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第51話 お嬢様はどこまで愚かなのか
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司条遥め、せっかく助けてやったっていうのに。
この期に及んでまだ自分本位を貫くつもりか!?
一体どこまで自己中心的なんだ、この女はっ!
今の一言で奴の仲間達が動揺しているようにも見える。
せっかく纏まりそうだったのに、クソ……!
「さぁ今すぐわたくしを連れ出して――」
「間宮、右ルートへ急ごう。悠長におしゃべりしている暇はないはずだ」
「なッ!?」
「すいませぇん遥様ぁ、私達ぃ、仲間を守る事の方が大事なのでー」
え、彼等が反旗を翻した……?
これは思ってもなかった反応だ。
でもまともな思考の持ち主で助かったかもしれない。
彼等がそっぽを向いて奥の道に歩き始めていく。
……どうやらすでに何かやらかしたみたいだな、司条遥は。
「ま、待ちなさい! 何を考えているのあなた達は!」
「まともに聞くなみんな。もうあの人の考えにはついていけない」
「今まで報酬も支払い、高級品も与えて傍に置いてやった恩も忘れて!」
「同感。いくらなんでももうやりすぎよね」
「それなのに主のわたくしをまた置いていくなんてぇ!」
この置き去り感、もはや自業自得だな。
今まで自分勝手にやり過ぎた結果がこれなんてさ。
信頼は金では買えない……まさにその略図がここにある。
「この下民風情が! わたくしをないがしろにするなんておこがましい! わたくしのような上級国民がいるからこそお前達が安心して生きられているって事を知らないクセにぃぃぃ! 死んでしまえぇ! お前達みたいな恩知らずのウジムシはみんな魔物に喰われて死んじまえええ!!!!!」
しかも興奮するがままとんでもない爆弾発言までしているぞ!?
腹痛がひどすぎて冷静な判断力を失っているんじゃないか!?
よく見れば目もすごい震えてるし、口から泡を吹いているようにも見える。
本気で我慢してるっぽいな……。
ともあれ一位メンバー達ももう怒りを通り越して呆れているらしい。
顔を覗き込んだらみんなして落胆し、目を据わらせている。
よほど飽き飽きしているんだろうな。
それで俺達は司条遥を捨て置き、奥の通路を通って右ルートへと進んだ。
今度は俺達含めて総勢十一人と一匹。
この人数で背後に回り込めば、いくら敵が本隊だとしてもそう苦戦はしないだろう。
そんなつもりで右ルート部屋へと向かったのだけど。
「間宮、もしかしてこれ僕達が来る意味なかったんじゃないか?」
状況は予想以上に好転していた。
それも澪奈部長とモモ先輩の想像を超えた活躍によって。
二人が狭い空間を縦横無尽に飛び回る。
そして柱に隠れる魔物を次々と撃破しているんだ。
まるで二人が絆ライディングを行っているかのごとく、手を繋いだままに。
澪奈部長がモモ先輩の手を取り、床や壁を蹴って一緒に飛び跳ねていて。
モモ先輩は狙いを定めて収縮率の高い光線魔法を解き放つ。
その圧倒的な速さにオーク達も対処できず、ただされるがまま。
人質を盾にくくり付けて応戦していても関係無い、頭や体を死角から吹き飛ばされるだけだ。
致命傷にならなくても澪奈部長が追撃してしっかりトドメを差しているぞ!?
すごい、二人はここまで今の能力を活かせているのか。
俺が思っていた以上の成長っぷりじゃないか。
「すっご……パイセン達、半端ないなー」
「経験は豊富だし、信頼し合っているからだろうなぁ」
「いいな、絆ライディングみたいでかっこいいー!」
つくしも同意見みたいだ。まぁそうとしか思えない戦況なんだけど。
そのおかげで、俺達が着いて間もなく戦いは終了。
するとやっと俺達に気付いたらしく、澪奈部長とモモ先輩が駆け寄って来た。
「きたねー中央組ィ! でもあーしらがイイトコ持ってったからぁ!」
「うん、見てました。すごい成長を見られて感動ですよ」
「ああ、僕達も見させてもらった。遥様――あの女の動きよりもずっとすごい」
「コンビネーションが重要だってはっきり認識させられたよね!」
「おお~彼方やないか! 遅かったやん~!」
どうやら匠美さん達も無事らしい。
ケガ人こそいるみたいだけど、悲観的になっていない辺りはそこまで被害甚大とはなっていないようだ。
良かった。
これならリカバリーも含め、割と余裕があるかも――
「――うっ、なんだ!?」「今ダンジョンが揺れた?」
「この揺れ、コアが破壊された感じやな?」
何ッ!? そんなバカな!?
コアは破壊せずに置いといて――
「ハッ!? ま、まさか……司条遥がやったのか!?」
「な、なんでー!? あの人あたしの回復魔法のせいで腹痛だったんじゃないのー!?」
「くっ、まずい! でも問答している暇はない! 人質を全員探して助けよう! 残り八人はいるはずなんだ!」
「よ、よしお前らァ! 急いで人質を探せぇ!」
「こっちで二人救助してあるわ!」「こっちは一人だけ!」
「まだ五人見つかっていない!? 探すんだ! 急げッ!!」
なんてこった!
こんな事があるなら無理矢理にでもアイツを追い出しておけばよかった!
まずいぞ、このままだと回復はできても蘇生までのリカバーが間に合わない!
蘇生は今の俺やコンでも枯渇しかねないくらいマナを消耗するんだ!
なのに残りたった三〇分……!
それまでに俺達のマナが自然回復しきれるのか!?
この期に及んでまだ自分本位を貫くつもりか!?
一体どこまで自己中心的なんだ、この女はっ!
今の一言で奴の仲間達が動揺しているようにも見える。
せっかく纏まりそうだったのに、クソ……!
「さぁ今すぐわたくしを連れ出して――」
「間宮、右ルートへ急ごう。悠長におしゃべりしている暇はないはずだ」
「なッ!?」
「すいませぇん遥様ぁ、私達ぃ、仲間を守る事の方が大事なのでー」
え、彼等が反旗を翻した……?
これは思ってもなかった反応だ。
でもまともな思考の持ち主で助かったかもしれない。
彼等がそっぽを向いて奥の道に歩き始めていく。
……どうやらすでに何かやらかしたみたいだな、司条遥は。
「ま、待ちなさい! 何を考えているのあなた達は!」
「まともに聞くなみんな。もうあの人の考えにはついていけない」
「今まで報酬も支払い、高級品も与えて傍に置いてやった恩も忘れて!」
「同感。いくらなんでももうやりすぎよね」
「それなのに主のわたくしをまた置いていくなんてぇ!」
この置き去り感、もはや自業自得だな。
今まで自分勝手にやり過ぎた結果がこれなんてさ。
信頼は金では買えない……まさにその略図がここにある。
「この下民風情が! わたくしをないがしろにするなんておこがましい! わたくしのような上級国民がいるからこそお前達が安心して生きられているって事を知らないクセにぃぃぃ! 死んでしまえぇ! お前達みたいな恩知らずのウジムシはみんな魔物に喰われて死んじまえええ!!!!!」
しかも興奮するがままとんでもない爆弾発言までしているぞ!?
腹痛がひどすぎて冷静な判断力を失っているんじゃないか!?
よく見れば目もすごい震えてるし、口から泡を吹いているようにも見える。
本気で我慢してるっぽいな……。
ともあれ一位メンバー達ももう怒りを通り越して呆れているらしい。
顔を覗き込んだらみんなして落胆し、目を据わらせている。
よほど飽き飽きしているんだろうな。
それで俺達は司条遥を捨て置き、奥の通路を通って右ルートへと進んだ。
今度は俺達含めて総勢十一人と一匹。
この人数で背後に回り込めば、いくら敵が本隊だとしてもそう苦戦はしないだろう。
そんなつもりで右ルート部屋へと向かったのだけど。
「間宮、もしかしてこれ僕達が来る意味なかったんじゃないか?」
状況は予想以上に好転していた。
それも澪奈部長とモモ先輩の想像を超えた活躍によって。
二人が狭い空間を縦横無尽に飛び回る。
そして柱に隠れる魔物を次々と撃破しているんだ。
まるで二人が絆ライディングを行っているかのごとく、手を繋いだままに。
澪奈部長がモモ先輩の手を取り、床や壁を蹴って一緒に飛び跳ねていて。
モモ先輩は狙いを定めて収縮率の高い光線魔法を解き放つ。
その圧倒的な速さにオーク達も対処できず、ただされるがまま。
人質を盾にくくり付けて応戦していても関係無い、頭や体を死角から吹き飛ばされるだけだ。
致命傷にならなくても澪奈部長が追撃してしっかりトドメを差しているぞ!?
すごい、二人はここまで今の能力を活かせているのか。
俺が思っていた以上の成長っぷりじゃないか。
「すっご……パイセン達、半端ないなー」
「経験は豊富だし、信頼し合っているからだろうなぁ」
「いいな、絆ライディングみたいでかっこいいー!」
つくしも同意見みたいだ。まぁそうとしか思えない戦況なんだけど。
そのおかげで、俺達が着いて間もなく戦いは終了。
するとやっと俺達に気付いたらしく、澪奈部長とモモ先輩が駆け寄って来た。
「きたねー中央組ィ! でもあーしらがイイトコ持ってったからぁ!」
「うん、見てました。すごい成長を見られて感動ですよ」
「ああ、僕達も見させてもらった。遥様――あの女の動きよりもずっとすごい」
「コンビネーションが重要だってはっきり認識させられたよね!」
「おお~彼方やないか! 遅かったやん~!」
どうやら匠美さん達も無事らしい。
ケガ人こそいるみたいだけど、悲観的になっていない辺りはそこまで被害甚大とはなっていないようだ。
良かった。
これならリカバリーも含め、割と余裕があるかも――
「――うっ、なんだ!?」「今ダンジョンが揺れた?」
「この揺れ、コアが破壊された感じやな?」
何ッ!? そんなバカな!?
コアは破壊せずに置いといて――
「ハッ!? ま、まさか……司条遥がやったのか!?」
「な、なんでー!? あの人あたしの回復魔法のせいで腹痛だったんじゃないのー!?」
「くっ、まずい! でも問答している暇はない! 人質を全員探して助けよう! 残り八人はいるはずなんだ!」
「よ、よしお前らァ! 急いで人質を探せぇ!」
「こっちで二人救助してあるわ!」「こっちは一人だけ!」
「まだ五人見つかっていない!? 探すんだ! 急げッ!!」
なんてこった!
こんな事があるなら無理矢理にでもアイツを追い出しておけばよかった!
まずいぞ、このままだと回復はできても蘇生までのリカバーが間に合わない!
蘇生は今の俺やコンでも枯渇しかねないくらいマナを消耗するんだ!
なのに残りたった三〇分……!
それまでに俺達のマナが自然回復しきれるのか!?
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