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第二章
第23話 首都にやってきました!後編(ミネッタ視点)
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ジェイル総隊長さんという方が現れた途端、ファズ君の態度が一変。
彼から離れて向き合うといきなり敬礼してビシッと直立をキメていた。
「し、失礼しましたジェイル総隊長殿! な、何の御用でございましょうかぁ!」
これが兵士……。
しっかり規律に則ってる感じがなんだかすごい。
「あ、これから出動だから。すぐに詰所に戻って準備してくれる?」
「え、でも自分今日は非番で」
「いやーそういう訳にもいかん事態なのよ。そこで(パシリに)優秀な君がいないとどうすんの」
「いや、小声漏れてますけど!? 優秀の方向性違くありません!?」
「でもまぁ優秀なことに違いは無いし? 頼むよぉ、後生だよぉ」
「いつもじゃないっスかそれェ! ジェイル総隊長の後生は何個あるんスかぁ!」
ああ、でもすぐに素が出ちゃってるし。
まぁそれでも全く動じない総隊長さんの器の大きさも凄いけど。
「――っと、こんな言い合いしてる暇は無いですね。わかりました準備します!」
「おう、頼んだわ。俺ァ一杯やってくる」
「んなのダメに決まってるでしょうが!? アンタも来るんだよォーーー!!!!!」
「えー、お酒入らんとやってられんでしょうが」
ううん違う。
この総隊長さんが極端に変なんだね。私でもわかる。
でも確かに、こんな人の相手ならファズ君は最適かもねぇ。
なんたって村の誰もが頭の上がらないウチの一家に対して一歩も引かなかったくらいに胆力あるし。
「んで何があったんです? せめてそれくらいは情報くださいよ」
「ああそうそう、君の故郷で問題があったんだよ。だから君がいないと困るってワケ」
「「えッ!?」」
ファズの故郷!?
ってことはテリック村じゃん!
……やだ、なんだろ嫌な胸騒ぎがする。
ここに来る前にお父さんたちにネルルちゃんのことうっかり話しちゃったし。
気のせいだといいんだけど。
「実はねぇ、〝喋る魔物〟が出たそうだ」
気のせいじゃなかったああああああああああ!!!!!!!!!
間違い無いよそれ、間違いなくネルルちゃんだよぉぉぉ!!!!!
「お嬢ちゃん、なんかすっごい顔になってるけど大丈夫?」
「ハ、ハヒ、ダイジョウブ、デス」
驚くあまりうっかり顔に出ちゃってた!
でもどうしよう、こんなの驚くなっていう方が無理だよ!
「また喋る魔物ですか!?」
「あ、うん、そうなんだよねぇ」
え? またって?
もしかして他にも喋る魔物がいるってこと?
「ジェイル総隊長殿……こないだのは仕留めたって言いましたよね?」
「そうだねぇ。でも誰にもわからないことはあるってもんだ。喋るのが一匹だけとは限らないんだよ、そうでしょ?」
「ま、まぁそうですけど……」
そっか、他にもいるってこともあるんだ。
それだとどうして噂を聞かないのかわからないけど。
でも村の問題は多分間違い無いはず。
もし他に喋れる子がいるのならネルルちゃんが知っているはずだもの。
だったら。
「まぁなんにせよ問題を起こしたのがその魔物らしいから? 国軍としては黙ってられない訳よ。そんな訳で急いで出立するぞぉ。部隊は手すきの第三師団だけで構わんから」
「了解、作戦の予定は?」
「緊急につき今日中に現着予定、明朝に作戦決行予定だ。帰着は作戦内容による。以上」
「拝承!」
「あ、あの……」
「んん? なんだいお嬢ちゃん?」
「わ、私も連れてってください! もしかしたら何かの役に立てるかも!」
「ミ、ミネッタ!?」
ファズは驚いてるけど構わない。
総隊長さんも何考えているかわからないけど頼るしかない。
これは多分私が行かないといけない問題なんだ。
そうしないと最悪の場合、冒険者だとか言ってられなくなる。
だって今ネルルちゃんを守れるのはきっと、私だけなんだから!
「……わかった。ファズ君、彼女も連れてって」
「総隊長殿!?」
「同郷でしょ? しかも今も現地住みの。ならもっと有用的でしょ」
「ですが!?」
「いいよファズ、心配しないで。私は協力したいからするの」
「ミネッタ……」
ごめんねファズ、それと総隊長さん。
ネルルちゃんのことは教えられないけど、ここは無理を通させてもらいます。
「……ミネッタは封印の地を守る防人の一族の出なんス。なので俺よりもずっと地理に詳しいはず」
「なるほどね。なら最適だ。なにせその封印の地とやらで問題が起きたらしいからねぇ」
やっぱり。
だとしたらなおさらだね。
「現地まで案内します! 迷惑はかけません!」
「よし、じゃあ皆で仲良く一緒にテリックまで行くとしますか」
「えっ!? 総隊長殿自ら行くんです!?」
「当たり前でしょ。国民の安全を守らないで何が総隊長だ」
「そんな真っ当な台詞を貴方から聞いたのは初めてですよ」
「そんなー俺の一般向けの常套句なのにー」
うーん、この総隊長さん、やっぱり締まらないなぁ。
周りの道行く人にも笑われてるし。なんだか頼りない感じ。
でも今はそんなことも言っていられないから。
(待っててね、ネルルちゃん。すぐ助けに行くから……!)
こう心に誓いつつ私は国軍の馬車へと乗り込んだ。
故郷で待っているはずの友達を想いながら、はやる気持ちを抑えて。
彼から離れて向き合うといきなり敬礼してビシッと直立をキメていた。
「し、失礼しましたジェイル総隊長殿! な、何の御用でございましょうかぁ!」
これが兵士……。
しっかり規律に則ってる感じがなんだかすごい。
「あ、これから出動だから。すぐに詰所に戻って準備してくれる?」
「え、でも自分今日は非番で」
「いやーそういう訳にもいかん事態なのよ。そこで(パシリに)優秀な君がいないとどうすんの」
「いや、小声漏れてますけど!? 優秀の方向性違くありません!?」
「でもまぁ優秀なことに違いは無いし? 頼むよぉ、後生だよぉ」
「いつもじゃないっスかそれェ! ジェイル総隊長の後生は何個あるんスかぁ!」
ああ、でもすぐに素が出ちゃってるし。
まぁそれでも全く動じない総隊長さんの器の大きさも凄いけど。
「――っと、こんな言い合いしてる暇は無いですね。わかりました準備します!」
「おう、頼んだわ。俺ァ一杯やってくる」
「んなのダメに決まってるでしょうが!? アンタも来るんだよォーーー!!!!!」
「えー、お酒入らんとやってられんでしょうが」
ううん違う。
この総隊長さんが極端に変なんだね。私でもわかる。
でも確かに、こんな人の相手ならファズ君は最適かもねぇ。
なんたって村の誰もが頭の上がらないウチの一家に対して一歩も引かなかったくらいに胆力あるし。
「んで何があったんです? せめてそれくらいは情報くださいよ」
「ああそうそう、君の故郷で問題があったんだよ。だから君がいないと困るってワケ」
「「えッ!?」」
ファズの故郷!?
ってことはテリック村じゃん!
……やだ、なんだろ嫌な胸騒ぎがする。
ここに来る前にお父さんたちにネルルちゃんのことうっかり話しちゃったし。
気のせいだといいんだけど。
「実はねぇ、〝喋る魔物〟が出たそうだ」
気のせいじゃなかったああああああああああ!!!!!!!!!
間違い無いよそれ、間違いなくネルルちゃんだよぉぉぉ!!!!!
「お嬢ちゃん、なんかすっごい顔になってるけど大丈夫?」
「ハ、ハヒ、ダイジョウブ、デス」
驚くあまりうっかり顔に出ちゃってた!
でもどうしよう、こんなの驚くなっていう方が無理だよ!
「また喋る魔物ですか!?」
「あ、うん、そうなんだよねぇ」
え? またって?
もしかして他にも喋る魔物がいるってこと?
「ジェイル総隊長殿……こないだのは仕留めたって言いましたよね?」
「そうだねぇ。でも誰にもわからないことはあるってもんだ。喋るのが一匹だけとは限らないんだよ、そうでしょ?」
「ま、まぁそうですけど……」
そっか、他にもいるってこともあるんだ。
それだとどうして噂を聞かないのかわからないけど。
でも村の問題は多分間違い無いはず。
もし他に喋れる子がいるのならネルルちゃんが知っているはずだもの。
だったら。
「まぁなんにせよ問題を起こしたのがその魔物らしいから? 国軍としては黙ってられない訳よ。そんな訳で急いで出立するぞぉ。部隊は手すきの第三師団だけで構わんから」
「了解、作戦の予定は?」
「緊急につき今日中に現着予定、明朝に作戦決行予定だ。帰着は作戦内容による。以上」
「拝承!」
「あ、あの……」
「んん? なんだいお嬢ちゃん?」
「わ、私も連れてってください! もしかしたら何かの役に立てるかも!」
「ミ、ミネッタ!?」
ファズは驚いてるけど構わない。
総隊長さんも何考えているかわからないけど頼るしかない。
これは多分私が行かないといけない問題なんだ。
そうしないと最悪の場合、冒険者だとか言ってられなくなる。
だって今ネルルちゃんを守れるのはきっと、私だけなんだから!
「……わかった。ファズ君、彼女も連れてって」
「総隊長殿!?」
「同郷でしょ? しかも今も現地住みの。ならもっと有用的でしょ」
「ですが!?」
「いいよファズ、心配しないで。私は協力したいからするの」
「ミネッタ……」
ごめんねファズ、それと総隊長さん。
ネルルちゃんのことは教えられないけど、ここは無理を通させてもらいます。
「……ミネッタは封印の地を守る防人の一族の出なんス。なので俺よりもずっと地理に詳しいはず」
「なるほどね。なら最適だ。なにせその封印の地とやらで問題が起きたらしいからねぇ」
やっぱり。
だとしたらなおさらだね。
「現地まで案内します! 迷惑はかけません!」
「よし、じゃあ皆で仲良く一緒にテリックまで行くとしますか」
「えっ!? 総隊長殿自ら行くんです!?」
「当たり前でしょ。国民の安全を守らないで何が総隊長だ」
「そんな真っ当な台詞を貴方から聞いたのは初めてですよ」
「そんなー俺の一般向けの常套句なのにー」
うーん、この総隊長さん、やっぱり締まらないなぁ。
周りの道行く人にも笑われてるし。なんだか頼りない感じ。
でも今はそんなことも言っていられないから。
(待っててね、ネルルちゃん。すぐ助けに行くから……!)
こう心に誓いつつ私は国軍の馬車へと乗り込んだ。
故郷で待っているはずの友達を想いながら、はやる気持ちを抑えて。
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