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第二章 逆襲のダンジョンブレイク編
第15話 望め、外道を
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上級ダンジョンに辿り着くまでおよそあと一時間ほど。
そんな中で俺の思い出話に花を咲かせていた時、ウーティリスが妙な事を言い始めた。
問いとは一体?
今さら何の話だろうか?
「その前に軽く前振りの話をしよう。……勇者がいばり散らすその原因を、そなたは何だと考える?」
「え? うーん、強くて魔物を倒せるからか?」
何の話かと思えば勇者の事か。
真相まではわからないが世間的な事ならわかるつもりだ。
魔物を倒せるのは勇者だけ。
そういう節理が出来上がっているから彼等は図に乗っている。
これはもうよく知られた事だから間違える訳もないな。
「ふむ、まぁ当然らが……半分当たりらのう」
「半分って。じゃあ他に何がある!?」
「少しは思考せよと言うておろうに……」
むぅ、半分かぁ。
てっきり大正解かと思っていたのだが、どうやら違うらしい。
しかしそうなると残り半分がどうにも浮かばない。
「まぁよい。もう半分の答えは、彼奴等にしか得られぬ物があるからよ」
「奴らにしか得られぬ物……まさか財宝か?」
「しかり。それすなわち彼奴等にとっての資金源となり、幅を利かせる原動力ともなろう。人の世にとって金とは秩序をもたらすと同時に不平等をも産むものらからのう」
なるほど、金か。
たしかにそれなら奴らは俺達とは比較にならないほど稼いでいるな。
ただ、それで何をするのだろうか。
新しい装備を整えたり、美味しいモノを食べたりではない?
「そなたにも少しは心当たりがあるのではないかの? どうしてレア鉱石が安く買い叩かれたり、ギルドとやらで不遇を強いられたりするのか」
「それは勇者達の影響力が強いからという訳ではないのか?」
「事はそう単純ではない。これはまだわらわの予想に過ぎぬが、彼奴等はその影響力を金で買っておるのよ。あらかじめ大金を払い、ギルドで都合よくしてもらうために」
「えっ……」
二年間もこの街で暮らしているが、そんな話は聞いた事がない。
そんな買収じみた事をしているなんて話は単なる噂くらいしか――
……え、噂?
「火の無い所に煙は立たぬ。おそらくその噂とやらは真実でもあるのだろうな。昔からズル賢い人間はそうやって相手を買収し、成り上がり、競い合って上り詰めたものよ。まぁ人間の考えなど数千年経とうとも変わらぬという事なのら」
「どうしてそんな事をする必要がある!?」
「欲望を満たすためよ。それ以外にあるまい」
「たったそれだけ……? それだけのために、他の人を虐げているって……!?」
「中には例外もおろう。しかし大半は他人の事など考えもせぬ。興味もなかろうしのう」
じゃあつまり勇者達は財宝を手に入れて、それを売って金にして、さらにその金でギルドを買収して優遇してもらっているっていうのか!?
「あるいはギルドが金を払うように要求しているか。そうして優遇する事で互いに共存しあい、幅を利かせる土壌を作り上げているのら」
「いずれにせよ大問題だろそれは! それは明らかな自作自演じゃないか! 許せる訳がないっ!」
「しかしその証拠もなければ追求する手段もない。それどころか下手に訴追すればきっと彼らはこう言うのう。『ならお前達も払えばいい』と」
「ううっ……!?」
そうか、それができないからギルドと勇者はいつまでも高みの見物なんだ。
彼ら以外に高みへ登れる職がないから……!
ならこんな事をしたって、俺達にはもう――
「ならば、いっそその資金源を断ってしまえばよかろう? クックク……!」
「――ッ!?」
お、おいおい、ウーティリス……お前本気なのか!?
本気でそんな酷い事を思い付いているのか!?
思う存分やっちいまいなぁなんて、思っちゃってたりするのかあああ!!?
「ふはははっ! もうわかったであろう、わらわの思惑がっ!」
「ああ、ああ! もうわかったぜ! そういう事かよこのド外道があっ!」
「くっひひひ! それは最高の誉め言葉らのう~~~!!!」
「ああちくしょう、それならたしかにやれるぜ! しかもれっきとした合法だ! ダンジョンの財宝は先に見つけた者に所有権が発生するとされているからなッ!」
くっそぉこの女、最ッ高に最低だ!
そして頭の弱い俺にとって最強のパートナーだッ!
ああわかったよ、それならやってやる!
あの街の勇者全員を敵に回したっていい!
奴らが培ってきた土壌が腐りきるまで、俺が何でもやってやらあ!
「うむ、その意気よ!」
「おうっ!」
「ではここで先ほど言うた質問をしよう!」
「よし、来い!」
今ならなんでも答えられる気がする。
どんな引っかけ問題だろうと来てみろ、ブチ破ってみせるぜ!
「ではそなたが代わりにその財宝を得た時、どのようにして扱うつもりぞ?」
「……え?」
財宝をどう扱うか、だって?
そ、それは売ってお金にして楽な生活を送る?
あるいはギルドに媚を売って勇者と対等の地位を得る?
……いや、違う。
俺は、俺の心はそんな事なんて望んじゃいない。
「答えは、簡単だ! 生活に困った人への助けにしたい! 今はまだ無理でも、できる限りの、手が届く人の救いになる事に使いたい!」
「ほうほう」
「そしてできるなら俺は、今の歪んだ価値観を正したい! 勇者も採取者も、どの職業も差別しないそんな未来を俺は構築したい……ッ!」
「ふふ、良き答えよっ!」
そうさ、これが俺の願いだ。
師匠から受け取り、叶えたかった俺の夢。
それを叶えるために、俺は自分の力を奮おう!
「はははっ! それこそわらわが望んだ答えよっ! なにせダンジョンの資源は元よりそうするために生み出したのだからなあっ!」
「な、なんだって!?」
「資源は周知のこと、強き武具は力弱き者を支えるために! 薬は難病の者を救うために! 金銀宝石は恵まれぬ者達の糧のために! 植物や魔物は飢えた者達のために! その全てに意味があるのらっ!」
そうか、だからダンジョンは数千年以上も存在したのか!
その間ずっと地上に生きる者達を助けるために!
そう、だったのか……!
「強き者には想いを! 弱き者には力を! そしてその二者を繋げしはそなたのごとき心意気よ! しからば胸を張って望むがいい! それこそこの世にダンジョンを生み出せしわらわの願いならばっ!!!」
ああ、おかげで自信が持てた。
この行いは決して悪い事などではないのだと。
だったらやってやるさ。
俺がこの不条理を塗り替えてやるんだ……!
そんな中で俺の思い出話に花を咲かせていた時、ウーティリスが妙な事を言い始めた。
問いとは一体?
今さら何の話だろうか?
「その前に軽く前振りの話をしよう。……勇者がいばり散らすその原因を、そなたは何だと考える?」
「え? うーん、強くて魔物を倒せるからか?」
何の話かと思えば勇者の事か。
真相まではわからないが世間的な事ならわかるつもりだ。
魔物を倒せるのは勇者だけ。
そういう節理が出来上がっているから彼等は図に乗っている。
これはもうよく知られた事だから間違える訳もないな。
「ふむ、まぁ当然らが……半分当たりらのう」
「半分って。じゃあ他に何がある!?」
「少しは思考せよと言うておろうに……」
むぅ、半分かぁ。
てっきり大正解かと思っていたのだが、どうやら違うらしい。
しかしそうなると残り半分がどうにも浮かばない。
「まぁよい。もう半分の答えは、彼奴等にしか得られぬ物があるからよ」
「奴らにしか得られぬ物……まさか財宝か?」
「しかり。それすなわち彼奴等にとっての資金源となり、幅を利かせる原動力ともなろう。人の世にとって金とは秩序をもたらすと同時に不平等をも産むものらからのう」
なるほど、金か。
たしかにそれなら奴らは俺達とは比較にならないほど稼いでいるな。
ただ、それで何をするのだろうか。
新しい装備を整えたり、美味しいモノを食べたりではない?
「そなたにも少しは心当たりがあるのではないかの? どうしてレア鉱石が安く買い叩かれたり、ギルドとやらで不遇を強いられたりするのか」
「それは勇者達の影響力が強いからという訳ではないのか?」
「事はそう単純ではない。これはまだわらわの予想に過ぎぬが、彼奴等はその影響力を金で買っておるのよ。あらかじめ大金を払い、ギルドで都合よくしてもらうために」
「えっ……」
二年間もこの街で暮らしているが、そんな話は聞いた事がない。
そんな買収じみた事をしているなんて話は単なる噂くらいしか――
……え、噂?
「火の無い所に煙は立たぬ。おそらくその噂とやらは真実でもあるのだろうな。昔からズル賢い人間はそうやって相手を買収し、成り上がり、競い合って上り詰めたものよ。まぁ人間の考えなど数千年経とうとも変わらぬという事なのら」
「どうしてそんな事をする必要がある!?」
「欲望を満たすためよ。それ以外にあるまい」
「たったそれだけ……? それだけのために、他の人を虐げているって……!?」
「中には例外もおろう。しかし大半は他人の事など考えもせぬ。興味もなかろうしのう」
じゃあつまり勇者達は財宝を手に入れて、それを売って金にして、さらにその金でギルドを買収して優遇してもらっているっていうのか!?
「あるいはギルドが金を払うように要求しているか。そうして優遇する事で互いに共存しあい、幅を利かせる土壌を作り上げているのら」
「いずれにせよ大問題だろそれは! それは明らかな自作自演じゃないか! 許せる訳がないっ!」
「しかしその証拠もなければ追求する手段もない。それどころか下手に訴追すればきっと彼らはこう言うのう。『ならお前達も払えばいい』と」
「ううっ……!?」
そうか、それができないからギルドと勇者はいつまでも高みの見物なんだ。
彼ら以外に高みへ登れる職がないから……!
ならこんな事をしたって、俺達にはもう――
「ならば、いっそその資金源を断ってしまえばよかろう? クックク……!」
「――ッ!?」
お、おいおい、ウーティリス……お前本気なのか!?
本気でそんな酷い事を思い付いているのか!?
思う存分やっちいまいなぁなんて、思っちゃってたりするのかあああ!!?
「ふはははっ! もうわかったであろう、わらわの思惑がっ!」
「ああ、ああ! もうわかったぜ! そういう事かよこのド外道があっ!」
「くっひひひ! それは最高の誉め言葉らのう~~~!!!」
「ああちくしょう、それならたしかにやれるぜ! しかもれっきとした合法だ! ダンジョンの財宝は先に見つけた者に所有権が発生するとされているからなッ!」
くっそぉこの女、最ッ高に最低だ!
そして頭の弱い俺にとって最強のパートナーだッ!
ああわかったよ、それならやってやる!
あの街の勇者全員を敵に回したっていい!
奴らが培ってきた土壌が腐りきるまで、俺が何でもやってやらあ!
「うむ、その意気よ!」
「おうっ!」
「ではここで先ほど言うた質問をしよう!」
「よし、来い!」
今ならなんでも答えられる気がする。
どんな引っかけ問題だろうと来てみろ、ブチ破ってみせるぜ!
「ではそなたが代わりにその財宝を得た時、どのようにして扱うつもりぞ?」
「……え?」
財宝をどう扱うか、だって?
そ、それは売ってお金にして楽な生活を送る?
あるいはギルドに媚を売って勇者と対等の地位を得る?
……いや、違う。
俺は、俺の心はそんな事なんて望んじゃいない。
「答えは、簡単だ! 生活に困った人への助けにしたい! 今はまだ無理でも、できる限りの、手が届く人の救いになる事に使いたい!」
「ほうほう」
「そしてできるなら俺は、今の歪んだ価値観を正したい! 勇者も採取者も、どの職業も差別しないそんな未来を俺は構築したい……ッ!」
「ふふ、良き答えよっ!」
そうさ、これが俺の願いだ。
師匠から受け取り、叶えたかった俺の夢。
それを叶えるために、俺は自分の力を奮おう!
「はははっ! それこそわらわが望んだ答えよっ! なにせダンジョンの資源は元よりそうするために生み出したのだからなあっ!」
「な、なんだって!?」
「資源は周知のこと、強き武具は力弱き者を支えるために! 薬は難病の者を救うために! 金銀宝石は恵まれぬ者達の糧のために! 植物や魔物は飢えた者達のために! その全てに意味があるのらっ!」
そうか、だからダンジョンは数千年以上も存在したのか!
その間ずっと地上に生きる者達を助けるために!
そう、だったのか……!
「強き者には想いを! 弱き者には力を! そしてその二者を繋げしはそなたのごとき心意気よ! しからば胸を張って望むがいい! それこそこの世にダンジョンを生み出せしわらわの願いならばっ!!!」
ああ、おかげで自信が持てた。
この行いは決して悪い事などではないのだと。
だったらやってやるさ。
俺がこの不条理を塗り替えてやるんだ……!
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