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第121話 理不尽を正道でまかり通せ
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ダンジョン攻略委員会はたしか防衛庁の管轄だったはず。
だとすれば自衛隊と連携を取る事も容易だろう。
だったら今回ばかりは無茶を通させてもらう。
お前達の早とちりで殺されたらたまったもんじゃないからな。
なんでもない子どもを当て馬にするからには腹くらい括ってもらうぞ!
「今すぐ約束して、自衛隊員に今の通り命令を出してください。さもなければ俺はこのまま踵を返して帰るだけです」
「なっ!? ま、待ちたまえ!」
「何を待つっていうんですか!?」
「ッ!?」
だが相変わらず煮え切らないおっさんだ。
いつも何もかも中途半端で、適当で、その上で短絡的過ぎる!
あんた達がそう適当だから楠が紛れていた事にも気付かない!
それはあんた達が、俺達をただの消耗品としか見ていないからッ!!
だったらその消耗品なりに抵抗するまでだ!
俺達にだって意思はあるって事を教えてやる!
「そうしている間に奴は卵を産んでいるかもしれない! 何かしらの策を立てているかもしれない! そうやって事の重大さを考えずにやり過ごして起きたのがあのレッドオークの事件でしょうが!」
「うっ!?」
「他だってそうだ! あんた達は事が済めばいいと適当に受け流して、その結果起きたのがこのザマだ! 俺がそうならないために情報を提供したっていうのに!」
「そ、それは……」
だいたい、今日の事だって俺を呼んでどうする気だったんだ?
子どもの俺でなら生身で魔物に勝てるとでも?
普通に考えたらそんな発想なんて出る訳がないだろ!
想像力の欠如もはなはだしい!
「結局あんた達はうわべでだけ動いているに過ぎないんだ。いつも『民意に従って~』とか綺麗ごとを言って事の重大さをちっとも理解しないで進めて!」
そうさ、いつも事が起きるとあんた達の不手際が目立っていた。
俺達だけの問題と見せかけて、なにかしら絡んで傷口を広げていく。
それはあんた達が常に煮え切らない行動ばかりしていたから……!
「だったらこんな時くらい意地を通してみせろよ! それがお前達大人の役割で、使命で、責任だろうがあッ!!!!!」
「「「!!?」」」
だから俺が!
あんた達の!
尻拭いをやってやるってんだ!
そのために今ここで腹をくくれ、このでしゃばり野郎ッッッ!!!!!
「あ、そのだね、私にそんな権限は無くて」
「は?」
「え!? あ、いや、その……」
……やっぱりダメだこのおっさんは。
さしずめ目上の人から役割を押し付けられただけの存在って所かな。
そりゃそうだよな、ダンジョン攻略なんてボランティアみたいなものでお金になりはしないだろうから。
ならもう本気で帰るしかないか――
「話に割って入ってすまない。少し良いだろうか?」
「えっ?」
「私は本作戦の指揮を任されている陸上自衛隊所属の杉浦三佐だ」
そう思った矢先、おっさんの裏にいた自衛官の一人がみずから名乗り出てきた。
おっさんと違い、堂々としていて体付きも全体的に大きい。
まさに軍人そのものといったような人物だ。
「魔物が外へと出た以上、本作戦の指揮系統はすべて私に移譲されている。よって彼にそこまでの決定権は無い」
「そうかもしれません。けど俺はそこに憤っている訳じゃないんですよ」
「わかっている。色々と我々でもあずかり知らぬことがあるのだろう。その件に関しては後ほど上層部を通して追求する事にしよう」
「必要であれば情報提供もしますよ」
「ああ頼む。だが今はそれどころではない」
「……そうっすね」
こっちは話がわかりそうだな。
バツが悪そうに縮こまっている委員会のおっさんと違って。
「そこで一つ聞きたい」
「なんでしょう?」
「君は奴に勝てる見込みはあるか?」
「……」
そうだな、この質問が当たり前で適切なんだ。
おっさんがあまりにも短絡すぎるだけで。
だったら俺も今できる精一杯の返事を返そう。
「正直に言えば、ありません。勝てるなんて普通なら思えませんよ」
「……」
「ですがやらなければならない。無理を通してでも。そのために俺は来たんです」
「……いい答えだ」
すると杉浦三佐が俺の肩を「トントン」と叩いてくれた。
シワだらけの顔で大きくうなづきを一つしながら。
「ならば我々は君の要求に全力で応えよう。自衛隊は君が死ぬか、合図しない限り絶対に手を出さないと約束する」
「っ!? ありがとうございます!」
どうやらこの人はわかってくれたらしい。
統率者がしっかりした人で助かったよ。
もしこんな人がいなかったら本気で帰る所だったしな。
よし、これで心置きなく楠に挑む事ができそうだ!
……と、そう思っていた矢先に杉浦三佐が何かを差し出してきた。
片手でも持てる武器を一本、鞘とベルトをセットで。
「それと間宮君、これを持っていきたまえ」
「これはアーミーナイフ?」
「そうだ。何もないよりはマシだろう? これでもダンジョンで使う武器に見劣りはしないはずだ。おそらく戦うのは、外でだろうからな」
「……そうですね。では、ありがたくいただきます」
助かる。
丸腰で戦うのにはちょっと気が引けていたからな。
それでナイフを受け取り、装着ベルトを腰に回す。
少しズシリと重いが許容内だ。
「問題無いか?」
「ええ、これくらいなら飽きるほど奮ってきたんで」
「とても子どもとは思えない答えだな。転生でもしてきたのかな?」
「するまでもないですよ。人生って思ったより長いんで」
「頼りがいのある大人の返事だな。よし、行ってこい!」
「うす!」
そんな俺へと向けて、杉浦三佐が掌をかざしてくる。
だから俺はその掌を堂々と思いっきり「パァーン!」と叩いてやった。
おかげで自信が少しついたよ。
これで心置きなく奴と戦えそうだ。
――こうして俺は人々に見守られる中で一歩を踏み出した。
景色のずっと先にあるダンジョン、そこにいる楠へと向かって。
たとえダンジョンの外だろうと関係は無い。
今までの経験と知識を生かし、なんとしてでも奴を倒してやる。
それしか道が無いのなら、今度は理不尽を正道でまかり通すだけだっ!!!
だとすれば自衛隊と連携を取る事も容易だろう。
だったら今回ばかりは無茶を通させてもらう。
お前達の早とちりで殺されたらたまったもんじゃないからな。
なんでもない子どもを当て馬にするからには腹くらい括ってもらうぞ!
「今すぐ約束して、自衛隊員に今の通り命令を出してください。さもなければ俺はこのまま踵を返して帰るだけです」
「なっ!? ま、待ちたまえ!」
「何を待つっていうんですか!?」
「ッ!?」
だが相変わらず煮え切らないおっさんだ。
いつも何もかも中途半端で、適当で、その上で短絡的過ぎる!
あんた達がそう適当だから楠が紛れていた事にも気付かない!
それはあんた達が、俺達をただの消耗品としか見ていないからッ!!
だったらその消耗品なりに抵抗するまでだ!
俺達にだって意思はあるって事を教えてやる!
「そうしている間に奴は卵を産んでいるかもしれない! 何かしらの策を立てているかもしれない! そうやって事の重大さを考えずにやり過ごして起きたのがあのレッドオークの事件でしょうが!」
「うっ!?」
「他だってそうだ! あんた達は事が済めばいいと適当に受け流して、その結果起きたのがこのザマだ! 俺がそうならないために情報を提供したっていうのに!」
「そ、それは……」
だいたい、今日の事だって俺を呼んでどうする気だったんだ?
子どもの俺でなら生身で魔物に勝てるとでも?
普通に考えたらそんな発想なんて出る訳がないだろ!
想像力の欠如もはなはだしい!
「結局あんた達はうわべでだけ動いているに過ぎないんだ。いつも『民意に従って~』とか綺麗ごとを言って事の重大さをちっとも理解しないで進めて!」
そうさ、いつも事が起きるとあんた達の不手際が目立っていた。
俺達だけの問題と見せかけて、なにかしら絡んで傷口を広げていく。
それはあんた達が常に煮え切らない行動ばかりしていたから……!
「だったらこんな時くらい意地を通してみせろよ! それがお前達大人の役割で、使命で、責任だろうがあッ!!!!!」
「「「!!?」」」
だから俺が!
あんた達の!
尻拭いをやってやるってんだ!
そのために今ここで腹をくくれ、このでしゃばり野郎ッッッ!!!!!
「あ、そのだね、私にそんな権限は無くて」
「は?」
「え!? あ、いや、その……」
……やっぱりダメだこのおっさんは。
さしずめ目上の人から役割を押し付けられただけの存在って所かな。
そりゃそうだよな、ダンジョン攻略なんてボランティアみたいなものでお金になりはしないだろうから。
ならもう本気で帰るしかないか――
「話に割って入ってすまない。少し良いだろうか?」
「えっ?」
「私は本作戦の指揮を任されている陸上自衛隊所属の杉浦三佐だ」
そう思った矢先、おっさんの裏にいた自衛官の一人がみずから名乗り出てきた。
おっさんと違い、堂々としていて体付きも全体的に大きい。
まさに軍人そのものといったような人物だ。
「魔物が外へと出た以上、本作戦の指揮系統はすべて私に移譲されている。よって彼にそこまでの決定権は無い」
「そうかもしれません。けど俺はそこに憤っている訳じゃないんですよ」
「わかっている。色々と我々でもあずかり知らぬことがあるのだろう。その件に関しては後ほど上層部を通して追求する事にしよう」
「必要であれば情報提供もしますよ」
「ああ頼む。だが今はそれどころではない」
「……そうっすね」
こっちは話がわかりそうだな。
バツが悪そうに縮こまっている委員会のおっさんと違って。
「そこで一つ聞きたい」
「なんでしょう?」
「君は奴に勝てる見込みはあるか?」
「……」
そうだな、この質問が当たり前で適切なんだ。
おっさんがあまりにも短絡すぎるだけで。
だったら俺も今できる精一杯の返事を返そう。
「正直に言えば、ありません。勝てるなんて普通なら思えませんよ」
「……」
「ですがやらなければならない。無理を通してでも。そのために俺は来たんです」
「……いい答えだ」
すると杉浦三佐が俺の肩を「トントン」と叩いてくれた。
シワだらけの顔で大きくうなづきを一つしながら。
「ならば我々は君の要求に全力で応えよう。自衛隊は君が死ぬか、合図しない限り絶対に手を出さないと約束する」
「っ!? ありがとうございます!」
どうやらこの人はわかってくれたらしい。
統率者がしっかりした人で助かったよ。
もしこんな人がいなかったら本気で帰る所だったしな。
よし、これで心置きなく楠に挑む事ができそうだ!
……と、そう思っていた矢先に杉浦三佐が何かを差し出してきた。
片手でも持てる武器を一本、鞘とベルトをセットで。
「それと間宮君、これを持っていきたまえ」
「これはアーミーナイフ?」
「そうだ。何もないよりはマシだろう? これでもダンジョンで使う武器に見劣りはしないはずだ。おそらく戦うのは、外でだろうからな」
「……そうですね。では、ありがたくいただきます」
助かる。
丸腰で戦うのにはちょっと気が引けていたからな。
それでナイフを受け取り、装着ベルトを腰に回す。
少しズシリと重いが許容内だ。
「問題無いか?」
「ええ、これくらいなら飽きるほど奮ってきたんで」
「とても子どもとは思えない答えだな。転生でもしてきたのかな?」
「するまでもないですよ。人生って思ったより長いんで」
「頼りがいのある大人の返事だな。よし、行ってこい!」
「うす!」
そんな俺へと向けて、杉浦三佐が掌をかざしてくる。
だから俺はその掌を堂々と思いっきり「パァーン!」と叩いてやった。
おかげで自信が少しついたよ。
これで心置きなく奴と戦えそうだ。
――こうして俺は人々に見守られる中で一歩を踏み出した。
景色のずっと先にあるダンジョン、そこにいる楠へと向かって。
たとえダンジョンの外だろうと関係は無い。
今までの経験と知識を生かし、なんとしてでも奴を倒してやる。
それしか道が無いのなら、今度は理不尽を正道でまかり通すだけだっ!!!
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