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第21話 プロチームはみんなとても偉そう

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 勢いあまって楠にとんでもない挑戦状を叩きつけてしまった。
 後々冷静に考えたらやりすぎたかなって反省。

 とはいえスーパーの特売には間に合った。良かった。
 なんと大容量の徳用わさびが二本も買えたのだ! ……使い切れるのか?
 ついでに言うと後日、澪奈部長やモモ先輩にも同意を得られた。
 ちょっと釘は刺されたけど、さすがです。

 だから俺達はわだかまり無く、この日を迎える事ができたんだ。

 あの日から二日後、金曜日。
 割と早く近場にダンジョンが出現したので、俺達は約束通りに赴いた。

 するとさっそく楠達が出迎えてくれた。それも保護者のコーチ付きで。

 このコーチ、とてもいかついし怖そう。元軍人って話らしいが。
 これならゆるい澪奈部長と衝突しても仕方なさそうな感じだ。

「来たね間宮君、待っていたよ」
「楠お前、みんながいる時と性格違い過ぎじゃないか?」
「う、うるさい! ぼ、僕はいつもこうなんだよ」

 ああ、そういう事ね。
 猫かぶり常習犯なんだなコイツ。

「私は新北関東プロチームでコーチをしている者だ。楠から話は聞いた。宝春学園、本気でお前達四人で攻略する気なのか?」
「宝春学園ダンジョン部の顧問、大内です。本人達がそうできると言っているのでできるのでしょう」
「その結果、死ぬ事になったとしても?」
「……ダンジョン参加規約には同意しています。規約によれば、死亡する際の責任は責任者および管理団体に問わないものとしていますし、ならそれが本人達の意思であれば私達に止める理由はありません」

 大人の相手は大人に任せるとしよう。
 紅先生には「無責任を演じる」というちょっと損な役回りとなるけど、事前に了承してくれたから信じる事にした。

 まぁこの人もなんか「ケンカか!? ならとことんやってやれ!」って乗り気だったし。

「わかった。なら我々は君達だけで入る事を黙認しよう。委員会にも話を付けてある。今回はあくまで『ダンジョン戦略術の試験的運用』という事にしておいた」
「ご協力に感謝します」
「ただしその名目なのでマスコミや別チームは呼んでいない。それと口外は許されないからそのつもりでいてほしい」

 楠達は総勢で二二人。全員身内か。
 他のチームは来ていないようで、プロチームのツテとやらが効いているのだろう。
 俺達の挑戦のためにここまでやってくれるとはご苦労な事だ。

「もし仮に俺達が負けたとして、その後その人数でクリアできるのか?」
「フッ、そんな事なんて余裕さ。なにせ僕らはプロチーム。こんなダンジョンを攻略する事に青春を捧げた専門家のようなものなんだからね。詐欺師でホラ吹きな君と違って地力そのものが違うんだよ」
「だったらすまない、後頭部の青春を奪ってしまってすまない」
「うるさい黙れェ! 後頭部の事はもう触れるんじゃあないッ!」

 つまりここで俺達が失敗すれば、今回のダンジョン攻略の手柄はすべて楠達のものになる。
 それだけは悔しいから避けたい所だな。

「……いいかい間宮君、先日も言った通りイカサマをしてはいけないよ? ちゃんと低レベルの力で倒しきってみせてくれ」
「言われないでもそうするつもりだ。俺の斧さばきを見て楽しんでくれると嬉しい」
「ハハッ、低レベルが何か言ってるぜ?」
「ウケる、身の程を知らないってああいうのを言うんだ」

 誰も彼もこんな調子だから余計にテンションが上がるね。

 まぁ一人二人は俺達を心配そうに見つめてくれている人もいるけれど。
 先日助けてあげたから恩義を感じているのかな。彼等はまだマトモか。

「それじゃみんな、さっと着替えてこよう」
「よ、よーし着替えちゃうぞー!」
「お、おっけぇーい……!」
「ヒ、ヒ、ヒェーイ!」
「間宮以外ガッチガチじゃねーか。ダッサ!」

 さすがに腹立たしいけどまだ我慢だ。
 この昂揚感を攻略に役立てるためにもな。

 そして俺達は手早く着替え、ダンジョンの前に立つ。
 大丈夫だ、打ち合わせした通りに戦えば問題はない。
 みんな緊張しているけれど、それも俺の想定内だからな。

 ゆえに俺達はヤジが上がる中で堂々とダンジョンへ乗り込んだ。
 この罵声を悲鳴に変えるためにも、たったの四人で。

「みんな、俺がさっき言った通り、指示に従って動けば間違いなく四人ででもクリアできる。だからどうか信じてくれ」
「うん、わかったよ。こうなったらバッチリキメちゃうもんね!」
「あ、相変わらずつくしは切り替え早いねェ……ま、しゃーない。入っちゃったしやるっきゃないってさぁ~」
「フ、フフ、こうなったらなるがままになれ、よ。ヒッヒヒヒ……!」

 とはいえ幸い、みんな思ったよりも肝が据わっているようだ。
 それだけ俺の事を信じてくれている、のだと思う。

 だったらあとは俺がみんなを正しく導けばいい。
 たったそれだけで、この状況はまさにイカサマの如くうまく進むはずなのだから。
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