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第四章 首都遠征編

第48話 太陽神ニルナナカ

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 太陽神ニルナナカが復活を果たした。
 まさかダンジョンコアの代替品にされていたとは思いもしなかったが。

 しっかしそれにしてもでっけぇ体だ。
 全体的に肉付きがすごくてたまらん。

「どういう事じゃ……どうしてダンジョンから翼人の女子が」
「うーちゃんと知り合いって事は、やっぱり神様なのかな?」
「ああ。はるか昔に忘れられた古代神の一人だよ」
「なんと……どおりで神々しい」

 やっぱりあの古文書は間違い無かったのか。

 ニルナナカはあの本に四番目に描かれた神で、太陽――破邪をつかさどるって書いてあった。
 だからその力で魔物も一斉に排除する事ができたって訳だ。
 それにしたって自身が光るとは思いもしなかったがな。

 ……お、ニルナナカが瓦礫の山から下りてきたぞ。
 あ、でも待てよ、これって……。

 でっかぁ! めちゃくちゃでっか!?
 身長も二メートルを超えているんじゃないかこれ!?
 おまけに翼もでかいから巨人にさえ見えるぞ!?

 な、なんつー女だ。
 まるでウーティリスと真逆の体格じゃないか。

「なんか女として全体的に敗北した気がするよぉーーー!」
「う、うむ、チェルトや、こういう相手もおるのだし、スタイルは気にせん方がええかもしれんのう」

 ああ、チェルトが見ただけで号泣してしまった。

 そうだよな、このスタイルはなんていうか一言すごいで済むレベルだし。
 師匠がボンキュボォンなら、ニルナナカはボボンギュボンギュドギュゥゥゥンだ。
 チェルトとはもはや話にならんレベルで違い過ぎる。

「ところでニルナナカ、どうしてそなたも埋まっておったのら」
「ええと~~~人間にぃ~~~お酒の飲み比べをぉ~~~誘われてぇ~~~」
「ウーティリスと同じ作戦くらってるじゃねぇか!!!」

 あー間違いねぇ、これは神だわ。
 この間抜けっぷりは間違いなくウーティリスの仲間だわ。

『うっさい、ほっとけ!』
『ウーティリスちゃんと一緒、うれしいれすぅ~~~』

 小言を言わない所はウーティリスよりマシかな?

「さて、魔物がまた来る前にさっさと出ちまおう」
「あ~~~大丈夫、れすぅ~~~」
「え? どうして?」
「このダンジョンのぉ~~~魔物はねぇ~~~全部ぅ~~~」
「ニルナナカが消し飛ばしたからもう安心なのら」
「マジかよ……」

 だがその力は想像以上だな。
 まさか一帯すべての魔物を消し飛ばしたなんて。
 ウーティリスと比べるとずっと世界に貢献できる力じゃないか。

「でもぉ~~~ニルナナカぁ~~~」
「今ので打ち止めらな。こやつの破魔光は連発できないのら。次回は十年後とかそういうレベルらの」
「なんだ、そうなのか」

 その代わり制約があるって事か。
 まぁあれだけの力なんだ、仕方ないよな。
 
「ウーティリスちゃぁん~~~ニルナナカにもぉ~~~しゃべらせ、てぇ~~~」
「まぁ見ての通り喋るのがクッソ遅いからわらわが代弁する事が多い」
「これからもその役目は頼む」
「まかせるのら!」

 神にも色々特徴も事情もあるんだな。
 とりあえず仲が悪い神に当たらなかっただけよしとしようか。

 こうして話している所は本当に嬉しそうだしな。



 それで俺達はゆっくりとダンジョンを正規ルートで登り、屋敷に戻った。
 なかなかにギリギリの戦いだったが、上手くやれてよかったよ。

 それで屋敷に泊まり、夜が明けて。

「見よラング! チェルトのおじいさんに服をいただいたのら!」
「ニルナナカもぉ~~~いただきましたぁ~~~」
「おお、どっちも綺麗な服じゃないか、いいねぇ!」

 昨日のエキサイトの礼にと、おじいさんからさらに礼の品をいただいた。
 ウーティリスにはわずかに緑かかった絹のワンピースと白のカーディガンを。
 ニルナナカには純白レースのコートドレスに薄黄色のストールを。
 いずれも金銀の刺繍入りと、とても綺麗で似合っている。

 だがちと、ハーベスターと並ぶと豪華すぎる気がしないでもないが。

「安心せい、その二人の服は我がシーリシス家の家紋が入っておる。もしそれを盗もうものならギルドを通して全国指名手配される事となろう。まともな店にでも持ち寄れば一発でお縄確定じゃ」
「ああ、だからゼンデルはチェルトから服だけは盗まなかったんだな」
「多分ねー」

 しかしやはりそこはぬかりがなかった。
 この調子だとギルドにも圧力がかかっていそうだな。
 二人の服装に関して口を出したらいけない、とか。

 もしかしたらゼンデルとラクシュの刑罰にも何かかかわっているのかもしれない。
 チェルトの一家の底力を見せつけられた気がするよ。

「まぁラング君へのあたりに関しては我々にもどうしようもない。その辺りは君の器量で切り抜けてくれたまえ」
「ウッス。俺に関しては平気ですよ、今まで通りですからね」
「それと二人の正体に関しては我々だけの秘密という事にしておこう」

 ああ、だから今はチェルトの両親がいないのか。
 昨日見た事をこれ以上広めないためにと。
 いい人だな、この人も。

「さて、それでなのだがラング君。君に聞きたい事が一つある」
「へぃ、なんです?」
「君の師匠についてだが、少し心当たりがある」
「――ッ!?」

 え、なんだって!?
 師匠についてこの人は何か知っているのか!?
 知らないって言っていたと思うのだが……。

「少し話を聞く気はあるかね?」
「……ええ、お願いします!」

 だが、渡りに船だ。
 師匠に関する事なら何でも聞きたい。
 色々と調べても見つからなかったあの人の事を。

 そしてもし会えるのなら、また会ってみたいんだ。
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