底辺採集職の俺、ダンジョンブレイク工業はじめました!~本ダンジョンはすでに攻略済みです。勇者様、今さら来られても遅いのでお引き取りを!~

日奈 うさぎ

文字の大きさ
上 下
43 / 148
第四章 首都遠征編

第43話 迷宮神さえ知らない謎の仕組み

しおりを挟む
 首都地下ダンジョンは超級ダンジョンだという話だ。
 しかしディーフさんの強さが尋常じゃなさすぎて難易度を感じない。
 現れる魔物を一瞬で、一撃で真っ二つにしてしまうのだから。
 数が襲ってこようがまとめて切り伏せてしまう。恐ろしい人だよ。

 一方のチェルトもなかなかがんばってくれている。
 背後から来る魔物を素早い動きで近づいて切り伏せて。
 新装備の調子も良いようで、今のところは彼女としても余裕そうだ。
 なるほど、これだけの実力があったんだな。とてもB級とは思えないね。

 おかげで俺達ハーベスター組にはまったく恐れる要素がない。
 チェルトの両親に至っては道中ずっとニッコニコだしな。
 
「あらお父さん、あそこに採取できそうな草むらがあるわ!」
「うむ! ではこの辺りで少し採集してゆこうか!」

 お、どうやら採集ポイントを見つけたようだ。なら丁度いい。
 ここはいつもと違って採掘スポットが見当もつかないし、少し足を止めて地質を調べてみたいと思っていたんだ。

 それで広間へと入ると、さっそくチェルトの両親が草むらを漁り始める。
 しかしその間にも二つの通路を塞ぐようにして勇者が立ち、戦い続けている。

 おかげで常に魔物の悲鳴が上がっていて、とても落ち着かないんだが?

「まぁまぁ見て! ラペンテスの花よぉ!」「ギュエエ!!」「ピギィィ!!!」
「おぉ、それは君の好きな花じゃないか~」「ピピギョォォ!!」「ウギャアア!!!」
「たしか結婚記念で侵入した時も採れたよねぇ」「ギャォォ!!!」「ジジィィ!!!」
「ええ、もう思い出すだけで楽しくなっちゃうわ~」「ギュゴォォ!!」「ブッパァ!!!」

 でもすげえなこの二人のメンタルも。
 よくこの中でああも穏やかに会話できるもんだよ。

『ラング、わらわ達も負けてはおれんのら! さぁいますぐイチャつこうぞ!』

 お前はお前で場をわきまえろウーティリス。
 あとなんでそんな対抗心を露わにしているんだ。

 そんな戯言は放っておき、さっそく岩肌を触って調べてみる。

 ……わずかに温かい。
 この赤い石そのものが熱を持っているのか?
 一体どういう仕組みで温度を保てているのだろうか?

 そこでまずピッケルでカツンと軽く一掘り。
 欠片を採取し、手に取ってみる。

 すると間もなく欠片は赤みを失い、普通の岩になってしまった。

 妙だな、岩自体には特殊能力がないのか?
 だとするとこの赤熱化しているのはダンジョンそのものの特性なのか?
 試しに色を失った欠片を壁に充ててみれば、またほんのり輝いたし。

『たしかに妙らのう。わらわでもこんな仕組みは知らぬ』

 じゃあ超級ダンジョンだからって訳でもないのか。

『魔物も妙な進化をしておるの。どいつもがなぜか聖属性を帯びておる。これではたしかに表では昼間の方が活性化するであろう』

 なるほど、だから伝説においても時間が勝負だったんだな。
 人間と活動時間が重なっている相手だから休むにも休めない。
 昼間は防衛、夜は対策作業……当時の人達の苦労が脳裏に浮かぶよ。

『聖属性を帯びる事は稀にあるのらが、ここまで顕著なのは実に珍しい。一体何がここまでさせておるのか』

 ダンジョンの性質がそうさせているのは間違い無いだろうな。
 だけど、もうこのダンジョンにはコアがない。
 だったらこの力の源は一体なんなんだ?

『もしかしたら、コアの代わりのエネルギー源が存在するのやもしれぬ』

 コアの代わり……!?
 そんな事がありえるのか!?
 むしろそんな物が存在するのかよ!?

『理屈はわからぬが、そうとしか考えられぬのう』

 なら、もしかしたらその代替コアを破壊すればこのダンジョンは消滅する?

『うむ。おそらくな』

 そうか、それならもしかしたら俺でもなんとかなるかもしれない。
 無限穴掘りで最深部まで掘ってみるのもアリだろう。

 ただ、今はダメだ。
 チェルトはともかく、ディーフさん達を前にスキルを行使するのはまずい。

 そこで俺はマトックを手に取って普通に採掘してみる事にした。
 この魔掘具の能力も知っておきたいからな。

「よし、一発ガツンと行くぜ!」
「おーおーやったれ~!」

 そしてその勢いのまま、道具を一振り。
 するとほぼ抵抗なく、深々と、刃先が届かない場所までがガッツリ削り取れた。

 まるでゼリーをすくったような感覚だ。
 スキルを使ったのと同等の感じさえしたぞ!?

 なんて掘削力だよコイツは……!
 
「どうかなラング君? 良い物は掘れそうかい?」
「あ、チェルトのお父さん。いや、まだこれからっすね」
「ここはまだ浅いからそこまで良いものは掘れないと思うが、肩慣らしには丁度いいと思うよ」
「ええ、そうですねぇ。何が掘れるか見当もつきませんし」

 たしかに言われて見れば、削ってみたものの鉱石は見当たらない。
 試しにともう一度深く削ってみるが、まだダメか。

 超級だからといってそこまで資源が豊富って訳でもないようだ。

「わかっているとは思うが、広い分だけ資源の分布も広がっている。今回はたまたま草刈り場を見つけたからよいものの、変化次第だと一日探して見つからない事もあるくらいなんだ」
「内部構造も変化するのか。まるで生きているみたいだ」
「ああ、このダンジョンは生きておるのら。聞こえよう、この特異な鼓動を」
「いや聞こえないけど?」
「きぃぃぃぃ!!!!!」

 さすがにウーティリスだけしか感じないような感覚は俺でもわからん。
 スキルを得たからといってそこまで力を得られる訳ではないし。

 スキルの恩恵でダンジョン構造は見られるんだけどな、どうせなら鉱脈を見通せる力も欲しかったよ。

「こっちは採取終わったわぁ!」
「めぼしい種がなかったから、私も仕事は終わりだね」
「なら適当に切り上げてもいいかもしれませんねぇ。俺もなんとなくコイツのすごさを感じ取れましたし」

 あとはこの魔掘具とスキルの相性を確かめてみたいもんだ。
 改めて掲げて見てみたが、やはりコイツにはまだまだできる事が隠されているって雰囲気を感じるよ。

 確信する。
 これはスキル使用も想定して作られた逸品なのだと。

「なんじゃもう帰るのか!? まだ十分の一も進んでおらんぞ!?」
「えっ!? これでまだ一割にも満たない!? どれだけ深いんだよこのダンジョンは」

 だがディーフさんはまだまだ不完全燃焼らしい。
 こっちを向いて残念そうな顔を見せながら敵を切り刻んでいる。
 アンタの目は一体どこに、何個あるんだ。

 A級っていうのはみんなこんなもんなのか?
 だとするとギトスの奴もこれくらい強いのだろうか。

「まぁまぁおじいちゃん、今日はピクニックみたいなものですし」
「そうですよ。ラング君と仲良くふれあう会なんですから!」
「ギュエエエエ!!!」「ンギャオオオオ!!!」
「うむぅ……そうじゃな、まぁそれでも良かろう。楽しい散歩じゃったしのう」
「うん~! 親睦を深められたっていいよねーっ!」
「メッギョオオオオ!!!!」「ゴゴォォウゥゥゥ!!!!!」

 いや違うなきっと。彼等が異次元過ぎるんだ。
 これを楽しいピクニックだと思えるメンタルが異常なんだよ。
 どおりでチェルトもA級まっしぐらな訳だ、こりゃ英才教育状態じゃねぇか。

 しかもその特異な環境に、全員が順応しきっている。

 彼等にとっちゃこれが普通なんだな。
 封印屋敷で産まれたり貰われて育ってきた彼らにはさ。



 ――こうして俺達はこの地点から引き返し、屋敷へと戻った。
 収穫こそ乏しかったものの、いい体験ができたと思う。

 それで俺とウーティリスはこの屋敷へと泊まる事に。
 チェルトが俺と寝る気満々だったのは言うまでもない。

 だけど今日ばかりはちょっとお預けさせてもらおう。
 俺とウーティリスには今夜もやるべき事があるからな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

千技の魔剣士 器用貧乏と蔑まれた少年はスキルを千個覚えて無双する

大豆茶
ファンタジー
とある男爵家にて、神童と呼ばれる少年がいた。 少年の名はユーリ・グランマード。 剣の強さを信条とするグランマード家において、ユーリは常人なら十年はかかる【剣術】のスキルレベルを、わずか三ヶ月、しかも若干六歳という若さで『レベル3』まで上げてみせた。 先に修練を始めていた兄をあっという間に超え、父ミゲルから大きな期待を寄せられるが、ある日に転機が訪れる。 生まれ持つ【加護】を明らかにする儀式を受けたユーリが持っていたのは、【器用貧乏】という、極めて珍しい加護だった。 その効果は、スキルの習得・成長に大幅なプラス補正がかかるというもの。 しかし、その代わりにスキルレベルの最大値が『レベル3』になってしまうというデメリットがあった。 ユーリの加護の正体を知ったミゲルは、大きな期待から一転、失望する。何故ならば、ユーリの剣は既に成長限界を向かえていたことが判明したからだ。 有力な騎士を排出することで地位を保ってきたグランマード家において、ユーリの加護は無価値だった。 【剣術】スキルレベル3というのは、剣を生業とする者にとっては、せいぜい平均値がいいところ。王都の騎士団に入るための最低条件すら満たしていない。 そんなユーリを疎んだミゲルは、ユーリが妾の子だったこともあり、軟禁生活の後に家から追放する。 ふらふらの状態で追放されたユーリは、食料を求めて森の中へ入る。 そこで出会ったのは、自らを魔女と名乗る妙齢の女性だった。 魔女に命を救われたユーリは、彼女の『実験』の手伝いをすることを決断する。 その内容が、想像を絶するものだとは知らずに――

大地魔法使いの産業革命~S級クラス魔法使いの俺だが、彼女が強すぎる上にカリスマすぎる!

倉紙たかみ
ファンタジー
突然変異クラスのS級大地魔法使いとして生を受けた伯爵子息リーク。 彼の家では、十六歳になると他家へと奉公(修行)する決まりがあった。 奉公先のシルバリオル家の領主は、最近代替わりしたテスラという女性なのだが、彼女はドラゴンを素手で屠るほど強い上に、凄まじいカリスマを持ち合わせていた。 リークの才能を見抜いたテスラ。戦闘面でも内政面でも無理難題を押しつけてくるのでそれらを次々にこなしてみせるリーク。 テスラの町は、瞬く間に繁栄を遂げる。だが、それに嫉妬する近隣諸侯の貴族たちが彼女の躍進を妨害をするのであった。 果たして、S級大地魔法使いのリークは彼女を守ることができるのか? そもそも、守る必要があるのか? カリスマ女領主と一緒に町を反映させる物語。 バトルあり内政あり。女の子たちと一緒に領主道を突き進む! ―――――――――――――――――――――――――― 作品が面白かったらブックマークや感想、レビューをいただけると嬉しいです。 たかみが小躍りして喜びます。感想などは、お気軽にどうぞ。一言でもめっちゃ嬉しいです。 楽しい時間を過ごしていただけたら幸いです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

劣等冒険者の成り上がり無双~現代アイテムで世界を極める~

絢乃
ファンタジー
 F級冒険者のルシアスは無能なのでPTを追放されてしまう。  彼は冒険者を引退しようか悩む。  そんな時、ルシアスは道端に落ちていた謎のアイテム拾った。  これがとんでもない能力を秘めたチートアイテムだったため、彼の人生は一変することになる。  これは、別の世界に存在するアイテム(アサルトライフル、洗濯乾燥機、DVDなど)に感動し、駆使しながら成り上がる青年の物語。  努力だけでは届かぬ絶対的な才能の差を、チートアイテムで覆す!

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...