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第30話 対等になれないのは絶対にイヤ(つくし視点)
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「やっと彼方の家についたぁ~~~!! 疲れたぁ!」
よーやく着いたよ彼方の家!
道程長すぎてもう気が遠くなる、っていうか本当に死にそうだった!
「もうやだぁぁぁ! おうち帰るぅ~~~!!! ぶええええ!!!!!」
「ヤバ、モモっちがガチ泣きしてる……」
「そりゃ岩塊が紙一重で飛んで来たら泣くだろう。私も泣きそうだった。うん」
でもなんていうかもう満身創痍って感じ。
彼方もこれには戸惑うしかないみたいだ。
あたし達何もしてないんだけどねー。
「ま、まぁ帰りはもっと安全に気を遣うからさ? だから落ち着いてくれよ……」
「キュ!」
「うんうんそうだねぇ、次はきっと大丈夫だってー」
「つくしはつくしでなんか全然気にしてないのな」
「あははーなんかもうどうでもよくなっちった!」
「ある意味大物だと思うよ君は」
とりあえずモモパイセンをみんなで必死になだめてあげよう!
コンちゃんあげるから落ち着いて!
あ、ダメだよコンちゃんあたしの服を引っ張って抵抗しちゃ!
……ふう、やっと落ち着いてくれた。
コンちゃんのモフモフはやっぱり万能だね! 本人すごい嫌がってるけど。
それにしても、モモパイセン意外と気が弱いみたいだから取り扱い注意だなー。
「あらあら、本当に来れちゃったのね! びっくりしちゃったわ!」
「あ、おじゃましまーす!」
こう騒いでたら家の奥から女の人がきた。
白調の鮮やかな着物を着ているし、とっても綺麗な人だなぁ。
「彼方の母です。息子がお世話になっております」
「いえいえこちらこそ。ダンジョン部顧問の大内紅です。この子達は――」
「えぇえぇ聞いていますよ。つくしさんに澪奈部長さんに桃先輩さん、でしたよね?」
「そうでーす! あたしがつくし!」
「澪奈はあーし、ヨロでーす。で、この沈んでるのがモモっちですー」
「ふふっ、みなさん聞いた通りの子達みたいで安心しました。そして来てくださって本当にありがとうございます」
「え、ちょっ!?」
でもそんな綺麗な人がいきなり廊下に膝を着いてお辞儀までしちゃった!?
なんで!?
「い、いきなり何をなさるんです!?」
「息子のためにここまで苦労をかけてお越しいただいた大切なお客様ですから、これでもまだ足りないくらいでございます」
「いやいやー、遊びに来ただけですからぁ!」
彼方のお母さん、すっごい丁寧!
なんていうか気品とかもキラキラ感じてきちゃうよぉー!
これが本物の大和撫子ってやつかぁ~~~……グフッ!
「お、おいつくし、ふらついてるけど大丈夫か!?」
「迂闊……おばさんが淑女すぎてあたしの心が持っていかれそうになったわ!」
「そ、そうかなぁ……?」
「ほら彼方、みなさんをお部屋にお連れしなくていいの?」
「あ、うん。じゃあみんな付いてきて」
「へい! それじゃ改めておっじゃましまーす!」
「つくし、ほんと切り替え早いよな」
この調子だとおじさんも結構なイケオジ紳士なんじゃ。
うーん、とても気になりますなー!
けど今はおとなしく彼方についていく事にしよう。
おばさんは正座のまま見送ってくれたし。
「ここが俺の部屋。まぁ狭いかもしれないけど適当にくつろいでいいよ」
「ヒャッハー! 初男子の部屋だぜーーー……わ・し・つ!」
「まずベッドが無いねェ。残念だったねつくし~!」
「ちきしょーーーっ!」
「一体何の話だよ……」
くっ、出鼻をくじかれたぜーやってくれるな彼方!
仕方ない、他の物を漁る事で許してや――
「っつか、何も無いねぇ彼方っちの部屋」
「あんまり欲しい物も無いしね。買っても軒下を通る途中でしくじって焼け落ちたりするから買いたくてもあんまり買えないんだよ」
「買い物も必死じゃん……ご飯とかどうしてるんさぁ」
「庭に畑と鶏小屋がある。基本はそこで自給自足で、足りない分は父さんと母さんが買ってくるんだ」
「お二人ともお買い物も手馴れてそう……」
「たまに父さんと母さんが米俵かついで帰って来るよ」
「米俵!? 今でもあんの!? てかかついでってそれで魔宮越えてくんのヤバくない!?」
想像以上に彼方の家が現実離れし過ぎてヤバイ。
部屋には畳んだ布団と木机、あと学校の鞄しか無いし。
あとは押入れが一つくらいかな。でも中も何も無さそう……。
「よくみたらコンセントも無いよね」
「うん、この家は電線通ってないしな。軒下魔宮通さないとだから」
「ああーそれで電子機器が無いってコト。あ、スマホも圏外だー……」
「あるのはせいぜい、父さんが興味本位で買って来た黒電話くらいかな。オブジェにしかなってないけど」
「なぜ買ったし」
部屋自体もすごい和風!
壁もなんか濃い目の木目板だし、窓は障子張りだし!
でもすごい整頓されてるから彼方って几帳面なんだろうなー。
ならば畳の隙間を指でスススー……埃一つない! 残念!
掃除機も無いこの家でどうやってここまで綺麗に掃除できるのか!
「とりま、彼方っちが強い理由もその生活環境もしっかりわかったわぁ~」
「だろ? 家に来ればわかるって言った通りだったと思う」
「そだねー。でもでも、それでも聞きたい事はあるよ」
「うん、それはこれから説明しようと思う。その前にちょっと飲み物持ってくる。何がいい? 麦茶とカルピスがあると思うけど」
「あたしカルピスがいい!」
「あーしとモモっちは麦茶よろ~」
「私も麦茶でお願いしよう」
「了解、ちょっと待ってて」
おまけに気遣いもちゃんとしてくれる!
さすが、おばさんにそっくりですなー!
ではさてさて、彼方がいなくなった所でお楽しみタイムですよぉ~!
「つくし何やってんの?」
「何ってほらぁ、押し入れくらいは調べておかないとぉ~!」
「はぁー……人のプライベートくらいほっといてやれし」
「しかしあたしの好奇心は止められなぁい! ッバァーン!」
「「「お……」」」
あ、あるぇー……本当に中はスッキリしてるゥー……。
小さい本棚があるけど、小中高の教科書とか参考書ばっかりだし。
あとは魔宮で取ってきたような古い武器がちょっと置かれてたりするだけで。
ん……あれ、これはなんだろう?
「つくし、何か見つけた?」
「うん、本見っけた。なんかね、世界の兵器の本だって」
「なんだ、間宮はミリタリーオタクか何かなのか?」
「よくわかんないけど、ううんきっとそう」
「何がそうなんだよ。俺は別に兵器オタクじゃないぞ」
「戻ってくるのはや!」
ありゃ、うっかりバレちった!
おのれ彼方、何から何まで行動が速い! ずるい!
「母さんが用意しててくれたからな。あと押し入れには何も無いよ。俺の趣味は言った通り軒下魔宮の攻略だから、それ以外は興味無かったんだ」
「じゃあこの本は一体?」
「あぁそれか。それは魔宮攻略に使えるかなぁって」
「「「どうやって!?」」」
「まぁそれは色々と、うん」
悔しいのでカルピスを一気飲みしてやる! うまい!
「彼方、おかわり」
「そう言うと思って原液ごと持って来た」
「対応速いよぉ! 押し入れ探れないじゃあん!」
「もう隠す気サラサラないんだな。あと本当に何も無いから」
「ちきしょー!」
なんて事なの……!
あたしの夢が、えっちな本を見つけるというあたしの理想が潰えた……!
どうしてくれるの、このフラストレーション!
そしてカルピスおいしい! 原液で飲んでみたい!
「はいはい、もう話進まないからつくしはカルピスでも楽しんでて」
「そうはいかない! あたしだって知りたい事たくさんあるんだからーっ!」
「やけにテンション高いなー今日。まぁいつも高いんだけどさ」
「しょーもない夢が一つ無くなったからな。ま、ほっといてやれ」
「ヤケカルピスじゃー!」
もーテンション高くたってあたしも彼方の事が知りたいんだ!
あたし達の事を助けてくれて、色々教えてくれた彼方は恩人だから。
だから色々知って、あたしも彼方の事を助けてあげたい。
たとえそれがあたしの一方通行的な想いであっても。
そうしないと、いつまでたってもこの人と対等になんてなれやしない。
そんなのは……絶対にイヤ。
よーやく着いたよ彼方の家!
道程長すぎてもう気が遠くなる、っていうか本当に死にそうだった!
「もうやだぁぁぁ! おうち帰るぅ~~~!!! ぶええええ!!!!!」
「ヤバ、モモっちがガチ泣きしてる……」
「そりゃ岩塊が紙一重で飛んで来たら泣くだろう。私も泣きそうだった。うん」
でもなんていうかもう満身創痍って感じ。
彼方もこれには戸惑うしかないみたいだ。
あたし達何もしてないんだけどねー。
「ま、まぁ帰りはもっと安全に気を遣うからさ? だから落ち着いてくれよ……」
「キュ!」
「うんうんそうだねぇ、次はきっと大丈夫だってー」
「つくしはつくしでなんか全然気にしてないのな」
「あははーなんかもうどうでもよくなっちった!」
「ある意味大物だと思うよ君は」
とりあえずモモパイセンをみんなで必死になだめてあげよう!
コンちゃんあげるから落ち着いて!
あ、ダメだよコンちゃんあたしの服を引っ張って抵抗しちゃ!
……ふう、やっと落ち着いてくれた。
コンちゃんのモフモフはやっぱり万能だね! 本人すごい嫌がってるけど。
それにしても、モモパイセン意外と気が弱いみたいだから取り扱い注意だなー。
「あらあら、本当に来れちゃったのね! びっくりしちゃったわ!」
「あ、おじゃましまーす!」
こう騒いでたら家の奥から女の人がきた。
白調の鮮やかな着物を着ているし、とっても綺麗な人だなぁ。
「彼方の母です。息子がお世話になっております」
「いえいえこちらこそ。ダンジョン部顧問の大内紅です。この子達は――」
「えぇえぇ聞いていますよ。つくしさんに澪奈部長さんに桃先輩さん、でしたよね?」
「そうでーす! あたしがつくし!」
「澪奈はあーし、ヨロでーす。で、この沈んでるのがモモっちですー」
「ふふっ、みなさん聞いた通りの子達みたいで安心しました。そして来てくださって本当にありがとうございます」
「え、ちょっ!?」
でもそんな綺麗な人がいきなり廊下に膝を着いてお辞儀までしちゃった!?
なんで!?
「い、いきなり何をなさるんです!?」
「息子のためにここまで苦労をかけてお越しいただいた大切なお客様ですから、これでもまだ足りないくらいでございます」
「いやいやー、遊びに来ただけですからぁ!」
彼方のお母さん、すっごい丁寧!
なんていうか気品とかもキラキラ感じてきちゃうよぉー!
これが本物の大和撫子ってやつかぁ~~~……グフッ!
「お、おいつくし、ふらついてるけど大丈夫か!?」
「迂闊……おばさんが淑女すぎてあたしの心が持っていかれそうになったわ!」
「そ、そうかなぁ……?」
「ほら彼方、みなさんをお部屋にお連れしなくていいの?」
「あ、うん。じゃあみんな付いてきて」
「へい! それじゃ改めておっじゃましまーす!」
「つくし、ほんと切り替え早いよな」
この調子だとおじさんも結構なイケオジ紳士なんじゃ。
うーん、とても気になりますなー!
けど今はおとなしく彼方についていく事にしよう。
おばさんは正座のまま見送ってくれたし。
「ここが俺の部屋。まぁ狭いかもしれないけど適当にくつろいでいいよ」
「ヒャッハー! 初男子の部屋だぜーーー……わ・し・つ!」
「まずベッドが無いねェ。残念だったねつくし~!」
「ちきしょーーーっ!」
「一体何の話だよ……」
くっ、出鼻をくじかれたぜーやってくれるな彼方!
仕方ない、他の物を漁る事で許してや――
「っつか、何も無いねぇ彼方っちの部屋」
「あんまり欲しい物も無いしね。買っても軒下を通る途中でしくじって焼け落ちたりするから買いたくてもあんまり買えないんだよ」
「買い物も必死じゃん……ご飯とかどうしてるんさぁ」
「庭に畑と鶏小屋がある。基本はそこで自給自足で、足りない分は父さんと母さんが買ってくるんだ」
「お二人ともお買い物も手馴れてそう……」
「たまに父さんと母さんが米俵かついで帰って来るよ」
「米俵!? 今でもあんの!? てかかついでってそれで魔宮越えてくんのヤバくない!?」
想像以上に彼方の家が現実離れし過ぎてヤバイ。
部屋には畳んだ布団と木机、あと学校の鞄しか無いし。
あとは押入れが一つくらいかな。でも中も何も無さそう……。
「よくみたらコンセントも無いよね」
「うん、この家は電線通ってないしな。軒下魔宮通さないとだから」
「ああーそれで電子機器が無いってコト。あ、スマホも圏外だー……」
「あるのはせいぜい、父さんが興味本位で買って来た黒電話くらいかな。オブジェにしかなってないけど」
「なぜ買ったし」
部屋自体もすごい和風!
壁もなんか濃い目の木目板だし、窓は障子張りだし!
でもすごい整頓されてるから彼方って几帳面なんだろうなー。
ならば畳の隙間を指でスススー……埃一つない! 残念!
掃除機も無いこの家でどうやってここまで綺麗に掃除できるのか!
「とりま、彼方っちが強い理由もその生活環境もしっかりわかったわぁ~」
「だろ? 家に来ればわかるって言った通りだったと思う」
「そだねー。でもでも、それでも聞きたい事はあるよ」
「うん、それはこれから説明しようと思う。その前にちょっと飲み物持ってくる。何がいい? 麦茶とカルピスがあると思うけど」
「あたしカルピスがいい!」
「あーしとモモっちは麦茶よろ~」
「私も麦茶でお願いしよう」
「了解、ちょっと待ってて」
おまけに気遣いもちゃんとしてくれる!
さすが、おばさんにそっくりですなー!
ではさてさて、彼方がいなくなった所でお楽しみタイムですよぉ~!
「つくし何やってんの?」
「何ってほらぁ、押し入れくらいは調べておかないとぉ~!」
「はぁー……人のプライベートくらいほっといてやれし」
「しかしあたしの好奇心は止められなぁい! ッバァーン!」
「「「お……」」」
あ、あるぇー……本当に中はスッキリしてるゥー……。
小さい本棚があるけど、小中高の教科書とか参考書ばっかりだし。
あとは魔宮で取ってきたような古い武器がちょっと置かれてたりするだけで。
ん……あれ、これはなんだろう?
「つくし、何か見つけた?」
「うん、本見っけた。なんかね、世界の兵器の本だって」
「なんだ、間宮はミリタリーオタクか何かなのか?」
「よくわかんないけど、ううんきっとそう」
「何がそうなんだよ。俺は別に兵器オタクじゃないぞ」
「戻ってくるのはや!」
ありゃ、うっかりバレちった!
おのれ彼方、何から何まで行動が速い! ずるい!
「母さんが用意しててくれたからな。あと押し入れには何も無いよ。俺の趣味は言った通り軒下魔宮の攻略だから、それ以外は興味無かったんだ」
「じゃあこの本は一体?」
「あぁそれか。それは魔宮攻略に使えるかなぁって」
「「「どうやって!?」」」
「まぁそれは色々と、うん」
悔しいのでカルピスを一気飲みしてやる! うまい!
「彼方、おかわり」
「そう言うと思って原液ごと持って来た」
「対応速いよぉ! 押し入れ探れないじゃあん!」
「もう隠す気サラサラないんだな。あと本当に何も無いから」
「ちきしょー!」
なんて事なの……!
あたしの夢が、えっちな本を見つけるというあたしの理想が潰えた……!
どうしてくれるの、このフラストレーション!
そしてカルピスおいしい! 原液で飲んでみたい!
「はいはい、もう話進まないからつくしはカルピスでも楽しんでて」
「そうはいかない! あたしだって知りたい事たくさんあるんだからーっ!」
「やけにテンション高いなー今日。まぁいつも高いんだけどさ」
「しょーもない夢が一つ無くなったからな。ま、ほっといてやれ」
「ヤケカルピスじゃー!」
もーテンション高くたってあたしも彼方の事が知りたいんだ!
あたし達の事を助けてくれて、色々教えてくれた彼方は恩人だから。
だから色々知って、あたしも彼方の事を助けてあげたい。
たとえそれがあたしの一方通行的な想いであっても。
そうしないと、いつまでたってもこの人と対等になんてなれやしない。
そんなのは……絶対にイヤ。
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