目覚めの悪い朝も嫌いじゃない

１、【再出発】

＊

「はぁ！？　200万！？」

　一緒に住んでいた男に逃げられ、家に届いたのは彼が作った借金の明細書だった。今思えば、怪しい点はあった。

「どうしても会社を立ち上げるのに【保証人】が必要なんだ！　俺も変わりたいんだよ！　これ以上、お前に苦労かけたくないしさ……」

　だが、彼の言葉を信じ、私は彼が差し出した用紙にサインをしてしまった。【保証人】──借金をした本人が行方知れずのため、この200万の借金全額を保証人が負担しなければいけない。つまり、私が返済しなければいけないということだ。

　目の前が真っ暗……。今住んでいるアパートの家賃と光熱費、生活費だけでカツカツだというのに……。このままでは、借金の返済まで手が回らない。削れるところを削っていかなければ……。

　真っ先に浮かんだのは、引っ越し。現在のアパートは一人で住むには広すぎるし、何より家賃が高い。今よりも家賃が安いところは、探せばいくらでもあるだろう。近々、不動産屋へ行って新居を探そう。

　次に、転職。上を見たらキリがないのは分かっているが、今の給料ではゆとりがない。お金にゆとりがないと、日常生活もうまくいかない。常にピリピリして、仕事でのミスも増えていく。その悪循環だけは避けたい。

　ベランダに出て、夜空に輝く月を見上げた。夏に比べ、冬の月は、はっきり見えるから好きだ。強く白い光を放つ月を眺めていたら、ため息がこぼれた。……どうして、こんなにも男運が悪いのだろうか。男を見る目が無いなと自分でも思う。しかし、好きになってしまうとダメなところも愛しく感じてしまい、相手のためにと尽くしてしまう。そこが更に相手をダメにしてしまうのかもしれない。

　残された借金……。これから返済の日々が始まる。返せるか不安だが、恐い人たちに追われたくはない。根性だけで乗り切れる話ではないが、ここは頑張るしかない。

──頼れるのは、自分だけ。私には、両親も親戚もいないのだから……。