底辺採集職の俺、ダンジョンブレイク工業はじめました!~本ダンジョンはすでに攻略済みです。勇者様、今さら来られても遅いのでお引き取りを!~

日奈 うさぎ

文字の大きさ
上 下
33 / 148
第三章 立ち上がれダンジョンブレイカー編

第33話 真の罪人を裁くために

しおりを挟む
『あーあーわらわは何も見とらんし聞いておらーん』

 チェルト氏の要求に応えていたら、つい行く所まで行ってしまった。
 場所も考えずにちょっとがんばり過ぎてしまったと思う。

 でもそのおかげか、チェルト氏に笑顔が戻った。
 これでようやく落ち着いて話す事ができそうだ。

 そんな訳で二人揃って足を抱え、壁を背に座り込む。

「ありがとうございます、ラングさん?」
「あ、俺の名前を憶えていてくれたのか?」
「ええ。私、人の名前を覚えるのは得意なので」

 それにしたってとても丁寧な言葉遣いだ。
 才能選定以降、ナーシェさん以外から味わった事のない応対で、ちょっとドキドキするな。

「もう話せそう?」
「……はい、たぶん」
「それじゃあ、何があった? 尋常じゃないぞ、さっきの状態は」

 でもただこうし続けている訳にもいかない。
 事情を聞いておかないと、このまま抱いてサヨナラはさすがに悪い気もするから。

「……」
「まぁ話したくないならそれでも構わないよ」
「いえ、ちょっと心の整理がまだできてなくて。それにラングさんを巻き込みたくないですから、話していいものかどうか」
「気にするな、もとより堕ちに堕ちている。どうにでもなるさ」
「そう、ですか……なら、甘えさせてください」

 それに彼女も本当は話したそうにしているのはわかる。
 吐き出して、ぶちまけて、スッキリしたいって顔に書いてあるからな。

 それだけ胸糞悪いような理由があるんだろうさ。

「私を閉じ込めたのは、ゼンデルさんとラクシュさんです」
「えっ……!?」
「ポータルトラップに落ちたと思った二人が戻ってきて、私を散々いたぶった後、ここに閉じ込めたんです……っ!」
「あの二人が、だと……!?」

 ……これだけで充分に胸糞悪い話だ。
 まさかのあの二人が絡んでいたなんてなぁ!

「あ、で、でもそれは私が悪いんですっ! 私が二人の勧誘を断ったからっ!」
「勧誘ってなんだ!? 詳しく教えてくれ!」
「え!? あ……勇者がランクアップするのには戦績以外にも、お金があれば可能なんです。しかし二人は実力的にまだ届いていないから、お金で成り上がろうって相談していて……だから最初、私にお金を工面するよう要求してきたんです」
「また金か! それでどうなった!?」
「でも私はそれを悪い事だと断って……そうしたら彼等は私を襲って来たんです」
「なんて奴らだ……!」
「ですがその時、私はついやり返してしまって。そうしたらたまたまトラップルームの近くで争っていたため、二人がうっかり巻き込まれてしまったんです」
『何から何まで自業自得らのう、あの二人……』

 ようやく話が見えてきた。
 それで手下が慌ててギルドに駆け込んだって訳か。
 事情も知らないから、アイツも純粋に助けてほしいって訴えていたんだな。

 だけど、それを俺達が助けてしまった。

「だからどうしたらいいかわからなくて、ダンジョンの外でずっと悩んでいて。そうしたらあの二人が戻ってきていたんです。驚きました……」
「そう、か」
「それで私は謝罪のためにと、謝るのと同時に手持ちのお金も渡して……そうしたらゼンデルさんが容赦なく私に斬りかかってきて。そして今度は抵抗も叶わず、殺されかけた状態でここに閉じ込められたんです……」
「親切丁寧に服以外の身ぐるみはがされて、か」
「そうみたい、ですね……」

 そうだとしたら、すべての責任は俺にある。
 チェルト氏は悪くない。彼女はただ脅威を祓っただけだから。

 俺が安易にあの二人を助けなければ、こんな惨事は起きなかったんだ……!

 悔しいな、とてつもなく浅はかだったよ。
 助ける相手はちゃんと見極めるべきだったんだ。
 じゃなければチェルト氏がこんな酷い目に遭う事もなかったんだってな。

「ならその真相をギルドに話そう。真実がわかれば適切な処置が施されるだろ」
「そ、それはきっとダメです」
「どうして!? そうしなければ奴らは――」
「彼らはそこも計算に入れています。私が気絶する直前に言っていたんです。『お前は俺達を裏切った事にしておいてやる』って……」
「裏切り?」
「はい。勇者同士での裏切りはご法度。もしその事実が判明した場合、才能にかかわらずその資格をはく奪されるというペナルティがあるんです。だから私はきっと裏切り者のレッテルを張られていて、もう誰も信じてくれない……っ!」

 チェルト氏がまた体を寄せ、震えを伝えてくる。
 そりゃ一方的に犯罪者扱いされれば怖くもなるよ。

 だが裏切りなんざ奴らの方が散々やっているだろう!
 俺だって裏切られたし、嘘なんざいくらでも吐いていた!

 だったら、裁かれるべきは奴らの方だろうが……!

「だから、もういいんです。私が隠居して、パパとママを手伝えばそれで――」
「いいや良くないね。俺はちっとも納得できん!」
「だ、だけど、もうどうしようもないじゃないですかっ! 誰だって、こんなの覆しようがないっ! 無理なんですよおっ!」

 ああそうだな、普通にやったら無理だろう。
 モンタラーの助けを借りられればいいが、今は話すら聞いてもらえない。
 それどころかあの二人の後押しさえしかねない状況だ。
 そんな現状を、たかがB級勇者とハーベスター如きが解決できるものか。

 だが、できる事がない訳じゃない!

 だったら奴らの腐った真実を日の下にさらけ出せばいい。
 俺達ができる方法で、徹底的に除菌し尽くしてやろう!

「よぉく言うたラング! そこでわらわの出番らな!」

 そんな俺の想いに呼応し、ウーティリスが鞄から飛び出てきた。
 それも勢いよくスッポーンと大の字で。

「えっ!? こ、子ども!? い、いたの!?!?」
「おぉ、おったぞぉ! そなたの喘ぎ声は実に甘美であったぁ~♡」
「えええーーーーーーっ!?」
「まぁ安心してくれ、コイツは無害だから」
「で、でもでも!? キャーーーッ!!!!!」

 隠していてすまないとは思う。
 あの状況じゃもう隠すしかないかなって。
 でもこうやってさらけ出したから、嘘はもう無いよな。

「なっははは! 安心せい、すでに策略は練っておる。彼奴らの泣きっ面をとくと拝ませてやるわ!」
「どどどうするつもりなんですか!? というか無茶です! ハーベスターが勇者に逆らったらどうなるか!」
「まぁそうだな、ハーベスターの俺じゃどうしようもない事もあるよな」
「ですよ、だからもう――」
「だが、それでもできると言ったら?」
「――え?」

 ……いや、まだ嘘はあったか。
 でもこの際だ、チェルト氏をもう一度信じてみよう。
 彼女の境遇が真実なら、俺達をまだ守ってくれるって思えるから。

 だったら俺の立場をも逆に利用してみるだけだ。

「ぶしつけながら、俺がダンジョンブレイカーだからな」

 さてどうしてやろうか、あの二人のクズを。
 だがアイテム化なんて生ぬるい形で済ませるつもりはないからな……!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 Bランクダンジョンがある町に住む主人公のカナンは、茶色い髪の二十歳の男冒険者だ。地属性の魔法を使い、剣でモンスターと戦う。冒険者になって二年の月日が過ぎたが、階級はA〜Fまである階級の中で、下から二番目のEランクだ。  カナンにはAランク冒険者の姉がいて、姉から貰った剣と冒険者手帳の知識を他の冒険者達に自慢していた。当然、姉の七光りで口だけのカナンは、冒険者達に徐々に嫌われるようになった。そして、一年半をかけて完全孤立状態を完成させた。  それから約半年後のある日、別の町にいる姉から孤児の少女を引き取って欲しいと手紙が送られてきた。その時のカナンはダンジョンにも入らずに、自宅に引きこもっていた。当然、やって来た少女を家から追い出すと決めた。  けれども、やって来た少女に冒険者の才能を見つけると、カナンはダンジョンに行く事を決意した。少女に短剣を持たせると、地下一階から再スタートを始めた。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...