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第十九節「Uの世界 師と死重ね 裏返る力」
~あの日 の トラウマ~
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翌日、勇は御味の運転する車に乗り、ズーダー達を引き連れて京都へと向かっていた。
目的はアルライ族との会合……グーヌー族との戦いで彼等から聞いた事を確かめるべく、ジヨヨ村長に会いに行こうと足を延ばす事に至ったのだ。
高速道路を降り、一般道を走り続け……道中で話題も無くなりかけて互いの口数が少なくなってきた頃、不意に御味が口を開いた。
「そういえば、勇君達は車の免許とかは取らないのかい?」
思ってもみなかった話題に、勇が少し悩む素振りを見せる。
そんな話題を切り出すのも仕方の無い事だ……御味にとっては彼等をアルライに送る為だけに京都と東京を2往復もしなくてはならないのだから。
仮に勇達が運転免許を持っているのであれば、彼等が車を運転すればそれで事足りる。
それは以前カプロを迎えに行った時もそう……そんな事例があるからこそ、本来は彼等の様に活発に動き回る人間こそ車が必要とされるのだ。
本来は魔者が電車に乗る事が出来るのであればそれでよいのであろうが……ジョゾウの様な人柄でない限り、堂々と乗り切るのはほぼ不可能に近い。
だが都会育ちであり、車が無くとも生活出来る環境に居る為か……勇はどうにも乗り気には見えなかった。
「検討はしたいですけどね……色々やる事がありますから」
「そうはいっても、普通の会社員よりは暇があると思うけど……」
御味の言う事ももっともである。
安定はしないが、戦いで負った傷や不調などを考慮し、現在は非常に長い期間の休養期間を取る事が多い。
その間に免許を取る事など、その気になれば容易いだろう。
「正直言うと……この2往復、結構きついんだよね……歳のせいか割と体が疲れやすくなってきててさ……」
「あ……すいません本当に……」
さすがの温厚な御味も、今回の一件は少し不満があったのだろう……愚痴を零さずにはいられなかった様だ。
「ちょっと真面目に検討してみますよ。 言われて見れば車があった方が便利かもしれないし……茶奈を毎回置いて出勤するのもなんか憚れるから……」
「茶奈さんも大変だな……」
「本人は『体力つけなきゃ』って息巻いてるんですけどね……最近新しい力に目覚めたのは良いけど体力が無いから長持ちしないって嘆いてて」
途端御味が笑いを上げると、勇も釣られて口角を上げる。
「体力は体幹を鍛えないと付いてこないからねぇ……彼女はまずはそこからかもしれないね」
「そうか……茶奈は体細いからなぁ……成長期にあまり栄養取れなかったっていうし」
「そうだね……でも、彼女言う程細かったっけ……?」
「御味さん……それは本人の前では言っちゃだめですよ?」
「ハハ……そりゃ、ねぇ~……」
鈍感な勇もさすがにデリカシーを感じ苦言を呈するが、御味も半ばジョークで言ったようなもので……。
ただ……最近は確かに彼女の体付きは昔と比べてふっくらしてきたような……。
勇はそんなイメージを頭に思い浮かべてしまう。
大喰らいである彼女の体へのカロリーの蓄積は免れない……そうも思えなくも無いとなると、そのふっくら感の原因は……。
「止めましょうこの話は!!」
「え、あ、うん、そうだねぇ……本人に失礼だしね」
急に勇が真顔になり話題を止めると、御味がそれに驚きたじろぎながら細かくハンドルを切る。
―――気にはなるけど……でも太ったなんて言ったら今度こそ……―――
その時脳裏に思い浮かばせるのは、「ジェアァァァ!!」と吠え叫ぶ黒い茶奈。
割とトラウマだったあの事件から、勇は彼女を怒らせまいと気を遣う事が増えた様だ。
そんな話をしている間に、彼等の乗る車がアルライの里へと辿り着く。
半日もの時間を掛けて缶詰となっていた勇やズーダー達は車から降りるや否や、広い空間を堪能するかの様にその体を大きく伸ばし解放感を露わにした。
「皆、ご苦労様……やっと着いた所で悪いけど、もう暫く付き合ってくれ」
「あぁ、了解しているとも」
ズーダーが他の者達に対して頷くと、彼等もまたそれに相槌を打つ様に頷く。
御味の見送りの元、勇達は長い階段を登りアルライの里へ足を進めるのだった。
目的はアルライ族との会合……グーヌー族との戦いで彼等から聞いた事を確かめるべく、ジヨヨ村長に会いに行こうと足を延ばす事に至ったのだ。
高速道路を降り、一般道を走り続け……道中で話題も無くなりかけて互いの口数が少なくなってきた頃、不意に御味が口を開いた。
「そういえば、勇君達は車の免許とかは取らないのかい?」
思ってもみなかった話題に、勇が少し悩む素振りを見せる。
そんな話題を切り出すのも仕方の無い事だ……御味にとっては彼等をアルライに送る為だけに京都と東京を2往復もしなくてはならないのだから。
仮に勇達が運転免許を持っているのであれば、彼等が車を運転すればそれで事足りる。
それは以前カプロを迎えに行った時もそう……そんな事例があるからこそ、本来は彼等の様に活発に動き回る人間こそ車が必要とされるのだ。
本来は魔者が電車に乗る事が出来るのであればそれでよいのであろうが……ジョゾウの様な人柄でない限り、堂々と乗り切るのはほぼ不可能に近い。
だが都会育ちであり、車が無くとも生活出来る環境に居る為か……勇はどうにも乗り気には見えなかった。
「検討はしたいですけどね……色々やる事がありますから」
「そうはいっても、普通の会社員よりは暇があると思うけど……」
御味の言う事ももっともである。
安定はしないが、戦いで負った傷や不調などを考慮し、現在は非常に長い期間の休養期間を取る事が多い。
その間に免許を取る事など、その気になれば容易いだろう。
「正直言うと……この2往復、結構きついんだよね……歳のせいか割と体が疲れやすくなってきててさ……」
「あ……すいません本当に……」
さすがの温厚な御味も、今回の一件は少し不満があったのだろう……愚痴を零さずにはいられなかった様だ。
「ちょっと真面目に検討してみますよ。 言われて見れば車があった方が便利かもしれないし……茶奈を毎回置いて出勤するのもなんか憚れるから……」
「茶奈さんも大変だな……」
「本人は『体力つけなきゃ』って息巻いてるんですけどね……最近新しい力に目覚めたのは良いけど体力が無いから長持ちしないって嘆いてて」
途端御味が笑いを上げると、勇も釣られて口角を上げる。
「体力は体幹を鍛えないと付いてこないからねぇ……彼女はまずはそこからかもしれないね」
「そうか……茶奈は体細いからなぁ……成長期にあまり栄養取れなかったっていうし」
「そうだね……でも、彼女言う程細かったっけ……?」
「御味さん……それは本人の前では言っちゃだめですよ?」
「ハハ……そりゃ、ねぇ~……」
鈍感な勇もさすがにデリカシーを感じ苦言を呈するが、御味も半ばジョークで言ったようなもので……。
ただ……最近は確かに彼女の体付きは昔と比べてふっくらしてきたような……。
勇はそんなイメージを頭に思い浮かべてしまう。
大喰らいである彼女の体へのカロリーの蓄積は免れない……そうも思えなくも無いとなると、そのふっくら感の原因は……。
「止めましょうこの話は!!」
「え、あ、うん、そうだねぇ……本人に失礼だしね」
急に勇が真顔になり話題を止めると、御味がそれに驚きたじろぎながら細かくハンドルを切る。
―――気にはなるけど……でも太ったなんて言ったら今度こそ……―――
その時脳裏に思い浮かばせるのは、「ジェアァァァ!!」と吠え叫ぶ黒い茶奈。
割とトラウマだったあの事件から、勇は彼女を怒らせまいと気を遣う事が増えた様だ。
そんな話をしている間に、彼等の乗る車がアルライの里へと辿り着く。
半日もの時間を掛けて缶詰となっていた勇やズーダー達は車から降りるや否や、広い空間を堪能するかの様にその体を大きく伸ばし解放感を露わにした。
「皆、ご苦労様……やっと着いた所で悪いけど、もう暫く付き合ってくれ」
「あぁ、了解しているとも」
ズーダーが他の者達に対して頷くと、彼等もまたそれに相槌を打つ様に頷く。
御味の見送りの元、勇達は長い階段を登りアルライの里へ足を進めるのだった。
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