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第四章
第52話 魔兎たちを養う準備を始めましょう
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「レ、レディ! 吾輩たちは貴女に召し上がっていただく事こそが第一の――アーーーッ!!! レ、レディィィーーーーーー!!!!!????」
家の外からマンドラゴラさんの慟哭が聞こえてきます。
しかし今はそんなことを気にしている場合ではありません。
そう思い家の中でチッパーさんたちと会議を始めました。
「あ、あれほっといていいのかよ?」
「ええ。魔兎さんたちの中にはとても飢えている方もおられるようでしたから、ひとまずはマンドラゴラさんたちを犠牲にしてでも今この場を凌ぐことが先決です。幸い、野菜の成長度はもう安定してきていますからね、根っこごと抜き取らない限りはこの大地がすぐに育ててくださるでしょう」
「でもこの調子じゃ根っこまで食べられちゃいそうな雰囲気なんだナ」
「というかさーマンドラゴラがもうその根っこなんじゃ?」
「ぐもーん……」
「い、一応代表と思しきあの方にやり過ぎないよう伝えておきましたし大丈夫でしょう」
でも少し不安になってきましたね。
早く手を打たないといけないかもしれません。
「それでどうするんだ? このままじゃ俺たちの食い扶持も危ういぜ?」
「彼らは主に草食だそうなので、最悪はお肉で凌げるでしょう。しかしそれでは生活水準の低下は否めません。そこで少しだけ彼ら自身の力を借りることを提案しようかと」
「彼らの力を借りるってまさか、あんなたくさんの魔兎を使役するんだナ……?」
「ええ、そうです。働かざる者食うべからずと言いますし、食べたからにはあの魔兎さんたちにもこの食糧危機への対策のために一働きしていただこうかと」
「ま、それは当然だよねぇ~。ボクもハッピー組じゃずっとそう言われてたから頑張ってたもんさぁ!」
「それ、本当に成果が出てたのかぁ……?」
「ブーピピー」
「ま、まぁきっとその辺りの事情はパピさんに限らずどこも一緒でしょう。だから彼らもきっとわかってくれるはず。そう信じて訴えてみることにします」
「「「賛成~!」」」
「ぐもーん!」
「皆さんからは特に意見が無さそうですし、早速行動を開始するとしましょう」
こう軽く話し合って意見をまとめると、すぐに二階のバルコニーへ。
手すりに乗って立ち上がると、何人かの魔兎さんが気付いて見上げてきました。
「皆さん、どうか聞いてくださーい!」
続いて声を上げると、野菜を齧っていた方々もこちらに気付きます。
「今はそこの野菜で空腹は凌げますが、今のままでは全員が飢えてしまいかねませーん!」
「「「ざわざわ……」」」
「そこで皆さんには、畑を拡張するお仕事をしていただこうと思っていまーす!」
「「「畑……?」」」
「「「拡張って?」」」
「「「何をするんだ?」」」
「やり方はこの後詳しくお話しますが、上手くやれれば皆さんが食べ物に困ることは無くなるでしょう! ですからどうか皆さんのお力添えを頂けませんか!?」
「「「!!!!!」」」
……どうやらこの提案は彼らにとってとても衝撃的だったようです。
わたくしの最後の一言に多くの魔兎さんたちが耳を立てて立ち上がっています。
やはり食糧問題というのは魔物共通の事案なのでしょう。
だからこそこの上ない魅力的な提案だったのかもしれません。
「それはとても素晴らしいお話なのですが、そんなことが真に可能なのですか!?」
「ええ、もちろんです! そのためにも皆さんの力を貸して頂きたいのです!」
畑を作り、作物を育てる。
これは人間だけが持つ文化で、普通の魔物には理解できません。
しかし一度覚えればきっと彼らにもその恩恵と意味がわかることでしょう。
そのためにも、今は皆で協力し合わねばならないのです。
故にその後、わたくしは魔兎・三七六人に畑の作り方を実践させることに。
以前わたくしたちが苦戦したことを彼らにもやってもらうことにしたのです。
そんな訳で、まずは土地を決める所から。
「きっと今の二倍三倍程度ではダメでしょうね」
「だとすっとちょい平地が足らねぇなぁ。木が邪魔だぜ」
「でしたら木を伐り落とすことに致しましょうぞ」
「出来そうですか?」
「ええ、これでも我々は木を齧ることにも長けております故。おい、お前たち聞いていたな?」
「「「承知!」」」
彼らの進言もあり、この対応はとても早かった。
場所を決めると、彼らがものの数分で一本、また一本と開拓範囲の木を切り倒してしまいます。
しかもそう関心していたのも束の間。
「お、おいおい、なんか一斉に土を掘り始めたぞ!?」
「木を取り除くという話でしたからな、根っこまで取り除く必要もあるでしょう」
「す、すごいんだナ。根っこがあっという間に露出してしまったんだナ……」
想像を越えた働きです。
根っこまでこうもあっさり掘り起こしてしまうなんて想定外過ぎました。
そう関心していたら次から次へと切り株が土の中から現れることに。
しかし持ち上げる力までは無いそうなので、主にグモンさんとツブレさんの力を借りて皆で一緒に取り除きます。
「お次はいかがなさいましょうかな?」
「え? で、ではわたくしたちが指示する範囲の土を掘り起こして、そこの畑と同じくらいの柔らかさに仕立てたいのですが――」
「ははは、そんなのお安い御用ですぞ。おい、お前たち聞いていたな?」
「「「承知!」」」
土を耕すとなると、もう全てを聞く前に彼らは動いていました。
それはまさに人海戦術。
百人以上の魔兎が隙間なく土を掘り起こし、石を取り除き、あっという間に超広大な畑の完成です。
「さぁお次は!?」
「え!? ええとぉ……ではこの種を魔兎さん一人分の間隔を開けて一粒ずつ――」
「承りましたぞ! おい、お前たち聞いていたな?」
「「「承知!」」」
もしかしたらわたくしは舐めていたのかもしれません。
彼らが普通の魔物と同じで生産的なことなんて全く出来ないのだと。
……全っ然そんなことありませんでした。
全てにおいて完璧です。
もはやわたくしたち以上の職人レベルと言っても過言ではないでしょう。
おかげさまで半日程度で畑の規模がおよそ三十倍に。
おまけに彼らが四六時中畑を守ってくれることで動物被害問題も解決という見事っぷりです。
ああっ、なんてすばらしい仕事っぷりなのでしょうか!
こんなことならもっと早く彼らと出会いたかったぁ……!
家の外からマンドラゴラさんの慟哭が聞こえてきます。
しかし今はそんなことを気にしている場合ではありません。
そう思い家の中でチッパーさんたちと会議を始めました。
「あ、あれほっといていいのかよ?」
「ええ。魔兎さんたちの中にはとても飢えている方もおられるようでしたから、ひとまずはマンドラゴラさんたちを犠牲にしてでも今この場を凌ぐことが先決です。幸い、野菜の成長度はもう安定してきていますからね、根っこごと抜き取らない限りはこの大地がすぐに育ててくださるでしょう」
「でもこの調子じゃ根っこまで食べられちゃいそうな雰囲気なんだナ」
「というかさーマンドラゴラがもうその根っこなんじゃ?」
「ぐもーん……」
「い、一応代表と思しきあの方にやり過ぎないよう伝えておきましたし大丈夫でしょう」
でも少し不安になってきましたね。
早く手を打たないといけないかもしれません。
「それでどうするんだ? このままじゃ俺たちの食い扶持も危ういぜ?」
「彼らは主に草食だそうなので、最悪はお肉で凌げるでしょう。しかしそれでは生活水準の低下は否めません。そこで少しだけ彼ら自身の力を借りることを提案しようかと」
「彼らの力を借りるってまさか、あんなたくさんの魔兎を使役するんだナ……?」
「ええ、そうです。働かざる者食うべからずと言いますし、食べたからにはあの魔兎さんたちにもこの食糧危機への対策のために一働きしていただこうかと」
「ま、それは当然だよねぇ~。ボクもハッピー組じゃずっとそう言われてたから頑張ってたもんさぁ!」
「それ、本当に成果が出てたのかぁ……?」
「ブーピピー」
「ま、まぁきっとその辺りの事情はパピさんに限らずどこも一緒でしょう。だから彼らもきっとわかってくれるはず。そう信じて訴えてみることにします」
「「「賛成~!」」」
「ぐもーん!」
「皆さんからは特に意見が無さそうですし、早速行動を開始するとしましょう」
こう軽く話し合って意見をまとめると、すぐに二階のバルコニーへ。
手すりに乗って立ち上がると、何人かの魔兎さんが気付いて見上げてきました。
「皆さん、どうか聞いてくださーい!」
続いて声を上げると、野菜を齧っていた方々もこちらに気付きます。
「今はそこの野菜で空腹は凌げますが、今のままでは全員が飢えてしまいかねませーん!」
「「「ざわざわ……」」」
「そこで皆さんには、畑を拡張するお仕事をしていただこうと思っていまーす!」
「「「畑……?」」」
「「「拡張って?」」」
「「「何をするんだ?」」」
「やり方はこの後詳しくお話しますが、上手くやれれば皆さんが食べ物に困ることは無くなるでしょう! ですからどうか皆さんのお力添えを頂けませんか!?」
「「「!!!!!」」」
……どうやらこの提案は彼らにとってとても衝撃的だったようです。
わたくしの最後の一言に多くの魔兎さんたちが耳を立てて立ち上がっています。
やはり食糧問題というのは魔物共通の事案なのでしょう。
だからこそこの上ない魅力的な提案だったのかもしれません。
「それはとても素晴らしいお話なのですが、そんなことが真に可能なのですか!?」
「ええ、もちろんです! そのためにも皆さんの力を貸して頂きたいのです!」
畑を作り、作物を育てる。
これは人間だけが持つ文化で、普通の魔物には理解できません。
しかし一度覚えればきっと彼らにもその恩恵と意味がわかることでしょう。
そのためにも、今は皆で協力し合わねばならないのです。
故にその後、わたくしは魔兎・三七六人に畑の作り方を実践させることに。
以前わたくしたちが苦戦したことを彼らにもやってもらうことにしたのです。
そんな訳で、まずは土地を決める所から。
「きっと今の二倍三倍程度ではダメでしょうね」
「だとすっとちょい平地が足らねぇなぁ。木が邪魔だぜ」
「でしたら木を伐り落とすことに致しましょうぞ」
「出来そうですか?」
「ええ、これでも我々は木を齧ることにも長けております故。おい、お前たち聞いていたな?」
「「「承知!」」」
彼らの進言もあり、この対応はとても早かった。
場所を決めると、彼らがものの数分で一本、また一本と開拓範囲の木を切り倒してしまいます。
しかもそう関心していたのも束の間。
「お、おいおい、なんか一斉に土を掘り始めたぞ!?」
「木を取り除くという話でしたからな、根っこまで取り除く必要もあるでしょう」
「す、すごいんだナ。根っこがあっという間に露出してしまったんだナ……」
想像を越えた働きです。
根っこまでこうもあっさり掘り起こしてしまうなんて想定外過ぎました。
そう関心していたら次から次へと切り株が土の中から現れることに。
しかし持ち上げる力までは無いそうなので、主にグモンさんとツブレさんの力を借りて皆で一緒に取り除きます。
「お次はいかがなさいましょうかな?」
「え? で、ではわたくしたちが指示する範囲の土を掘り起こして、そこの畑と同じくらいの柔らかさに仕立てたいのですが――」
「ははは、そんなのお安い御用ですぞ。おい、お前たち聞いていたな?」
「「「承知!」」」
土を耕すとなると、もう全てを聞く前に彼らは動いていました。
それはまさに人海戦術。
百人以上の魔兎が隙間なく土を掘り起こし、石を取り除き、あっという間に超広大な畑の完成です。
「さぁお次は!?」
「え!? ええとぉ……ではこの種を魔兎さん一人分の間隔を開けて一粒ずつ――」
「承りましたぞ! おい、お前たち聞いていたな?」
「「「承知!」」」
もしかしたらわたくしは舐めていたのかもしれません。
彼らが普通の魔物と同じで生産的なことなんて全く出来ないのだと。
……全っ然そんなことありませんでした。
全てにおいて完璧です。
もはやわたくしたち以上の職人レベルと言っても過言ではないでしょう。
おかげさまで半日程度で畑の規模がおよそ三十倍に。
おまけに彼らが四六時中畑を守ってくれることで動物被害問題も解決という見事っぷりです。
ああっ、なんてすばらしい仕事っぷりなのでしょうか!
こんなことならもっと早く彼らと出会いたかったぁ……!
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