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第五十四話

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 セナ達はそれから数時間ずっと鉱山内で探索をし、鉱石を採掘してゴーレムを倒してと繰り返し、時折すれ違う他の冒険者と談笑をしつつ、潜り続けていた。

 時間的にそろそろ帰る時間と思ったセナは、帰り際に一体のゴーレムと遭遇した。

 土と石でできた、何度も倒したゴーレム。
それを見て、ベルモットとの話を思い出した。

 『隷属魔法』で魔物を使役できないのか。

 試してみる。
『隷属魔法』は一つしか持っていないスキルだが、そのレベルは5と、非常に強力なスキルだ。
 そのスキルの支配力にあらがえる魔物は、それ相応の実力を持っていないといけない。

 つまり、凡百のモブであるゴーレムは、セナの手から生えだす闇色の紐であっという間にがんじがらめにされた。

「GIU?」

 痛みも苦しみも無いであろうゴーレムは、その背中に紋章のようなものを背負い、セナの前に膝をついた。

 もとより頭部が陥没しているような見た目のため、頭を下げるというよりは前屈みたいになってしまうことを理解しているような動き。

 ゴーレムは知性をもって、セナの忠心を示した。

「すごいな。」
「はい、セナ様は、時間がある限り永遠に強くなり続ける兵士を量産できる。そんな力をお持ちです。」
「……ともかく、帰ろう。」

 ベルモットとゴーレムを連れ、家に帰ることにした。


◇◆◇


 ゴーレムを連れていたから、出入り口では少し揉めた。

使役していると告げたらとりあえず引き下がってもらえたが、街の中ですこし見られて居心地が悪かった。

【四季スライム】やメタドラは【固有スキル】由来の魔物だが、自然産の魔物はこうして同行させるしかないのか。
 もっとコンパクトにできたら、とても助かるのだが。

 そう考えているセナに反応するように、ゴーレムは魔力の塊になって、セナの腕に収まった。

「これは」
「せ、セナ様。それ、大丈夫なんですか?」

 腕に魔力として収まったゴーレムは、タトゥーのような形になって、セナの腕にうっすらと張り付いていた。

 レンガの側面、ヒビ入った岩のようなタトゥー。
そんな形になったゴーレムを、セナはじっと見つめる。

「問題はない。……かっこいい」
「セナ様?」
「……なんでもない。このこともユゥリ達に話そう。」

 自分の手に入った紋様に見惚れて、セナの歩調が軽快になったのを、ベルモットは気づいていた。

◇◆◇

「でさ~、ゴーレムがこの手の模様になったんだ!」
「へ~、ちょっとダサいね。」
「……」

 ユゥリのさりげない一言が、セナの心を傷つけた。

「そう?私はあんたのソレ結構かっこいいと思うけど。」
「……!!ラング!」

 ラングのさりげない一言が、セナの心をいやした。

「むっ、セナはそんなの無くてもかっこいいもん!!」
「は!?セナのことを言ったわけじゃないし!!」
「……」

 二人の言い争いを見ていて、何とも言えない顔になってきたセナは、話を戻すためにゴーレムを召喚する。

「GUGU」
「へえ、近くで見るとそこそこキモイね。」
「うん。顔が怖い。」

 ゴーレムへの感想なのに、なぜか傷つくセナ。
気を取り直せないまま、【ゴーレム】のスキルを与える。

 坑内で発見、奪った【ゴーレム】スキルは63。
ちなみに【ゴースト】は15。四体に一体はゴースト同居の個体だったみたいだ。
 スキルを与えられたゴーレムは、スライムの時と同じように淡く光ると、二回りほど大きくなった。

 体色も、黄色っぽい茶色から、鉄っぽい色のものに変化。
ところどころに金のようなものが混ざっている鉄のゴーレム。

鑑定結果は【メタリック・ゴーレム】

 メタル・ゴーレムではなくメタリック・ゴーレム。

 純粋な鉄だけのゴーレムではないからか?

「へえ、魔力を与えると鉄が生えるらしいぞ。極稀に金も生えるらしい。」
「なんだって?!」

 ゴーレムに触れ、その規格外の魔力を少しずつ注ぐ。
それでも、やはり総量の問題でかなり入ったのか、棘の様な突起が体からモリモリ生えてきた。

「おおお!!すごいすごい!!!こんだけあったら剣でもなんでも作り放題だな!」
「必要な分だけ確保して、要らない分は明日換金する。」
「えー!?んー、まあ、生やせるのならもったいないわけでもないか。」
「ゴーレム産の金属と普通の金属の違いとかはあるのか?」
「それは要検証って感じ。ちゃんとしたものと比べてみないとわからない。」

 セナの持って帰った鉄やらと比べるということで、その晩は普通に就寝。
明日からはベルモットとユゥリが交代でセナと一緒に坑内に行き、ラングは居残りのどちらかに見守られつつ、鉄の検証やら剣の制作を行うことになった。
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