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第三章 立ち上がれダンジョンブレイカー編
第24話 迷宮神ちゃん、邪神だった。
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ウーティリスは俺達にとってなじみ深い創世神ディマーユを知らない。
対して俺達はウーティリスら一〇八人の古代神を知らない。
そしてその認識差の境目はどの年代かもわからない。
なんなんだろうな、この齟齬は。
この数千年の間に一体何が起きたのかさっぱり見当もつかん。
だがもしこの本にウーティリスの事が書かれているのなら、彼女の正体がなんなのかくらいはわかるかもしれない。
「おお、四人目に〝太陽神ニルナナカ〟がおるではないかー。懐かしいのう、あやつとは親友でな、よくまぁつるんで遊んだものよ」
「迷宮神と太陽神……まるで接点を感じないんだが?」
「いやーそうでもないのら。あやつの恩恵のおかげで昔は魔物がダンジョンの外に出られなかった。安全快適にダンジョンライフを満喫できるという訳なのら」
「なるほど、それならセットというのも頷けるな」
ダンジョンライフっていうのがいまいちパッと思い浮かばないけどな。
まるでバカンスみたいに言われてもイメージできんぞ……。
「さぁどんどん進むのら」
「でもこのページにはいないな」
「次!」
「いない」
「つ、次ィィィ!」
「大声出すなってだから――あ、あった!」
「おっ!?」
「ただ最後から三番目だな……」
「ギリィ!!!!!!!!」
あったぞ、最後の三番目に「迷宮神ユーティリス」という名が。
ほんのちょっと名前が違うが、間違いなくこれだろう。
という訳でさっそく指定されたページを開いてみる。
「どれどれ……『迷宮神ユーティリス。邪神。世界にダンジョンをばら撒き、人類に混沌を与えた元凶』」
「じゃ、じゃしん……っ! ひどいっ! ぷえ」
「いいか泣くな、泣くなよっ!?」
一ページ目からなかなかの破壊力だ。
もうすでにウーティリスが涙目で決壊寸前じゃないか。
しかし即座に彼女の眼球を指で突き、何とか事なきを得た。
悶絶しているようにも見えるが今は我慢だ、我慢!
『スマヌ、取り乱してしもうた……』
それ自体は仕方がないからいい。
でもいいか、落ち着いて聞くんだぞ。
下手に騒ぐと読みきる前に追い出されて出禁食らうからな。
「続き行くぞ……『また次々とダンジョンの構造を進化させ、勇者達の射幸心をあおる財宝をも設置。そうして人々を誘い込み、さらには魔王などの災害級の魔物をも生成させる事で混沌を増幅。一時代においては魔王放出によって滅びた国もあった』。うん、まぁそれは俺も知ってる」
「ぷぇ……」
「チェストッ!」
「なぴゅんっ!」
危ない危ない、また一突きしてしまった。
ウーティリスめ、メンタル値が低すぎるのに対して眼球が超強度すぎるだろう。
突いた俺の指の方が痛いんだが?
「次行っていい?」
「ウン」
「ここかな、『そのせいで人神との仲は悪く、しかたないので自らの身を操って男を騙し、ダンジョンに誘い込むなどの誘惑術も使用。そういった話から人々に恐れられて忌避され、信仰を失ったのち消滅した』」
「いるもん、わらわここにいるもぉん……!」
「わかってるわかってるって、ほら、ぎゅーっ」
「ぶえええ……」
……最初からこうして抱いてやるべきだったか。
ちと大人げない事をしてしまったな。
まぁ指が痛いっていうか爪割れたから仕方ない処遇ではあるんだが。
お、すすり声が消えた。
落ち着いたかな?
よし、大丈夫みたいだ。
文はこれで終わりだし、「次のページ:イメージ図」って書いてある。
さすがにここまで来ればもう問題ないだろう。
「ほら見ろ、最後にウーティリスのイメージ図があるみたいだぞ」
「うん、みる……」
「あ"っ……」
「ヒッ!?」
「こ、これはすごいなー触手が十二本もあるじゃないかーははは……」
お、おう……これはすごい。
まったく一箇所たりとも似ていないからフォローしようがないぞ!?
まるで軟体生物みたいなビジュアルだ。
長い髪がなんとなく合ってはいるが、そもそもこれは髪じゃなく触手だし。
頭から十二本の長い触手が下がって伸びていて、とてつもなくグロい。
人の部分がむしろオマケってくらい小さい、つかこれもう誘引用の擬餌だろ。
そんな絵を見せたらウーティリスが固まってしまった。
よほどショックだったに違いない。
「まぁほら、歴史なんて人の都合で歪められるもんだし、なっ?」
「ウン」
「四千年も経ったら姿なんて誰も見た事ないから想像するしかないって」
「ウン」
「お前のケツを見た俺だけは信じてる。誰よりも可愛い奴って信じてるぞ」
「ラング、ありがと……」
また泣きそうだったから、最後に再びギュッと抱き締めて慰めてやる。
いくら神とはいえ、辛い時にはこう人間みたいに泣くもんなんだな。
そういった感情とかは俺達ときっと大差ないんだろう。
そんな意味では、本当に可愛いとも思うよ。
だが安心しろよウーティリス。
こんな本の内容なんて俺は信じていないからな。
こうやって話して色々と与えてくれたお前を、俺はなにより信じるから。
対して俺達はウーティリスら一〇八人の古代神を知らない。
そしてその認識差の境目はどの年代かもわからない。
なんなんだろうな、この齟齬は。
この数千年の間に一体何が起きたのかさっぱり見当もつかん。
だがもしこの本にウーティリスの事が書かれているのなら、彼女の正体がなんなのかくらいはわかるかもしれない。
「おお、四人目に〝太陽神ニルナナカ〟がおるではないかー。懐かしいのう、あやつとは親友でな、よくまぁつるんで遊んだものよ」
「迷宮神と太陽神……まるで接点を感じないんだが?」
「いやーそうでもないのら。あやつの恩恵のおかげで昔は魔物がダンジョンの外に出られなかった。安全快適にダンジョンライフを満喫できるという訳なのら」
「なるほど、それならセットというのも頷けるな」
ダンジョンライフっていうのがいまいちパッと思い浮かばないけどな。
まるでバカンスみたいに言われてもイメージできんぞ……。
「さぁどんどん進むのら」
「でもこのページにはいないな」
「次!」
「いない」
「つ、次ィィィ!」
「大声出すなってだから――あ、あった!」
「おっ!?」
「ただ最後から三番目だな……」
「ギリィ!!!!!!!!」
あったぞ、最後の三番目に「迷宮神ユーティリス」という名が。
ほんのちょっと名前が違うが、間違いなくこれだろう。
という訳でさっそく指定されたページを開いてみる。
「どれどれ……『迷宮神ユーティリス。邪神。世界にダンジョンをばら撒き、人類に混沌を与えた元凶』」
「じゃ、じゃしん……っ! ひどいっ! ぷえ」
「いいか泣くな、泣くなよっ!?」
一ページ目からなかなかの破壊力だ。
もうすでにウーティリスが涙目で決壊寸前じゃないか。
しかし即座に彼女の眼球を指で突き、何とか事なきを得た。
悶絶しているようにも見えるが今は我慢だ、我慢!
『スマヌ、取り乱してしもうた……』
それ自体は仕方がないからいい。
でもいいか、落ち着いて聞くんだぞ。
下手に騒ぐと読みきる前に追い出されて出禁食らうからな。
「続き行くぞ……『また次々とダンジョンの構造を進化させ、勇者達の射幸心をあおる財宝をも設置。そうして人々を誘い込み、さらには魔王などの災害級の魔物をも生成させる事で混沌を増幅。一時代においては魔王放出によって滅びた国もあった』。うん、まぁそれは俺も知ってる」
「ぷぇ……」
「チェストッ!」
「なぴゅんっ!」
危ない危ない、また一突きしてしまった。
ウーティリスめ、メンタル値が低すぎるのに対して眼球が超強度すぎるだろう。
突いた俺の指の方が痛いんだが?
「次行っていい?」
「ウン」
「ここかな、『そのせいで人神との仲は悪く、しかたないので自らの身を操って男を騙し、ダンジョンに誘い込むなどの誘惑術も使用。そういった話から人々に恐れられて忌避され、信仰を失ったのち消滅した』」
「いるもん、わらわここにいるもぉん……!」
「わかってるわかってるって、ほら、ぎゅーっ」
「ぶえええ……」
……最初からこうして抱いてやるべきだったか。
ちと大人げない事をしてしまったな。
まぁ指が痛いっていうか爪割れたから仕方ない処遇ではあるんだが。
お、すすり声が消えた。
落ち着いたかな?
よし、大丈夫みたいだ。
文はこれで終わりだし、「次のページ:イメージ図」って書いてある。
さすがにここまで来ればもう問題ないだろう。
「ほら見ろ、最後にウーティリスのイメージ図があるみたいだぞ」
「うん、みる……」
「あ"っ……」
「ヒッ!?」
「こ、これはすごいなー触手が十二本もあるじゃないかーははは……」
お、おう……これはすごい。
まったく一箇所たりとも似ていないからフォローしようがないぞ!?
まるで軟体生物みたいなビジュアルだ。
長い髪がなんとなく合ってはいるが、そもそもこれは髪じゃなく触手だし。
頭から十二本の長い触手が下がって伸びていて、とてつもなくグロい。
人の部分がむしろオマケってくらい小さい、つかこれもう誘引用の擬餌だろ。
そんな絵を見せたらウーティリスが固まってしまった。
よほどショックだったに違いない。
「まぁほら、歴史なんて人の都合で歪められるもんだし、なっ?」
「ウン」
「四千年も経ったら姿なんて誰も見た事ないから想像するしかないって」
「ウン」
「お前のケツを見た俺だけは信じてる。誰よりも可愛い奴って信じてるぞ」
「ラング、ありがと……」
また泣きそうだったから、最後に再びギュッと抱き締めて慰めてやる。
いくら神とはいえ、辛い時にはこう人間みたいに泣くもんなんだな。
そういった感情とかは俺達ときっと大差ないんだろう。
そんな意味では、本当に可愛いとも思うよ。
だが安心しろよウーティリス。
こんな本の内容なんて俺は信じていないからな。
こうやって話して色々と与えてくれたお前を、俺はなにより信じるから。
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