実家が先行実装ダンジョンだった俺、同級生の女子に誘われたので今度は正式実装版で無双をやってみた。え、配信された攻略動画がバズってるって!?

日奈 うさぎ

文字の大きさ
上 下
121 / 126

第121話 理不尽を正道でまかり通せ

しおりを挟む
 ダンジョン攻略委員会はたしか防衛庁の管轄だったはず。
 だとすれば自衛隊と連携を取る事も容易だろう。

 だったら今回ばかりは無茶を通させてもらう。
 お前達の早とちりで殺されたらたまったもんじゃないからな。
 なんでもない子どもを当て馬にするからには腹くらい括ってもらうぞ!

「今すぐ約束して、自衛隊員に今の通り命令を出してください。さもなければ俺はこのまま踵を返して帰るだけです」
「なっ!? ま、待ちたまえ!」
「何を待つっていうんですか!?」
「ッ!?」

 だが相変わらず煮え切らないおっさんだ。
 いつも何もかも中途半端で、適当で、その上で短絡的過ぎる!
 あんた達がそう適当だから楠が紛れていた事にも気付かない!

 それはあんた達が、俺達をただの消耗品としか見ていないからッ!!

 だったらその消耗品なりに抵抗するまでだ!
 俺達にだって意思はあるって事を教えてやる!

「そうしている間に奴は卵を産んでいるかもしれない! 何かしらの策を立てているかもしれない! そうやって事の重大さを考えずにやり過ごして起きたのがあのレッドオークの事件でしょうが!」
「うっ!?」
「他だってそうだ! あんた達は事が済めばいいと適当に受け流して、その結果起きたのがこのザマだ! 俺がそうならないために情報を提供したっていうのに!」
「そ、それは……」

 だいたい、今日の事だって俺を呼んでどうする気だったんだ?
 子どもの俺でなら生身で魔物に勝てるとでも?
 普通に考えたらそんな発想なんて出る訳がないだろ!

 想像力の欠如もはなはだしい!

「結局あんた達はうわべでだけ動いているに過ぎないんだ。いつも『民意に従って~』とか綺麗ごとを言って事の重大さをちっとも理解しないで進めて!」

 そうさ、いつも事が起きるとあんた達の不手際が目立っていた。
 俺達だけの問題と見せかけて、なにかしら絡んで傷口を広げていく。

 それはあんた達が常に煮え切らない行動ばかりしていたから……!

「だったらこんな時くらい意地を通してみせろよ! それがお前達大人の役割で、使命で、責任だろうがあッ!!!!!」
「「「!!?」」」

 だから俺が!
 あんた達の!
 尻拭いをやってやるってんだ!

 そのために今ここで腹をくくれ、このでしゃばり野郎ッッッ!!!!!

「あ、そのだね、私にそんな権限は無くて」
「は?」
「え!? あ、いや、その……」

 ……やっぱりダメだこのおっさんは。
 さしずめ目上の人から役割を押し付けられただけの存在って所かな。
 そりゃそうだよな、ダンジョン攻略なんてボランティアみたいなものでお金になりはしないだろうから。

 ならもう本気で帰るしかないか――

「話に割って入ってすまない。少し良いだろうか?」
「えっ?」
「私は本作戦の指揮を任されている陸上自衛隊所属の杉浦三佐だ」

 そう思った矢先、おっさんの裏にいた自衛官の一人がみずから名乗り出てきた。
 おっさんと違い、堂々としていて体付きも全体的に大きい。
 まさに軍人そのものといったような人物だ。

「魔物が外へと出た以上、本作戦の指揮系統はすべて私に移譲されている。よって彼にそこまでの決定権は無い」
「そうかもしれません。けど俺はそこに憤っている訳じゃないんですよ」
「わかっている。色々と我々でもあずかり知らぬことがあるのだろう。その件に関しては後ほど上層部を通して追求する事にしよう」
「必要であれば情報提供もしますよ」
「ああ頼む。だが今はそれどころではない」
「……そうっすね」

 こっちは話がわかりそうだな。
 バツが悪そうに縮こまっている委員会のおっさんと違って。

「そこで一つ聞きたい」
「なんでしょう?」
「君は奴に勝てる見込みはあるか?」
「……」

 そうだな、この質問が当たり前で適切なんだ。
 おっさんがあまりにも短絡すぎるだけで。

 だったら俺も今できる精一杯の返事を返そう。

「正直に言えば、ありません。勝てるなんて普通なら思えませんよ」
「……」
「ですがやらなければならない。無理を通してでも。そのために俺は来たんです」
「……いい答えだ」

 すると杉浦三佐が俺の肩を「トントン」と叩いてくれた。
 シワだらけの顔で大きくうなづきを一つしながら。

「ならば我々は君の要求に全力で応えよう。自衛隊は君が死ぬか、合図しない限り絶対に手を出さないと約束する」
「っ!? ありがとうございます!」

 どうやらこの人はわかってくれたらしい。
 統率者がしっかりした人で助かったよ。
 もしこんな人がいなかったら本気で帰る所だったしな。

 よし、これで心置きなく楠に挑む事ができそうだ!

 ……と、そう思っていた矢先に杉浦三佐が何かを差し出してきた。
 片手でも持てる武器を一本、鞘とベルトをセットで。

「それと間宮君、これを持っていきたまえ」
「これはアーミーナイフ?」
「そうだ。何もないよりはマシだろう? これでもダンジョンで使う武器に見劣りはしないはずだ。おそらく戦うのは、外でだろうからな」
「……そうですね。では、ありがたくいただきます」

 助かる。
 丸腰で戦うのにはちょっと気が引けていたからな。

 それでナイフを受け取り、装着ベルトを腰に回す。
 少しズシリと重いが許容内だ。

「問題無いか?」
「ええ、これくらいなら飽きるほど奮ってきたんで」
「とても子どもとは思えない答えだな。転生でもしてきたのかな?」
「するまでもないですよ。人生って思ったより長いんで」
「頼りがいのある大人の返事だな。よし、行ってこい!」
「うす!」

 そんな俺へと向けて、杉浦三佐が掌をかざしてくる。
 だから俺はその掌を堂々と思いっきり「パァーン!」と叩いてやった。

 おかげで自信が少しついたよ。
 これで心置きなく奴と戦えそうだ。



 ――こうして俺は人々に見守られる中で一歩を踏み出した。
 景色のずっと先にあるダンジョン、そこにいる楠へと向かって。

 たとえダンジョンの外だろうと関係は無い。
 今までの経験と知識を生かし、なんとしてでも奴を倒してやる。

 それしか道が無いのなら、今度は理不尽を正道でまかり通すだけだっ!!!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた

羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件 借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...