34 / 126
第34話 トップオブトップス
しおりを挟む
魔物を言葉で説得だと!?
しかも武器を手から離して!?
こ、このプレイヤーは一体何を考えているんだ!?
『君達も巻き込まれてダンジョンに来たんだろう? だったら戦う意味は無いじゃないか!』
「こ、これってもしかして……」
「そだよ。これねたぶん、彼等は彼方っちの真似してるん」
「えっ!?」
相手はレッドオークとかいう二足歩行の魔物。
醜い豚のような頭に三メートル級の高い背丈と分厚い肉付き。
くわえて胴長短足と、人と姿形はまったく違う――が、装備を扱っている。
つまり相応に賢いという事だ。
文化や文明を持っていてもおかしくないくらいに。
だが、だからといって説得が叶うといえばそんな訳がない!
むしろ賢いからこそ、相手の挙動から隙を突く手段さえ思い付くだろう!
「でちこちゃんを説得した話はもう有名だしねぇ、だから自分達にもできるって思ったんじゃないかな」
「ヒヒ、委員会でも魔物の説得は無理って言われてるんだけどね……」
「ば、馬鹿な……それなのに丸腰で敵意も示さないって!? こいつ死ぬ気なのか!?」
武器を晒せば敵意があると思われる、というのは少し違う。
武器はあくまで警戒心の表れで、自衛手段の形になるんだ。
だから切っ先さえ向けなければそれは敵意とはならない。
けど武器を収めてしまえば、相手にとってのそれは――従属宣言となる!
そして当然ながら普通の魔物に日本語は通じない。
そんな事くらいは言われなくてももうわかり切っているだろうに……!
『あ、まずいぞ! 魔物達が使者プレイヤーを取り囲んだ! それだけじゃない、雑兵がいつの間にか他プレイヤー達も包囲している!? これはまずい、退路を確保しないと大惨事になるぞ!?』
『な、何をするんだ!? 俺達は戦うつもりはうわぁああ!?』
『やめてーっ! きゃああああ!』
『に、逃げろ! やっぱり説得なんて無理だったんだ!』
『イヤァ! 離して! イヤァァァァ!』
それで待っていたのは、いきなりの阿鼻叫喚だ。
説得に出た男子プレイヤーは即座にメッタ刺しにされてしまった。もう多分生きてはいないだろう。
包囲されていたメンバー達もある程度は逃げられたものの、数人かは捕まってしまったようだ。
もう内部動画が途切れてしまったけど、寸前で魔物に暴行される様子が見えた。
たしかに酷い。酷すぎる。
一体誰がこんな作戦を考えたのか問いただしたいくらいに。
誰だって普通わかるだろう!? 人語での説得なんて絶対無理なんだって!
「ね、酷いもんっしょ?」
「うん、これは幾らなんでも浅はかで無謀過ぎる。どうしてこんな事をしようと思ったのかまったく理解できない」
「彼方っちの説得劇って結構センセーショナルだったからねぇ。『自分達だって!』ってイキっちゃう人は多いと思う。みんな目立ちたがり屋だからさぁ~」
「彼方がでちこちゃん説得したのは特殊なケースなんだっけ?」
「ああ、手を出した以上はね。あれだけ暴れてたら普通なら懐柔は無理だった。けど俺はコンから彼等との直接会話の手段を教えてもらってたからさ、それを使って強引に場を収めたに過ぎないんだ」
こんな事ならでちこちゃん説得時の詳細をきちんと伝えておくべきだったか。
……いや、たぶんその意味は無いな。今のは手順自体は悪くないから。
ただ単に、この敵が説得不可能な相手というだけに過ぎない。
ああクソ、思っていた以上にプレイヤー達全体の知能が浅い。
まだ学生な人ばかりだから仕方ないのかもしれないけど、あまりに短絡的すぎる。
「まぁ~もぉ今回に懲りて説得なんて馬鹿な事はしないでしょーねぇ」
「そうなってくれるといいな。でも捕まった人達はどうなるんだ?」
「相手も相手だしぃ、トップオブトップスが出張って救出するでしょ~。中に人がいる限り内部がリセットされる事はないしぃ」
そうか、一応はそんな強い人達からの助けが入るんだ。
それまで捕まった人達が無事ならいいんだけど。
それにしても、トップオブトップス、か。
よく聞く名前だけど言及した事はなかったな。
「へぇ……ところでよく出てくるそのトップオブトップスって一体何です?」
「日本最上位ランカートップテンの総称だよー! すっごい強い人達なの!」
「ククク、以前からプレイヤーを引っ張ってくれている象徴的存在ね……眩し過ぎて私の影が深くなってしまうくらいに」
「モモパイセンは元々影薄――」
「ゲッタァーーーウ!!!!!」
「あいたーーーっ! 澪奈パイセンなんでーっ!?」
なるほど、日本にはそれだけ強い集団がいたのか。
そういえば初めてダンジョンに入った時、委員会のおっさんも頼るように呟いていたっけ。
「ま、九州だからあーしらには縁もゆかりも無い話っしょ」
「――そうでもないぞ」
「あ、紅先生いつのまに」
「ちょちょ……紅センセーそれどういう事なん?」
けどいきなり紅先生が廊下から現れて、いきなり妙な事を言いだした。
何か嫌な予感がするんだが。
「喜べお前達、本日付けで宝春学園ダンジョン部は晴れて全国ランキング十一位、仮トップオブトップス入りだ。それでもって明日には九州に行く事になった。泊まりになるだろうから早く帰って準備を進めておけ」
え、ちょっと待って。
エースとかを突き抜けてトップ入り?
先生それ順序が違わなくありませんかね???
うーん、俺まだ入学して二週間目だけどもう勉強が遅れる気しかしない!
しかも武器を手から離して!?
こ、このプレイヤーは一体何を考えているんだ!?
『君達も巻き込まれてダンジョンに来たんだろう? だったら戦う意味は無いじゃないか!』
「こ、これってもしかして……」
「そだよ。これねたぶん、彼等は彼方っちの真似してるん」
「えっ!?」
相手はレッドオークとかいう二足歩行の魔物。
醜い豚のような頭に三メートル級の高い背丈と分厚い肉付き。
くわえて胴長短足と、人と姿形はまったく違う――が、装備を扱っている。
つまり相応に賢いという事だ。
文化や文明を持っていてもおかしくないくらいに。
だが、だからといって説得が叶うといえばそんな訳がない!
むしろ賢いからこそ、相手の挙動から隙を突く手段さえ思い付くだろう!
「でちこちゃんを説得した話はもう有名だしねぇ、だから自分達にもできるって思ったんじゃないかな」
「ヒヒ、委員会でも魔物の説得は無理って言われてるんだけどね……」
「ば、馬鹿な……それなのに丸腰で敵意も示さないって!? こいつ死ぬ気なのか!?」
武器を晒せば敵意があると思われる、というのは少し違う。
武器はあくまで警戒心の表れで、自衛手段の形になるんだ。
だから切っ先さえ向けなければそれは敵意とはならない。
けど武器を収めてしまえば、相手にとってのそれは――従属宣言となる!
そして当然ながら普通の魔物に日本語は通じない。
そんな事くらいは言われなくてももうわかり切っているだろうに……!
『あ、まずいぞ! 魔物達が使者プレイヤーを取り囲んだ! それだけじゃない、雑兵がいつの間にか他プレイヤー達も包囲している!? これはまずい、退路を確保しないと大惨事になるぞ!?』
『な、何をするんだ!? 俺達は戦うつもりはうわぁああ!?』
『やめてーっ! きゃああああ!』
『に、逃げろ! やっぱり説得なんて無理だったんだ!』
『イヤァ! 離して! イヤァァァァ!』
それで待っていたのは、いきなりの阿鼻叫喚だ。
説得に出た男子プレイヤーは即座にメッタ刺しにされてしまった。もう多分生きてはいないだろう。
包囲されていたメンバー達もある程度は逃げられたものの、数人かは捕まってしまったようだ。
もう内部動画が途切れてしまったけど、寸前で魔物に暴行される様子が見えた。
たしかに酷い。酷すぎる。
一体誰がこんな作戦を考えたのか問いただしたいくらいに。
誰だって普通わかるだろう!? 人語での説得なんて絶対無理なんだって!
「ね、酷いもんっしょ?」
「うん、これは幾らなんでも浅はかで無謀過ぎる。どうしてこんな事をしようと思ったのかまったく理解できない」
「彼方っちの説得劇って結構センセーショナルだったからねぇ。『自分達だって!』ってイキっちゃう人は多いと思う。みんな目立ちたがり屋だからさぁ~」
「彼方がでちこちゃん説得したのは特殊なケースなんだっけ?」
「ああ、手を出した以上はね。あれだけ暴れてたら普通なら懐柔は無理だった。けど俺はコンから彼等との直接会話の手段を教えてもらってたからさ、それを使って強引に場を収めたに過ぎないんだ」
こんな事ならでちこちゃん説得時の詳細をきちんと伝えておくべきだったか。
……いや、たぶんその意味は無いな。今のは手順自体は悪くないから。
ただ単に、この敵が説得不可能な相手というだけに過ぎない。
ああクソ、思っていた以上にプレイヤー達全体の知能が浅い。
まだ学生な人ばかりだから仕方ないのかもしれないけど、あまりに短絡的すぎる。
「まぁ~もぉ今回に懲りて説得なんて馬鹿な事はしないでしょーねぇ」
「そうなってくれるといいな。でも捕まった人達はどうなるんだ?」
「相手も相手だしぃ、トップオブトップスが出張って救出するでしょ~。中に人がいる限り内部がリセットされる事はないしぃ」
そうか、一応はそんな強い人達からの助けが入るんだ。
それまで捕まった人達が無事ならいいんだけど。
それにしても、トップオブトップス、か。
よく聞く名前だけど言及した事はなかったな。
「へぇ……ところでよく出てくるそのトップオブトップスって一体何です?」
「日本最上位ランカートップテンの総称だよー! すっごい強い人達なの!」
「ククク、以前からプレイヤーを引っ張ってくれている象徴的存在ね……眩し過ぎて私の影が深くなってしまうくらいに」
「モモパイセンは元々影薄――」
「ゲッタァーーーウ!!!!!」
「あいたーーーっ! 澪奈パイセンなんでーっ!?」
なるほど、日本にはそれだけ強い集団がいたのか。
そういえば初めてダンジョンに入った時、委員会のおっさんも頼るように呟いていたっけ。
「ま、九州だからあーしらには縁もゆかりも無い話っしょ」
「――そうでもないぞ」
「あ、紅先生いつのまに」
「ちょちょ……紅センセーそれどういう事なん?」
けどいきなり紅先生が廊下から現れて、いきなり妙な事を言いだした。
何か嫌な予感がするんだが。
「喜べお前達、本日付けで宝春学園ダンジョン部は晴れて全国ランキング十一位、仮トップオブトップス入りだ。それでもって明日には九州に行く事になった。泊まりになるだろうから早く帰って準備を進めておけ」
え、ちょっと待って。
エースとかを突き抜けてトップ入り?
先生それ順序が違わなくありませんかね???
うーん、俺まだ入学して二週間目だけどもう勉強が遅れる気しかしない!
0
お気に入りに追加
453
あなたにおすすめの小説
最弱の職業【弱体術師】となった俺は弱いと言う理由でクラスメイトに裏切られ大多数から笑われてしまったのでこの力を使いクラスメイトを見返します!
ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
俺は高坂和希。
普通の高校生だ。
ある日ひょんなことから異世界に繋がるゲートが出来て俺はその中に巻き込まれてしまった。
そこで覚醒し得た職業がなんと【弱体術師】とかいう雑魚職だった。
それを見ていた当たり職業を引いた連中にボコボコにされた俺はダンジョンに置いていかれてしまう。
クラスメイト達も全員その当たり職業を引いた連中について行ってしまったので俺は1人で出口を探索するしかなくなった。
しかもその最中にゴブリンに襲われてしまい足を滑らせて地下の奥深くへと落ちてしまうのだった。
借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた
羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる