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第二章
第80話 戦え魔導勇者!
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まさかこんな事になるとは思わなかったな。
あのクアリオがゴーレムを変質させるなんて。
それもあの手に持つ魔導具のお陰なのか?
だとしたら凄い事だぞ。
ゴーレムを一瞬にして再構築・論理まで書き換えるなんて。
これは例え最上級の魔導士でも不可能な技だろうからな。
しかもこの仕組みは、まるで俺の【輝操術】と同じだ。
恐らく魔動機限定だが、自由に組み替える事が出来るのだから。
きっと父が知ったら大喜びで喰らい付くに違いない。
なにせこの技術は今までに有り得なかった物。
つまり新たな創造力が生まれたって事だからな。
ならその道具を扱えるクアリオはもはや技工士などには収まらない。
名付けるならば――【魔械技師】クアリオ=ノヴ=ヤー=ミスティオ。
これがアイツに相応しい銘だろう。
「クアリオッ! この力、信じていいんだな?」
「ああ、なんたって父ちゃんと母ちゃんの形見の力だからな!」
本来はこうして訊くまでもないがな。
ここまで自信満々にやり遂げたんだから。
だったらその力を存分に眺めさせてもらう。
もしあのゴーレムの力を受け継いでいるなら、これ以上の戦力は無いからな。
「そこの三賢者! 今すぐゴーレムを引っ込めるんだ! 巻き添えを喰らいたくなければなッ!!」
「わかりました!」
その為にも邪魔者は一旦退いてもらわねばならない。
味方を倒す訳にもいかないからな。
『ここは私に任せてもらおう! とあーッ!!』
それにどうやらこのクアリオの巨人もその事をしっかり認識しているらしい。
三賢者のゴーレムが床へと消えた途端に飛び出していった。
つまり、コイツには意思があるって事だ。
それも人と変わらない、人工物には有り得ない意志がな。
でなきゃわざわざ〝勇気〟なんて言葉は使わないだろうさ。
であればますます興味が湧く。
一体どういう構造にしたらあんな明確な意思が生まれるのかと。
『正義の鉄槌を喰らえーッ!! てやーッ!!』
掛け声こそ大袈裟だが、その威力はとてつもない。
駆ける速さも、拳を振り抜くその動きも。
まるで人の如き体術を見せつけるかの様に。
『悪は絶対に許さんッ!! はぁーッ!!』
お陰であの超鋼ゴーレムが一撃で吹き飛んでいる。
さすが、同素材ともあってしっかりと通用しているぞ。
『見ろッ!! これがこの【クアリオン】の力だーーーッ!!』
……このネーミングセンスさえどうにかなればな。
先の魔導勇者といい。
圧倒的な戦闘能力をこの名前だけで相殺している気がするぞ。
そこで何故顔を横に振るんだクアリオ。
お前が名付けたんじゃあないのか。
目を潤わせて訴えている様にも見えるがきっと気のせいだろう。
しかし少し目を離している隙にあの三体のゴーレムがもうスクラップだ。
思っていた以上に強いぞ、あのクアリオンとかいう魔動機。
組み替えただけでここまで強くなれるものなのか……!
『さぁここまでだ悪党ども! お前達の犯した罪、断じて許す訳にはいかん!』
ここまで来るともう俺の立場も無いな。
決め台詞まで取られてしまったし。
とりあえず眺めながらストックでも溜め込んでおこうかな。
「クッ、ワシのチェアゴーレムがこんな無粋な物に変わってしまうなどとは……!」
『後悔しても遅いぞ! 今すぐ大人しく罪を認め、縄に付けば手荒な真似はしないと約束しよう!』
「し、仕方あるまい……認めよう」
――いや、待て。
大人しく罪を認めるだと!?
奴がそんな事をする訳が無いんだッ!!
それにあのブブルクの顔、何かを企んでいるぞ!
奴は根っからの悪党だからこそ。
知識があるのをいい事に悪用する事しか考えていない外道なのだから!
それも、生まれたばかりで純粋なクアリオンではわからない程の。
「下がるんだクアリオンッ!! ブブルクは何かをするつもりだッ!!」
『ッ!? とあーッ!!』
ならそう気付ける俺が導かなければ。
クアリオの代わりに指揮してやらなければ奴には絶対に勝てない。
きっとクアリオンも咄嗟にそう気付いたのだろう。
故に飛び退き、俺達の傍へと戻って来る。
そんな中、ブブルクは舌打ちを打っていて。
「……全く、大人しくしていれば貴様もスクラップにしてやったものを。じゃが関係無いのぉ、どうせ貴様等ではコイツには勝てん! いでよ、テーブルゴーレムゥ!!」
その時、奴が突如両腕を振り上げ叫びを上げる。
するとその途端、床が部屋が地響きに包まれ始めた。
なんと中央のテーブルが動き始めたんだ。
それももたれ上がり、変形し、手足を構築しながら。
そうして現れたのはまたしてもゴーレムだった。
しかもクアリオンよりもずっと大きく、身長も人五倍ほどの。
クッ、この部屋には一体どれだけのギミックがあるんだ!?
防衛機能といい、用心深いにも程があるだろう!?
「クアリオ、奴も組み替えられないのか!?」
「それがむ、無理なんだッ! さっきので力を使い果たしちまって! しばらくは使えねぇー!」
「クッ!!」
こんな事ならさっさと【輝操術】を再構築しておけばよかった。
けどそんな時間はもう与えてもらえなさそうだ。
今この時にも、敵が掴みかかろうと両腕を伸ばして来ていたから。
『やらせんッ!!』
それに対抗し、クアリオンが両手を上げて掴みかかる。
なればたちまち巨体同士の押し合いが始まる事に。
だがクアリオンの方が圧倒的に不利だ。
質量の差と出力の差が違い過ぎる!
徐々にだが押され負けて、軋みを上げているぞッ!?
『ぐ、おおおッ!?』
「ま、負けるんじゃねぇークアリオン! オイラの名を冠するなら負けちゃなんねぇー!」
『りょ、了解! おおおッ!!』
こう強がっているが状況は悪循環の一方だ。
遂には膝を突き、装甲には亀裂も走り始めている!
このままではパワー負けして、砕かれて終わってしまうッ!!
ダメだ、この中で集中しろなどとはッ!
どうしてもクアリオンを信頼しなければならないと俺の心が訴えていて!
――いいだろう!
なら託してやるさ。
この直感を、俺は信じてみるッ!!
やってみせろよクアリオン!
お前の力はこれだけじゃないって事を見せつけてみろッ!!
「勇気を見せつけるんじゃないのかクアリオン! お前の勇気ってのはこの程度なのかよーッ!?」
『ボ、ボス……』
「オイラの父ちゃんも母ちゃんもずっと逞しかった! そしてその心を受け継いだお前なら、もっともっと出来るはずだッ!! その勇気って奴をオイラに見せろッ!! お前が本当に心を持った勇者ならあッ!!」
『勇者……! そうか、わかったぞボスッ!! おおおーーーッ!!!』
その想いが届いたかはわからない。
クアリオの言う勇気が理解出来たのかはわからない。
けどこの時、奇跡は起きた。
なんとクアリオンが押し返し、敵ゴーレムを叩き上げていたんだ。
ブブルク達が逃げ惑う中、敵ゴーレムが床壁へと叩き付けられる。
ただダメージ自体はそこまででは無かったらしく、すぐ立ち上がろうとしていたが。
だがな、クアリオンの奇跡はこれだけに留まらなかったのさ。
『ぬぅぅ!! 来ぉい! 【ゴッドフェニシオン】ッ!!』
その巨大な右腕を振り上げ、真っ暗な天井へと指を向ける。
するとたちまち稲妻が迸って暗闇を切り裂いた。
そんな天井は何故か暗雲に包まれていて。
――いや、これは違う。
この暗雲は決して最初からあったものじゃあない。
これはクアリオンが呼び出した物なんだ!
魔動機が天候魔法を使うなんてあり得ないぞ!?
そしてこれだけじゃない。
暗雲が稲妻を帯びた途端、穴が開いて中から何かが飛び出した。
あれはまさか、鳥か!?
鋼鉄の巨大鳥が天井から出て来た、だと……ッ!?
つまり、今のは只の天候魔法じゃなかったんだ。
なんと驚くべき事に、クアリオンは召喚魔法を行使したのさ。
それも、人でさえ扱いが難しいとされる幻獣召喚術をな。
驚愕の出来事の連続に、俺はもう開いた口が塞がらなかった。
まさかここまで奇跡のオンパレードを見せつけられるとは思ってもみなくて。
だけど、これは大いに期待していいかもしれない。
それだけの力強さが今のクアリオンから溢れていたのだから。
あのクアリオがゴーレムを変質させるなんて。
それもあの手に持つ魔導具のお陰なのか?
だとしたら凄い事だぞ。
ゴーレムを一瞬にして再構築・論理まで書き換えるなんて。
これは例え最上級の魔導士でも不可能な技だろうからな。
しかもこの仕組みは、まるで俺の【輝操術】と同じだ。
恐らく魔動機限定だが、自由に組み替える事が出来るのだから。
きっと父が知ったら大喜びで喰らい付くに違いない。
なにせこの技術は今までに有り得なかった物。
つまり新たな創造力が生まれたって事だからな。
ならその道具を扱えるクアリオはもはや技工士などには収まらない。
名付けるならば――【魔械技師】クアリオ=ノヴ=ヤー=ミスティオ。
これがアイツに相応しい銘だろう。
「クアリオッ! この力、信じていいんだな?」
「ああ、なんたって父ちゃんと母ちゃんの形見の力だからな!」
本来はこうして訊くまでもないがな。
ここまで自信満々にやり遂げたんだから。
だったらその力を存分に眺めさせてもらう。
もしあのゴーレムの力を受け継いでいるなら、これ以上の戦力は無いからな。
「そこの三賢者! 今すぐゴーレムを引っ込めるんだ! 巻き添えを喰らいたくなければなッ!!」
「わかりました!」
その為にも邪魔者は一旦退いてもらわねばならない。
味方を倒す訳にもいかないからな。
『ここは私に任せてもらおう! とあーッ!!』
それにどうやらこのクアリオの巨人もその事をしっかり認識しているらしい。
三賢者のゴーレムが床へと消えた途端に飛び出していった。
つまり、コイツには意思があるって事だ。
それも人と変わらない、人工物には有り得ない意志がな。
でなきゃわざわざ〝勇気〟なんて言葉は使わないだろうさ。
であればますます興味が湧く。
一体どういう構造にしたらあんな明確な意思が生まれるのかと。
『正義の鉄槌を喰らえーッ!! てやーッ!!』
掛け声こそ大袈裟だが、その威力はとてつもない。
駆ける速さも、拳を振り抜くその動きも。
まるで人の如き体術を見せつけるかの様に。
『悪は絶対に許さんッ!! はぁーッ!!』
お陰であの超鋼ゴーレムが一撃で吹き飛んでいる。
さすが、同素材ともあってしっかりと通用しているぞ。
『見ろッ!! これがこの【クアリオン】の力だーーーッ!!』
……このネーミングセンスさえどうにかなればな。
先の魔導勇者といい。
圧倒的な戦闘能力をこの名前だけで相殺している気がするぞ。
そこで何故顔を横に振るんだクアリオ。
お前が名付けたんじゃあないのか。
目を潤わせて訴えている様にも見えるがきっと気のせいだろう。
しかし少し目を離している隙にあの三体のゴーレムがもうスクラップだ。
思っていた以上に強いぞ、あのクアリオンとかいう魔動機。
組み替えただけでここまで強くなれるものなのか……!
『さぁここまでだ悪党ども! お前達の犯した罪、断じて許す訳にはいかん!』
ここまで来るともう俺の立場も無いな。
決め台詞まで取られてしまったし。
とりあえず眺めながらストックでも溜め込んでおこうかな。
「クッ、ワシのチェアゴーレムがこんな無粋な物に変わってしまうなどとは……!」
『後悔しても遅いぞ! 今すぐ大人しく罪を認め、縄に付けば手荒な真似はしないと約束しよう!』
「し、仕方あるまい……認めよう」
――いや、待て。
大人しく罪を認めるだと!?
奴がそんな事をする訳が無いんだッ!!
それにあのブブルクの顔、何かを企んでいるぞ!
奴は根っからの悪党だからこそ。
知識があるのをいい事に悪用する事しか考えていない外道なのだから!
それも、生まれたばかりで純粋なクアリオンではわからない程の。
「下がるんだクアリオンッ!! ブブルクは何かをするつもりだッ!!」
『ッ!? とあーッ!!』
ならそう気付ける俺が導かなければ。
クアリオの代わりに指揮してやらなければ奴には絶対に勝てない。
きっとクアリオンも咄嗟にそう気付いたのだろう。
故に飛び退き、俺達の傍へと戻って来る。
そんな中、ブブルクは舌打ちを打っていて。
「……全く、大人しくしていれば貴様もスクラップにしてやったものを。じゃが関係無いのぉ、どうせ貴様等ではコイツには勝てん! いでよ、テーブルゴーレムゥ!!」
その時、奴が突如両腕を振り上げ叫びを上げる。
するとその途端、床が部屋が地響きに包まれ始めた。
なんと中央のテーブルが動き始めたんだ。
それももたれ上がり、変形し、手足を構築しながら。
そうして現れたのはまたしてもゴーレムだった。
しかもクアリオンよりもずっと大きく、身長も人五倍ほどの。
クッ、この部屋には一体どれだけのギミックがあるんだ!?
防衛機能といい、用心深いにも程があるだろう!?
「クアリオ、奴も組み替えられないのか!?」
「それがむ、無理なんだッ! さっきので力を使い果たしちまって! しばらくは使えねぇー!」
「クッ!!」
こんな事ならさっさと【輝操術】を再構築しておけばよかった。
けどそんな時間はもう与えてもらえなさそうだ。
今この時にも、敵が掴みかかろうと両腕を伸ばして来ていたから。
『やらせんッ!!』
それに対抗し、クアリオンが両手を上げて掴みかかる。
なればたちまち巨体同士の押し合いが始まる事に。
だがクアリオンの方が圧倒的に不利だ。
質量の差と出力の差が違い過ぎる!
徐々にだが押され負けて、軋みを上げているぞッ!?
『ぐ、おおおッ!?』
「ま、負けるんじゃねぇークアリオン! オイラの名を冠するなら負けちゃなんねぇー!」
『りょ、了解! おおおッ!!』
こう強がっているが状況は悪循環の一方だ。
遂には膝を突き、装甲には亀裂も走り始めている!
このままではパワー負けして、砕かれて終わってしまうッ!!
ダメだ、この中で集中しろなどとはッ!
どうしてもクアリオンを信頼しなければならないと俺の心が訴えていて!
――いいだろう!
なら託してやるさ。
この直感を、俺は信じてみるッ!!
やってみせろよクアリオン!
お前の力はこれだけじゃないって事を見せつけてみろッ!!
「勇気を見せつけるんじゃないのかクアリオン! お前の勇気ってのはこの程度なのかよーッ!?」
『ボ、ボス……』
「オイラの父ちゃんも母ちゃんもずっと逞しかった! そしてその心を受け継いだお前なら、もっともっと出来るはずだッ!! その勇気って奴をオイラに見せろッ!! お前が本当に心を持った勇者ならあッ!!」
『勇者……! そうか、わかったぞボスッ!! おおおーーーッ!!!』
その想いが届いたかはわからない。
クアリオの言う勇気が理解出来たのかはわからない。
けどこの時、奇跡は起きた。
なんとクアリオンが押し返し、敵ゴーレムを叩き上げていたんだ。
ブブルク達が逃げ惑う中、敵ゴーレムが床壁へと叩き付けられる。
ただダメージ自体はそこまででは無かったらしく、すぐ立ち上がろうとしていたが。
だがな、クアリオンの奇跡はこれだけに留まらなかったのさ。
『ぬぅぅ!! 来ぉい! 【ゴッドフェニシオン】ッ!!』
その巨大な右腕を振り上げ、真っ暗な天井へと指を向ける。
するとたちまち稲妻が迸って暗闇を切り裂いた。
そんな天井は何故か暗雲に包まれていて。
――いや、これは違う。
この暗雲は決して最初からあったものじゃあない。
これはクアリオンが呼び出した物なんだ!
魔動機が天候魔法を使うなんてあり得ないぞ!?
そしてこれだけじゃない。
暗雲が稲妻を帯びた途端、穴が開いて中から何かが飛び出した。
あれはまさか、鳥か!?
鋼鉄の巨大鳥が天井から出て来た、だと……ッ!?
つまり、今のは只の天候魔法じゃなかったんだ。
なんと驚くべき事に、クアリオンは召喚魔法を行使したのさ。
それも、人でさえ扱いが難しいとされる幻獣召喚術をな。
驚愕の出来事の連続に、俺はもう開いた口が塞がらなかった。
まさかここまで奇跡のオンパレードを見せつけられるとは思ってもみなくて。
だけど、これは大いに期待していいかもしれない。
それだけの力強さが今のクアリオンから溢れていたのだから。
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