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第十四節「新たな道 時を越え 心を越えて」
~戦士達の談笑~
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そして迎える新年度……その年より正式に勇達は魔特隊の一員として働く事となる。
年度末のその日、東京駅の最寄りにある魔特隊本部……そこにはあずーを除いた4人とレンネィ、福留達の姿があった。
「あず、めっちゃ泣いてたぜ……『アタシも学校辞めるー!』って喚き散らしてよ……」
「すごかったわよね……子供の地団駄かと」
「アハハ……」
「あの子に関してはこれでいいのよ」
事務所も様相が変わり、簡素ではあるが彼等の座れるデスクが用意されていた。
その代わり周囲の荷物が若干少なくなってはいるが……。
各々が自分達の席に座る中、福留が立ち上がり彼等に声を上げる。
「さて、今日より晴れて皆さんは正式に魔特隊への所属が決まった訳ですが……亜月君は前と変わらず臨時メンバーという扱いに成ります」
あずーは茶奈と違い、親の金で学校に通わさせてもらっている。
戦いに赴くのは仕方ない事ではあるが、学校だけは卒業しないとダメだという両親の意向を汲み……福留の説得の下、あずーはそのまま在学する事となった。
当然と言えば当然の結果であろう。
「早速ですが、皆さんにはお仕事の話があります……今回はアメリカ南部、メキシコの国境付近です」
「早速か……またアメリカって事はミシェルさんとの計らいかな……」
「予定は三日後、ここより出て飛行機での移動を行い直接現地へ向かいます……現地へはオブザーバーの米軍の方がサポートする予定です」
「へへっ、腕が鳴るぜ」
福留の話に心輝が両拳を正面で突合せ、待ちきれんばかりの様子を示す。
「各自の準備を怠らず、当日までにコンディションを整えておいてください……では解散です」
その日、勇達の正式な活動開始の合図と共に展開された仕事の話を受けただけでその場は解散となった。
しかし積もる話もあるのだろう、忙しい福留はすぐに事務所から立ち去ったものの……勇達はその場に居続け会話を連ねていた。
「……そう言えば、レンネィさんさっき『あずーはこれでいい』って言ってましたけど……どういう意味なんですか?」
勇がふと疑問に思った事をレンネィにぶつける。
その質問の答えを話したがっていたのだろう、レンネィが得意げに話し始めた。
「あの子はちょっと特殊過ぎてねぇ……皆にも知っていてもらいたいのだけど―――」
「まぁあずは確かに特殊だよね」
思わず飛んだ瀬玲の横槍に、レンネィが苦笑いを浮かべる。
「ま、まぁ~確かに性格も特殊だけど……私が言いたいのはあの子の命力の事なの」
レンネィが瀬玲の横槍を軽く躱しながら話の核心を伝えると、途端勇達が表情を曇らせた。
「なんか問題あるんですか?」
相槌を打つ勇に向けてレンネィが顔を向けると……その言葉を連ねる。
「稀なケースなんだけど、あの子の命力の消費量は恐らく天井が無い……その気になれば自分の持つ命力を一瞬で吐き出し掛ねないわ」
「んな……つまりあれか、いきなりフルパワーで戦えるって奴じゃねぇか……」
「馬鹿だなシン……そんな事したら一瞬で死ぬだろ……」
「あ……」
心輝はその話を聞いた途端目を輝かせていたが……勇の一言にあっけを取られ固まった。
命力消費量も命力上限量と同様に才能に左右される。
だが体が自然とそれをセーブし、急激な消耗を抑えるのが普通だ。
だがレンネィ曰く、あずーにはそれが無い。
命力は心の力と同時に体の力を司る精神エネルギーだ。
全てを失えばそれは即ち……死。
例えどんなに高い命力量を誇っていても……それが尽きた先の結末は避けられない。
「皆にはこの事を黙っていて欲しいのと、彼女がオーバーペースに成りそうな時は制止して欲しいの」
「やばそうな話じゃん……」
しんみりとした態度で話を聞く4人。
そんな中ぽつりと茶奈が声を上げる。
「あ……ええと……私もセーブした方がいいかな……?」
その一言が上がった時、全員が揃って茶奈の方へ振り向き……満場一致で頷いた。
茶奈はその光景を目の当たりにした途端、あんぐりと口を開けて騒然とする他無く。
この1年で3回ほど、彼等の出動があった。
いずれも彼女の大暴れが功を奏し……もとい、相手を脅えさせ戦いを有利に運んだ経緯がある。
しかし獅堂との戦い以降、以前よりも早い成長率によって強くなり過ぎた力はセーブする事が難しい様で……いずれもが勇達を巻き込みそうな攻撃ばかりであった。
中には大地の地形を変えてしまった事もあり、その際には被害の修繕等に経費がかさみ報酬が支払われなかった事もある程。
強過ぎる力は身を滅ぼすと言うが……彼女の場合はどうやら身狭になってしまった様だ。
「普通の魔者相手ならもう茶奈は魔剣要らなさそう……」
「そ、そんなぁ……」
「指からビーム出そうぜ、ビーム!!」
「もう命力レーダーとかヒートフィールドで焼き殺せるんじゃないかしら?」
「それ俺達もヤバいですよ……」
瀬玲の話題を皮切りに周囲からとんでもない提案が飛び交う。
たちまちそれが笑いを呼び、終始困惑の茶奈も苦笑いで誤魔化していた。
あずーの件に関しては誰もが……主にそのきっかけになるであろう勇が心に留め、彼女が暴走しない様心掛ける事となった。
年度末のその日、東京駅の最寄りにある魔特隊本部……そこにはあずーを除いた4人とレンネィ、福留達の姿があった。
「あず、めっちゃ泣いてたぜ……『アタシも学校辞めるー!』って喚き散らしてよ……」
「すごかったわよね……子供の地団駄かと」
「アハハ……」
「あの子に関してはこれでいいのよ」
事務所も様相が変わり、簡素ではあるが彼等の座れるデスクが用意されていた。
その代わり周囲の荷物が若干少なくなってはいるが……。
各々が自分達の席に座る中、福留が立ち上がり彼等に声を上げる。
「さて、今日より晴れて皆さんは正式に魔特隊への所属が決まった訳ですが……亜月君は前と変わらず臨時メンバーという扱いに成ります」
あずーは茶奈と違い、親の金で学校に通わさせてもらっている。
戦いに赴くのは仕方ない事ではあるが、学校だけは卒業しないとダメだという両親の意向を汲み……福留の説得の下、あずーはそのまま在学する事となった。
当然と言えば当然の結果であろう。
「早速ですが、皆さんにはお仕事の話があります……今回はアメリカ南部、メキシコの国境付近です」
「早速か……またアメリカって事はミシェルさんとの計らいかな……」
「予定は三日後、ここより出て飛行機での移動を行い直接現地へ向かいます……現地へはオブザーバーの米軍の方がサポートする予定です」
「へへっ、腕が鳴るぜ」
福留の話に心輝が両拳を正面で突合せ、待ちきれんばかりの様子を示す。
「各自の準備を怠らず、当日までにコンディションを整えておいてください……では解散です」
その日、勇達の正式な活動開始の合図と共に展開された仕事の話を受けただけでその場は解散となった。
しかし積もる話もあるのだろう、忙しい福留はすぐに事務所から立ち去ったものの……勇達はその場に居続け会話を連ねていた。
「……そう言えば、レンネィさんさっき『あずーはこれでいい』って言ってましたけど……どういう意味なんですか?」
勇がふと疑問に思った事をレンネィにぶつける。
その質問の答えを話したがっていたのだろう、レンネィが得意げに話し始めた。
「あの子はちょっと特殊過ぎてねぇ……皆にも知っていてもらいたいのだけど―――」
「まぁあずは確かに特殊だよね」
思わず飛んだ瀬玲の横槍に、レンネィが苦笑いを浮かべる。
「ま、まぁ~確かに性格も特殊だけど……私が言いたいのはあの子の命力の事なの」
レンネィが瀬玲の横槍を軽く躱しながら話の核心を伝えると、途端勇達が表情を曇らせた。
「なんか問題あるんですか?」
相槌を打つ勇に向けてレンネィが顔を向けると……その言葉を連ねる。
「稀なケースなんだけど、あの子の命力の消費量は恐らく天井が無い……その気になれば自分の持つ命力を一瞬で吐き出し掛ねないわ」
「んな……つまりあれか、いきなりフルパワーで戦えるって奴じゃねぇか……」
「馬鹿だなシン……そんな事したら一瞬で死ぬだろ……」
「あ……」
心輝はその話を聞いた途端目を輝かせていたが……勇の一言にあっけを取られ固まった。
命力消費量も命力上限量と同様に才能に左右される。
だが体が自然とそれをセーブし、急激な消耗を抑えるのが普通だ。
だがレンネィ曰く、あずーにはそれが無い。
命力は心の力と同時に体の力を司る精神エネルギーだ。
全てを失えばそれは即ち……死。
例えどんなに高い命力量を誇っていても……それが尽きた先の結末は避けられない。
「皆にはこの事を黙っていて欲しいのと、彼女がオーバーペースに成りそうな時は制止して欲しいの」
「やばそうな話じゃん……」
しんみりとした態度で話を聞く4人。
そんな中ぽつりと茶奈が声を上げる。
「あ……ええと……私もセーブした方がいいかな……?」
その一言が上がった時、全員が揃って茶奈の方へ振り向き……満場一致で頷いた。
茶奈はその光景を目の当たりにした途端、あんぐりと口を開けて騒然とする他無く。
この1年で3回ほど、彼等の出動があった。
いずれも彼女の大暴れが功を奏し……もとい、相手を脅えさせ戦いを有利に運んだ経緯がある。
しかし獅堂との戦い以降、以前よりも早い成長率によって強くなり過ぎた力はセーブする事が難しい様で……いずれもが勇達を巻き込みそうな攻撃ばかりであった。
中には大地の地形を変えてしまった事もあり、その際には被害の修繕等に経費がかさみ報酬が支払われなかった事もある程。
強過ぎる力は身を滅ぼすと言うが……彼女の場合はどうやら身狭になってしまった様だ。
「普通の魔者相手ならもう茶奈は魔剣要らなさそう……」
「そ、そんなぁ……」
「指からビーム出そうぜ、ビーム!!」
「もう命力レーダーとかヒートフィールドで焼き殺せるんじゃないかしら?」
「それ俺達もヤバいですよ……」
瀬玲の話題を皮切りに周囲からとんでもない提案が飛び交う。
たちまちそれが笑いを呼び、終始困惑の茶奈も苦笑いで誤魔化していた。
あずーの件に関しては誰もが……主にそのきっかけになるであろう勇が心に留め、彼女が暴走しない様心掛ける事となった。
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