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第二十七節「空白の年月 無念重ねて なお想い途切れず」
~歪み伸びる思想~
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魔者に敵意を篭めた攻撃は一切通じない。
それを前に、あらゆる物理法則すら無効化する。
これは遥か昔から続く、『あちら側』の常識である。
フララジカが起きてからもこの原理は覆らない。
幾度と無く『こちら側』の兵器で攻撃を仕掛けたが、全てにおいて直接的な被害を与える事は出来なかった。
唯一彼等に傷を付ける事が出来るのは……命力が伴う攻撃のみ。
それは彼等魔者の無意識に纏う『障壁』が、彼等の宿す命力で出来ているからである。
魔剣はその命力を纏わせる事が容易に出来る、対魔者に特化した武器だ。
そしてそれを持ち続けた者は命力を鍛える事が可能となる体を得る。
だがその日、人類は遂に到達してしまった。
魔剣を使わず、自分達だけの力で、魔者に傷を付ける事が出来る技術を開発してしまったのである。
【救世同盟】が頭角を現し始めた頃……国連研究機関では命力関連技術の開発に専念していた。
その研究の基礎は、空島……【アルクルフェンの箱】によって得た情報。
『こちら側』へ転移直後に発見されて勇達が制圧した、空を飛ぶ人工島である。
制圧後、何も知らぬジョゾウの翻訳によって空島にあった魔剣開発技術は全て彼等の手に渡ったのである。
本来人間では造る事が出来ないとされる魔剣。
しかし魔特隊が空島を制圧した際、空島そのものが魔剣、しかも人間が造った物だという事が判明した。
それを受けた国連機関が独自に研究を進め、そしてそれが遂に完成したのだった。
その名も対命力弾。
通常の銃器から撃ち出す事が可能な、魔者の障壁を貫く事の出来る弾丸である。
それだけではない。
カプロが作り上げた【魔装】や【魔甲】の情報が洩れ、人工命力珠の精製が行われた結果……【人造魔装】の製造すら可能となってしまった。
この技術の開発は人類にとって大きな進歩だった。
自らの手で命力を生み出し、精製する事が出来るようになったのだから。
これで魔者問題を魔特隊だけに任せる必要は無くなる。
そう思われた。
だが……その技術は【救世同盟】のシンパによって情報漏洩し、世界中に散る事となったのだった。
それに真っ先に食い付いたのは、【救世同盟】の思想に染まった国々。
彼等はその技術を基に武器を開発、製造。
完成した武器は真っ先に【救世同盟】へと供給される事となったのである。
これによって、【救世同盟】はもはや魔者すら相手に出来る集団となってしまった。
そんな【救世同盟】は今では魔者すら所属する団体だ。
それはつまり、彼等の持つ思想が現実となりえる事を意味する。
人と人が、魔者と魔者が否定し続ける事で、世界は救われる……と。
それはデュゼローが謳った『手段』が『目的』へとすり替わった、歪んだ思想。
各国では魔者問題に対して解決を図る為に、友好を結んだ魔者を軍隊に所属させるケースは少なくない。
だが彼等が【救世同盟】と戦えば、結果的にそれはかつてデュゼローが訴えた構図へと成り替わる。
そうでなくても、もはやそうだったのかもしれない。
互いに手を取り合う事が出来る意思が巡り、もはや人と魔者の心の垣根は取り払われた。
互いに傷を付ける事が出来る武器が出回り、もはや人と魔者の物理の垣根は取り払われた。
それは果たして良かったのだろうか?
それは果たして解決すると言えるのだろうか?
争う事が蔓延する世界で、人は、魔者は……最終的に『生ある死』と『死ある生』、どちらを選ぶのだろうか。
それを前に、あらゆる物理法則すら無効化する。
これは遥か昔から続く、『あちら側』の常識である。
フララジカが起きてからもこの原理は覆らない。
幾度と無く『こちら側』の兵器で攻撃を仕掛けたが、全てにおいて直接的な被害を与える事は出来なかった。
唯一彼等に傷を付ける事が出来るのは……命力が伴う攻撃のみ。
それは彼等魔者の無意識に纏う『障壁』が、彼等の宿す命力で出来ているからである。
魔剣はその命力を纏わせる事が容易に出来る、対魔者に特化した武器だ。
そしてそれを持ち続けた者は命力を鍛える事が可能となる体を得る。
だがその日、人類は遂に到達してしまった。
魔剣を使わず、自分達だけの力で、魔者に傷を付ける事が出来る技術を開発してしまったのである。
【救世同盟】が頭角を現し始めた頃……国連研究機関では命力関連技術の開発に専念していた。
その研究の基礎は、空島……【アルクルフェンの箱】によって得た情報。
『こちら側』へ転移直後に発見されて勇達が制圧した、空を飛ぶ人工島である。
制圧後、何も知らぬジョゾウの翻訳によって空島にあった魔剣開発技術は全て彼等の手に渡ったのである。
本来人間では造る事が出来ないとされる魔剣。
しかし魔特隊が空島を制圧した際、空島そのものが魔剣、しかも人間が造った物だという事が判明した。
それを受けた国連機関が独自に研究を進め、そしてそれが遂に完成したのだった。
その名も対命力弾。
通常の銃器から撃ち出す事が可能な、魔者の障壁を貫く事の出来る弾丸である。
それだけではない。
カプロが作り上げた【魔装】や【魔甲】の情報が洩れ、人工命力珠の精製が行われた結果……【人造魔装】の製造すら可能となってしまった。
この技術の開発は人類にとって大きな進歩だった。
自らの手で命力を生み出し、精製する事が出来るようになったのだから。
これで魔者問題を魔特隊だけに任せる必要は無くなる。
そう思われた。
だが……その技術は【救世同盟】のシンパによって情報漏洩し、世界中に散る事となったのだった。
それに真っ先に食い付いたのは、【救世同盟】の思想に染まった国々。
彼等はその技術を基に武器を開発、製造。
完成した武器は真っ先に【救世同盟】へと供給される事となったのである。
これによって、【救世同盟】はもはや魔者すら相手に出来る集団となってしまった。
そんな【救世同盟】は今では魔者すら所属する団体だ。
それはつまり、彼等の持つ思想が現実となりえる事を意味する。
人と人が、魔者と魔者が否定し続ける事で、世界は救われる……と。
それはデュゼローが謳った『手段』が『目的』へとすり替わった、歪んだ思想。
各国では魔者問題に対して解決を図る為に、友好を結んだ魔者を軍隊に所属させるケースは少なくない。
だが彼等が【救世同盟】と戦えば、結果的にそれはかつてデュゼローが訴えた構図へと成り替わる。
そうでなくても、もはやそうだったのかもしれない。
互いに手を取り合う事が出来る意思が巡り、もはや人と魔者の心の垣根は取り払われた。
互いに傷を付ける事が出来る武器が出回り、もはや人と魔者の物理の垣根は取り払われた。
それは果たして良かったのだろうか?
それは果たして解決すると言えるのだろうか?
争う事が蔓延する世界で、人は、魔者は……最終的に『生ある死』と『死ある生』、どちらを選ぶのだろうか。
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