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第四章
第三十五話 人成り修行
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「おはよう坊主。さぁ早速はじめるとするかい……!」
僕にもまだ人に戻れる希望がある。
そう知った僕は昨日、お婆さんにとある頼みごとをした。
それでその翌日の今、遂にその頼みごとを実践してくれる事になったんだ。
「じゃあまずは生垣付近にある石を集めな! でも後で戻すからね、配置を忘れるんじゃないよ!」
「サーイエッサー!」
でも教えてもらうのは力仕事でもあるからね、当然僕が全てやる必要がある。
なので言われた通り、生垣下に並べられた石を素早く運んで戻ったり。
それでようやく火を起こせそうな小さな囲いが造れた。
「次は庭に散った枯れ木を集めるんだ! 綺麗にするつもりでやんな!」
「サーイエッサァー!」
それで更には庭中を歩き回って枯れ葉や枯れ木をごっそり持ってくる。
もうすぐ冬だからね、集めるのに申し分ないくらいあったよ。
メルーシャルワでもこんな季節に準じた場所があるんだなぁって驚きつつ。
「即席かまどに火を付けな! そして鍋を置くんだ!」
「サーイエッサー! ……僕、鍋もってません!」
「余ったのをくれてやるから安心をし!」
そうして集めた火種を囲いに積み、バーナーで火を付ける。
コツは一気に燃やさず、ちょっと下の方に火を付けるだけでいいみたい。
あとはお婆さんが持ってきていた鍋を置き、セッティング完了だ。
「いいかい、使う水は綺麗さが命だ! もし濁った水を使うなら、今この瓶に入ってくる水くらいの透明度になるまでろ過しな!」
「サ、サーイエッサー!」
更にはお婆さんが持って来ていた水ビンをしっかりと目に焼き付ける。
ついでに、ビンの上に備えられたろ過器の構造もね。
「こいつを注いで、煮沸だ! 飲み水にするなら一度煮立つまで焚いてから冷やして飲むんだ! 生水は絶対に飲んじゃあダメだよ!」
「イエッサァァァーーー!!」
人は水を飲むときにも気を付けなければいけないみたい。
お腹を壊したり、時には虫を取り込んでしまうようで。
これを教わらなかったら後が怖かったなぁ。
「次に具材の投入だ! 本当なら買う方が安全だが、それができないなら野生の物を身繕える知識を得るんだ! 詳しい話は後で教えてやる!」
「シャーイエッシャー!!!」
「ここじゃキノコがいい! そこでこの出汁大茸を投入だ! これで味わい深くなるよ!」
次のステップも重要だ。
なにせ僕が最も知るべき部分がようやく出て来るんだから。
そうか、森にはキノコが生えているんだった!
その事を忘れていたから気付けなかったんだな。
「よく出汁が取れたら肉を投入だ! いいかい、獣を狩ったらすぐに血抜きしな! その為の道具は渡してやる!」
「サ、サー! その道具は怖いので後で実践願います!」
今度はコンテナちゃんが目を輝かせる食材が遂に投入だ。
最初は血生臭さそうなビジュアルだった肉も、茹った鍋の中ですぐ煮えた。
なるほど、こうして人が食べれる様になるんだな。
「後は追って野菜、山菜やらの具材と調味料と加えていく! いいかい、調味料は濃すぎないようにするんだよ! 強い塩分は子どもの大敵だからね!」
「サァァァイエッサァァァーーーーーーッッ!!!!!」
そして色とりどりの野菜達が投入され、鍋が一気に豪勢に。
野菜はできるだけシャキシャキがいいので後で入れるんだって。
あ、でも根菜は出汁と一緒に入れた方がいいみたいだ。
「そんで煮込んだのを待てば簡単煮込み鍋の完成だ。これで大体その場はしのげるはずさ。水分と栄養を一気に採れるからね」
「おお……」
「おいしそー!」
こんなプロセスを経て、遂に料理が完成する。
コンテナちゃんがすごく目を輝かせているのできっと美味しいはずだ。
よし、これでひとまず料理の仕方を覚えたぞ!
――そう、僕はお婆さんに食事を得る方法を教えてもらったんだ。
そこまで記憶が戻るのを待ってなんていられないからね。
だからこうして実践してもらい、強制的に思い出す事にしたのさ。
それだけじゃない。
夜の間には用意してもらった食材辞典を完読し、食べ物の知識も得た。
おかげで、今なら見るだけで食べれるかどうか見分けられる自信がある!
機械的に覚えられるからね、記憶するのは得意なんだ。
「さて、まだまだ教える事はたくさんある。腹ごしらえしながら少しづつ教えて行くよ」
「はい、お願いします!」
「ただしあと半日だけだ。それ以上はお前達じゃここにはいられないからね」
「? まぁ僕としてはもうこれだけで充分なくらい満足していますよ」
「だがまだ足りない。人が生きるっていうのはそう簡単な事じゃないのさ。その不足分をこれから一気に詰め込んでやる」
それでも一夜漬けでどうにかなる話じゃあなかった。
見せてもらってわかる事も多いから。
だからこうしてお婆さんが自ら動いてくれたんだ。
本当にお年寄りなのかって思えるくらいパワフルだったけどね!
こうして僕はこの後、生活の知恵を徹底的に叩きこまれた。
サバイバルな生活手段から、人と出会った時の対処法も。
コンテナちゃんも加わえて一緒に学んだりもして。
おかげで半日、僕はたったそれだけで生活への自信を付ける事ができたんだ。
まぁ、調子に乗って「魔法も教えて」とお願いしたらキッパリ断られたけどね。
やっぱりヴァルフェルだと魔法習得は厳しかったかな……。
僕にもまだ人に戻れる希望がある。
そう知った僕は昨日、お婆さんにとある頼みごとをした。
それでその翌日の今、遂にその頼みごとを実践してくれる事になったんだ。
「じゃあまずは生垣付近にある石を集めな! でも後で戻すからね、配置を忘れるんじゃないよ!」
「サーイエッサー!」
でも教えてもらうのは力仕事でもあるからね、当然僕が全てやる必要がある。
なので言われた通り、生垣下に並べられた石を素早く運んで戻ったり。
それでようやく火を起こせそうな小さな囲いが造れた。
「次は庭に散った枯れ木を集めるんだ! 綺麗にするつもりでやんな!」
「サーイエッサァー!」
それで更には庭中を歩き回って枯れ葉や枯れ木をごっそり持ってくる。
もうすぐ冬だからね、集めるのに申し分ないくらいあったよ。
メルーシャルワでもこんな季節に準じた場所があるんだなぁって驚きつつ。
「即席かまどに火を付けな! そして鍋を置くんだ!」
「サーイエッサー! ……僕、鍋もってません!」
「余ったのをくれてやるから安心をし!」
そうして集めた火種を囲いに積み、バーナーで火を付ける。
コツは一気に燃やさず、ちょっと下の方に火を付けるだけでいいみたい。
あとはお婆さんが持ってきていた鍋を置き、セッティング完了だ。
「いいかい、使う水は綺麗さが命だ! もし濁った水を使うなら、今この瓶に入ってくる水くらいの透明度になるまでろ過しな!」
「サ、サーイエッサー!」
更にはお婆さんが持って来ていた水ビンをしっかりと目に焼き付ける。
ついでに、ビンの上に備えられたろ過器の構造もね。
「こいつを注いで、煮沸だ! 飲み水にするなら一度煮立つまで焚いてから冷やして飲むんだ! 生水は絶対に飲んじゃあダメだよ!」
「イエッサァァァーーー!!」
人は水を飲むときにも気を付けなければいけないみたい。
お腹を壊したり、時には虫を取り込んでしまうようで。
これを教わらなかったら後が怖かったなぁ。
「次に具材の投入だ! 本当なら買う方が安全だが、それができないなら野生の物を身繕える知識を得るんだ! 詳しい話は後で教えてやる!」
「シャーイエッシャー!!!」
「ここじゃキノコがいい! そこでこの出汁大茸を投入だ! これで味わい深くなるよ!」
次のステップも重要だ。
なにせ僕が最も知るべき部分がようやく出て来るんだから。
そうか、森にはキノコが生えているんだった!
その事を忘れていたから気付けなかったんだな。
「よく出汁が取れたら肉を投入だ! いいかい、獣を狩ったらすぐに血抜きしな! その為の道具は渡してやる!」
「サ、サー! その道具は怖いので後で実践願います!」
今度はコンテナちゃんが目を輝かせる食材が遂に投入だ。
最初は血生臭さそうなビジュアルだった肉も、茹った鍋の中ですぐ煮えた。
なるほど、こうして人が食べれる様になるんだな。
「後は追って野菜、山菜やらの具材と調味料と加えていく! いいかい、調味料は濃すぎないようにするんだよ! 強い塩分は子どもの大敵だからね!」
「サァァァイエッサァァァーーーーーーッッ!!!!!」
そして色とりどりの野菜達が投入され、鍋が一気に豪勢に。
野菜はできるだけシャキシャキがいいので後で入れるんだって。
あ、でも根菜は出汁と一緒に入れた方がいいみたいだ。
「そんで煮込んだのを待てば簡単煮込み鍋の完成だ。これで大体その場はしのげるはずさ。水分と栄養を一気に採れるからね」
「おお……」
「おいしそー!」
こんなプロセスを経て、遂に料理が完成する。
コンテナちゃんがすごく目を輝かせているのできっと美味しいはずだ。
よし、これでひとまず料理の仕方を覚えたぞ!
――そう、僕はお婆さんに食事を得る方法を教えてもらったんだ。
そこまで記憶が戻るのを待ってなんていられないからね。
だからこうして実践してもらい、強制的に思い出す事にしたのさ。
それだけじゃない。
夜の間には用意してもらった食材辞典を完読し、食べ物の知識も得た。
おかげで、今なら見るだけで食べれるかどうか見分けられる自信がある!
機械的に覚えられるからね、記憶するのは得意なんだ。
「さて、まだまだ教える事はたくさんある。腹ごしらえしながら少しづつ教えて行くよ」
「はい、お願いします!」
「ただしあと半日だけだ。それ以上はお前達じゃここにはいられないからね」
「? まぁ僕としてはもうこれだけで充分なくらい満足していますよ」
「だがまだ足りない。人が生きるっていうのはそう簡単な事じゃないのさ。その不足分をこれから一気に詰め込んでやる」
それでも一夜漬けでどうにかなる話じゃあなかった。
見せてもらってわかる事も多いから。
だからこうしてお婆さんが自ら動いてくれたんだ。
本当にお年寄りなのかって思えるくらいパワフルだったけどね!
こうして僕はこの後、生活の知恵を徹底的に叩きこまれた。
サバイバルな生活手段から、人と出会った時の対処法も。
コンテナちゃんも加わえて一緒に学んだりもして。
おかげで半日、僕はたったそれだけで生活への自信を付ける事ができたんだ。
まぁ、調子に乗って「魔法も教えて」とお願いしたらキッパリ断られたけどね。
やっぱりヴァルフェルだと魔法習得は厳しかったかな……。
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