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第三章 立ち上がれダンジョンブレイカー編
第26話 勇者ができないなら俺がやる
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半ば穏やかだった受付場に叫びが響いた。
助けを求めて男が一人飛び込んできたのだ。
だがやってきたのも、記憶に間違いなければ勇者だ。
だったらなぜそんな奴が助けを請う……?
とはいえ奴らの案件となると俺の範疇外だ。
案の定、別の勇者が駆け寄っているしな。
「おいモーヴ、何があった!?」
「それが……仲間の勇者が二人、ポータルトラップにかかっちまったんだ!」
「「「なんだと!?」」」
「先日の中級ダンジョンで、魔物の殲滅確認中に……くっ!」
なんてこった、ポータルトラップとは。
巻き込まれたら最後、脱出不可能って言われているやつじゃないか。
たしか出口のない閉鎖空間に飛ばされるとかだったっけか。
でもなんでそんな物にいまさら引っ掛かる?
勇者はそういうトラップを見破れる力があるって聞くが。
「それで、誰が飛んじまったんだ?」
「ゼンデル兄貴とラクシュ姐さんの二人だ……」
「なんだと!? どっちもB級じゃねぇか!?
「何してやがんだよあいつら!?」
しかも飛んだのは俺も知ってるあの二人だ。
広場でチェルト氏とぶつかった際に俺へと殺意を向けてきた奴ら。
何があったのかはわからないが、ツイてないな。
「チェルトはどうした!? あの女も一緒のはずだ! それなのにどうしてあんな罠にかかる!?」
「知らねぇよ! 別れてて合流した時にはもう跳んでたんだ! チェルトも放心状態で話にならねぇし!」
「なんてこった……」
そうか、同じパーティだからチェルト氏も一緒だったんだ。
でも彼女を置いて二人が罠にかかってしまった、と。
助けられなければ確かに絶望もするだろうな。
「だが、ポータルトラップじゃあどうしようもねぇ」
「えっ……」
「あれに掛かって帰れた奴は今まで誰一人としていねぇ。諦めな」
「ま、待ってくれよ、あの二人はもうすぐ結婚する予定だったんだ! あの二人はこれから幸せになるはずだったんだよぉ!」
「知るかっ! なら穴倉の中で幸せにやってるだろうよ。まぁ魔物とも戯れてるかもしれねぇがな」
「これでB級枠が空いたな。次は俺もB級に上がれるかなぁ?」
「ギャハハハ、お前じゃまだ無理だってぇ」
こっちもこっちで絶望的だな。
誰一人として思いやりを向ける奴はいない。
それどころか笑う奴までいるなんざ反吐が出るね。
――いや、気遣いたい奴もいるにはいるのだろう。
でもポータルトラップから生還した例はない。
だから誰しもあえて目を瞑らざるを得ないんだ。
誰も死にたくはないだろうからな。
……ああ、やはり胸糞悪いぜ、ここは。
奴らの行動原理すべてが気に食わない。
まだ助けを求めてきた奴の方が人間らしいって思えるよ。
「ナーシェさん、出発はいつ頃で?」
「え? えっと明日の明朝六時となります」
「わかった。それじゃあ俺は行くわ。明日の準備もあるしな」
「は、はい、お待ちしています」
そんな奴の泣き崩れる姿を眺めつつ、その横を過ぎ去る。
しかしその後ろ姿を見えなくなるまで見続けたが、誰も手を貸そうとはしなかった。
そうだな、そういうもんだ勇者ってのは。
自分達でできるかもしれなくても、得がなきゃやろうとは思わない。
むしろこうやって見捨てた方が得するってなら、そっちを平気で選びやがる。
虫唾が走るぜクソ共がッ!!!
ならその自慢の力で穴くらい掘ってみせろってんだよッ!!!
……だが奴等は絶対に穴掘り道具も持たないし、武器も奮わないだろうな。
自分達が見下すハーベスターごときと同じ事するなんてプライドが許さないだろうから。
『その通りなのら。彼奴等の力なら遅くとも穴を掘る事ができよう。元来なら採掘士に頼んで助けに行く事もできよう。そうして昔の人間はトラップにもめげず助けに行ったものよ』
そうだよな、人ってのはそうやって協力できるんだ。
だから助けも呼べるし、救いの手も差し伸べられる。
村でもそうやって助け合ったりしてきた、当たり前の事である。
なのにそうしようともしない奴らは、もはや人間未満だッ!
ならそんな傲慢な奴らの鼻を、俺があかす!
そうする事もまた復讐の一つだ!
『しかしよいのか? 救う相手はそなたを疎む者達ぞ?』
かまわん、どうせ今まで通りだ。
それにチェルト氏が辛い思いをしているのなら、俺はその辛さを雪ぎたい!
『ふふん、そなたらしい発想なのら。よかろう、なれば力を貸してやる!』
ああ、頼むぜ。
俺をあいつらの下へ導いてくれ!
あのクソッタレどもを助けるためではなく、俺を助けてくれたチェルト氏のために。
そして勇者どもができないと言った事を覆してやるためになッ!!!
助けを求めて男が一人飛び込んできたのだ。
だがやってきたのも、記憶に間違いなければ勇者だ。
だったらなぜそんな奴が助けを請う……?
とはいえ奴らの案件となると俺の範疇外だ。
案の定、別の勇者が駆け寄っているしな。
「おいモーヴ、何があった!?」
「それが……仲間の勇者が二人、ポータルトラップにかかっちまったんだ!」
「「「なんだと!?」」」
「先日の中級ダンジョンで、魔物の殲滅確認中に……くっ!」
なんてこった、ポータルトラップとは。
巻き込まれたら最後、脱出不可能って言われているやつじゃないか。
たしか出口のない閉鎖空間に飛ばされるとかだったっけか。
でもなんでそんな物にいまさら引っ掛かる?
勇者はそういうトラップを見破れる力があるって聞くが。
「それで、誰が飛んじまったんだ?」
「ゼンデル兄貴とラクシュ姐さんの二人だ……」
「なんだと!? どっちもB級じゃねぇか!?
「何してやがんだよあいつら!?」
しかも飛んだのは俺も知ってるあの二人だ。
広場でチェルト氏とぶつかった際に俺へと殺意を向けてきた奴ら。
何があったのかはわからないが、ツイてないな。
「チェルトはどうした!? あの女も一緒のはずだ! それなのにどうしてあんな罠にかかる!?」
「知らねぇよ! 別れてて合流した時にはもう跳んでたんだ! チェルトも放心状態で話にならねぇし!」
「なんてこった……」
そうか、同じパーティだからチェルト氏も一緒だったんだ。
でも彼女を置いて二人が罠にかかってしまった、と。
助けられなければ確かに絶望もするだろうな。
「だが、ポータルトラップじゃあどうしようもねぇ」
「えっ……」
「あれに掛かって帰れた奴は今まで誰一人としていねぇ。諦めな」
「ま、待ってくれよ、あの二人はもうすぐ結婚する予定だったんだ! あの二人はこれから幸せになるはずだったんだよぉ!」
「知るかっ! なら穴倉の中で幸せにやってるだろうよ。まぁ魔物とも戯れてるかもしれねぇがな」
「これでB級枠が空いたな。次は俺もB級に上がれるかなぁ?」
「ギャハハハ、お前じゃまだ無理だってぇ」
こっちもこっちで絶望的だな。
誰一人として思いやりを向ける奴はいない。
それどころか笑う奴までいるなんざ反吐が出るね。
――いや、気遣いたい奴もいるにはいるのだろう。
でもポータルトラップから生還した例はない。
だから誰しもあえて目を瞑らざるを得ないんだ。
誰も死にたくはないだろうからな。
……ああ、やはり胸糞悪いぜ、ここは。
奴らの行動原理すべてが気に食わない。
まだ助けを求めてきた奴の方が人間らしいって思えるよ。
「ナーシェさん、出発はいつ頃で?」
「え? えっと明日の明朝六時となります」
「わかった。それじゃあ俺は行くわ。明日の準備もあるしな」
「は、はい、お待ちしています」
そんな奴の泣き崩れる姿を眺めつつ、その横を過ぎ去る。
しかしその後ろ姿を見えなくなるまで見続けたが、誰も手を貸そうとはしなかった。
そうだな、そういうもんだ勇者ってのは。
自分達でできるかもしれなくても、得がなきゃやろうとは思わない。
むしろこうやって見捨てた方が得するってなら、そっちを平気で選びやがる。
虫唾が走るぜクソ共がッ!!!
ならその自慢の力で穴くらい掘ってみせろってんだよッ!!!
……だが奴等は絶対に穴掘り道具も持たないし、武器も奮わないだろうな。
自分達が見下すハーベスターごときと同じ事するなんてプライドが許さないだろうから。
『その通りなのら。彼奴等の力なら遅くとも穴を掘る事ができよう。元来なら採掘士に頼んで助けに行く事もできよう。そうして昔の人間はトラップにもめげず助けに行ったものよ』
そうだよな、人ってのはそうやって協力できるんだ。
だから助けも呼べるし、救いの手も差し伸べられる。
村でもそうやって助け合ったりしてきた、当たり前の事である。
なのにそうしようともしない奴らは、もはや人間未満だッ!
ならそんな傲慢な奴らの鼻を、俺があかす!
そうする事もまた復讐の一つだ!
『しかしよいのか? 救う相手はそなたを疎む者達ぞ?』
かまわん、どうせ今まで通りだ。
それにチェルト氏が辛い思いをしているのなら、俺はその辛さを雪ぎたい!
『ふふん、そなたらしい発想なのら。よかろう、なれば力を貸してやる!』
ああ、頼むぜ。
俺をあいつらの下へ導いてくれ!
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