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第二章 逆襲のダンジョンブレイク編
第11話 怒りを実行力に変えろ!
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まさか俺が掘り当てたレア鉱石がすべてギトスに搾取されていたなんてな。
奴自身からそう教えられた時、正直なところ怒りで我を忘れそうだった。
だけど抑えろ俺。
その怒りは正しい形で復讐するための原動力にするんだ。
この調子だと、ルルイとヤームに渡した素材分もハネられているのだろう。
だったら二人の失望分も存分に含めてやらにゃあな……!
「――という訳だ。すまん、ウーティリスの服はこれくらいしか買えなかった」
「むう、これではまるで奴隷らのう……」
しかし現状はどうにも資金がない。
ウーティリスには薄汚れた布一枚で作った服しか用意できなかった。
これだけでもしめて三五〇ルカ、俺にとっては奮発したようなものだ。
これでは準備もままならないな。
やはり今は地道に稼いでいくしかないか。
「いやいやー、そうでもないぞラングよ」
「どういう事だ?」
「お金など不要なのら。そなたの力があれば大体どうにかなろう」
「そういうものなのか……?」
「うむ。まぁ今はわらわに身をゆだねるのらぁ♡ ぐっひひひ!」
「その不安になる言い方どうにかならない?」
言い方はともかく、ウーティリス本人はしっかりとやる気らしい。
何か策を考えているのか、奥の寝室へと向かうと俺を呼び込んできた。
オイオイ、まさか本当に怪しい事を考えているんじゃなかろうな?
でも今はウーティリスを信じてついていく。
すると彼女がどこからともなく小型掘削具のピッケルを取り出していて。
「今はこれくらいでもよかろう」
「お、おう? これでどうするんだ?」
「話は簡単なのら。今すぐこの直下に向けて穴を掘るのら」
「な、なにぃ……!?」
そんな道具を俺に渡し、とんでもない事を言い放ちやがった。
いや待て待て、直下に穴を掘るだって!?
そんな事したら大変な事態になりかねないぞ!?
なにせこの街〝ワイスレット〟はこの国で二番目に規模が大きい。
商業都市としても盛んで、人が多いから設備投資にも力が入っている。
おかげで地下には無数の水路などもしっかり整っているんだ。
俺でも住めるこんなボロ屋にさえ下水が通っているくらいにな。
もしそんなところをガツンとやったら最悪、この家が汚水まみれだぞ!?
「ふふふ、そなたはまだ無限穴掘りを過小評価しておるのう?」
しかしウーティリスはそれでもなお余裕。
俺へいじらしい笑みを向けてくるほどに。
「ま、まさか……それも避けられるのか!?」
「当然なのら! まぁまずは手伝ってやるから道具を持って集中してみぃ!」
「わ、わかった!」
彼女がこういうなら嘘ではないのだろう。
だったら俺はそれを信じてやるだけだ。
そこでまず俺がピッケルを片手で掲げてみせる。
するとウーティリスが俺の背後から腕を回し、腰にギュッと抱き着いてきた。
『まずは目を瞑り、地下に意識を向けよ』
わかった。
まだ何も見えない地下へ、意識を集中――ッ!!
『いいぞ、その調子なのら。次にスキルを使う事を意識せよ』
よし……俺は掘るぞ、スキルよ応えろっ!
――きた! ビジョンが見える!
地下にあるものすべてが、俺の意識に投影されていくぞ!?
網目状に広がった地下施設がすべて!!!
『まだなのら。まだまだ集中し、先を見通せ、掘り進みたいその先を!』
そうだ、まだ距離も感覚でしかわからない。
俺からの一方的な視線でしか見えていないんだ。
だったらスキルの力で立体投影してやる!
――おお、見える、見えるぞ!?
地下構造の全体図が、すべて立体的になって見える!
その深さも、どこまで続くのかも手に取るように!
そうして見る事でやっと把握した。
俺が掘り進むべきその先が!
『なれば穿て。その力が届くべきと見据えし叶望へと!』
ウーティリスの声に反応し、俺は一心に道具を奮った。
床に向けて直下に、その尖った先端を打ち付けるようにして。
そうして目を見開いた瞬間、すでに穴はあった。
しかも真っ直ぐと地下に続いている。
スキルのおかげなのか、その先までしっかりと見えているのだ。
当然ながら、地下水路などをすべて避けて。
「よくできたのう。上等なのら」
「でも、どうなっているんだこれ? この真下には大きな水路があるはずなんだが」
「なぁに、空間を歪めて掘ったに過ぎぬよ」
「ど、どういう事それ……?」
「まぁ平たく言うと『何も無い場所へと空間転移する穴を掘った』という訳なのら」
正直、自分でやっておいてなんだが驚いた。
そんな魔法じみた事ができるなんて思ってもみなくて。
「今回はイメージしやすく地下に向けたが、習熟すれば方向に定まらず掘る事ができるようになるのら」
「すさまじいな、無限穴掘り……」
「まぁさすがに距離を短縮することまでは叶わぬがのう」
「それでも充分だ。俺にとっちゃ魔法みたいなもんに変わりはないからな」
こんな驚くべき事を叶えてしまうのがスキルってやつなんだな。
たしかに、ここまでできると職業補正なんて些細にすら感じるよ。
今まで魔法使いなんて興味はなかったが、これはなかなか面白いと思う。
「んでは次のステップ行ってみるのら~!」
「おおーっ!」
しかしウーティリスの作戦はまだまだ始めたばかり。
これから一体どんな事をさせるつもりなんだろうな!
※叶望は本作の造語となります。
意味は「見る事の叶うべき景色」。手が届かなさそうで実は届く場所の事を示しています。
奴自身からそう教えられた時、正直なところ怒りで我を忘れそうだった。
だけど抑えろ俺。
その怒りは正しい形で復讐するための原動力にするんだ。
この調子だと、ルルイとヤームに渡した素材分もハネられているのだろう。
だったら二人の失望分も存分に含めてやらにゃあな……!
「――という訳だ。すまん、ウーティリスの服はこれくらいしか買えなかった」
「むう、これではまるで奴隷らのう……」
しかし現状はどうにも資金がない。
ウーティリスには薄汚れた布一枚で作った服しか用意できなかった。
これだけでもしめて三五〇ルカ、俺にとっては奮発したようなものだ。
これでは準備もままならないな。
やはり今は地道に稼いでいくしかないか。
「いやいやー、そうでもないぞラングよ」
「どういう事だ?」
「お金など不要なのら。そなたの力があれば大体どうにかなろう」
「そういうものなのか……?」
「うむ。まぁ今はわらわに身をゆだねるのらぁ♡ ぐっひひひ!」
「その不安になる言い方どうにかならない?」
言い方はともかく、ウーティリス本人はしっかりとやる気らしい。
何か策を考えているのか、奥の寝室へと向かうと俺を呼び込んできた。
オイオイ、まさか本当に怪しい事を考えているんじゃなかろうな?
でも今はウーティリスを信じてついていく。
すると彼女がどこからともなく小型掘削具のピッケルを取り出していて。
「今はこれくらいでもよかろう」
「お、おう? これでどうするんだ?」
「話は簡単なのら。今すぐこの直下に向けて穴を掘るのら」
「な、なにぃ……!?」
そんな道具を俺に渡し、とんでもない事を言い放ちやがった。
いや待て待て、直下に穴を掘るだって!?
そんな事したら大変な事態になりかねないぞ!?
なにせこの街〝ワイスレット〟はこの国で二番目に規模が大きい。
商業都市としても盛んで、人が多いから設備投資にも力が入っている。
おかげで地下には無数の水路などもしっかり整っているんだ。
俺でも住めるこんなボロ屋にさえ下水が通っているくらいにな。
もしそんなところをガツンとやったら最悪、この家が汚水まみれだぞ!?
「ふふふ、そなたはまだ無限穴掘りを過小評価しておるのう?」
しかしウーティリスはそれでもなお余裕。
俺へいじらしい笑みを向けてくるほどに。
「ま、まさか……それも避けられるのか!?」
「当然なのら! まぁまずは手伝ってやるから道具を持って集中してみぃ!」
「わ、わかった!」
彼女がこういうなら嘘ではないのだろう。
だったら俺はそれを信じてやるだけだ。
そこでまず俺がピッケルを片手で掲げてみせる。
するとウーティリスが俺の背後から腕を回し、腰にギュッと抱き着いてきた。
『まずは目を瞑り、地下に意識を向けよ』
わかった。
まだ何も見えない地下へ、意識を集中――ッ!!
『いいぞ、その調子なのら。次にスキルを使う事を意識せよ』
よし……俺は掘るぞ、スキルよ応えろっ!
――きた! ビジョンが見える!
地下にあるものすべてが、俺の意識に投影されていくぞ!?
網目状に広がった地下施設がすべて!!!
『まだなのら。まだまだ集中し、先を見通せ、掘り進みたいその先を!』
そうだ、まだ距離も感覚でしかわからない。
俺からの一方的な視線でしか見えていないんだ。
だったらスキルの力で立体投影してやる!
――おお、見える、見えるぞ!?
地下構造の全体図が、すべて立体的になって見える!
その深さも、どこまで続くのかも手に取るように!
そうして見る事でやっと把握した。
俺が掘り進むべきその先が!
『なれば穿て。その力が届くべきと見据えし叶望へと!』
ウーティリスの声に反応し、俺は一心に道具を奮った。
床に向けて直下に、その尖った先端を打ち付けるようにして。
そうして目を見開いた瞬間、すでに穴はあった。
しかも真っ直ぐと地下に続いている。
スキルのおかげなのか、その先までしっかりと見えているのだ。
当然ながら、地下水路などをすべて避けて。
「よくできたのう。上等なのら」
「でも、どうなっているんだこれ? この真下には大きな水路があるはずなんだが」
「なぁに、空間を歪めて掘ったに過ぎぬよ」
「ど、どういう事それ……?」
「まぁ平たく言うと『何も無い場所へと空間転移する穴を掘った』という訳なのら」
正直、自分でやっておいてなんだが驚いた。
そんな魔法じみた事ができるなんて思ってもみなくて。
「今回はイメージしやすく地下に向けたが、習熟すれば方向に定まらず掘る事ができるようになるのら」
「すさまじいな、無限穴掘り……」
「まぁさすがに距離を短縮することまでは叶わぬがのう」
「それでも充分だ。俺にとっちゃ魔法みたいなもんに変わりはないからな」
こんな驚くべき事を叶えてしまうのがスキルってやつなんだな。
たしかに、ここまでできると職業補正なんて些細にすら感じるよ。
今まで魔法使いなんて興味はなかったが、これはなかなか面白いと思う。
「んでは次のステップ行ってみるのら~!」
「おおーっ!」
しかしウーティリスの作戦はまだまだ始めたばかり。
これから一体どんな事をさせるつもりなんだろうな!
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