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第三章 立ち上がれダンジョンブレイカー編
第21話 一夜が明ければ待つのは騒動
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「うっうっ、頼んます! 買ってくだせぇ! これが我が家に伝わる最後の金の延べ棒なんでさぁ~~~!」
「ついに金に困って家宝にまで手を出したか。ハーベスターも大変だな。仕方ない、買い取ってあげよう」
「あんがとごぜぇますぅーーーっ!」
なんとか一芝居を売ってゴールドインゴット三本を買い取ってもらった。
おかげで九万ルカとそれなりに稼ぐ事ができたぞ。
これでウーティリスの部屋の改装用建材も買えそうだ。
「しかしなんでわらわが歩かねばならぬのか」
「街中でも袋に入っていたら怪しすぎるだろ。あと付いていきたいと言ったのはお前だ」
ひとまずこれでしばらくお金には困らないはず。
あとはギルドの方でダンジョンがどうなっているのかを確認しなければ。
俺の事がバレてなきゃいいんだが。
――俺達によるダンジョン攻略からもう翌日。
昨日は俺も疲れ果ててあのまま寝てしまって、後の記憶がない。
ウーティリスの耳打ち腹減ったコールで起こされ、気付けば今日だったのだ。
だからもう勇者達も戻ってきてもいい頃合いだ。
魔王も俺が倒した訳だし、それほど苦労もしていないはず。
そのつもりでギルドにやってきたのだが。
「なんなのら、随分と荒れておるではないか」
「そ、そうだな」
ギルド庁舎の中では勇者達が大勢でゴロゴロと。
他の職業の人に当たり散らすなど、もうやりたい放題だ。
これは……原因は俺達に間違いないな。
「おぉラングゥ!」
「うっ!?」
そう遠巻きに見ていたらいきなり背後から怒声が上がる。
それでゆっくりと振り向けば……奴がいた。
「あ、ギトス……様、な、なんでしょうか?」
「別に用はねェよ。だが――」
しかも奴は剣を振り上げ、ドズンッと床へ剣先をブッ刺した。
顔をピクピクと震わせながら怒りを露わにして。
「テメェ……」
「は、はい……」
「もし黒いマフラーを付けた怪しい奴がいたら僕に教えろ。いいなァ……?」
「わ、わかりましたぁ……」
おーおー、相当におかんむりだコイツは。
良かったぜ、ギトスの前であのマフラー付けておかなくて。
村からの出発時に恥ずかしくて仕舞っておいて正解だった。
だがやはり俺の存在だけは知られているみたいだな。
これはもうあのマフラーを表で付けない方がよさそうだ。
「そういや、なんだその小娘? まさかお前、女ができないからって未成年さらったとかかぁ? だとしたらとんだお笑い草だぜぇ?」
「え? ああ、この娘は引き取る事になった遠い親戚でして……」
「そんなのいたのか? まぁいいや。とっとと失せやがれド底辺」
クソッ、てめぇが後から来たんだろうが。
てめぇの方がどっかに行きやがれ! ったく。
あいかわらず相手にすると気分が悪くなる奴だ。
ウーティリスもさすがにだんまりだし、雰囲気も最悪だな。
『うむ。天罰を下せるならば下したい気分なのら』
だよな。
すごくわかる。
しかしまだ爆発する時じゃない。
イラついているって事はつまり、俺達の活躍が効いているって事だからな。
ふははは、ざまぁないぜギトスの奴め!
……これを早く表で言えるようになりたい。
「あ、ラングさんっ! 昨日はどうしたんですか? いつもすぐ嗅ぎつけて真っ先に来るのにぃ!」
そう思いふけっていたらナーシェさんの方から声をかけてくれた。
心配してくれたみたいで俺なんか嬉しい!
「ごめんごめん、昨日ちょっと私事でがんばっちゃってな、フッ」
「そうなのら。昨日はもうほんっと激しかったのらぁ……♡」
「えっ……ラングさん、まさかその子と……?」
「いいえ違います。この子は虚言癖があるんで気にしないでくれ」
「なんだ~そうなんですねっ」
『虚言癖とはなんなのらっ! ひどいっ、わらわというものがありながらんっ!』
ええいケツを振るなうっとおしいッ!
誤解を広げるだけだといい加減わかれ!
「ラング=バートナー! そそその娘は一体何なのですッ!?」
「うげっ!? 鉄面皮メガネ!?」
「なななんとハレンチな! このケダモノ! ヘンタイ! そんな小さな少女に手を出すなどォォォ!!!!!」
ほら来たよ誤解した奴が。
それもとりわけ面倒臭い奴が!
メガネをクイクイするどころかフレームがひん曲がってるじゃねぇか!
もうやめろ! レンズが取れちまうぞ!
「あのですね、この娘は俺の姪でしてね」
「――なんだそうですか。ならそう早く言ってください」
「勝手に誤解したくせによく言うよ」
「ここは神聖なるギルドですので、子どもの連れ入れはトラブルの元にもなりかねません。ご注意なさいケダモノ」
「お、おう、一言多いよ鉄面皮メガネ」
でも急に大人しくなったな。しかもなんか妙に優しいし。
一言多いのは相変わらずだが。
「ラングさんの姪さんでしたか~可愛いですねぇ!」
「うむ! 最高のプロポーションであろう?」
「ぷ、ぷろ……? ずいぶん難しい言葉を知ってらっしゃるのね~」
まぁそりゃな。
俺達の数百倍は生きている女だし。
しかしこのままウーティリスの話題を広げるのは少しまずい。
「ところでナーシェさん、この騒ぎは一体?」
変に深掘りすると俺達の関係がバレかねないからな。
なので悪いが本題に移らさせてもらう。
「それがですね、なんでも上級ダンジョンの財宝が一つも見つからなかったそうなんです」
「ほうほう」
「それで入口付近で鉢合わせしたC級勇者を捕らえていたので事情を問い質したところ、先に荒らした犯人らしき人物がいたという話なんですよ。なので皆さんとてもイライラしているようなんですよね……」
やはりか、あの二人がゲロったんだな。
しかも懇切丁寧にすべて俺のせいに仕立てたと。事実なんだがね。
まぁそれならこうもなるか、奴らC級が魔王なんて倒せる訳ないし。
「けれど黒いマフラーをしていたという証言だけでまだ誰かはわからないらしくて」
「でもそいつは悪い事を何かしたのか?」
「いえ、宝だけを持って穴に逃げていっただけだそうです。その穴も一瞬で埋められてしまったそうで。そんなはずないのに、居合わせた二人はきっと混乱していたんでしょうね」
「うーん、でもそれなら別に問題ないんじゃ? 財宝の扱いのルール的に」
「そ、そうですよね……」
「そんな訳はありませんっ! 勇者が魔物を倒したなら対価として財宝を得るのが妥当でしょう!?」
「でもそれ、勇者もギルドから報奨金出てるよな?」
「……ま、まぁそうですわね」
ええい、いちいちでしゃばるな鉄面皮メガネめ。
俺はナーシェさんとの会話を楽しんでいるんだ!
論破してやったから大人しくしていたまえよ!
「ちなみに採掘士枠って、まだある?」
「すみません……昨日の内に埋まってしまって……」
「だよなー」
「護衛枠なら空いてますがケダモノ!?」
「その枠で俺にどうしろってんだ鉄面皮メガネ」
枠が埋まってしまったのは仕方ない。
こればかりは競争だしな、諦めるしかないさ。
なら空いた時間を有効利用するとしようか。
なので俺はレトリーとガン飛ばし合いながらギルドを出た。
買い物もあるし、居座り続けるとナーシェさんにも悪いしな。
だが鉄面皮メガネ、てめーは別だ。
「ついに金に困って家宝にまで手を出したか。ハーベスターも大変だな。仕方ない、買い取ってあげよう」
「あんがとごぜぇますぅーーーっ!」
なんとか一芝居を売ってゴールドインゴット三本を買い取ってもらった。
おかげで九万ルカとそれなりに稼ぐ事ができたぞ。
これでウーティリスの部屋の改装用建材も買えそうだ。
「しかしなんでわらわが歩かねばならぬのか」
「街中でも袋に入っていたら怪しすぎるだろ。あと付いていきたいと言ったのはお前だ」
ひとまずこれでしばらくお金には困らないはず。
あとはギルドの方でダンジョンがどうなっているのかを確認しなければ。
俺の事がバレてなきゃいいんだが。
――俺達によるダンジョン攻略からもう翌日。
昨日は俺も疲れ果ててあのまま寝てしまって、後の記憶がない。
ウーティリスの耳打ち腹減ったコールで起こされ、気付けば今日だったのだ。
だからもう勇者達も戻ってきてもいい頃合いだ。
魔王も俺が倒した訳だし、それほど苦労もしていないはず。
そのつもりでギルドにやってきたのだが。
「なんなのら、随分と荒れておるではないか」
「そ、そうだな」
ギルド庁舎の中では勇者達が大勢でゴロゴロと。
他の職業の人に当たり散らすなど、もうやりたい放題だ。
これは……原因は俺達に間違いないな。
「おぉラングゥ!」
「うっ!?」
そう遠巻きに見ていたらいきなり背後から怒声が上がる。
それでゆっくりと振り向けば……奴がいた。
「あ、ギトス……様、な、なんでしょうか?」
「別に用はねェよ。だが――」
しかも奴は剣を振り上げ、ドズンッと床へ剣先をブッ刺した。
顔をピクピクと震わせながら怒りを露わにして。
「テメェ……」
「は、はい……」
「もし黒いマフラーを付けた怪しい奴がいたら僕に教えろ。いいなァ……?」
「わ、わかりましたぁ……」
おーおー、相当におかんむりだコイツは。
良かったぜ、ギトスの前であのマフラー付けておかなくて。
村からの出発時に恥ずかしくて仕舞っておいて正解だった。
だがやはり俺の存在だけは知られているみたいだな。
これはもうあのマフラーを表で付けない方がよさそうだ。
「そういや、なんだその小娘? まさかお前、女ができないからって未成年さらったとかかぁ? だとしたらとんだお笑い草だぜぇ?」
「え? ああ、この娘は引き取る事になった遠い親戚でして……」
「そんなのいたのか? まぁいいや。とっとと失せやがれド底辺」
クソッ、てめぇが後から来たんだろうが。
てめぇの方がどっかに行きやがれ! ったく。
あいかわらず相手にすると気分が悪くなる奴だ。
ウーティリスもさすがにだんまりだし、雰囲気も最悪だな。
『うむ。天罰を下せるならば下したい気分なのら』
だよな。
すごくわかる。
しかしまだ爆発する時じゃない。
イラついているって事はつまり、俺達の活躍が効いているって事だからな。
ふははは、ざまぁないぜギトスの奴め!
……これを早く表で言えるようになりたい。
「あ、ラングさんっ! 昨日はどうしたんですか? いつもすぐ嗅ぎつけて真っ先に来るのにぃ!」
そう思いふけっていたらナーシェさんの方から声をかけてくれた。
心配してくれたみたいで俺なんか嬉しい!
「ごめんごめん、昨日ちょっと私事でがんばっちゃってな、フッ」
「そうなのら。昨日はもうほんっと激しかったのらぁ……♡」
「えっ……ラングさん、まさかその子と……?」
「いいえ違います。この子は虚言癖があるんで気にしないでくれ」
「なんだ~そうなんですねっ」
『虚言癖とはなんなのらっ! ひどいっ、わらわというものがありながらんっ!』
ええいケツを振るなうっとおしいッ!
誤解を広げるだけだといい加減わかれ!
「ラング=バートナー! そそその娘は一体何なのですッ!?」
「うげっ!? 鉄面皮メガネ!?」
「なななんとハレンチな! このケダモノ! ヘンタイ! そんな小さな少女に手を出すなどォォォ!!!!!」
ほら来たよ誤解した奴が。
それもとりわけ面倒臭い奴が!
メガネをクイクイするどころかフレームがひん曲がってるじゃねぇか!
もうやめろ! レンズが取れちまうぞ!
「あのですね、この娘は俺の姪でしてね」
「――なんだそうですか。ならそう早く言ってください」
「勝手に誤解したくせによく言うよ」
「ここは神聖なるギルドですので、子どもの連れ入れはトラブルの元にもなりかねません。ご注意なさいケダモノ」
「お、おう、一言多いよ鉄面皮メガネ」
でも急に大人しくなったな。しかもなんか妙に優しいし。
一言多いのは相変わらずだが。
「ラングさんの姪さんでしたか~可愛いですねぇ!」
「うむ! 最高のプロポーションであろう?」
「ぷ、ぷろ……? ずいぶん難しい言葉を知ってらっしゃるのね~」
まぁそりゃな。
俺達の数百倍は生きている女だし。
しかしこのままウーティリスの話題を広げるのは少しまずい。
「ところでナーシェさん、この騒ぎは一体?」
変に深掘りすると俺達の関係がバレかねないからな。
なので悪いが本題に移らさせてもらう。
「それがですね、なんでも上級ダンジョンの財宝が一つも見つからなかったそうなんです」
「ほうほう」
「それで入口付近で鉢合わせしたC級勇者を捕らえていたので事情を問い質したところ、先に荒らした犯人らしき人物がいたという話なんですよ。なので皆さんとてもイライラしているようなんですよね……」
やはりか、あの二人がゲロったんだな。
しかも懇切丁寧にすべて俺のせいに仕立てたと。事実なんだがね。
まぁそれならこうもなるか、奴らC級が魔王なんて倒せる訳ないし。
「けれど黒いマフラーをしていたという証言だけでまだ誰かはわからないらしくて」
「でもそいつは悪い事を何かしたのか?」
「いえ、宝だけを持って穴に逃げていっただけだそうです。その穴も一瞬で埋められてしまったそうで。そんなはずないのに、居合わせた二人はきっと混乱していたんでしょうね」
「うーん、でもそれなら別に問題ないんじゃ? 財宝の扱いのルール的に」
「そ、そうですよね……」
「そんな訳はありませんっ! 勇者が魔物を倒したなら対価として財宝を得るのが妥当でしょう!?」
「でもそれ、勇者もギルドから報奨金出てるよな?」
「……ま、まぁそうですわね」
ええい、いちいちでしゃばるな鉄面皮メガネめ。
俺はナーシェさんとの会話を楽しんでいるんだ!
論破してやったから大人しくしていたまえよ!
「ちなみに採掘士枠って、まだある?」
「すみません……昨日の内に埋まってしまって……」
「だよなー」
「護衛枠なら空いてますがケダモノ!?」
「その枠で俺にどうしろってんだ鉄面皮メガネ」
枠が埋まってしまったのは仕方ない。
こればかりは競争だしな、諦めるしかないさ。
なら空いた時間を有効利用するとしようか。
なので俺はレトリーとガン飛ばし合いながらギルドを出た。
買い物もあるし、居座り続けるとナーシェさんにも悪いしな。
だが鉄面皮メガネ、てめーは別だ。
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