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エタリティ_2
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チュンチュン……バサササッ……
日が昇り、朝が訪れ、小鳥達が起きやらぬ人の意識の外で元気に羽ばたき舞っていく。
そんな中、俺はいつもよりも早く目を覚まし、100円ショップで買えるティーパックの緑茶を啜る優雅な一時を過ごしていた。
点けたテレビには朝のニュースが流れ、土日に起こった出来事等も取り上げられている。 画面に映る女性ニュースキャスターが活舌の良いはっきりとした声で喋り、コメンテーター達と楽しく会話をこなす……そんなニュースを毎朝見るのがさりげない俺の楽しみの一つでもあった。
『先日、鷹峰総理が国会で答弁を行い物議を醸しています』
「またかぁ、この人話題に事欠かないなぁ」
知ったかぶりの言葉を吐きつつ、政治のニュースを見るのも楽しみの一つ。 お陰で半端な政治の話題程度になら食い付く事は出来る。 ちなみに、この事は玲香には知られていない……彼女と語ろうものならあっという間に論破されかねないからだ。
「こうちゃーん!?」
途端聞こえてくる玲香の大声……「何事か!?」と思い、慌てふためきながらカップを机に降ろして玄関へ駆ける。 慌ただしく扉を開けて外に出ると、怒った様な目付きを鋭くした顔付きの彼女が待っていた。
「学校行くよ!!」
「え、ああ……」
ただならぬ彼女のテンションに圧され、手を引かれながら家を後にすると……二人並んで道を歩き始めた。 無言の彼女……その顔はしかめっ面で、見た目からかなりの機嫌の悪さだと伺える。
「どうしたの、俺何か怒らせる事した?」
昨日のデートが気に入らなかったのだろうか? 親に何かを言われたのだろうか? 思考は巡るが答えは出てこない。
だが、彼女の放った言葉はそんな些細な事とは掛け離れた……俺の思考を止める程の一言だった。
「こうちゃん、なんで昨日学校に来なかったの? 呼んでも来なかったし、SNSは繋がらないし」
「え?」
彼女の言った事が何なのか、全く理解出来なかった。
昨日は日曜だし、学校に行く必要も無い。 SNSはそもそもあの後散々やりとりをしただろう。 そう思いポケットからスマートフォンを取り出し画面を見るが……特に異常は無い様に見えた。
「だって昨日は日曜だろ? 一緒にデート行ったじゃんか」
「何言ってるの……? 昨日は月曜で、デート行ったのは一昨日じゃない」
その一言に耳を疑う。
焦りを感じた俺は、手に取ったスマートフォンの画面を改めて眺める。 そこに表示されていた日時は「〇月〇日(火)」……つまり彼女の言う通り、俺は月曜日を「すっとばしていた」事になる。
「え、嘘……ぇえ!?」
「こうちゃん気付いてなかったの?」
「……気付かなかった……」
まさか一日眠り続けていたのだろうか……いくらデートで楽しい時間を過ごして疲れていたとはいえ、丸一日寝るなんて正直信じられなかった。 彼女の言うSNSの件に関しては通知も入っていないので真偽は判らないが。
昨日の記憶が無い事を事細かく説明すると、彼女はどこか疑問を感じる様なふくれっ面を晒しながらも納得してくれた。
「一日寝ちゃうなんて事もあるんだね……なんだ、サボりかと思った」
「サボってる事には変わりないけどさ、それよりも衝撃的過ぎてショックだよ」
だが状況が判ってしまえば後は笑い話にしかならない。 学校をサボった事で成績に響いてしまうのはいざ仕方の無い事ではあるが……やってしまった事を色々と後悔するのは俺の性分では無かった。
幸い、学校の先生には強く怒られはしたものの、彼女の助けもあり……若気の至りという事で大目に見て貰う事が出来た。 持つべき者は理解し合える恋人、と心に染み入る。
それ以外の目立った事も無く……授業を終えて帰路に就く。 先日の事もあるからと、念には念を押され部活を休む事となった俺はその日、玲香と再び顔を合わせる事も無く帰宅し、いつも通りの一日を終えたのだった。
日が昇り、朝が訪れ、小鳥達が起きやらぬ人の意識の外で元気に羽ばたき舞っていく。
そんな中、俺はいつもよりも早く目を覚まし、100円ショップで買えるティーパックの緑茶を啜る優雅な一時を過ごしていた。
点けたテレビには朝のニュースが流れ、土日に起こった出来事等も取り上げられている。 画面に映る女性ニュースキャスターが活舌の良いはっきりとした声で喋り、コメンテーター達と楽しく会話をこなす……そんなニュースを毎朝見るのがさりげない俺の楽しみの一つでもあった。
『先日、鷹峰総理が国会で答弁を行い物議を醸しています』
「またかぁ、この人話題に事欠かないなぁ」
知ったかぶりの言葉を吐きつつ、政治のニュースを見るのも楽しみの一つ。 お陰で半端な政治の話題程度になら食い付く事は出来る。 ちなみに、この事は玲香には知られていない……彼女と語ろうものならあっという間に論破されかねないからだ。
「こうちゃーん!?」
途端聞こえてくる玲香の大声……「何事か!?」と思い、慌てふためきながらカップを机に降ろして玄関へ駆ける。 慌ただしく扉を開けて外に出ると、怒った様な目付きを鋭くした顔付きの彼女が待っていた。
「学校行くよ!!」
「え、ああ……」
ただならぬ彼女のテンションに圧され、手を引かれながら家を後にすると……二人並んで道を歩き始めた。 無言の彼女……その顔はしかめっ面で、見た目からかなりの機嫌の悪さだと伺える。
「どうしたの、俺何か怒らせる事した?」
昨日のデートが気に入らなかったのだろうか? 親に何かを言われたのだろうか? 思考は巡るが答えは出てこない。
だが、彼女の放った言葉はそんな些細な事とは掛け離れた……俺の思考を止める程の一言だった。
「こうちゃん、なんで昨日学校に来なかったの? 呼んでも来なかったし、SNSは繋がらないし」
「え?」
彼女の言った事が何なのか、全く理解出来なかった。
昨日は日曜だし、学校に行く必要も無い。 SNSはそもそもあの後散々やりとりをしただろう。 そう思いポケットからスマートフォンを取り出し画面を見るが……特に異常は無い様に見えた。
「だって昨日は日曜だろ? 一緒にデート行ったじゃんか」
「何言ってるの……? 昨日は月曜で、デート行ったのは一昨日じゃない」
その一言に耳を疑う。
焦りを感じた俺は、手に取ったスマートフォンの画面を改めて眺める。 そこに表示されていた日時は「〇月〇日(火)」……つまり彼女の言う通り、俺は月曜日を「すっとばしていた」事になる。
「え、嘘……ぇえ!?」
「こうちゃん気付いてなかったの?」
「……気付かなかった……」
まさか一日眠り続けていたのだろうか……いくらデートで楽しい時間を過ごして疲れていたとはいえ、丸一日寝るなんて正直信じられなかった。 彼女の言うSNSの件に関しては通知も入っていないので真偽は判らないが。
昨日の記憶が無い事を事細かく説明すると、彼女はどこか疑問を感じる様なふくれっ面を晒しながらも納得してくれた。
「一日寝ちゃうなんて事もあるんだね……なんだ、サボりかと思った」
「サボってる事には変わりないけどさ、それよりも衝撃的過ぎてショックだよ」
だが状況が判ってしまえば後は笑い話にしかならない。 学校をサボった事で成績に響いてしまうのはいざ仕方の無い事ではあるが……やってしまった事を色々と後悔するのは俺の性分では無かった。
幸い、学校の先生には強く怒られはしたものの、彼女の助けもあり……若気の至りという事で大目に見て貰う事が出来た。 持つべき者は理解し合える恋人、と心に染み入る。
それ以外の目立った事も無く……授業を終えて帰路に就く。 先日の事もあるからと、念には念を押され部活を休む事となった俺はその日、玲香と再び顔を合わせる事も無く帰宅し、いつも通りの一日を終えたのだった。
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