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第四章
第44話 住処を新しくしよう!
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わたくしがテリック村より帰ってからもう三日。
荒らされた私有地がようやく元に近い状態へと戻り始めました。
しかし一方でまだお家は壊れたまま。
なにせ始めにハーピーたちの遺体の搬送と埋葬。
その後は血で汚れてしまった大地の浄化作業。
それらを優先して行っていたために施設修復は後回しとなってしまった。
おまけになんだか一雨来そうな雰囲気。
そこで仕方なく、この日は〝扉〟があった洞穴祠へと身を寄せることに。
「ふわぁ……おや?」
そして目を覚ますと、朝日の眩しいスッキリとした景色がお出迎え。
外にも出てみると心地良い空気が鼻に触れました。
「んん~~~! いい朝ですねぇ、今日はやる気が出そう~~~!」
なにせ昨日までは内容が内容なだけに浮かれられませんでしたからね。
でも今日からは前向きに過ごせそう。とっても楽しみです。
――そう思っていたのですが。
「ああ、これは思っていた以上に酷いですね……」
いざお家の下へとやってくるとその惨状に言葉を失ってしまいました。
「こりゃひでぇな。せっかく積んだ石レンガの壁が崩れちまってる」
「地面がドロドロなんだナー。そのせいで崩れちゃったんだナー」
「ひゃー、敷き藁もグチャグチャだぁ! ボクもう近づきたくもないよぉ」
「うーん、これは新しい家を建てた方が良さそうですね。雨対策もしておかないといけなさそう」
家が出来てから雨に降られたことが無かったので見逃していました。
元々知識なしで試行錯誤して造ったものですから仕方ないのですけど。
「せっかく作り直すならもうちっと広くしないとだなぁ。もうツブレやパピもいるし」
「ええ、いい機会ですし大きな家に建て直したいところです」
「ま、問題はどう建てるかなんだけどな」
「で、ですね……」
次はマイホーム五号でしょうか。
一号は木の棒を傘状に立てて即崩壊。
二号は四方に柱を立てて屋根を乗せたら崩壊。
三号では木の板を張って出来たけどグモンさんの足踏みで揺れて崩壊。
ですが四号では石レンガを使うことを覚え、無事成功。
ここまでに一ヵ月とかなりの試行錯誤を要しましたねぇ、ええ……。
「それで次はどうすんだ?」
「やるなら四号を教訓にして石の床を敷くとかでしょうか。高床にしたい所ですね。そうすれば川も近いので増水した際にも避難するのに良いでしょうし」
そう軽く決めると、まずは立地を決めます。
元の家の石レンガを再利用、新しい場所に並べて敷地の大きさを決めました。
ただしこれでは床材が足りないので追加で切り出し、運搬可能な者で運びます。
そうして床材が敷き詰められた辺りでお昼過ぎ。
力仕事だったのでもう皆ヘトヘトです。
仕方ないので三人一緒に木陰で休憩することに。
「さ、先が長いよぉ~~~! こんなの本当に完成させられるのぉ~~~!?」
あらら、パピさんが早速尻餅を突きながら弱音を吐いてしまいました。
まぁ仕方ありません。彼女が一番非力ながらも頑張っていましたから。
やっぱり羽頂天組を連れてきたことに負い目があるのでしょうか。
「まぁ無理をなさらず。あれでしたらチッパーさんのお手伝いでも構いませんから」
しかし逃げ道は幾らでもあるもの。
今チッパーさんとグモンさんが畑の再構築をやっていますから、手伝ってあげればきっと喜ぶでしょう。
まだまだやることは一杯です。
かまども崩されてしまっていますし。
だったら早く全部修復しませんと!
「……おお~~~い」
「え?」
でもこう決意していた時、聞き慣れない声が聞こえました。
しかも人語です。妙ですね。
それでふと声のした方を見ると――
「いたいた、やぁネコチャン」
「ってことはここが封印の地か」
「だいぶさっぱりした土地だったんだな」
な、なんか大人数が押し寄せてきています!
続々来るので人数がすぐにはわからないくらいです! もう十人以上!?
「あ、あ、あの……」
「おぉすまんすまん、先に説明をしないとな。実はミネッタに頼まれたことがあってね」
「え、ミネッタさんから?」
どうやら雰囲気からしてテリックの村の人たちでしょうか。
さすがにツブレさんもビックリしてわたくしの後ろの木に隠れてしまいました。
遠くでチッパーさんも唖然としていますし、パピさんに至っては姿がもう見えません。変身してどこかに潜んでいるのでしょう。
「ああ、ネコチャンたちの家を建ててあげて欲しいってな」
「え、ええーーーっ!?」
「そのための資材も運んできた。順次ここに届くはずだ」
これにはわたくしもビックリです。
一体どうしてこんなことに?
「あの、でもわたくし」
「ああ、ミネッタからお代は貰ってるから何も気にしなくていい。虹金貨を出された時はビビったけどなぁ、はははっ!」
「なんですってぇ!?」
「そういえばこうも言伝っているよ。〝首都への旅費はお釣りとしてもらっているから気にしないで〟ってな。君が反論することを見越してのことだ」
「ああもう……ほんと予想の斜め上のことばかりする方ですねぇ」
もう驚きを通り越して呆れるばかりです。
あまりに力が抜けてしまい、コテンと横に倒れてしまいました。
「ま、貰うもんは貰ってるからな、早急に完成させようと思って大量の人員を動員させてもらったよ。ちょい騒がしくなると思うが勘弁してくれ」
「ふぁい……」
「それで、どの辺りに建てたらいい?」
「それでしたらあの石畳みの一帯にお願いしたく」
「了解。よし野郎ども、早速工事に取り掛かるぞぉ!」
「「「おぉ!!!!!」」」
人間ってここまで思い切りのよい方々でしたっけ?
今さらながらにそんな疑問が沸々と湧いてくる不思議な状況です。
「なぁネルル、あいつらなんか始めてるけどいいのか?」
チッパーさんも不安そうに駆け寄ってきましたが、頷きで返すと納得はしてくれたご様子。
ツブレさんとパピさんもわたくしの傍に、それで話を聞くと動揺を抑えてくれました。
グモンさんはしれっと村人たちに交じって作業の手伝いをしているようですね。
「ミネッタさんの計らいだそうです。家を建ててくれるそうな」
「おいおい、そんなのアリか、アリなのかぁ!?」
「まぁわたくしたちの資産を使ってのことなのでアリですねぇ。想定外の出来事ですけど」
確かに不安はあります。
ですが彼らもプロなようで、作業に入るともうあっという間に土台と支柱が完成。
夕方に差し掛かった頃にはもう壁まで出来上がっている始末です。
しかも立地が当初想定の何倍とも知れない圧倒的広さ。
おまけに二階建てを想定しているようで、搬入された資材はまだまだあるご様子。
そんな作業も夕暮れとなれば終わり、作業員たちが引き上げて静かに。
そして再び朝を迎えると、彼らの作業音によって起こされることとなりました。
「あいつらこんな朝早くから熱心なもんだねぇ」
「しかも人数が倍くらい増えている気がするんだナ」
「うーん、完全に人件費度外視です。虹金貨の価値ってそれくらいすごかったんですかねぇ……」
「ボクもう訳わからなくて直視できないよぉ」
これだけ人の気配や形跡があると野鳥たちすら近づかない模様。
仕方なくわたくしたちは木陰でビッグプリン三号の製作手伝いをしつつ、大工さんたちの動向を見守ります。
……そうしてその日の夕方前。
「これで完成だ。貰ったお代で出来ることはやった」
「あ、ありがとうございます」
「余った差額分は後で改めて算出してミネッタに渡しておくよ」
「これでも余るのです!?」
「当たり前だ。あんな大金そう使い切れるもんじゃない。さ、後は好きに使ってくれ。じゃあなネコチャンたち」
そう伝えられた時にはもう彼らの大半が引き上げた後。
代表の方もこう挨拶をすると踵を返し、残る人たちと共に下山していきました。
それで残されたのは想像を絶するほどの豪邸で。
「これ、俺らの家なの?」
「オ、オラが通れそうな扉まであるんだナ……」
「ボクが留まれそうな所もあるよ……」
「ぐもーん!」
まさに人が何人も住めるお家です。
玄関から入れば、お店かとも思える広さの大部屋が。
玄関口も人用と獣用があるとかもう意味がわかりません。
よく見たら大広間にはキッチンまであります。
さらに大部屋の両横には四つの小部屋がある様子。
他にもキッチンの裏手には浴場とトイレらしき設備まで。
玄関傍には階段があり、二階にいけば中フロアとさらに四部屋。
おまけにパピさんが降りるには丁度いい感じのバルコニーも完備。
そして何故か各所にキャットウォークまで付いている……!!!!!
「ひ、広すぎる! 嬉しいけどわたくしたちが住むには広すぎます……!」
突貫とはいえこんなにも凄い家が二日で出来てしまうとは驚きです。
どうやら二百年の間に建築技術も相当に上がっていたようで、わたくしはもう呆然とするばかりなのでした。
荒らされた私有地がようやく元に近い状態へと戻り始めました。
しかし一方でまだお家は壊れたまま。
なにせ始めにハーピーたちの遺体の搬送と埋葬。
その後は血で汚れてしまった大地の浄化作業。
それらを優先して行っていたために施設修復は後回しとなってしまった。
おまけになんだか一雨来そうな雰囲気。
そこで仕方なく、この日は〝扉〟があった洞穴祠へと身を寄せることに。
「ふわぁ……おや?」
そして目を覚ますと、朝日の眩しいスッキリとした景色がお出迎え。
外にも出てみると心地良い空気が鼻に触れました。
「んん~~~! いい朝ですねぇ、今日はやる気が出そう~~~!」
なにせ昨日までは内容が内容なだけに浮かれられませんでしたからね。
でも今日からは前向きに過ごせそう。とっても楽しみです。
――そう思っていたのですが。
「ああ、これは思っていた以上に酷いですね……」
いざお家の下へとやってくるとその惨状に言葉を失ってしまいました。
「こりゃひでぇな。せっかく積んだ石レンガの壁が崩れちまってる」
「地面がドロドロなんだナー。そのせいで崩れちゃったんだナー」
「ひゃー、敷き藁もグチャグチャだぁ! ボクもう近づきたくもないよぉ」
「うーん、これは新しい家を建てた方が良さそうですね。雨対策もしておかないといけなさそう」
家が出来てから雨に降られたことが無かったので見逃していました。
元々知識なしで試行錯誤して造ったものですから仕方ないのですけど。
「せっかく作り直すならもうちっと広くしないとだなぁ。もうツブレやパピもいるし」
「ええ、いい機会ですし大きな家に建て直したいところです」
「ま、問題はどう建てるかなんだけどな」
「で、ですね……」
次はマイホーム五号でしょうか。
一号は木の棒を傘状に立てて即崩壊。
二号は四方に柱を立てて屋根を乗せたら崩壊。
三号では木の板を張って出来たけどグモンさんの足踏みで揺れて崩壊。
ですが四号では石レンガを使うことを覚え、無事成功。
ここまでに一ヵ月とかなりの試行錯誤を要しましたねぇ、ええ……。
「それで次はどうすんだ?」
「やるなら四号を教訓にして石の床を敷くとかでしょうか。高床にしたい所ですね。そうすれば川も近いので増水した際にも避難するのに良いでしょうし」
そう軽く決めると、まずは立地を決めます。
元の家の石レンガを再利用、新しい場所に並べて敷地の大きさを決めました。
ただしこれでは床材が足りないので追加で切り出し、運搬可能な者で運びます。
そうして床材が敷き詰められた辺りでお昼過ぎ。
力仕事だったのでもう皆ヘトヘトです。
仕方ないので三人一緒に木陰で休憩することに。
「さ、先が長いよぉ~~~! こんなの本当に完成させられるのぉ~~~!?」
あらら、パピさんが早速尻餅を突きながら弱音を吐いてしまいました。
まぁ仕方ありません。彼女が一番非力ながらも頑張っていましたから。
やっぱり羽頂天組を連れてきたことに負い目があるのでしょうか。
「まぁ無理をなさらず。あれでしたらチッパーさんのお手伝いでも構いませんから」
しかし逃げ道は幾らでもあるもの。
今チッパーさんとグモンさんが畑の再構築をやっていますから、手伝ってあげればきっと喜ぶでしょう。
まだまだやることは一杯です。
かまども崩されてしまっていますし。
だったら早く全部修復しませんと!
「……おお~~~い」
「え?」
でもこう決意していた時、聞き慣れない声が聞こえました。
しかも人語です。妙ですね。
それでふと声のした方を見ると――
「いたいた、やぁネコチャン」
「ってことはここが封印の地か」
「だいぶさっぱりした土地だったんだな」
な、なんか大人数が押し寄せてきています!
続々来るので人数がすぐにはわからないくらいです! もう十人以上!?
「あ、あ、あの……」
「おぉすまんすまん、先に説明をしないとな。実はミネッタに頼まれたことがあってね」
「え、ミネッタさんから?」
どうやら雰囲気からしてテリックの村の人たちでしょうか。
さすがにツブレさんもビックリしてわたくしの後ろの木に隠れてしまいました。
遠くでチッパーさんも唖然としていますし、パピさんに至っては姿がもう見えません。変身してどこかに潜んでいるのでしょう。
「ああ、ネコチャンたちの家を建ててあげて欲しいってな」
「え、ええーーーっ!?」
「そのための資材も運んできた。順次ここに届くはずだ」
これにはわたくしもビックリです。
一体どうしてこんなことに?
「あの、でもわたくし」
「ああ、ミネッタからお代は貰ってるから何も気にしなくていい。虹金貨を出された時はビビったけどなぁ、はははっ!」
「なんですってぇ!?」
「そういえばこうも言伝っているよ。〝首都への旅費はお釣りとしてもらっているから気にしないで〟ってな。君が反論することを見越してのことだ」
「ああもう……ほんと予想の斜め上のことばかりする方ですねぇ」
もう驚きを通り越して呆れるばかりです。
あまりに力が抜けてしまい、コテンと横に倒れてしまいました。
「ま、貰うもんは貰ってるからな、早急に完成させようと思って大量の人員を動員させてもらったよ。ちょい騒がしくなると思うが勘弁してくれ」
「ふぁい……」
「それで、どの辺りに建てたらいい?」
「それでしたらあの石畳みの一帯にお願いしたく」
「了解。よし野郎ども、早速工事に取り掛かるぞぉ!」
「「「おぉ!!!!!」」」
人間ってここまで思い切りのよい方々でしたっけ?
今さらながらにそんな疑問が沸々と湧いてくる不思議な状況です。
「なぁネルル、あいつらなんか始めてるけどいいのか?」
チッパーさんも不安そうに駆け寄ってきましたが、頷きで返すと納得はしてくれたご様子。
ツブレさんとパピさんもわたくしの傍に、それで話を聞くと動揺を抑えてくれました。
グモンさんはしれっと村人たちに交じって作業の手伝いをしているようですね。
「ミネッタさんの計らいだそうです。家を建ててくれるそうな」
「おいおい、そんなのアリか、アリなのかぁ!?」
「まぁわたくしたちの資産を使ってのことなのでアリですねぇ。想定外の出来事ですけど」
確かに不安はあります。
ですが彼らもプロなようで、作業に入るともうあっという間に土台と支柱が完成。
夕方に差し掛かった頃にはもう壁まで出来上がっている始末です。
しかも立地が当初想定の何倍とも知れない圧倒的広さ。
おまけに二階建てを想定しているようで、搬入された資材はまだまだあるご様子。
そんな作業も夕暮れとなれば終わり、作業員たちが引き上げて静かに。
そして再び朝を迎えると、彼らの作業音によって起こされることとなりました。
「あいつらこんな朝早くから熱心なもんだねぇ」
「しかも人数が倍くらい増えている気がするんだナ」
「うーん、完全に人件費度外視です。虹金貨の価値ってそれくらいすごかったんですかねぇ……」
「ボクもう訳わからなくて直視できないよぉ」
これだけ人の気配や形跡があると野鳥たちすら近づかない模様。
仕方なくわたくしたちは木陰でビッグプリン三号の製作手伝いをしつつ、大工さんたちの動向を見守ります。
……そうしてその日の夕方前。
「これで完成だ。貰ったお代で出来ることはやった」
「あ、ありがとうございます」
「余った差額分は後で改めて算出してミネッタに渡しておくよ」
「これでも余るのです!?」
「当たり前だ。あんな大金そう使い切れるもんじゃない。さ、後は好きに使ってくれ。じゃあなネコチャンたち」
そう伝えられた時にはもう彼らの大半が引き上げた後。
代表の方もこう挨拶をすると踵を返し、残る人たちと共に下山していきました。
それで残されたのは想像を絶するほどの豪邸で。
「これ、俺らの家なの?」
「オ、オラが通れそうな扉まであるんだナ……」
「ボクが留まれそうな所もあるよ……」
「ぐもーん!」
まさに人が何人も住めるお家です。
玄関から入れば、お店かとも思える広さの大部屋が。
玄関口も人用と獣用があるとかもう意味がわかりません。
よく見たら大広間にはキッチンまであります。
さらに大部屋の両横には四つの小部屋がある様子。
他にもキッチンの裏手には浴場とトイレらしき設備まで。
玄関傍には階段があり、二階にいけば中フロアとさらに四部屋。
おまけにパピさんが降りるには丁度いい感じのバルコニーも完備。
そして何故か各所にキャットウォークまで付いている……!!!!!
「ひ、広すぎる! 嬉しいけどわたくしたちが住むには広すぎます……!」
突貫とはいえこんなにも凄い家が二日で出来てしまうとは驚きです。
どうやら二百年の間に建築技術も相当に上がっていたようで、わたくしはもう呆然とするばかりなのでした。
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