21 / 126
第21話 プロチームはみんなとても偉そう
しおりを挟む
勢いあまって楠にとんでもない挑戦状を叩きつけてしまった。
後々冷静に考えたらやりすぎたかなって反省。
とはいえスーパーの特売には間に合った。良かった。
なんと大容量の徳用わさびが二本も買えたのだ! ……使い切れるのか?
ついでに言うと後日、澪奈部長やモモ先輩にも同意を得られた。
ちょっと釘は刺されたけど、さすがです。
だから俺達はわだかまり無く、この日を迎える事ができたんだ。
あの日から二日後、金曜日。
割と早く近場にダンジョンが出現したので、俺達は約束通りに赴いた。
するとさっそく楠達が出迎えてくれた。それも保護者のコーチ付きで。
このコーチ、とてもいかついし怖そう。元軍人って話らしいが。
これならゆるい澪奈部長と衝突しても仕方なさそうな感じだ。
「来たね間宮君、待っていたよ」
「楠お前、みんながいる時と性格違い過ぎじゃないか?」
「う、うるさい! ぼ、僕はいつもこうなんだよ」
ああ、そういう事ね。
猫かぶり常習犯なんだなコイツ。
「私は新北関東プロチームでコーチをしている者だ。楠から話は聞いた。宝春学園、本気でお前達四人で攻略する気なのか?」
「宝春学園ダンジョン部の顧問、大内です。本人達がそうできると言っているのでできるのでしょう」
「その結果、死ぬ事になったとしても?」
「……ダンジョン参加規約には同意しています。規約によれば、死亡する際の責任は責任者および管理団体に問わないものとしていますし、ならそれが本人達の意思であれば私達に止める理由はありません」
大人の相手は大人に任せるとしよう。
紅先生には「無責任を演じる」というちょっと損な役回りとなるけど、事前に了承してくれたから信じる事にした。
まぁこの人もなんか「ケンカか!? ならとことんやってやれ!」って乗り気だったし。
「わかった。なら我々は君達だけで入る事を黙認しよう。委員会にも話を付けてある。今回はあくまで『ダンジョン戦略術の試験的運用』という事にしておいた」
「ご協力に感謝します」
「ただしその名目なのでマスコミや別チームは呼んでいない。それと口外は許されないからそのつもりでいてほしい」
楠達は総勢で二二人。全員身内か。
他のチームは来ていないようで、プロチームのツテとやらが効いているのだろう。
俺達の挑戦のためにここまでやってくれるとはご苦労な事だ。
「もし仮に俺達が負けたとして、その後その人数でクリアできるのか?」
「フッ、そんな事なんて余裕さ。なにせ僕らはプロチーム。こんなダンジョンを攻略する事に青春を捧げた専門家のようなものなんだからね。詐欺師でホラ吹きな君と違って地力そのものが違うんだよ」
「だったらすまない、後頭部の青春を奪ってしまってすまない」
「うるさい黙れェ! 後頭部の事はもう触れるんじゃあないッ!」
つまりここで俺達が失敗すれば、今回のダンジョン攻略の手柄はすべて楠達のものになる。
それだけは悔しいから避けたい所だな。
「……いいかい間宮君、先日も言った通りイカサマをしてはいけないよ? ちゃんと低レベルの力で倒しきってみせてくれ」
「言われないでもそうするつもりだ。俺の斧さばきを見て楽しんでくれると嬉しい」
「ハハッ、低レベルが何か言ってるぜ?」
「ウケる、身の程を知らないってああいうのを言うんだ」
誰も彼もこんな調子だから余計にテンションが上がるね。
まぁ一人二人は俺達を心配そうに見つめてくれている人もいるけれど。
先日助けてあげたから恩義を感じているのかな。彼等はまだマトモか。
「それじゃみんな、さっと着替えてこよう」
「よ、よーし着替えちゃうぞー!」
「お、おっけぇーい……!」
「ヒ、ヒ、ヒェーイ!」
「間宮以外ガッチガチじゃねーか。ダッサ!」
さすがに腹立たしいけどまだ我慢だ。
この昂揚感を攻略に役立てるためにもな。
そして俺達は手早く着替え、ダンジョンの前に立つ。
大丈夫だ、打ち合わせした通りに戦えば問題はない。
みんな緊張しているけれど、それも俺の想定内だからな。
ゆえに俺達はヤジが上がる中で堂々とダンジョンへ乗り込んだ。
この罵声を悲鳴に変えるためにも、たったの四人で。
「みんな、俺がさっき言った通り、指示に従って動けば間違いなく四人ででもクリアできる。だからどうか信じてくれ」
「うん、わかったよ。こうなったらバッチリキメちゃうもんね!」
「あ、相変わらずつくしは切り替え早いねェ……ま、しゃーない。入っちゃったしやるっきゃないってさぁ~」
「フ、フフ、こうなったらなるがままになれ、よ。ヒッヒヒヒ……!」
とはいえ幸い、みんな思ったよりも肝が据わっているようだ。
それだけ俺の事を信じてくれている、のだと思う。
だったらあとは俺がみんなを正しく導けばいい。
たったそれだけで、この状況はまさにイカサマの如くうまく進むはずなのだから。
後々冷静に考えたらやりすぎたかなって反省。
とはいえスーパーの特売には間に合った。良かった。
なんと大容量の徳用わさびが二本も買えたのだ! ……使い切れるのか?
ついでに言うと後日、澪奈部長やモモ先輩にも同意を得られた。
ちょっと釘は刺されたけど、さすがです。
だから俺達はわだかまり無く、この日を迎える事ができたんだ。
あの日から二日後、金曜日。
割と早く近場にダンジョンが出現したので、俺達は約束通りに赴いた。
するとさっそく楠達が出迎えてくれた。それも保護者のコーチ付きで。
このコーチ、とてもいかついし怖そう。元軍人って話らしいが。
これならゆるい澪奈部長と衝突しても仕方なさそうな感じだ。
「来たね間宮君、待っていたよ」
「楠お前、みんながいる時と性格違い過ぎじゃないか?」
「う、うるさい! ぼ、僕はいつもこうなんだよ」
ああ、そういう事ね。
猫かぶり常習犯なんだなコイツ。
「私は新北関東プロチームでコーチをしている者だ。楠から話は聞いた。宝春学園、本気でお前達四人で攻略する気なのか?」
「宝春学園ダンジョン部の顧問、大内です。本人達がそうできると言っているのでできるのでしょう」
「その結果、死ぬ事になったとしても?」
「……ダンジョン参加規約には同意しています。規約によれば、死亡する際の責任は責任者および管理団体に問わないものとしていますし、ならそれが本人達の意思であれば私達に止める理由はありません」
大人の相手は大人に任せるとしよう。
紅先生には「無責任を演じる」というちょっと損な役回りとなるけど、事前に了承してくれたから信じる事にした。
まぁこの人もなんか「ケンカか!? ならとことんやってやれ!」って乗り気だったし。
「わかった。なら我々は君達だけで入る事を黙認しよう。委員会にも話を付けてある。今回はあくまで『ダンジョン戦略術の試験的運用』という事にしておいた」
「ご協力に感謝します」
「ただしその名目なのでマスコミや別チームは呼んでいない。それと口外は許されないからそのつもりでいてほしい」
楠達は総勢で二二人。全員身内か。
他のチームは来ていないようで、プロチームのツテとやらが効いているのだろう。
俺達の挑戦のためにここまでやってくれるとはご苦労な事だ。
「もし仮に俺達が負けたとして、その後その人数でクリアできるのか?」
「フッ、そんな事なんて余裕さ。なにせ僕らはプロチーム。こんなダンジョンを攻略する事に青春を捧げた専門家のようなものなんだからね。詐欺師でホラ吹きな君と違って地力そのものが違うんだよ」
「だったらすまない、後頭部の青春を奪ってしまってすまない」
「うるさい黙れェ! 後頭部の事はもう触れるんじゃあないッ!」
つまりここで俺達が失敗すれば、今回のダンジョン攻略の手柄はすべて楠達のものになる。
それだけは悔しいから避けたい所だな。
「……いいかい間宮君、先日も言った通りイカサマをしてはいけないよ? ちゃんと低レベルの力で倒しきってみせてくれ」
「言われないでもそうするつもりだ。俺の斧さばきを見て楽しんでくれると嬉しい」
「ハハッ、低レベルが何か言ってるぜ?」
「ウケる、身の程を知らないってああいうのを言うんだ」
誰も彼もこんな調子だから余計にテンションが上がるね。
まぁ一人二人は俺達を心配そうに見つめてくれている人もいるけれど。
先日助けてあげたから恩義を感じているのかな。彼等はまだマトモか。
「それじゃみんな、さっと着替えてこよう」
「よ、よーし着替えちゃうぞー!」
「お、おっけぇーい……!」
「ヒ、ヒ、ヒェーイ!」
「間宮以外ガッチガチじゃねーか。ダッサ!」
さすがに腹立たしいけどまだ我慢だ。
この昂揚感を攻略に役立てるためにもな。
そして俺達は手早く着替え、ダンジョンの前に立つ。
大丈夫だ、打ち合わせした通りに戦えば問題はない。
みんな緊張しているけれど、それも俺の想定内だからな。
ゆえに俺達はヤジが上がる中で堂々とダンジョンへ乗り込んだ。
この罵声を悲鳴に変えるためにも、たったの四人で。
「みんな、俺がさっき言った通り、指示に従って動けば間違いなく四人ででもクリアできる。だからどうか信じてくれ」
「うん、わかったよ。こうなったらバッチリキメちゃうもんね!」
「あ、相変わらずつくしは切り替え早いねェ……ま、しゃーない。入っちゃったしやるっきゃないってさぁ~」
「フ、フフ、こうなったらなるがままになれ、よ。ヒッヒヒヒ……!」
とはいえ幸い、みんな思ったよりも肝が据わっているようだ。
それだけ俺の事を信じてくれている、のだと思う。
だったらあとは俺がみんなを正しく導けばいい。
たったそれだけで、この状況はまさにイカサマの如くうまく進むはずなのだから。
0
お気に入りに追加
456
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話
猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。
バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。
『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか?
※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です
※カクヨム・小説家になろうでも公開しています
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう
なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。
だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。
バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。
※他サイトでも掲載しています
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる