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第十五節「戦士達の道標 巡る想い 集いし絆」
~決着、そして人は理解し頷く~
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今まで防戦のみを貫いていた勇と、少年少女の猛攻はいつの間にか……全く逆とも言える状況へ変化していた。
「どうした……先程までの威勢はハッタリだったのか……!?」
「う、うるせー!!」
チュィィィィン!!
魔剣と盾の弾く音が鳴り響く。
「後悔させるんじゃなかったのか……!?」
「このぉー!!」
パァーーーーーンッ!!
竹刀での容赦なく叩かれる音が響き、その度に叩かれた方の顔が苦悶を浮かべる。
「そうやって……弱いと罵って……」
パァーーンッ!!
「弱い人から物を奪って……」
タァーーンッ!!
「自分勝手に生きてきたのかッ!!」
パァンパァーーーーンッ!!
「ぐあぁっ!!」
「いたぁーい!!」
堪らずうずくまる少年少女……体中が既に真っ赤に腫れ上がり、痛みで小刻みに震える。
だが、そんな彼等を前に立つ勇の表情は……修羅が如く鋭い目尻を浮かべ、睨み付ける様へと変化していた。
「お前達に魔剣を与えた奴が何を考えて手渡したのかは知らない……だが、今までの行動がお前達が貫く理念なら……俺はお前達を……許しはしないッ!!」
怒号を上げ、勇が命力を乗せた気迫を周囲にばら撒くと……堪らず二人が怯む。
「ウゥ……!!」
「お、お師匠は……」
「お前にィ……お ま え に な に が 判るんッだァーーーーーー!!」
「ッ!? アニキダメェーーーーーー!!」
少女の制止にも止まらず……少年の殺気を込めた一閃。
それは真っ直ぐ勇の下へ―――
だがその瞬間……少年の視界から勇が消えた。
その姿は……彼の頭上に高く、そして勢いよく体を捻り―――
ダァァーーーーーーンッッ!!
「カッ……!?」
見舞われる回転斬撃。
竹刀二本分の打撃が一瞬にして少年の背中へと打ち抜かれたのである。
それはボノゴ戦でも見せた、相手の認知外からの一撃。
一瞬にして相手の死角へと潜り込み打ち出される、意識を刈り取る一撃だった。
強烈なまでの一撃を叩きこまれた少年はそのまま床へ向けてガクリと頭を降ろす。
突撃した勢いのまま床に転がると……その場に倒れ込み、ピクリとも動かなかった。
「ア、アニキ……アァーーーー!!」
魔剣を落とし涙目で少年の下へ駆け寄る少女。
もはやその姿は戦意を喪失し……倒れた少年を気遣うのみであった。
「ウゥー……アァウ……ウアァァァ……!!」
泣きじゃくるその姿はまさに少女そのもので……。
勇もただその様子を静かに見守る。
「ウッ……ウゥー……グスッ……」
「安心しな……そいつは気絶しているだけだから……」
「……ウン……」
素直に応える少女に勇も張り詰めた顔を戻し……口元を緩ませた。
「なぁ、君に聞いていいかい?」
「……ウン……」
相も変わらずすすり泣く少女に優しく勇が声を掛ける。
「君達は今までに人を殺した事は有るのかい?」
「……無い……お師匠が人に魔剣は使うなって……」
「そうか……君達のお師匠は何で魔剣を君達に渡したんだ?」
「……生きる為には……力も必要だって、生きて行く為に使いなさいって言って……お師匠、動かなくなって……ウゥーッ!!」
「……そうか……君達の師匠はいい人だったんだな……」
すると勇は彼等の方へ歩くとそっと彼女の側で屈み……彼女の頭をポンポンと撫でた。
「もういい、もう苦しまなくていい」
「でも……でももう……負けちゃったんだ……アタイ達はもう……!!」
「そうだ、負けた……だから……ここに居るんだ」
「えっ……!?」
流した涙が頬を伝い、一筋の道を作る。
しかし彼女の眼は大きく見開き、勇の顔を見つめていた。
「どこに行く必要も無い。 俺達とここで……一緒に生きていくんだ。 普通の人と同じ様に、さ?」
「いいの……?」
「勿論さ。 最初からそのつもりだったからな」
「……ウッ……ウゥー……ありがとゥー……!!」
再びポンポンと彼女の頭を優しく撫でると……勇は立ち上がりながら少年を担ぐ。
「さて、と……それじゃ皆でご飯でも食べに行こう。 二人はさすがにここに来たばかりだし、しばらく飯代くらい俺が出すさ」
「ハハハ」と声を上げてそう笑いながらゆっくり歩き始めると……片手に掴んでいた二本の竹刀をポトリと床に落とす。
「ナターシャちゃんだっけ? 君もついて来なよ、お腹いっぱい食べさせてあげるから……さ?」
「う、うんっ!!」
少年の名はアンディ、少女の名はナターシャ……二人の魔剣使いがこうして彼等の仲間として名を連ねる事となった。
優しい日差しが照らす4月下旬……。
新たな仲間、新たな拠点、新たな決意……。
こうして彼等魔特隊の新たな一歩が刻まれる……その足跡は確実に未来へと向かう。
その足跡の先に何が待ち受けていようと、彼等は笑顔を絶やさない。
彼等が行こうとする先は……まだ何も見えはしないのだから。
第十五節 完
「どうした……先程までの威勢はハッタリだったのか……!?」
「う、うるせー!!」
チュィィィィン!!
魔剣と盾の弾く音が鳴り響く。
「後悔させるんじゃなかったのか……!?」
「このぉー!!」
パァーーーーーンッ!!
竹刀での容赦なく叩かれる音が響き、その度に叩かれた方の顔が苦悶を浮かべる。
「そうやって……弱いと罵って……」
パァーーンッ!!
「弱い人から物を奪って……」
タァーーンッ!!
「自分勝手に生きてきたのかッ!!」
パァンパァーーーーンッ!!
「ぐあぁっ!!」
「いたぁーい!!」
堪らずうずくまる少年少女……体中が既に真っ赤に腫れ上がり、痛みで小刻みに震える。
だが、そんな彼等を前に立つ勇の表情は……修羅が如く鋭い目尻を浮かべ、睨み付ける様へと変化していた。
「お前達に魔剣を与えた奴が何を考えて手渡したのかは知らない……だが、今までの行動がお前達が貫く理念なら……俺はお前達を……許しはしないッ!!」
怒号を上げ、勇が命力を乗せた気迫を周囲にばら撒くと……堪らず二人が怯む。
「ウゥ……!!」
「お、お師匠は……」
「お前にィ……お ま え に な に が 判るんッだァーーーーーー!!」
「ッ!? アニキダメェーーーーーー!!」
少女の制止にも止まらず……少年の殺気を込めた一閃。
それは真っ直ぐ勇の下へ―――
だがその瞬間……少年の視界から勇が消えた。
その姿は……彼の頭上に高く、そして勢いよく体を捻り―――
ダァァーーーーーーンッッ!!
「カッ……!?」
見舞われる回転斬撃。
竹刀二本分の打撃が一瞬にして少年の背中へと打ち抜かれたのである。
それはボノゴ戦でも見せた、相手の認知外からの一撃。
一瞬にして相手の死角へと潜り込み打ち出される、意識を刈り取る一撃だった。
強烈なまでの一撃を叩きこまれた少年はそのまま床へ向けてガクリと頭を降ろす。
突撃した勢いのまま床に転がると……その場に倒れ込み、ピクリとも動かなかった。
「ア、アニキ……アァーーーー!!」
魔剣を落とし涙目で少年の下へ駆け寄る少女。
もはやその姿は戦意を喪失し……倒れた少年を気遣うのみであった。
「ウゥー……アァウ……ウアァァァ……!!」
泣きじゃくるその姿はまさに少女そのもので……。
勇もただその様子を静かに見守る。
「ウッ……ウゥー……グスッ……」
「安心しな……そいつは気絶しているだけだから……」
「……ウン……」
素直に応える少女に勇も張り詰めた顔を戻し……口元を緩ませた。
「なぁ、君に聞いていいかい?」
「……ウン……」
相も変わらずすすり泣く少女に優しく勇が声を掛ける。
「君達は今までに人を殺した事は有るのかい?」
「……無い……お師匠が人に魔剣は使うなって……」
「そうか……君達のお師匠は何で魔剣を君達に渡したんだ?」
「……生きる為には……力も必要だって、生きて行く為に使いなさいって言って……お師匠、動かなくなって……ウゥーッ!!」
「……そうか……君達の師匠はいい人だったんだな……」
すると勇は彼等の方へ歩くとそっと彼女の側で屈み……彼女の頭をポンポンと撫でた。
「もういい、もう苦しまなくていい」
「でも……でももう……負けちゃったんだ……アタイ達はもう……!!」
「そうだ、負けた……だから……ここに居るんだ」
「えっ……!?」
流した涙が頬を伝い、一筋の道を作る。
しかし彼女の眼は大きく見開き、勇の顔を見つめていた。
「どこに行く必要も無い。 俺達とここで……一緒に生きていくんだ。 普通の人と同じ様に、さ?」
「いいの……?」
「勿論さ。 最初からそのつもりだったからな」
「……ウッ……ウゥー……ありがとゥー……!!」
再びポンポンと彼女の頭を優しく撫でると……勇は立ち上がりながら少年を担ぐ。
「さて、と……それじゃ皆でご飯でも食べに行こう。 二人はさすがにここに来たばかりだし、しばらく飯代くらい俺が出すさ」
「ハハハ」と声を上げてそう笑いながらゆっくり歩き始めると……片手に掴んでいた二本の竹刀をポトリと床に落とす。
「ナターシャちゃんだっけ? 君もついて来なよ、お腹いっぱい食べさせてあげるから……さ?」
「う、うんっ!!」
少年の名はアンディ、少女の名はナターシャ……二人の魔剣使いがこうして彼等の仲間として名を連ねる事となった。
優しい日差しが照らす4月下旬……。
新たな仲間、新たな拠点、新たな決意……。
こうして彼等魔特隊の新たな一歩が刻まれる……その足跡は確実に未来へと向かう。
その足跡の先に何が待ち受けていようと、彼等は笑顔を絶やさない。
彼等が行こうとする先は……まだ何も見えはしないのだから。
第十五節 完
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