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第14話 魔物相手だって会話で解決することもできる
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『あ、あーたしゃん、あちしのことば、わかる?』
『ああ、わかるよ。友達から教えてもらったからね』
エースチームや澪奈部長を蹂躙したニワトリ巨人。
そいつの言葉がしっかりと伝わって来るかのようだ。
なにせコンに教えてもらったのと同じ言葉だから。
『よかったでちゅ。ニンゲン、いきなりおそいかかってきて、こわかったでち。なんどおいかえそうとしても、なおってまたくるでちゅよ』
『ごめんな、アイツらみんな君の言葉がわからなくて。それで大きい相手だから倒そうって思ってしまったみたいで』
『ひどいでちゅ。あちしはあのちっさいやつらにいじめられてただけでちゅのに』
『わかるよ、俺もアイツら嫌いだし。人の話を聞かない、しょうもない奴らなんだ』
『でもあーたしゃんはやさしいニンゲンみたいでよかったでちゅ』
コンいわく、この言葉は心で話すコミュニケーション術なのだという。
けど通じ合っていない相手では、こうやって互いに集中しないと交わせない。
だからうまい具合に意識をこっちに向けてもらえて助かった。
「か、彼方、一体何して……」
「魔物も動き止まってる……」
「悪い二人とも、少し静かにしててくれないか?」
「「は、はひ」」
ごめんな二人とも、今は彼との会話に集中したいんだ。
――いや、彼女、か。
『みんなにも攻撃しないようにとよく言っておくからさ、もう安心していいよ』
『うれちいでちゅ。あちし、ひとりでこころぼそかったでちよ。はやくかあちゃんのところにかえりたいでちけど、かえりかたがわからないんでちゅ……』
『そうか、無理矢理連れて来られちゃったんだな』
『ウン……』
きっと魔物にも普通の生活があるんだろう。
でもこのニワトリ巨人――でちこちゃん(仮)もこのダンジョンに強制的に連れて来られてしまった。
俺達と同じ被害者みたいなもんだ。かわいそうだよな。
だったら帰してあげよう。
彼女を倒す必要なんて無いんだ。
「なぁつくし?」
「あ、はーい」
「たしかダンジョンコアってのを壊したらダンジョンは消えるんだよね?」
「そ、そうでーす」
「それって壊したらここすぐ消えちゃう?」
「ううん、三〇分くらいしたらかなー。あ、後ろの浮いてる赤い宝石がそうだよー」
「わかった、ありがとう」
つくしもさっくり説明してくれたから助かった。
おかげで何のためらいもなく壊せそうだよ。
『ならちょっと君に手伝って欲しい事がある』
『なんでちか?』
『後ろに赤い宝石が見えると思うんだけど、それを壊せるかい? それを壊してしばらく経つと、ここが消えて君も元の居場所に帰れる、と思う』
『ほ、ほんとでちか!?』
『確証はないけど、それ以外に手段が思い付かなくてさ。でも信じてくれるならどうかやって欲しい。俺達じゃできない事なんだ』
『わかったでち、あーたしゃんをしんじるでちよ!』
こう説明したら、でちこさんがさっそく踵を返してコアの下へ。
すかさずの超速パンチで「ホピシッ」とためらいもなく粉々にしてしまった。
なんて鋭い拳だよ。唐突すぎてまったく見えなかったんだが?
すると途端、「ズズンッ!」とダンジョンが揺れた。
「つくし、これでいいかな?」
「い、いいけど……あるぇーどういう事なのかなこれ」
「彼女と話して和解したんだ。この子はダンジョンに連れ去られた被害者らしい。ボスでもなんでもなかったんだ」
「「え、ええーーー!?」」
まぁ驚くのも無理はないよな。
普通はこんな事なんてできるはずも無いんだから。
だから異常者だとか思われたって仕方な――
「すっご! めっちゃすっご! 彼方すっごエモおおお!!」
「――え?」
「きゃー彼方! 彼方ーっ!」
「え、ええっ!?」
でもつくしは嫌うどころか、俺に駆け寄ってきた。
それどころか両手を掴んで嬉しそうにぴょんぴょん跳ねているし。
ど、どういう状況なんだ!?
どう反応したらいいんだろこれ……?
わからないのでとりあえず一緒に跳ねてみた。
そうしたらでちこちゃんも一緒に跳ねてくれた。
ズンズンいってるけど、なんだかとても楽しい。
「そ、そうだ、嬉しがってる場合じゃないよね! 澪奈パイセン治さないと!」
「そうだ、他の人も治して早くここから出ないと!」
「あ」
「ん?」
「ごめん彼方、あたしマナ切れちった!」
「じょ、冗談だろ……!?」
だけど思わぬ事態が発覚してしまった。
治癒術が使えないって事は、重傷人をそのまま連れ出さないといけない。
救護の人が外にいるかもしれないが、それで間に合うのか……!?
何かいい方法は――
「ッ!? そうだ! つくし、その杖を俺に貸してくれ!」
「え、あ、うんわかった! はい!」
「頼むぞ……へし折れてても仕組みが同じならきっと!」
思うがまま、つくしから錫杖の柄を受け取る。
俺の真価が本当に発揮できているならばあるいは、と。
まだマナ総量に関しては検証していないから確証は無い。
だがもし俺の考えが正しいのなら、これもできるはずだ!
――そしてその予測は正しかった。
錫杖の形は初期状態に戻ってしまっている。
しかし多量のマナが途端に溢れ出し、それだけで周囲を照らした。
二人どころかでちこちゃんまで驚いてしまうほどにごうごうと。
「「え、えええーーーーーーっ!?」」
『でちーーー!?』
「よし、これならいけるぞ! 頼む、使えてくれ! はぁぁぁ……【全域超級即癒術】!!!」
さらに俺の知るとっておきの魔法を展開する。
するとかかげた杖から光が迸った。
白光の輪がいくつも現れ、回り、輝き、重なり舞う。
加速し、拡がり、無数の燐光を弾き飛ばしながら。
そうして遂には真っ白な光がたった一瞬、場を覆い尽くした。
「ま、まぶしっ……くない。あれ?」
「今の一体何……?」
それだけだ。
たったそれだけでもうすべてが解決したよ。
「つくし、これ返すよ」
「あ、ほーい」
「これで多分もうみんな治ってるはず。つくしの治癒みたいに痛みが無いから起きないけど」
「もー驚くのも疲れちった。すごすぎだねぇ彼方は。語彙力が死んじゃったよぉ!」
「クフフ、つくしの語彙力は常に死んでいる!」
「なぜばれたし!」
「……ふふふっ、あっははははっ!」
「あ、彼方が笑ったー!」
「ヒヒ、どうやら我らの真の同志となれたらしいわね……!」
……ああ、なんて気持ちがいいんだろう。
俺はこんな思いをしたかったんだなぁって今さらながらに気付かされた。
小さい時からずっとずっと忘れようとしていた想いに。
同じ人間の友達との、なんて事の無い会話を楽しみたいって。
しかもその上で理不尽をすべて吹き飛ばしてやった!
もうこれ以上ない最高で大満足な出来栄えだ!
おかげでコンへのとっておきの土産話ができたよ。
ありがとうな、みんな!
「さぁて、ダンジョンが消える前にさっさとここを出よう!」
「でもこの人数どうしようもないよー」
「そうだなー……あ! そうだ!」
「ん?」
でもまだ終わりじゃあない。
ならいっそ、ダンジョン初攻略の記念にとっておきのサプライズでもやってやろう。
あのとんずらエース野郎にはまだ何もお返ししていないしな!
『ああ、わかるよ。友達から教えてもらったからね』
エースチームや澪奈部長を蹂躙したニワトリ巨人。
そいつの言葉がしっかりと伝わって来るかのようだ。
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『ごめんな、アイツらみんな君の言葉がわからなくて。それで大きい相手だから倒そうって思ってしまったみたいで』
『ひどいでちゅ。あちしはあのちっさいやつらにいじめられてただけでちゅのに』
『わかるよ、俺もアイツら嫌いだし。人の話を聞かない、しょうもない奴らなんだ』
『でもあーたしゃんはやさしいニンゲンみたいでよかったでちゅ』
コンいわく、この言葉は心で話すコミュニケーション術なのだという。
けど通じ合っていない相手では、こうやって互いに集中しないと交わせない。
だからうまい具合に意識をこっちに向けてもらえて助かった。
「か、彼方、一体何して……」
「魔物も動き止まってる……」
「悪い二人とも、少し静かにしててくれないか?」
「「は、はひ」」
ごめんな二人とも、今は彼との会話に集中したいんだ。
――いや、彼女、か。
『みんなにも攻撃しないようにとよく言っておくからさ、もう安心していいよ』
『うれちいでちゅ。あちし、ひとりでこころぼそかったでちよ。はやくかあちゃんのところにかえりたいでちけど、かえりかたがわからないんでちゅ……』
『そうか、無理矢理連れて来られちゃったんだな』
『ウン……』
きっと魔物にも普通の生活があるんだろう。
でもこのニワトリ巨人――でちこちゃん(仮)もこのダンジョンに強制的に連れて来られてしまった。
俺達と同じ被害者みたいなもんだ。かわいそうだよな。
だったら帰してあげよう。
彼女を倒す必要なんて無いんだ。
「なぁつくし?」
「あ、はーい」
「たしかダンジョンコアってのを壊したらダンジョンは消えるんだよね?」
「そ、そうでーす」
「それって壊したらここすぐ消えちゃう?」
「ううん、三〇分くらいしたらかなー。あ、後ろの浮いてる赤い宝石がそうだよー」
「わかった、ありがとう」
つくしもさっくり説明してくれたから助かった。
おかげで何のためらいもなく壊せそうだよ。
『ならちょっと君に手伝って欲しい事がある』
『なんでちか?』
『後ろに赤い宝石が見えると思うんだけど、それを壊せるかい? それを壊してしばらく経つと、ここが消えて君も元の居場所に帰れる、と思う』
『ほ、ほんとでちか!?』
『確証はないけど、それ以外に手段が思い付かなくてさ。でも信じてくれるならどうかやって欲しい。俺達じゃできない事なんだ』
『わかったでち、あーたしゃんをしんじるでちよ!』
こう説明したら、でちこさんがさっそく踵を返してコアの下へ。
すかさずの超速パンチで「ホピシッ」とためらいもなく粉々にしてしまった。
なんて鋭い拳だよ。唐突すぎてまったく見えなかったんだが?
すると途端、「ズズンッ!」とダンジョンが揺れた。
「つくし、これでいいかな?」
「い、いいけど……あるぇーどういう事なのかなこれ」
「彼女と話して和解したんだ。この子はダンジョンに連れ去られた被害者らしい。ボスでもなんでもなかったんだ」
「「え、ええーーー!?」」
まぁ驚くのも無理はないよな。
普通はこんな事なんてできるはずも無いんだから。
だから異常者だとか思われたって仕方な――
「すっご! めっちゃすっご! 彼方すっごエモおおお!!」
「――え?」
「きゃー彼方! 彼方ーっ!」
「え、ええっ!?」
でもつくしは嫌うどころか、俺に駆け寄ってきた。
それどころか両手を掴んで嬉しそうにぴょんぴょん跳ねているし。
ど、どういう状況なんだ!?
どう反応したらいいんだろこれ……?
わからないのでとりあえず一緒に跳ねてみた。
そうしたらでちこちゃんも一緒に跳ねてくれた。
ズンズンいってるけど、なんだかとても楽しい。
「そ、そうだ、嬉しがってる場合じゃないよね! 澪奈パイセン治さないと!」
「そうだ、他の人も治して早くここから出ないと!」
「あ」
「ん?」
「ごめん彼方、あたしマナ切れちった!」
「じょ、冗談だろ……!?」
だけど思わぬ事態が発覚してしまった。
治癒術が使えないって事は、重傷人をそのまま連れ出さないといけない。
救護の人が外にいるかもしれないが、それで間に合うのか……!?
何かいい方法は――
「ッ!? そうだ! つくし、その杖を俺に貸してくれ!」
「え、あ、うんわかった! はい!」
「頼むぞ……へし折れてても仕組みが同じならきっと!」
思うがまま、つくしから錫杖の柄を受け取る。
俺の真価が本当に発揮できているならばあるいは、と。
まだマナ総量に関しては検証していないから確証は無い。
だがもし俺の考えが正しいのなら、これもできるはずだ!
――そしてその予測は正しかった。
錫杖の形は初期状態に戻ってしまっている。
しかし多量のマナが途端に溢れ出し、それだけで周囲を照らした。
二人どころかでちこちゃんまで驚いてしまうほどにごうごうと。
「「え、えええーーーーーーっ!?」」
『でちーーー!?』
「よし、これならいけるぞ! 頼む、使えてくれ! はぁぁぁ……【全域超級即癒術】!!!」
さらに俺の知るとっておきの魔法を展開する。
するとかかげた杖から光が迸った。
白光の輪がいくつも現れ、回り、輝き、重なり舞う。
加速し、拡がり、無数の燐光を弾き飛ばしながら。
そうして遂には真っ白な光がたった一瞬、場を覆い尽くした。
「ま、まぶしっ……くない。あれ?」
「今の一体何……?」
それだけだ。
たったそれだけでもうすべてが解決したよ。
「つくし、これ返すよ」
「あ、ほーい」
「これで多分もうみんな治ってるはず。つくしの治癒みたいに痛みが無いから起きないけど」
「もー驚くのも疲れちった。すごすぎだねぇ彼方は。語彙力が死んじゃったよぉ!」
「クフフ、つくしの語彙力は常に死んでいる!」
「なぜばれたし!」
「……ふふふっ、あっははははっ!」
「あ、彼方が笑ったー!」
「ヒヒ、どうやら我らの真の同志となれたらしいわね……!」
……ああ、なんて気持ちがいいんだろう。
俺はこんな思いをしたかったんだなぁって今さらながらに気付かされた。
小さい時からずっとずっと忘れようとしていた想いに。
同じ人間の友達との、なんて事の無い会話を楽しみたいって。
しかもその上で理不尽をすべて吹き飛ばしてやった!
もうこれ以上ない最高で大満足な出来栄えだ!
おかげでコンへのとっておきの土産話ができたよ。
ありがとうな、みんな!
「さぁて、ダンジョンが消える前にさっさとここを出よう!」
「でもこの人数どうしようもないよー」
「そうだなー……あ! そうだ!」
「ん?」
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