上 下
10 / 148
第二章 逆襲のダンジョンブレイク編

第10話 こんな理不尽な事ってないだろう!

しおりを挟む
 いやぁ~この間は実に痛快だった。
 レア鉱石をたくさん持ち寄った時の監視者どもの驚き顔ったらもう!
 俺がズンズンズンとブツを渡すたびに顎が外れそうになっていたぜ!

 それでもって彼等が詐称を働く事はない。
 監視者はいわば真偽を証明する力を有していて、それは自身にも効いてしまう。
 それなのでちょろまかそうものなら自分自身に罰を与えなくてはならなくなるんだ。

 だから報酬授与日の今日が待ち遠しくてたまらなかった!
 一体いくらぐらい貰えるのかってなぁ!

 ……だったのだが。

「なにぃぃぃ!? たったの一七〇〇ルカだとおおおおおお!!?」

 俺は驚愕の金額を前にして、つい受付前で咆えてしまった。
 おかげで受付嬢のナーシェさんがビックリしてしまっている。

「一七〇〇っておぉい、平均採掘報酬の二回分程度じゃんか!?」
「え、ええ、そうですよね……」
「内訳見た!? 激レア鉱石山盛りだっただろ!? 豪邸建てられる量よ!?」
「は、はい、しっかりと……」

 当然ながら末端員であるナーシェさんに罪はない。
 それに本来ならこんなに責め立てたくもない。
 彼女は俺達ハーベスターにも理解を寄せてくれる数少ない一人だし。
 ついでにピンクの短髪で大人しく仕草が可愛い俺達の希望の星だしィ!!!!!

 しかし咆えずにもいられない。
 あまりにも非常識な報酬額をこう目の当たりにしてしまえば。

「あのね、ゼロが二~三個ほど足りないと思うんだけど?」
「私も変だとは思いますが、これがギルドの出した結論でして……」
「でも一年前にナザロがオリハルコン鉱一個当てて家建てたよね? たしかあの時は八九万とかもらってたと思うけど?」
「ええ、そうでしたよね……やっぱり変、ですよね」

 そうしたらナーシェさんが「スッ」と内訳明細書を出してくれた。
 そこにはしっかりとレア鉱石の名が連なっていて、嘘ではない事がわかる。
 監視者達も偽りなく仕事しているってハッキリわかったよ。

 だが個々の価格設定がおかしい!
 なんなんだ、普通の鉄鉱と価格差がほとんどないじゃねぇか!?

「うるさいですよラング=バートナー!」
「うげっ!? 来やがったか鉄面皮メガネ!?」
「ここはあなたのようなケダモノが咆えていい場所ではありません!」

 しかも唸っている間に苦手な奴がやってきやがった。

 勇者達を相手にする上級受付嬢、レトリー=グレビュール!
 いちいち俺に突っかかり、蔑んで見下してきやがる!
 今もメガネをクイクイしまくってイライラを隠しきれていねぇ!

「ナーシェ=アラーシェ、少し彼等に甘くはありませんか? しっかり押し通しなさい」
「は、はい、申し訳ありません……」
「よろしいか、ラング=バートナー?」
「お、おう……」
「近年は勇者がたの活躍が著しく優秀であり、我々ギルド側の保証が間に合っておりません。ゆえにより公平に対価を支払うために物価レートを調整したのですよ」
「だからってゼロが一つ二つ減るのはおかしくないか!?」
「おだまりなさい、ハーベスター如きが調子に乗るなどおこがましい! 我々ギルドがなければ物の売買すら許されない存在でしょうに!」
「うぐっ……」

 やはりコイツは嫌いだ。
 勇者と同じで俺達を見下し、その上でこうしてゴリ押ししてくるから。

 嫌な目だよ、まったく。
 まるで汚物を見ているかのように冷徹で。

「……すまなかったなナーシェさん。ひとまず報酬は受け取っておくよ」
「はい、期待に応えられず申し訳ありません、ラングさん」
「ケダモノになど謝らなくてもよろしい」
「ちぃ、うるさいよ鉄面皮メガネ」

 他のハーベスターにはほぼ無視をキメてくるのにな。
 どうして俺にだけ絡んでくるんだろうな。本ッ当にメンドクサイ奴だ。

 ……しっかし、これからどうするか。

 たった一七〇〇じゃロクに服も買えやしない。
 せっかくウーティリスに「帰りに豪華な服でも買ってきてやろう!」だなんて豪語したのに、ホント情けない話だよ。
 あいつが今も家で期待していると思うと心苦しくてたまらん。

 ああーどこかにまたレア鉱石転がって無いかなぁ~……。

「やぁ~ラング、随分としみったれているじゃあないか?」
「うっ!?」

 しかし幸運なんてそう落ちている訳がなく。
 それどころかこの街には不幸ばかりがこぞってやってきやがる!

 ギトス=デルヴォ……!
 またお前かよ! しかもご丁寧に仲間まで引き連れて!

「どうしたぁ? お給金が少なくて泣きべそでもかいていたのかなぁ~?」
「え、ええ、はい、まぁそんなところ、です」
「ハハハ! さすがハーベスター、情けない話だなぁ!」
 
 こっちが下手に出ているのを良い事に、勇者達総出で笑ってくる。
 いちいち人を笑いものにしないといけないのか、お前達は……!

「そうそう、聞いてくれよラングゥ! 最近装備の調子がよろしくなくてね。そこでちょっとギルドに都合してもらえないか聞いたらさぁ、『たまたま』レア鉱石がたくさん仕入れられたっていうじゃないかぁ!」
「ッ!?」
「だからA級特権って奴でね、安く譲ってもらったんだ。見ろよこの上鎧を! ミスリルをベースに、オリハルコンと輝金で装飾を施したんだ。あとこの剣もすごいだろう? ミルゴタイトをふんだんに使って、マルキオンジュエルに魔導錬成をほどこして魔剣に仕立ててもらったのさ」

 な、なんだと!?
 それは、まさかっ!?

「あ~君にそんな事を言っても価値なんてわからないよね? だってハーベスターだもんなぁ」
「「「ははは!」」」

 わからない訳がない!
 知らない訳がない!

 キサマの装備は、俺が納品した素材でできているんだからなッ!

 そうか、そういう事かよ。
 おかげで報酬の少ない理由がよぉくわかったよ……!

 コイツだ!
 コイツがちょろまかしたんだ!
 勇者特権とかいうモノを利用して俺の稼ぎを打ち消しやがった!

 そしてそれをあからさまにひけらかしに来た。
 それはつまり確信犯なんだ。

 ギトスは「俺の報酬を横取りした」って堂々と自慢しにきたって事かよぉ……ッ!

「じゃあそういう訳だから。まぁせいぜい掘りまくっててくれよ。僕達のためにね」
「「「あばよラングゥ、ギャハハハ!」」」
「くっ……!」

 悔しい! 悔し過ぎる!
 俺達は結局何をしても奴らに搾取されるだけなのか!?
 いくらがんばっても報われないのか!? たとえ神のスキルがあったとしても!

 ……いや、そんな訳がない。
 俺のスキルにはまだ可能性が秘められているハズだ。
 まだ何もしていないし、始めようとさえしていないんだからな。

 だったら、今度はもう失敗しない!

 見てろよギトス。
 お前達をいつか見返してやるぞ。
 暴力でも詐欺でもなく、お前がやれと言った「掘る事」だけでなぁ……っ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

視力0.01の転生重弩使い 『なんも見えんけど多分味方じゃないからヨシッ!』

ふつうのにーちゃん
ファンタジー
転生者グレイボーンは、前世でシュールな死に方をしてしまったがあまりに神に気に入られ、【重弩使い】のギフトを与えられた。 しかしその神は実のところ、人の運命を弄ぶ邪神だった。 確かに重弩使いとして破格の才能を持って生まれたが、彼は『10cm先までしかまともに見えない』という、台無しのハンデを抱えていた。 それから時が流れ、彼が15歳を迎えると、父が死病を患い、男と蒸発した母が帰ってきた。 異父兄妹のリチェルと共に。 彼はリチェルを嫌うが、結局は母の代わりに面倒を見ることになった。 ところがしばらくしたある日、リチェルが失踪してしまう。 妹に愛情を懐き始めていたグレイボーンは深い衝撃を受けた。 だが皮肉にもその衝撃がきっかけとなり、彼は前世の記憶を取り戻すことになる。 決意したグレイボーンは、父から規格外の重弩《アーバレスト》を受け継いだ。 彼はそれを抱えて、リチェルが入り込んだという魔物の領域に踏み込む。 リチェルを救い、これからは良い兄となるために。 「たぶん人じゃないヨシッッ!!」 当たれば一撃必殺。 ただし、彼の目には、それが魔物か人かはわからない。 勘で必殺の弩を放つ超危険人物にして、空気の読めないシスコン兄の誕生だった。 毎日2~3話投稿。なろうとカクヨムでも公開しています。

愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する

清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。 たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。 神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。 悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。

転移先は勇者と呼ばれた男のもとだった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
 人魔戦争。  それは魔人と人族の戦争。  その規模は計り知れず、2年の時を経て終戦。  勝敗は人族に旗が上がったものの、人族にも魔人にも深い心の傷を残した。  それを良しとせず立ち上がったのは魔王を打ち果たした勇者である。  勇者は終戦後、すぐに国を建国。  そして見事、平和協定条約を結びつけ、法をつくる事で世界を平和へと導いた。  それから25年後。  1人の子供が異世界に降り立つ。      

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...