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第二章

第20話 交渉

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 パピさんにきちんと説明出来なかったのが悔やまれます。
 しかしそのことを考えている余裕はまだありません。

 何故かここにいたこの人間たちにも事情を聞かないといけませんから。

「本当に喋った、ということはわたくしが人語を喋るというのはご存知のようですね」

「え? お、おう、そうだとも。娘から聞いたのだ」

 娘? ――ああ、ミネッタさんのことでしょうか。
 となると彼らは例のお騒がせ御父上&お兄様ということかしら。
 もう、ミネッタさんはお喋りさんなのですねぇ。困ったものです。

「貴様は今、ここに住んでいると聞いた」

「ええまぁ」

「しかしだな、ここは我々シング一族が代々守り通してきた聖地。そう簡単に居座らせる訳にもいかん」

 どうやらパピさんの件だけでなく、彼らもが問題を持ちこんで来たようです。
 しかも話に聞いた通り、随分とまぁ上から目線なことか。
 三人揃って腰を落としたままふんぞり返っていてとても偉そう。

「そこで貴様らにはここから退去してもらう。この地は我々が管理するからこそ――」

「その割には貴方様ですらもこの地に訪れたことはないとミネッタさんから伺いましたけど?」

「うっ!?」

 やっぱり図星だったみたいですねぇ。
 ミネッタさんからそれとなく聞き出しておいて正解でした。

「そ、それはその必要が無いと判断したからだ! だが貴様ら魔物が住み着いたとなれば話は別であろう!」

「そうですか」

「しかし貴様は人話がわかると聞いたから敢えて交渉に来てやったのだ! それだけでもありがたいと思え!」

 まったく、それで拒否したらどうするつもりだったのでしょうか。
 深く考えない辺りはミネッタさんとそっくりです。悪い意味で、ですけど。

 ですが仕方ありませんね。
 交渉というなら受けない訳にもいきません。

「……でしたら交渉らしくこちらからも提案させて頂きます」

「えっ?」

「わたくしがこの地を買い取るというのは如何でしょう?」

「「「な、なにぃ!?」」」

 これにはさすがに驚いたようですね。
 でも決して冗談で済ませるつもりはありません。

 そこでわたくしは彼らに少し待って頂いてお家まで走ります。
 そして家の片隅に置いてあった私物の布袋を取り、彼らの元へと戻りました。

「は、はは、買い取ると言ってもはした金では――」

「ではこれで如何でしょうか?」

「――へ!?」

 それで御父上の言葉に合わせて袋から取り出したのは虹金貨。
 延べ棒のような大きな板に無数の刻印が刻まれた、この国最高額の貨幣です。

「な、な、なああああああ!?」
「こ、これってまさか虹金貨!?」
「は、初めて見た……!」

 それを躊躇もせずにポンと御父上に手渡しました。
 そんなレアな貨幣を前に三人とも座ったまま目を見開いて驚愕しています。

「な、なんで魔物がこんな高額貨幣を……!?」

「色々と事情がありまして。それでどうなのです?」

「あ、ええと……」

「足りませんか。ではもう一枚」

「「「ひょ、ひょええええええ!!!??」」」

 さらにズンッと一枚積んで差し上げると、三人の顔がもう真っ青に。
 実はその価値を深くは知らないのですが、よほどの高額だったようですね。

「え? もしかしてまだ足りませんか?」

「あ、いや、そ、そんなことはない! こ、これで充分、かも!」
(親父なに日和ってんだよ!?)
(虹金貨もう一枚だぞ!?)

「では交渉成立ですね」

 しかし有無を言わせるつもりはありません。
 微笑みをニッコリと返して差し上げると、彼らもさすがに引けなかった御様子。

「わ、わかった! この地はもう貴様に譲ることにする! よし、お前たち帰るぞ!」

 引き際もさすがですね。お兄様たちを連れてそそくさと去っていきました。
 三枚目も無心してくるようなら脅かすつもりでしたが、その必要は無さそうです。

 終始上から目線でしたが、問題は解決したので良しとしましょうか。
 後は更なる問題が発生しないことを祈るばかりです。
 出来ることなら作物の育成に集中したいですからねぇ。
 
 そんなことを心配しつつ、畑をチッパーさんたちに任せて再び狩りへと向かうのでした。
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