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第一章 神との邂逅編

第7話 掘れ、すべてを掘り尽くせ

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 俺のハーベスター仲間で友人でもあるルルイとヤーム。
 二人に危険が迫っているとなったら助けに行くしか道は無い。
 これがただの気のせいだったなら万々歳だ。

 だが、どうやら悪い予感は当たってしまったらしい。

「どうだ、おるか?」
「ああ、ウーティリスの感じた通りだ、クソッ!」

 その予感の通りにルルイ達の進んだ方へと行けば、すぐに遭遇できた。
 ルルイとヤームに迫り、怒号を浴びせる勇者二人の姿があったのだ。

「どう落とし前つけてくれるんだあぁ~ん!? テメェ人前で俺達勇者に恥かかせてくれてよぉ~!?」
「そうだぜぇ? たかがハーベスター如きが俺達に逆らう意味がまだわかっちゃいないようだなぁ、おぉルルイくぅ~ん?」

 しかしどうやらまだ邂逅してそれほど経っていないらしい。
 二人とも剣は抜いているが、暴力には至っていないようだ。

 ちなみに俺はまだ通路の影に隠れたまま。
 ルルイがどう出るか見定めなければならないからな。
 下手に俺が出ていってこじらせてしまえば意味がない。

「本当に申し訳ありません。私達がいたらぬばかりに勇者様の気を悪くしてしまいました。心よりお詫び申し上げます……」

 案の定、ルルイとヤームは土下座して事の解決を図っていた。
 俺達にはもう守るプライドも何もないからな、土下座するなんて慣れっこだ。

 ただ、これで済むかどうかは怪しいが。

「はははっ、無様だぜぇ! ハーベスターがまた土を舐めてらぁ!」
「当たり前だぜ、こいつらは土が好きでお似合いだから採掘士になんてなったのさ」

 実際には詫びだけで済む事も多い。
 特に街中でなら人の目もあるからと、勇者達もある程度は大人しいもので。

 しかしダンジョンの中では違う。

 ここでは法律も倫理も人権さえも無視される。
 ダンジョン内で起きた事はすべて「事故」と処理され、一方的に人を殺めてしまっても殺人罪にはならないんだ。
「魔物の残党に殺された」とでも言ってしまえばいいのだからな……!。 

「ですからどうか命だけはお助けくださいっ!」
「お願いいたします……!」
「ああ~どうしようかなぁ~ボクチャンまだ腹の虫が収まらないなぁ~!?」
「そうだなぁ! まぁどうせハーベスターなんて吐いて捨てるほどいるし、一人くらい減ったって別にかまやしないだろぉ!?」

「奴ら、ずいぶんと好き勝手言っとるな。なんで奴らは見下しておるのら? 採掘士も勇者も人に違いないであろう」
「そういう差別が今の世の中にあるんだ。勇者は最上位で、俺達は最下位。だから何をされても文句は言えないってな」
「つか勇者ってなんなのら。冒険者ではないんかー」

 それは俺も知りたい。
 俺は勇者を「人々を助け、守る英雄」と聞いて育って来たのだから。
 けど都会に出て初めて横暴的な奴らだと知ったんだ。

 それを神が知らないというなら、俺だってわかりはしない。

「で、ではどうしたら許していただけますかっ!?」
「そうだなぁ、じゃあテメェはそこでじっとしてろ」
「えっ?」
「俺達がそっちの女で楽しむ所をじっと耐えて待ってろってんだボケェ!」
「そ、そんなっ!? それだけはっ!?」
「いいのですルルイ、私が犠牲になればそれで済むのですから!」
「ぐうう~~~!」

 くっ、どうする、どうすればいい!?
 このまま放っておけばヤームが襲われてしまう!

 だが、ここまできて俺の足もが動かないなんて……!

 俺の心で、ギトスが刻んだトラウマが叫ぶのだ。
 行けばまたあのような目に遭うと。
 このまま放っておいても二人が死ぬ事は無いのだと。

 そうなる確証もないのに、勇気が、出ないッ!!!

「ラング、そなたの心は随分と傷だらけらのう」
「ううっ……!」
「ならばわらわがその心をほんの少し、癒してしんぜよう?」
「えっ?」

 するとウーティリスが背後でこう呟き、俺の首筋に吐息を当ててくる。
 そうして感じる間も無く、彼女の小さな指が俺の耳をそっとつまんだ。

 さらには俺の後頭部にこつりと、温かい何かが当たった感じがした。
 それと共に、彼女の穏やかな心の声が聞こえてくる。

『安心せよ、そなたは強い。脆弱な彼奴らなどになど負けはせぬ』

 どうしてそう言いきれる?

『わらわが与えた力は無敵なのら。職など気にならぬほどに』

 それがスキルの力なのか?

『さよう。職の能力差さえ補い、持ち主の願いを叶えるのがスキルゆえ』

 だったら俺の力でも勇者を倒せるのか?

『否』

 ではどうできる!?
 俺はどうしていい!?



『掘れ。すべてを掘り尽くせ。それがそなたに与えられし力の宿命ぞ』



 ……ウーティリスの心が、想いが声と後頭部を通して伝わってくる。
 俺にできない事は無い、この状況を打破できるのだとひしひしに。

 そのおかげで俺は今、奴らに姿をさらす事ができていたのだ。
 ヤームを襲わせる訳にはいかないと、ただその一心で一歩を踏み出して。
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