上 下
12 / 148
第二章 逆襲のダンジョンブレイク編

第12話 ここ掘れ秘密の地下室!

しおりを挟む
 俺の寝室の床に穴が掘れた。
 人一人が通れるくらいの細い縦穴だ。
 深さはだいたい五〇メートルくらいといった所か。

「なにをしておーる! はよ飛び込まんかーっ!」

 とかなんとか考えている間にもうウーティリスが穴に落ちて待っていた。
 つか、この高さから落ちて無事なのが信じられないんだが?

 改めて見ると、やはり深い。
 落ちたらこれ、間違いなく死ぬよな……?

『ええからはよ来るのら。わらわが受け止めてやろう』
「いいのかそれ!? くっ、仕方ない、やってやるうううーーーっ!」

 だが俺はもうウーティリスを信じると決めた!
 だったら彼女の言う通りにしなければ、自分自身を裏切る事になる!

「ンヒャオオオオオオォォォォォォーーーーーー!!!??」

 ゆえに俺は意を決して穴に飛び込んだのだ。
 下を向く事さえ許されないほどの細い穴へ、叫びを上げながら。

 ――しかし直後、「ぷにゅん」とした感触と共に勢いが止まった。

「よしよし、やっときたのら」
「うーちゃんって、力持ちだねぇ……」
「ニャハハハ! どうだ神の力を思い知ったかー!」

 どうやら彼女、両手を掲げて俺を受け止めたらしい。
 少女にこうもたやすく受け止められるのって、なんだか男として複雑だ。

「では次にちょっとした空間を掘るのら」
「具体的にどれくらい?」
「人の部屋くらいでかまわぬ。強いて言うならあのクッソ狭い寝室の三倍くらい?」
「あれでもなけなしの給料で得た自慢の寝室なんですぅ!!!」

 いいさ、どうせ俺は甲斐性の無い男である事に違いないもん!
 あんな家、いつか豪邸に立て直してやるんだからーっ!

 ……さて冗談はさておき、言われた通り部屋を作るとするか。

 とはいえ作業自体は楽だった。
 ただピッケルを適当に振るだけでよかったから。
 あとは普通の部屋となるよう意識するだけで勝手に出来上がってくれた。

「うむ、よいではないかー!」
「それで、ここは何のための空間なんだ?」
「わらわの私室なのら」
「そ、そう……」

 半ば騙された気がするがまぁいい。
 ウーティリスならきっと無意味な事はしないだろうから。

「ちなみに後で穴の所に上昇気流を発生させる魔法陣を設置しておいてやろう。これで行き来が楽になるのら!」
「それなら普通にハシゴとか設置すれば――そうか、お金がないんだった」
「うむうむ。まぁ内装に関してはまだ仕方あるまいの。少しばかり猶予を授けておいてやろうぞ」
 
 稼ぐまではこの部屋もみすぼらしいままだな。
 でもいつかはこの部屋を彼女らしい形に仕立ててあげたいものだ。
 俺の家はあのままでもかまわないが、ウーティリスの分くらいは飾ってあげたくも思う。

「良い心がけなのら。まぁそう思える心がラングの良い所と言えよう」
「なんだよ、急に褒めるなよ恥ずかしい」
「んふふ、ならご褒美に夜の相手でもしてやろうかの?」
「や、やめろよ。そういう事は別に求めちゃいないっての……」
「やっはーーーからかい甲斐満点な男らのう~!」

 まったく、人をいじるのも大概にしてほしい。
 こっちは真面目に従っているんだから。

 さて、これでやる事は終わったのか?
 ここからどうギトス達に泡を吹かせる?
 まさか本当に私室を造っただけとは言わないよな?

「そうあわてるでない。これはあくまで下準備にすぎぬのら」
「下準備?」
「うむ。ではラングよ、次はダンジョンの情報を仕入れてくるのら。それもできればまだ誰も手を出していない場所がよい」
「ダンジョンの情報、か……まぁそれくらいならなんとかなるな」

 しかし案の定、ウーティリスにはまだ思惑があるらしい。
 だとすれば善は急げ、だな。

 幸い、ダンジョンの情報だけなら手に入れるのは簡単だ。
 ワーカーギルドに戻って、それらしい情報が出てくるのを待つだけでいい。
 別に隠す事でもないからな、勇者達やギルド員の動きだけでもわかる。

 そんな訳で俺はウーティリスの力で自室へと戻してもらってすぐさまギルドへ。

 するとギルド庁舎へと辿り着くや否や、さっそく動きが見えた。
 あの勇者達の走る姿を見るに、ダンジョン攻略準備の真っ最中かな?

 そこで俺は再び建屋に入ってナーシェさんの下へ行く。
 今は勇者達以外の仕事がないからかな、暇しているようなので丁度いい。

「ナーシェさん、一体何があったんです?」
「ええとですね、どうやらダンジョンが出現したみたいなんです」
「それにしては割と慌てているように見えるけど?」
「それが、現れたのはどうやら上級ダンジョンみたいで」
「上級……って事は魔王ってのが現れる可能性があるのか」
「はい、そうなります。外に出てくる前になんとか排除できればよいのですが」

 やはりか。
 ちょうど都合良くダンジョンが沸いたばかりらしい。

 しかも上級って事だからかなりヤバめだな。
 おそらくはあのギトスも出張る事だろうよ。

「そうか、大変だな。……ところでどこらへんに沸いたかは聞いてる?」
「えっと、北西にあるナビッシュ平原街道の中腹だそうです」
「歩いて二時間くらいの所か。割と近いね」
「ええ、それなので早急に事を進めるつもりらしいですよ。明日の早朝に出発して、すぐ攻略開始するそうです。すでに監視者モンタラーや防衛役の勇者様が配置済みなのでまだ平気みたいですけれど」

 なるほど、準備は万端って訳か。
 あとは攻略役の勇者達が到着すればいい、と。

 なら猶予は今夜一杯。
 その間に何かをすればいいという事だ。

「ありがとうナーシェさん。あ、お仕事であんまり無理はしないでくれよな」
「ええ、ラングさんありがとうございますっ!」

 彼女の事を利用したのは心苦しくも思う。
 けど利用したからには迷惑をかけない程度にやりきってみせるよ。

 君の笑顔を守るのも、俺がやりたい事の一つだからな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

視力0.01の転生重弩使い 『なんも見えんけど多分味方じゃないからヨシッ!』

ふつうのにーちゃん
ファンタジー
転生者グレイボーンは、前世でシュールな死に方をしてしまったがあまりに神に気に入られ、【重弩使い】のギフトを与えられた。 しかしその神は実のところ、人の運命を弄ぶ邪神だった。 確かに重弩使いとして破格の才能を持って生まれたが、彼は『10cm先までしかまともに見えない』という、台無しのハンデを抱えていた。 それから時が流れ、彼が15歳を迎えると、父が死病を患い、男と蒸発した母が帰ってきた。 異父兄妹のリチェルと共に。 彼はリチェルを嫌うが、結局は母の代わりに面倒を見ることになった。 ところがしばらくしたある日、リチェルが失踪してしまう。 妹に愛情を懐き始めていたグレイボーンは深い衝撃を受けた。 だが皮肉にもその衝撃がきっかけとなり、彼は前世の記憶を取り戻すことになる。 決意したグレイボーンは、父から規格外の重弩《アーバレスト》を受け継いだ。 彼はそれを抱えて、リチェルが入り込んだという魔物の領域に踏み込む。 リチェルを救い、これからは良い兄となるために。 「たぶん人じゃないヨシッッ!!」 当たれば一撃必殺。 ただし、彼の目には、それが魔物か人かはわからない。 勘で必殺の弩を放つ超危険人物にして、空気の読めないシスコン兄の誕生だった。 毎日2~3話投稿。なろうとカクヨムでも公開しています。

愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する

清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。 たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。 神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。 悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

処理中です...