上 下
38 / 41
第一三話

13-1

しおりを挟む


 皆さまこんにちは、司会天使のパプリエルです。

 いきなりですが、ここで問題です。
 異世界物語における癒しと言ったら何でしょう?

 華やかで可愛い女の子? それとも現実に無い不思議な景色?
 もしかして手に汗握る熱血バトルですか?
 いいえ、いずれも違います。

 異世界の癒し、それはすなわち――パートナー獣モフモフです。

 異世界には多くの獣型生物が存在します。
 それも霊獣、聖獣、幻獣、神獣などなど、只の動物とは異なる者達が。

 いずれも世界の一部として営みを築き、転行者とも関わります。
 中には使役するなんて事も。
 そんな理由で多くの世界にて親しまれているのではないでしょうか。

 という訳で。
 本日はとある世界より、その獣さん方一同をゲストにお迎えしております。

 え、言葉がわからないんじゃないか?
 いいえ、そんな事はございません。

 本スタジオ界には高性能の自動翻訳機能が備えられておりまして。
 たとえどの様な言語であろうと一瞬にして翻訳する事が可能なのです。
 今までのゲスト様達も本機能のお陰で話が伝わっていた訳ですね。
 潤沢な企画運営資き――総理大神様の御心のお陰でしょう。

 さぁ早速スタジオが毛玉で溢れてまいりました。
 たくさん来られましたねー。

 毛むくじゃらのネズミさん。
 二足歩行のネコさん。
 お馴染みの月マーク付きイヌさん。
 巨大な大鷲さん、その他諸々。
 クジラさんとかどうやってここまで来れたんです?
 っていうか毛玉扱いでいいの?

 にしても。

 いやーとても癒しに満ちてます。
 この光景を見るだけでこう、キラッキラになれますね。
 今の現場はリラクゼーションの宝庫なのではないでしょうか。

 え、手元のコロコロは何だって?
 気にしないでください今日の幸運アイテムです。

 そんな感じで神聖な獣さま御一行が到着した訳ですが。
 まずはお話をする前に、あるVTRをご覧になって頂きたいという要望を頂いております。

 一体どの様な映像が映っているのでしょうか。
 あ、映像オフの方は音声より雰囲気を感じ取って頂けると幸いです。

 それではVTR、どうぞ。

『僕の名前はリアン。この神獣界に転生で迷い込んだ人間なんだ。生前は重度アレルギーの所為で動物に関わる事が出来なかったけれど、本当は動物がとっても大好きなんだ! だから転生した時、神様にアレルギーを取り除いてもらったよ。これで動物さん達と好き放題にモフモフ出来るね。とっても楽しみだなぁ』

『早速友達が出来たんだ。フェンリルっていう神獣らしいんだけど、とっても人懐っこくて。ほら見て、お腹をモフモフしてあげると(わうわう)とっても喜んでくれるんだぁ! 僕もとっても嬉しいなぁ』

『色んな友達が増えたなぁ。【わたねずみ】さん、【ゆうがねこ】さん、そして一番の友達フェンリルの【いぬきち】さん! 皆とってもいい子達で、僕の頼もしいパートナーさ!』

『あっ、危ない魔物がいる! どうしよう……えっ、【わたねずみ】さん戦ってくれるのかい!? ありがとう!(バリバリー!) おー、さすが神獣は凄いや! 魔物をこんな簡単に倒せちゃうなんて!』

『僕、こんなに一杯のモフモフに囲まれて幸せだなぁ。これならいつまででも楽しく暮らせそう。こんな世界に送ってくれて、神様感謝します』

 以上がゲスト様の用意したVTRです。

 実に朗らかな光景でしたね。
 皆とても生き生きと楽しそうで。
 転行者も願いが叶った様で、さぞ満足した事でしょうね。

 おや、ネズミさんが挙手しています。
 何か語りたいそうですね。
 ではどうぞ。

「そりゃよゥ~お嬢さん、相手方はさぞかし満足だろうよゥ」

 声野ぶとッ!!
 なんかブルァァァとか言えそうな野太さなんですけど!?

 見た目はもっこもこの可愛い手乗りネズミさんなんですけど、ギャップあり過ぎません?

「たりめェだ嬢ちゃん。こちとら何年生きてると思ってんだい。神獣だぜぃ? 最年少の亀公でもたった一万年よゥ。年季が違うってェもんだ」

 そうですよね、神獣ですもんね。
 神の使いとかで、私達天使と同格あるいはそれ以上の存在ですからね。
 ご無礼、大変失礼いたしました。

「まぁ嬢ちゃんは別にかまやしねぇさね。この場に限っちゃそっちが格上よ。そうこの通りィ俺達ゃ格式を重んじるゥ。年功序列、技術能力、はてまた礼節などなど。いたらぬ方が頭を垂れるのは当然の事よ」

 さすが、よくわかってらっしゃいます。
 格式という物は万世共通ですね。神でもありますから。

 特に世界がメジャー化したプロ神。
 彼等は他の神達に崇められ、教えを請われると言います。
 能力という格式を重んじた結果なのでしょう。

「しかしだ!! あの小僧は違ァァァうブルァァァ!! 長生きもしてねぃ!! 敬ってもいねぃ!! だから何が出来る? 神に力をもらっただけじゃあねぇかァァァ!! 小僧自身に何かが出来る訳じゃあねぇ~い!!」

 あ、確かそう言われて見れば。
 それでいきなり友達扱いですもんね。なんと畏れ多い。

「んでこれだ」(ピッ)

『えっ、【わたねずみ】さん戦ってくれるのかい!? ありがとう!』

「あの小僧、こっちの言い分なんざ全く聴きやしねぇ。一方的に意思を押し付けてきやがる。だから呼ぶ時はいつも突然よ。食事中でも、トイレ中でも、女と情事中だろうと所構わず召喚しやがるゥ。しかもどこぞのピ○○○○ッピカピ―――のノリで敵にぶつけやがンだよ。やめろォ、もうすぐ気持ち良くイく所だったんだぞ、どうしてくれんだこのフラストレィショォォォンッッッ!!!!!」

 鬼畜ですね。(笑)

 なるほど、皆さんの世界の転行者は相当にマイペースという訳ですか。
 確かに、今まで紹介してきた方も中々ですが、これに勝るものは無いですね。
 皆さんが頷いていた辺り、なんだかこれだけじゃない気がします。

 おや……?
 いつの間にやらネズミさんの姿がどこかに。お花摘みでしょうか。
 あれネコさん、口元から何か紐みたいなのがぶら下がって……何故、口をモゴモゴさせてるのですか?

「只の癖だにゃ」

 そうですか、癖ですか。
 なら仕方ないですね。

 それでは今回もトークを交えつつ、ゲストの皆さまに失敗談を語って頂きましょう。
 神獣の皆さんと転行者リアンさんの間に起きた事柄とは果たして。

 どうやら相当根深い問題な感じがありそう。
 不幸センサー、とてつもなくビンビンです。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

金眼のサクセサー[完結]

秋雨薫
ファンタジー
魔物の森に住む不死の青年とお城脱走が趣味のお転婆王女さまの出会いから始まる物語。 遥か昔、マカニシア大陸を混沌に陥れた魔獣リィスクレウムはとある英雄によって討伐された。 ――しかし、五百年後。 魔物の森で発見された人間の赤ん坊の右目は魔獣と同じ色だった―― 最悪の魔獣リィスクレウムの右目を持ち、不死の力を持ってしまい、村人から忌み子と呼ばれながら生きる青年リィと、好奇心旺盛のお転婆王女アメルシアことアメリーの出会いから、マカニシア大陸を大きく揺るがす事態が起きるーー!! リィは何故500年前に討伐されたはずのリィスクレウムの瞳を持っているのか。 マカニシア大陸に潜む500年前の秘密が明らかにーー ※流血や残酷なシーンがあります※

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

悪夢買います! 〜夢見の巫女〜

帝亜有花
ファンタジー
アルフはルドと共に情報屋をしながら旅をしていた。とある国の依頼で不死身と噂のあるオルディンの事を調べていると、天啓と呼ばれる力を持ったエルリィスと出会った。 エルリィスは物心ついた時から予知夢を見る事が出来た。 その力を国に利用され、囚われる日々に突如として悪夢を買いたいと言う少年が現れる。

ビジネス トリップ ファンタジー[ 完結]

秋雨薫
ファンタジー
部長に命令された出張の行き先は……ミレジカという異世界だった。 玩具メーカーのDREAM MAKERに勤めて二年目の柊燈(ひいらぎあかり) 出張先は魔法使い、獣人、喋る花、妖精などが住むファンタジーな異世界。 燈は会社の為に創造力を養おうと奮闘するが、ミレジカの不可思議な事件に巻き込まれていくー 2020.2.21 完結しました! 短編更新予定です!

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...