ、そうか……」

 そうさ、そのペンダントは師匠と再会するためのアチーブメントモニュメント。
 いつか僕が頂点に立った時、あれを目印にして師匠の目に留まるための。
 そうするために師匠は僕にあれをくださったはずなのだ。

 自身に相応しい男を選出するために!

「と、ともかく怪しい所はない。君の家もいない間に調べさせてもらったが、それらしい痕跡もなかった」
「でしょうね。僕にやましい事はありませんから。実力で成り上がった、ただそれだけです」
「よって今回の首都ギルドの判定を我々は不服とし、君を仮A級という特例扱いで現状維持させるつもりだ。手続きなどは我々がやるから心配はいらん」

 チッ、また面倒な事を。
 自分達の立場を守るためにランク落ちさせたくないって魂胆がバレバレじゃないか。
 やはりどいつもこいつも俗物だらけで反吐が出る。

 ……まぁいいさ。すぐに実力で正式な立場を取り戻してやる。
 このペンダントと師匠の想いに誓ってな!

 それこそが、僕の力の根源に違いないのだから!
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