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第五十話

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 夜中走り続け、いろんな鍛冶屋をハシゴしたセナは、ステータスこそ微妙だったが、かなりの質と量のスキルをゲットしていた。

 固有スキルもいくつか手に入り、かなり懐が潤った。

【接収】
【コピーシステム:アイテム】
【成形】
【収蔵】
【分解】

これらはある程度検証も必要だが、能力は事前の所持者の調査と照らし合わせてみたら想像できる。

 それも追々で使っていくとして、その日は日が昇り始める頃に一時間ほど眠った。

「セナ!一時間経ったよ!」
「……おはよう。」
「やっぱり寝たりなくない?ギルドの人の応対なら私がやっとくけど。」
「大丈夫。」

 寝起きにしては割とはっきりとした応答ができたセナだが、ユゥリは心配らしい。
 ただ夜更かししただけじゃなく、何人もの処分を行ったわけだから、疲労自体はそれなりにある。

「セナ様には私もついていきます。ユゥリ様は引き続きでお願いします。」
「むぅ。ちゃっかりして……ベルモットずるいんだから。」

 さりげなくセナの同行者枠を奪われてむくれるユゥリ。
ベルモットを引き連れて、セナは冒険者ギルドに赴くことにした。

◇◆◇

 冒険者ギルドに来たセナは、再びギルドマスターとの面談室に案内され、そこでまた昨日と同じ、奇襲されたときの状況を説明させられた。

 なんど同じことを聞かれても同じことしか言えないが、同じことを繰り返しているだけなのにも意味があるらしい。

 整合性とか、そういうのを確認したいということだ。

 そのため、何度も悪いがと言ってはいるが、ギルドマスターも衛兵筆頭の人も同じことばかりを繰り返しで聞いてくる。

「よし、多分これ以上状況説明を頼むことは無いだろう。多分。」
「ようやく鉱山の通常業務が再開できる。ここ一か月は鉄も何も採れなくて迷惑していたからな。」
「それについても感謝している。金はもちろん、鍛冶師の紹介や素材の融通なんかもしたいところだ。何か要望はあるか?」

 錬金ギルドのマスターと冒険者ギルドのマスター、そして商業ギルドのマスターの三人に囲まれ、そういわれたセナは、少し考えた後で

「とにかく剣を大量に打ってくれる鍛冶師いますか?」

 自分の本目的の一つを告げた。

「……質ではなく数か。」
「ファンはどうだ?そこそこの質を保ったまま数も十分揃えられるはずだ。」
「質を落としてもいいならやはりコークンだろう。」
「あいつのはダメだろ。鋳造以下ですぐ折れる。」

 セナの要望に応えるために、三人で会議が始まった。
何人かの鍛冶師の名前が挙がり、結局、三人に絞られた。

「ファン・ドレアス。モロテ・ランボー。マニアム・タリ。」
「この三人なら、我々の方から紹介できる。」
「もちろん、多少割引もさせてもらう。」

 そう出された鍛冶師の名前にセナはうなずき。

「じゃあ一人100本お願いします。」
「「「……」」」

 そう答えると、三人は一瞬で押し黙り

「「「ひ、ひゃっぽん!!?」」」

 掛け声でもかけたかのように同じタイミングで驚いて見せた。

◇◆◇


 マスターズとの会談は終わり、1人100本の注文も、すこし揉めたが、問題なく通りそうだ。
 しかし、一本にかかる時間を考えて、おそらく全部出来上がるまでに数か月時間がかかると言われ、セナはその間、鉱山で採掘の仕事をすることにした。

 もちろん、これからというわけではない。

 今日はもう話し合いで疲れているし、夜のこともある。
あまり激しい活動はやりたくない。

「自分の体力を過信しすぎた。」
「肉体的には強化されても、気疲れはします。精神的な強化はほとんどありませんから。」
「そうだな。これからは適度にやるよ。で、ユゥリの方はどう?」
「調査終わりそうです。先ほど春さん経由でこちらに連絡がありました。」

 スライムを通せば、【四季スライム】の四体で会話ができる。
最近知ったその機能だが、セナはイマイチ使い慣れなかった。

「昼からユゥリと回って、明日から採掘に参加するか。」
「私も同行しますね。例のモグラや鳥が再び来るかもしれませんし。」

 多分それ以外の目的がありそうな圧のある口調で言われて、セナは断る理由を見失った。

 ユゥリに頼んでいた調査は午前中で終わり、昼食をとりながら報告を聞く。
その情報を元に一緒に見て回ることにした。


 この街の奴隷商を
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