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32、【形成逆転】
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十字路交差点の赤信号に捕まり、白線手前でゆっくりと停車した。この交差点を直進後、ドラックストアを左折し、角田書店が見えたら右折すると、坂を上った先に高校はある。道順は複雑だが、ここから朝風高校までは五分もかからない。
「しかし、今時の高校生は秘密ばかりだな。先生と付き合っていたり、妻子のある教師と不倫していたり」
「そんなのいつの時代だって同じですよ。表に出せない秘密は誰にだってある」
「ほう。……お前さんが言うと、説得力あるな」
「それは、どうも」
心の中で「確かに……」と遼も青宮の意見に同意した。澄貴自身、秘密の塊のような存在だ。彼が【何者】なのかよく分からない。青宮との会話を聞いている限り、二人は以前から知り合いなのだと分かる。だが、澄貴も青宮もお互いにそのことを話そうとはしない。単に言いたくないのか、言う必要がないと考えているのかは定かではないが、深入りしてはいけない気がして、遼は触れないことにした。
「それで、ストーカーの目星は付いてるのか?」鷹のような鋭い眼差しで青宮は澄貴をバックミラー越しに見つめた。
「いいや。用心深い奴で、なかなか尻尾を出さないんだよねー。新居を疑ってたんだけど、生前の響子から『彼は操られているだけ』って聞いてたし」
「えっ!? 先生から聞いてたのか? だったら、なんでもっと早く教えてくれないんだよ!」
「捜査に先入観を持つのは、よくないからね。それに──君がどこまで成長したか確認したかったんだ」
「ごめんね」と困ったように笑う澄貴に遼は心底呆れた。一刻も早い事件解決を願って動いていたのではないのか。もっと早くそのことを知っていれば、新居や森が被害に遭わずに済んだのではないか。悠長なことを言っていられる場合ではない。現にこうして、被害が起きてしまったのだから。無言で澄貴を見つめる遼の目には、【覚悟】が宿っていた。
「事件当日も、新居は響子の元を訪ねてる。普段から響子に相談していたらしい。自分を支配する奴から逃げたいって」
「……そこまで知ってたなら、森が泊まりに来たときに話せばよかっただろ? そうしたら、新居も助けられたかもしれないのに……」
「無理だな」青宮のきっぱりした声が車内の空気を一変させた。取調室で感じた重圧が漂い始めている。
「森がその情報を手に入れていたら──アイツのことだ。事実を確かめようと動いて、新居よりも先に消されてたと思うぜ。それだけじゃない。君だって、新居に接触しただろう? それを犯人に見られていたら、遼くんまでも対象に入る。……だろ?」
「ご明察。新居は自分が消されることを悟っていたんだろうね。もしかしたら、ファミレスで森くんの顔色が変わったのは、新居くんから何か連絡を受けたんじゃないかな。そのあと、彼は森くんにすべてを打ち明け、託した。自分を裏で操っているのが誰なのか。どこに証拠を残しているのかをね」
信号は青に変わり、夜に染まった街を車は再び走り始めた。行き交う対向車のヘッドライトが眩しい。
「確かに君の言う通り、新居の命も救えたかもしれない。でもね、塩ノ谷くん。僕には約束があるんだ。──響子からの最後のお願いが」
「先生からの?」
「そう。だから、新居のことは森くんにも君にも詳しくは話さなかった」
どんなお願いかは澄貴は話さなかったが、響子の考えは何となく遼に伝わっていた。いつだって、彼女は【教師】を貫く人だった。きっと、そのお願いも──
「着いたぜ」青宮の声に遼は足元に落としていた視線を前に向けた。夜の学校とは何とも不気味である。今にも何かが出そうな雰囲気だ。車に乗せてあった小型懐中電灯を手にし、校門を抜け、校内へと遼たちは入っていった。
「響子が化けて出なきゃいいけど」
「田部井! 冗談でも、そういうこと言うなよ!」
「そうだぞ! 死者を冒涜|《ぼうとく》するのはよくない!」
「……二人とも、足が震えてるよ?」澄貴の人差し指は遼と青宮の足に交互に向けられた。がくがくと膝が笑っている。どうやら、遼と青宮も苦手のようだ。
「まったく……ほら、行くよ?」
「ま、待てって!」
「こら! 刑事より先に現場に行くな!!」
へっぴり腰で強気な発言をする青宮を「はいはい」とあしらって、澄貴は遼と並んで歩いた。その前を青宮が歩いている。手に握られた小型の懐中電灯。だが、その灯りは恐怖で四方八方を行ったり来たり。これでは先頭を歩いていても意味が無い。仕方なく、後ろを歩いている遼と澄貴が灯りのサポートをした。
「そんな怖がりで、よく刑事になれたもんだね」
「お化けとヒトは別物だ。どんなに凶悪な奴でも、ヒトはヒトだからな!」
「ふーん。なるほどねー」
「……お前。俺の話、興味ないだろ?」
「うん、全然」
さらっと言い放った澄貴は青宮を追い抜き、先頭に出た。自分で照らして歩いたほうが早いと思ったのだろう。文句を言っている青宮に目もくれず、彼はどんどん歩を前へ進めていく。
職員室が近づくにつれ、闇を照らす太陽のように室内の明るさで外は満ちていた。中に誰か居るらしい。
「こんな時間まで、ご苦労なことだな」
「……あれは──科学の島野先生」
科学を担当している島野《しまの》桔平《きっぺい》は、科学者を絵に描いたような人物だ。年齢不詳で若くも老けても見える。寝癖なのか癖毛なのか、はたまた実験で失敗したからなのか、水分を失ったパサパサな黒髪のボンバーヘアに痩せ型の長身。授業以外でも常に白衣を身に纏っている。老眼のように下のほうで眼鏡を掛け、サイズがあっていないのか、上げてもすぐに元の位置に戻ってきてしまう。
窓ガラス越しに遼たちの姿を見つけた島野は驚いた顔をしながら、駆け寄ってきた。
「どうしたんですか?」
天然なのか窓を開けずに話している。「こんばんは、島野先生」挨拶をしながら遼は窓を開けた。
「あ、窓を開け忘れました……」
「天然か?」
「えぇ。髪型は天然パーマです」
「……こういうタイプは、どうも苦手だ」
「ふふ。青宮さん、自分のペース乱されるの嫌いですもんねー」
「うっせーな」と膨れっ面をする青宮とクスクス笑う澄貴を交互に見ながら、島野は不思議そうに首を傾げていた。
「どうして島野先生はまだ残っているんですか?」
「提出されたノートを見ていたんだ」
「そりゃご苦労な事で」と前置きしてから会議室に用があることを青宮は島野に伝え、職員室のベランダで靴を脱ぎ、三人は暗い廊下を進み、会議室へ急いだ。
非常口を知らせる緑の看板が薄気味悪く輝いている。
「着いたよ、会議室」
「やっとか……長い道のりだったな」
「何言ってんの? たかだか100メートルくらいでしょ」
漫談のようになっている澄貴と青宮を放置し、遼は室内の電気を点けた。一斉に蛍光灯に明かりが灯っていく。ドミノ倒しみたいだ!と小学生の頃に思ったことを遼は密かに思い出した。
「並びは運ばれた時のままみたいだね」
「そうだな。まずは、新居のロッカーを探すか」
「うん。そうしよう! それじゃ僕は左から探すから、青宮さんは真ん中、塩ノ谷くんは右側をよろしく。あ、森くんのロッカーを見つけたときも教えて」
「わかった」と返事をし、次々ロッカーを開けていく。中にある荷物から名前を確認し、新居や森以外だった場合は扉を閉じていく。所謂《いわゆる》、ローラー作戦というやつだ。
「あ! 新居のロッカー見つけた」
「どこ?」
「ここ!」
「オッケー」
どこからかボールペンと蛍光色の付箋を持ち出し、「新居」と名を付箋に書いてロッカーに澄貴は貼り付けた。
「おい、それどこから……」
「向こうのロッカーに入ってたから、拝借した」
「勝手にヒトの物を使うなよ!」
「まぁまぁ、そう固いこと言わないで。あったほうが今は便利でしょ?」
「……それはそうだけど」納得がいかない遼の声は「あったぞ! 森のロッカー!」と叫んだ青宮の声に掻き消されてしまった。澄貴と遼は青宮のもとへ駆け寄った。
「おまけに、まーたお前さんの得意分野みたいだぞ。ただのメモ書きにも読めるが、多分暗号だろ?」
「ふふっ! 森くんも暗号好きみたいだね」
「……また難問だ」
ロッカーの内扉にメモ用紙が貼り付けてあった。
──────────────────
ハンバーグ
にんじん
②里いも(いも×)
適量
家族分
【14.11.33.22.15.42】
──────────────────
一見すると何かのメモにも読めるが、これを見た瞬間、澄貴の顔色が変わった。
「しまった! 油断してた……」
「なんだ、どうした!?」
「……田部井?」
「塩ノ谷くん」澄貴は真っ直ぐに遼を見つめた。そこに今までの田部井澄貴の顔はなかった。しかし見た目が変わったわけではない。彼が放つ雰囲気がガラリと変わったのだ。初めて会うような不思議な感覚を遼は覚えた。
「あと一歩で犯人を暴ける。──【俺】は、ここに残る。君は今すぐ青宮さんと家に戻れ」
「どうして? そこまで来たなら、俺も──」
「早く戻らないと、君のお母さんと妹さんが危ない」
「え?」
「いいから! 早く戻れ!! 青宮さん、お願いします」
「……分かった。行くぞ、遼くん!」
走り出した遼の背に澄貴は「絶対、証拠は持ち帰る!」と力強い声で告げた。優勢に思えた局面も、犯人に逆転されてしまった。それでも、澄貴の目は光を失っていない。
──絶対に暴いてやる。あと少し、あと少しなんだ! 諦めてたまるか!
「しかし、今時の高校生は秘密ばかりだな。先生と付き合っていたり、妻子のある教師と不倫していたり」
「そんなのいつの時代だって同じですよ。表に出せない秘密は誰にだってある」
「ほう。……お前さんが言うと、説得力あるな」
「それは、どうも」
心の中で「確かに……」と遼も青宮の意見に同意した。澄貴自身、秘密の塊のような存在だ。彼が【何者】なのかよく分からない。青宮との会話を聞いている限り、二人は以前から知り合いなのだと分かる。だが、澄貴も青宮もお互いにそのことを話そうとはしない。単に言いたくないのか、言う必要がないと考えているのかは定かではないが、深入りしてはいけない気がして、遼は触れないことにした。
「それで、ストーカーの目星は付いてるのか?」鷹のような鋭い眼差しで青宮は澄貴をバックミラー越しに見つめた。
「いいや。用心深い奴で、なかなか尻尾を出さないんだよねー。新居を疑ってたんだけど、生前の響子から『彼は操られているだけ』って聞いてたし」
「えっ!? 先生から聞いてたのか? だったら、なんでもっと早く教えてくれないんだよ!」
「捜査に先入観を持つのは、よくないからね。それに──君がどこまで成長したか確認したかったんだ」
「ごめんね」と困ったように笑う澄貴に遼は心底呆れた。一刻も早い事件解決を願って動いていたのではないのか。もっと早くそのことを知っていれば、新居や森が被害に遭わずに済んだのではないか。悠長なことを言っていられる場合ではない。現にこうして、被害が起きてしまったのだから。無言で澄貴を見つめる遼の目には、【覚悟】が宿っていた。
「事件当日も、新居は響子の元を訪ねてる。普段から響子に相談していたらしい。自分を支配する奴から逃げたいって」
「……そこまで知ってたなら、森が泊まりに来たときに話せばよかっただろ? そうしたら、新居も助けられたかもしれないのに……」
「無理だな」青宮のきっぱりした声が車内の空気を一変させた。取調室で感じた重圧が漂い始めている。
「森がその情報を手に入れていたら──アイツのことだ。事実を確かめようと動いて、新居よりも先に消されてたと思うぜ。それだけじゃない。君だって、新居に接触しただろう? それを犯人に見られていたら、遼くんまでも対象に入る。……だろ?」
「ご明察。新居は自分が消されることを悟っていたんだろうね。もしかしたら、ファミレスで森くんの顔色が変わったのは、新居くんから何か連絡を受けたんじゃないかな。そのあと、彼は森くんにすべてを打ち明け、託した。自分を裏で操っているのが誰なのか。どこに証拠を残しているのかをね」
信号は青に変わり、夜に染まった街を車は再び走り始めた。行き交う対向車のヘッドライトが眩しい。
「確かに君の言う通り、新居の命も救えたかもしれない。でもね、塩ノ谷くん。僕には約束があるんだ。──響子からの最後のお願いが」
「先生からの?」
「そう。だから、新居のことは森くんにも君にも詳しくは話さなかった」
どんなお願いかは澄貴は話さなかったが、響子の考えは何となく遼に伝わっていた。いつだって、彼女は【教師】を貫く人だった。きっと、そのお願いも──
「着いたぜ」青宮の声に遼は足元に落としていた視線を前に向けた。夜の学校とは何とも不気味である。今にも何かが出そうな雰囲気だ。車に乗せてあった小型懐中電灯を手にし、校門を抜け、校内へと遼たちは入っていった。
「響子が化けて出なきゃいいけど」
「田部井! 冗談でも、そういうこと言うなよ!」
「そうだぞ! 死者を冒涜|《ぼうとく》するのはよくない!」
「……二人とも、足が震えてるよ?」澄貴の人差し指は遼と青宮の足に交互に向けられた。がくがくと膝が笑っている。どうやら、遼と青宮も苦手のようだ。
「まったく……ほら、行くよ?」
「ま、待てって!」
「こら! 刑事より先に現場に行くな!!」
へっぴり腰で強気な発言をする青宮を「はいはい」とあしらって、澄貴は遼と並んで歩いた。その前を青宮が歩いている。手に握られた小型の懐中電灯。だが、その灯りは恐怖で四方八方を行ったり来たり。これでは先頭を歩いていても意味が無い。仕方なく、後ろを歩いている遼と澄貴が灯りのサポートをした。
「そんな怖がりで、よく刑事になれたもんだね」
「お化けとヒトは別物だ。どんなに凶悪な奴でも、ヒトはヒトだからな!」
「ふーん。なるほどねー」
「……お前。俺の話、興味ないだろ?」
「うん、全然」
さらっと言い放った澄貴は青宮を追い抜き、先頭に出た。自分で照らして歩いたほうが早いと思ったのだろう。文句を言っている青宮に目もくれず、彼はどんどん歩を前へ進めていく。
職員室が近づくにつれ、闇を照らす太陽のように室内の明るさで外は満ちていた。中に誰か居るらしい。
「こんな時間まで、ご苦労なことだな」
「……あれは──科学の島野先生」
科学を担当している島野《しまの》桔平《きっぺい》は、科学者を絵に描いたような人物だ。年齢不詳で若くも老けても見える。寝癖なのか癖毛なのか、はたまた実験で失敗したからなのか、水分を失ったパサパサな黒髪のボンバーヘアに痩せ型の長身。授業以外でも常に白衣を身に纏っている。老眼のように下のほうで眼鏡を掛け、サイズがあっていないのか、上げてもすぐに元の位置に戻ってきてしまう。
窓ガラス越しに遼たちの姿を見つけた島野は驚いた顔をしながら、駆け寄ってきた。
「どうしたんですか?」
天然なのか窓を開けずに話している。「こんばんは、島野先生」挨拶をしながら遼は窓を開けた。
「あ、窓を開け忘れました……」
「天然か?」
「えぇ。髪型は天然パーマです」
「……こういうタイプは、どうも苦手だ」
「ふふ。青宮さん、自分のペース乱されるの嫌いですもんねー」
「うっせーな」と膨れっ面をする青宮とクスクス笑う澄貴を交互に見ながら、島野は不思議そうに首を傾げていた。
「どうして島野先生はまだ残っているんですか?」
「提出されたノートを見ていたんだ」
「そりゃご苦労な事で」と前置きしてから会議室に用があることを青宮は島野に伝え、職員室のベランダで靴を脱ぎ、三人は暗い廊下を進み、会議室へ急いだ。
非常口を知らせる緑の看板が薄気味悪く輝いている。
「着いたよ、会議室」
「やっとか……長い道のりだったな」
「何言ってんの? たかだか100メートルくらいでしょ」
漫談のようになっている澄貴と青宮を放置し、遼は室内の電気を点けた。一斉に蛍光灯に明かりが灯っていく。ドミノ倒しみたいだ!と小学生の頃に思ったことを遼は密かに思い出した。
「並びは運ばれた時のままみたいだね」
「そうだな。まずは、新居のロッカーを探すか」
「うん。そうしよう! それじゃ僕は左から探すから、青宮さんは真ん中、塩ノ谷くんは右側をよろしく。あ、森くんのロッカーを見つけたときも教えて」
「わかった」と返事をし、次々ロッカーを開けていく。中にある荷物から名前を確認し、新居や森以外だった場合は扉を閉じていく。所謂《いわゆる》、ローラー作戦というやつだ。
「あ! 新居のロッカー見つけた」
「どこ?」
「ここ!」
「オッケー」
どこからかボールペンと蛍光色の付箋を持ち出し、「新居」と名を付箋に書いてロッカーに澄貴は貼り付けた。
「おい、それどこから……」
「向こうのロッカーに入ってたから、拝借した」
「勝手にヒトの物を使うなよ!」
「まぁまぁ、そう固いこと言わないで。あったほうが今は便利でしょ?」
「……それはそうだけど」納得がいかない遼の声は「あったぞ! 森のロッカー!」と叫んだ青宮の声に掻き消されてしまった。澄貴と遼は青宮のもとへ駆け寄った。
「おまけに、まーたお前さんの得意分野みたいだぞ。ただのメモ書きにも読めるが、多分暗号だろ?」
「ふふっ! 森くんも暗号好きみたいだね」
「……また難問だ」
ロッカーの内扉にメモ用紙が貼り付けてあった。
──────────────────
ハンバーグ
にんじん
②里いも(いも×)
適量
家族分
【14.11.33.22.15.42】
──────────────────
一見すると何かのメモにも読めるが、これを見た瞬間、澄貴の顔色が変わった。
「しまった! 油断してた……」
「なんだ、どうした!?」
「……田部井?」
「塩ノ谷くん」澄貴は真っ直ぐに遼を見つめた。そこに今までの田部井澄貴の顔はなかった。しかし見た目が変わったわけではない。彼が放つ雰囲気がガラリと変わったのだ。初めて会うような不思議な感覚を遼は覚えた。
「あと一歩で犯人を暴ける。──【俺】は、ここに残る。君は今すぐ青宮さんと家に戻れ」
「どうして? そこまで来たなら、俺も──」
「早く戻らないと、君のお母さんと妹さんが危ない」
「え?」
「いいから! 早く戻れ!! 青宮さん、お願いします」
「……分かった。行くぞ、遼くん!」
走り出した遼の背に澄貴は「絶対、証拠は持ち帰る!」と力強い声で告げた。優勢に思えた局面も、犯人に逆転されてしまった。それでも、澄貴の目は光を失っていない。
──絶対に暴いてやる。あと少し、あと少しなんだ! 諦めてたまるか!
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