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第四章

第42話 新しい目標が早速見つかりました!

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「ネルルちゃんおっはよー!」

「ふぐっ!? はっ、わたくし眠ってましたの!?」

 突然のミネッタさんの大声によって叩き起こされてしまいました。
 そうして気付けば朝。しかももうだいぶ日が出ている様子。

 なんだかグッスリ眠ってしまっていたようです。

 それでふと手元をまさぐると、柔らかい布団の感触が。

「こ、これだーーーーーーっ!!!!!」

「な、何!?」

 そう、これです! 柔らかい敷布団!
 この感触はわたくしがきっと求めていた物に相違ありません!

「そう、思えば眠る時いつも寝心地が悪いなぁなんて思っていたものです」

「ふむふむ」

「ですが今やっと気付きました。最も今欲しているのはこんな布団なのだと!」

「やったねー目標出来たじゃーん」

「やりました! これでスローライフが捗ります!」

 寝起きの調子もとても快調。
 おかげさまで起きた途端から元気いっぱい、サムズアップでミネッタさんに応えてしまうほどです。

「じゃあこのレベルの布団を作るためにもアヒルを一杯飼わないとねぇ」

「そうでしたか、この柔らかさの正体は羽毛なのですね」

「そうそう。しかも割と高級な奴。ホワイトパールダックとかいう品種の使ってるっぽい」

「ふぁ~~~ふかふか布団への道のりも険しいですねぇ……」

「おまけに品質維持管理も大変だしね。ウチはシパリが毎日掃除してくれているから平気だけどさ」

 クッ、未だ掘っ立て小屋みたいなあの家ではとても維持できる気がしません。
 仮に布団があっても一瞬で虫に食われてしまうのが目に見えています。

 うーん、やはり順序を追って一つずつ環境を整えていくしかありませんね。

 目指せフワモコお布団!
 ついでにクッキー常設!

 新たに設定された目標に燃え、布団の上で腕を振り上げます。ちゃーっ!

「で、意気揚々な所を悪いんだけどさ、これから国軍の皆さんをお見送りするんだよね」

「――ハッ!?」

「せっかくだからネルルちゃんも呼ぼうかなと思って起こしにきたんだけど、無用なおせっかいだったかな?」

「す、すみません行きますぅ!」

 本当は遠慮したい所ですがそうもいきません。
 間接的にとはいえ、国軍の皆さまには助けて頂いた御恩もありますし。
 どうせわたくしのことなんてもう知られているでしょうし、もはや隠れても仕方ありませんからね。

 そう思うままにベッドから飛び降りてミネッタさんの傍へ駆け寄ります。
 すると否応なしに腰を掴まれ、また服の中に押し込まれてしまいました。

 しかも今度は襟からスポッと頭が出るくらいに。
 なんでしょう、この偽装に一体何の意味が?

 効果はともかくとして、そんな偽装合体状態のまま村の大出口の方へ。

「残念ですが、つい先ほど出発なされましたよ」

「「ええーーーーーーっ!?」」

 しかし辿り着いた時には既に手遅れ。
 景色のずっと先に一団の馬車の走る様子が見えました。

 ああ、わたくしが悠長にお布団のレビューをしていたばかりに。

「ま、行っちゃったものは仕方ないよ。彼らも仕事だからさ」

「そうですね……お礼は次の機会にでもいたしましょうか」

 村人さんたちがわたくしの頭を撫でに来る中、肩を落として落胆。
 しかし挫けないようにシャキンと背筋を伸ばしたら首筋も撫でられてしまいました。

 なんでしょうこの村人さんたち、すごく猫の扱いに慣れています。
 言い得ない心地良さが背筋をゾクゾクッと走ってものすごく堪りません!

「ゆっくりしてってねぇネコチャン」

「他の魔物もネコチャンくらい大人しけりゃなぁ」

 しかもなんでしょう、皆さんやたらとネコチャン呼びです。
 ネルルって名前が広まっていないのは幸いですが、心中複雑ですね。

「ごめんねネルルちゃん、ネルルちゃんにあげる服を自慢してたら気付くとネコチャンって名称で広まっててさ」

 ああなるほど、この服が原因でしたか。
 確かにかわいいですもんね。刺繍でネコチャンって文字書いてあるからもう。

 でも本名で呼ばれないとそれはそれで歯がゆいですーっ! ンーーーッ!

「さて……ではそろそろわたくしもお家に帰ろうかと思います。先日は本当にお世話になりました」

「いやいやー、ネルルちゃんが無事で何よりだよー。首都からとんぼ返りした甲斐があったなぁ」

「あら、既に首都に行っていたのですか。それならジェイルさんたちと一緒に行けば良かったのに」

「あ」

 おやおや、今さら気付いたようです。
 しかも相当悩ましかったのか頭を掻きむしり始めてしまっています。

「そうだったぁ~~~! 通常便じゃ片道でも三〇〇〇ジルと二日かかるのにぃ!!!!!」

 きっと大金なのでしょうね。
 本当ならわたくしが代わりに支払いたい所ですが、手持ちの虹金貨では逆にお釣りが用意できなくて支払い拒否されそうですし。

 あ、それなら!

「仕方ない、また自分で工面しよう……」

「でしたらミネッタさん、こちらをお使いください」

「うげっ!? で、出たーっ! 虹金貨ーーー! でもダメだよ、これじゃあ支払いなんて――」

「いいえ、そうではありません。これを一連の向こうでの生活費に充てればいいのです」

「えっ?」

 そう、このお金はこういう時にこそ使うべき物。
 わたくしのために動いてくれたミネッタさんに使うならジェイルさんも認めてくれることでしょう。

「どうせわたくしが持っていても換金出来ません。それならミネッタさんが有用的に使ってくれた方が助かりますから」

「ネルルちゃん……」

「これはシパリさんと同じ。これからのお付き合いに必要となるお金の前払いみたいなものです。どうか受け取ってください」

 そう改めて答え、一枚の虹金貨をミネッタさんの手の中へ。
 すると彼女も理解してくれたのかギュッと握り締めてくれました。

「わかった。これで立派な冒険者になって戻って来るよ。そうしたら貰った金額だけ一杯恩返しするからね!」

「はいっ!」

 これでミネッタさんが心置きなく冒険者としての成長に励めればよし。
 いわゆる先行投資というものですね。
 このことがいつか実を結ぶことを信じています。

 そう信じながらわたくしは別れを告げて家への帰路へと就きました。
 戦いで荒れてしまった土地の修繕もありますし、やることはいっぱいありますから。
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