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第四章 首都遠征編

第41話 チェルトのじいさんは俺と気が合う

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 最初に提示された八〇〇万で買うと言ったらじいさんにドン引きされたんだが?
 それの何が悪いんだろうか?
 俺にとっちゃその金額でも充分だし、じいさんも安値で買えるからWin-Winだろうに。

「残り七二〇〇万は勉強料って事で! 交渉にそういった駆け引きがあるって事も教えてもらいましたからね、次はしっかりやりまさぁ!」
「おぬし……ほんと誠実でピュアッピュアじゃのう」
「まったくなのら」
「ええ~……?」
「まったく、チェルトはとんでもない男を連れ込みよったのう」
「いやーそれほどでもぉー!」
「今日日ここまで誠実な人はなかなかいませんもの」
「そうだねぇ、まさに超ウルトラスーパー激レア男だねぇ」
「い、言うほどかぁ……?」
『わらわも相応だと思うぞ』

 くっ、まさかの意見総一致だと……!?

 俺って、そんなに誠実だったのか?
 割と適当だし、粗暴だしそれほどでもないと思うんだがなー。

「あいわかった。ではこの装備二つを八〇〇万で買い取ろう!」
「ちょ、おじいちゃん、それはいくらなんでも――」
「だがしかし! この装備はチェルト、お前が使うのじゃ」
「――ええッ!!?」
「これは家長命令じゃ。逆らう事は許さん。安心せい、あとでギルドを通しておこう。ワシがコレクションを渡したとな」

 お、じいさんもなかなかノリがいいじゃないか。
 結果的に俺がやりたかった事をやってくれたよ。

 そうだよな、この剣と鎧はチェルトにピッタリなんだ。
 彼女は聞くと軽装系の剣士らしく、まさしく相性がマッチしているからな!

 だから俺は無言でじいさんにサムズアップを送ってやった。
 最高だぜアンタは!

「フフフ、おぬしもわかっておるのう?」

 そうしたらじいさんもサムズアップで返してきた。
 おお、実は結構ノリが合うんじゃないか俺達?

「ど、どうしよ~これじゃA級からねたまれちゃうよぉ~!」
「そんなもの無視せい! それかさっさとA級に上がるのじゃ!」
「じゃあおじいちゃんカンパしてよぉ!」
「ダメじゃダメじゃ、そんな事のための金に関しては一切妥協せんからな!」
「ぴえーーーっ!!!!!」

 ま、そのあおりを喰らったチェルトは迷惑かもしれんがな。
 でもこれで戦力も上がる訳だし、真の意味でのA級にまた一歩近づいた事だろう。

「それとラング君、君にも渡したい物がある」
「え?」

 だが、どうやらじいさんはそれだけじゃ気が済まないらしい。
 俺へと指をビシッと向けてきてなんだか意欲的だ。

「お、俺にっすか!?」
「うむ。ついてきなされ」

 それでこうして呼ばれ、全員で屋敷をまた歩く事に。
 さすがに中も広々としていて、いくら歩いても終わりが見えない。
 そんな中でふと道を曲がると、突然と広大な空間が現れた。

 武器や防具がみっちりと置かれた、まるで博物館だ。
 超豪華な装備から低ランクの装備まで多種多様にズラッと並んでいる。
 どうやら武具コレクターというのも伊達ではなかったらしい。

「おおあった、これじゃこれじゃ」
「そ、それって……マトック!?」

 そしてその中には武具じゃない物も置かれていた。
 そう、採集道具もまたコレクションの一部に含まれていたのだ。

 その中の一つ、マトック状の物をケースから取り出し、俺へと渡してくる。

「これは〝ヴェプラーンの穿鉾せんびょう〟という。レア度こそそこまで高くはないが、掘削具としての能力は超一級品じゃ。高硬度掘削能力に加え、超再生能力を誇り、いくら折れようがすぐに元通りになってくれよう」
「す、すげぇ……」

 受け取ってみれば、そのすごさが腕を通して伝わって来る。
 たしかにこれはすごい物だ。ビンッビンに力を感じるぞ!?

 な、なんなんだこれは、こんな装備が存在するのかよ!?

『当然なのら。その装備はまさしく採掘士のためにデザインされたものなのらから』

 採掘士、専用……!?

『しかり。ゆえにその道具こそ――〝魔掘具まくつぐ〟という!』

 魔掘具……魔剣と同じカテゴリの道具という事か!?

『そう。適正職が持つ事によって本来の力を使用者に伝える能力も誇っておる。ゆえにその道具こそそなたが持つべき道具であろう!』

 ああ、感じるぜ。コイツが俺に「使え」と言ってくる。
 俺の手がコイツを離したくないと訴えてくる。

 俺自身も、今すぐコイツを奮いたいと心が訴えているぞッ!

『ふはははっ! それこそ真の適正よ! そなたにそれを持つ実力があるという事! それすなわち――そなたが〝A級〟採掘士である事に外ならぬ!』

 俺が、A級……?
 採掘士にもランクがあったのか?

 ――そうか、そうだよな。
 勇者だけにランクがある訳じゃないんだ。
 ただ知られていないだけで、他の職業にもしっかりランクが存在するんだ!

 そして俺はすでにA級だった。
 いや、もしかしたらスキルを得た時点でA級に上がったのかもしれない。

『その辺りの理屈などどうでもよいわ! 今そなたは採掘士の頂点の一人におる。ただそれだけでよい! なっははは!』

 そうだな、それでいい。
 深い事を考える必要はないんだ。
 俺はこの魔掘具を扱う資格がある、ただそれだけで。

「ラング君、どうかな? そのつるはしを受け取ってくれるか?」
「ええ、遠慮なくいただきますとも! コイツぁとってもいい物だ。この魔掘具自体がそう教えてくれる!」
「魔掘具……? そうか、道具がそう答えてくれたかな?」
「ま、そんな所ですね」
「ふふ、やはり君はワシが見込んだ通りの男だったらしい」
「あんがとございまっす!」

 だから、そんな道具をくれたじいさんに感謝を。
 互いに手を取り合い、力強く握手を交わす。

 お"ッ!? このじいさん結構力強いぞ!?
 もしかしてこの力……この人も、勇者か!?

「ふはははっ! ワシはまだ現役じゃぞい! なんならこれから地下に行くかぁ!?」
「ええ、喜んで付き合いますよ!」
「その流れだと私も行く事になりそうー」
「当然じゃ! ビシバシしごいて今日中にAランクに到達じゃあ!」
「ひえ~……おじいちゃんスパルタァ……」
「じゃあその前にお昼ご飯でも食べましょうかっ!」
「いいねぇ。それに三人ともまだ来たばかりだし、少し休んだ方がいいと思うよ?」

 まぁそうだな、少しだけ休んで、それからでもいい。
 じいさんはもうやる気満々みたいで武器を選び始めているがね。

 まったく、チェルトの家族は変な人ばかりだ。
 だけどいい感じに面白くて、とてもすごい。
 刺激的過ぎて、俺の意欲まで掻き立てられるよ。

 こんな人達と家族になるっていうのも、きっと悪くない!
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