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第49話 不遜な怪物に究極の一刺しを

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 やっぱりオーク陣営側にも連絡通路があった。
 だからと進んでみれば中央部屋に直通ときたか。

 だがもう着いた時には手遅れだった。
 まさかあの司条遥があんな醜態をさらしてたなんて。

 幸い、俺達はまだ奴らに気付かれていない。
 この通路が岩陰に隠れていて、かつ高所にあるから盲点になっているんだ。
 だから隠れて眺めているけど……もうほぼ決着が着きそうな雰囲気じゃないか。

 しかも敵のあの姿。
 あれは明らかに先日見たボスオークなんかじゃないぞ……!

「な、なんなのあれ……あたし達が知るボスじゃない」
「あれはおそらく、寄生体だと思う」
「き、寄生体!? なにそれ!?」
「なんらかのきっかけで転移前に宿主へと寄生した魔物の事だよ」

 体付きはたしかにオークのそれにそっくりで、胴長短腕短足の筋肉質。
 けど頭部だけは長い触角が付いた甲虫類みたいなトゲトゲしいフォルム。
 アンバランスだからこそ奴がそういう存在だってすぐ気付けた。

「あくまで仮説だけど、寄生体っていうのは宿主の体内のどこかに宿ると、密かにマナを吸って成長するんだ。そしてある一定まで成長した状態で宿主が死ぬと、死んだ体からマナが霧散する前に一気に吸い取り、急成長する」
「ひええ……」
「そういう性質を持っているから成長後は宿主の肉体に近くなるし、知能も能力も引き継ぐ。おまけに急激な進化も遂げて宿主よりもはるかに強くなるんだ」

 それにしたって大き過ぎだ。もう宿主の二倍近い大きさだぞ!?
 身長的には六メートルくらいと、あのでちこちゃんが小さく思えるほどの巨大さじゃないか……!

「でもあんなの会った事ないよ!?」
「ああ、俺だって成体に遭遇したのは二度しかない。たぶん成体にならないと宿主が死んでも表に出てこられないんだと思う」

 だが遭遇すれば苦戦は必至。
 俺も一度だけコンと二人で戦った事があったけど、あの時は本当に厳しかった。
 絆ライディングがあったおかげで五分五分に戦えた、というギリギリのレベルで。

 まぁもう一つは父さんと母さんが力を合わせたおかげで楽に勝てた訳だけれど。

「……だけど今回はダンジョンで、低レベルだ」
「えっ?」
「おまけに気付かれていないのなら勝機は充分にあるさ」

 ただし苦戦したのはあくまで俺達から見て格上だった時。
 今は明らかに格下で、司条遥やその仲間に気を取られて背中を向けている。

 なら、奇襲で一気にケリをつける事も可能!

『コン、アームドライドだ』
『わかったよカナタ、あいつに見つからないように、かつ最大火力の武器になればいいんだね?』
『ああ、そしてその答えはもうあるだろう?』
『当然さ!』

 ゆえに俺は静かにコンを右腕に宿させた。
 僅かな輝き、僅かなマナの流動で、時間をかけてゆっくりと。

「で、でたぁ……」
「つくし、少しの間だけ背後の岩陰に隠れているんだ。今から撃つのは、普通の弾じゃないから……!」

 その間につくしも下がらせておく。
 なにせ今形成している武器は普通の兵器とは格が違うからね。

 コンの形を象らせた長砲身ができていく。
 マナの輝きが力の道筋を形成し、息づき、胎動する。
 生物でありながらも機械、その異質特性を俺達の想像力で構築。

 そうして出来上がったのは――超電磁砲レールガン

 その名も【コン式・瞬雷軌閃たるマナティクス孤獣の一刺しレールキャノン】!
 三メートルの細い砲身に三又の反動軽減装置を備えた超長大武装だ!!!

「タイミングは一度。だが隙だらけだ。まったくもって問題はない」

 レールガンは本来、現在でも改良段階でしかなく量産は不可能とされた武器。
 あまりの高エネルギー消耗率ゆえに実現性が無いとされている。

 しかしそんな理屈など関係は無い。
 俺とコンの想像力とマナが不足理論をすべてカバーするからこそ。

 形成だけで俺達のマナの総量を十分の一も使う。
 さらには弾を発射するだけでも半分はごっそり持っていかれる。

 だがそうしてできあがった武器はどんな相手だろうと消し飛ばせるのだ。
 父さんと母さんが太鼓判を押すこの武器ならば、倒せない敵はいない。

 だからこそ自信のまま、僅かな死角から確実に狙いを定めた。
 司条遥をなぶる事を楽しみ、高笑いしている奴の頭部へ向けて。

 そして今、トリガーへと指をかける。

「ウガッ!?」
「やっと気付いたようだが、もう遅い」

 ――発射。

 途端、爆光が弾け飛ぶ。
 砲塔からも、銃背部の反動軽減機構からも。

 そうして放たれた弾はコンマ001秒で光速へ到達。
 かつ弾道に存在するすべての障害物を消し飛ばす。

 計算通りだ。

 寄生体ボスの頭部が、肩部をも巻き込んで一瞬で消滅。
 それだけでなく軸線上の床や壁をも深々と削り取った。

 けど司条遥は無事だ。僅かに離れた瞬間を狙ったからな。
 弾け飛んだ魔物の手指から離れて落ちていく。
 落ち方はちょっと不安だったけど、ダンジョンの中で身体強化されているから心配はいらないだろう。

「つくし! コン! 今だ、残党を処理するぞっ!」
「きたきたぁー! あたしの出番だぁーーーっ!」

 いくら寄生体でも頭部を破壊されれば死ぬ。完全におしまいだ。
 だったら倒れる間を待つ必要さえ無い。

 ゆえに俺達は即時に、一気に飛び出した。
 残るレッドオーク七匹を殲滅するために!

 案の定、オーク達は逃げるばかり。
 ボスがやられた事で統制を失ってしまったらしい。
 予想通りの展開だ。

 だけど容赦はしないぞ!
 俺達から攻めたのは事実だが、ここまでやったからにはさらにやり返された事への文句など言わせるものか!

 そんな想いで奴らを包囲し、追い詰め、殴り飛ばして爆散させる。
 コンも強烈なテールアタックでオークの頭を吹き飛ばしていた。

「ふンッぎゃあああーーーっっっ!!!!!」

 つくしに至っては尋常じゃない成長を遂げていたみたいだ。
 キラッキラな短杖で叩き潰しているが、攻撃力があまりに強過ぎて敵の体が真っ二つになってしまっている。
 成長の方向性が相変わらずおかしい! 気合いの叫び声もおかしい!

 ただ彼女の勢いは本物だ。
 立て続けに二匹三匹と仕留めていく。俺も負けていられないな。

 だから俺も高速で駆け抜け、一位チームと戦うオークを消し飛ばしてやった。

「んなっ!? つ、強い……!?」
「嘘でしょ、あいつを一撃って!?」
「化け物かよ……!?」

 唖然としている暇は無いと思うんだが?
 まぁそれならそれで俺達が処理すればいいだけだけど。

 ――とはいえ、だ。
 振り向いた時にはもうつくしとコンが同時にフィニッシュを決めていた。
 この部屋にもう敵らしき影はない……殲滅完了かな。

 すなわち中央ルート、ボス部屋制圧完了。
 残すはあと右ルートの部屋だけだ。
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