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第四十九話

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 セナはモグラと鳥のことを詳しく説明し、結局ギルドマスターやらの重役からも事情聴取をされ、何度も同じ話をしているうちにずいぶんと疲れてしまった。

「なにはともあれ、行方不明者の救助感謝する。」
「ああ、目を覚まさなかったやつはどうなった?」
「あれから治療師に見せて回復をしてもらったよ。今のところ後遺症等は見当たらない。」
「それはよかった。」

 冒険者ギルドのギルドマスターからは強く感謝されていたのだが、それと同時に強く警戒されているのも肌で感じていた。

 なんせ、今日街に来たばかりの奴が、行方不明事件を一人で解決しましたなんて話、誰でも疑う。

「人の言葉をしゃべるモグラと鳥。心当たりがあるとすれば、【獣人】か。」
「獣人?」

 聞きなれない単語にセナが首をかしげる。

 エルフやドワーフなんかの、人間とは違うが人間に近い生物を亜人とするのは知っている。
 しかし、それの中に獣人なんてものを聞いたことはなかった。

「ああ、まだあまり広まってはいないが、魔神国の者に動物と人が混ざった獣人というものがいると聞いたことがある。不確定な情報だが、それが当てはまっているように思えた。」
「人と獣」

 セナには理解できない話をされて、少し戸惑う。
その反応に、ギルドマスターは少し苦笑して、セナを解放してくれた。

「今日は帰ってゆっくり休みなさい。情報提供ありがとう。」

◇◆◇

 帰ったセナはユゥリにしこたま詰められていた。

「心配したんだから。護衛のスライムちゃんが勝手に消えたから、セナに何かあったと思って鉱山の方に行ってみたら、私達は冒険者じゃないから入れませんって言われちゃって、やっと鉱山から出てきたと思えば冒険者ギルドに閉じ込められて帰ってくるのはこんな時間!私達心配したんだからね!」

 セナの膝の上でぷりぷり怒っているユゥリにたじたじなまま。今日あったことを細かく話していく。

 ベルモットは晩飯の用意をしてくれながら聞き、ユゥリはセナの膝の上で何回転もしながら聞いた。

「ということで、変なモグラと鳥は逃げて行って、俺は行方不明者を救助するのに忙しかったんだ。」
「ふーん。で、その人たちからスキルは取らなかったの?」
「取らなかった。悪人かどうかの判断はできなかったから。」
「……そっか。」

 どこかテンションの低いユゥリを見ながら、セナはベルモットの作った晩飯を食べる。

「セナ様。こちらの報告ですが、良い鍛冶師を見つけました。」
「あ、そうそう、めっちゃ腕はいいのに、なぜか路地裏の方にひっそりと店を開いてた変な人だったんだ。」

 ユゥリ達は、セナと別行動中にあったことを話し始めた。
2人の任務は、鍛冶職人を探すこと。
 セナの目的は説明しているから、良い武器を作れる良い腕の鍛冶師と、鋳造品でもいいから大量の剣を作れる鍛冶師の選別というか、見極めを頼んでいた。
 街での雑多な情報収集も並行して行ってもらった。

 それを、ベルモットには簡単にリストアップしてもらい、ユゥリに回復魔法をかけてもらった。

 セナは、一時間の軽い仮眠をとり、服装を普段着から黒ずくめに変更。

セナの冒険、夜の部が始まろうとしていた。

◇◆◇

 日が沈み、完全な暗闇となった街の中でセナは走る。
懐かしい、風になったような感覚で、街の上を跳ぶ。

 街の明かりも小さく少ない。
駆け抜けるセナはさながら忍者のようだった。

 セナの目的地その1は、悪徳鍛冶師と名高いマネゼニの殺害。
有名な魔剣の贋作を高額で売り捌く詐欺を行っているらしい。
 問題はその魔剣の機能にあり、持ち主の生命力を奪うらしい。
 それをどう使っているのかは知らないが、それによる被害が多発しているものの、衛兵は賄賂で黙らせているから周りもどうしようもできないらしい。
 これは証拠の方も十分にあるから、問答無用で殺すつもりだ。
鍛冶師なら『鍛冶』や『錬金』なんかのスキルも持っているだろうから、それも目的の一つ。

「到着。」

 ついたのはマネゼニの邸宅。ブルーオークへの襲撃を思い出す。
この街には奴隷商があったから、ここでも奴隷が働いているかもしれない。
チンピラのアジトとは違うから、とにかく皆殺しにはできない。

 だから、とにかく静かに暗殺することにする。

『暗足』レベル2を使い音も無く忍び込む。

 窓に鍵をかけていないというのは不用心だが、木も近くに生えていない三階からの侵入なんて予想外だろうし警備の冒険者が邸内を巡回している気配を感じる。

 天井を四つん這いで、まるで蜘蛛のように這い回る。

人の気配を感じつつ、見つからないように隠れる。

「今日の客、マジクソだったな。ボクの魔剣に文句つけただけじゃなく、値切ろうとするなんて。」

 廊下を曲がって来ているのは、マッシュルームヘアの太っちょ。
ベルモットの描いていた人相そのものだし、発言内容もそんなかんじだ。

 とにかくステータスを奪ってスキルも奪う。
そのために全速力で接近し気づかれる前に触れる。

「な、何者っ!?……ぐぅ。」

 威勢よく大声を出した反動で疲れてしまうくらいに急激にステータスを失い、その場に倒れこむマネゼニ。
 ステータスを鑑定したから本人に間違いない。
そして、『鍛冶』レベル3と『錬金』レベル2で良い具合にスキルも持っていた。

 そして何より、こいつは【固有スキル】を二つも持っていた。

「【接収】と【コピーシステム:アイテム】?」

 聞いたことのない長いスキル名に首を傾げつつ、まだ生きているマネゼニを見る。

「ボクのスキル……なんだ、お前。くそっ!誰か!」

 マネゼニの声に反応した人の気配を感じる。
セナはマネゼニに止めを刺すことにして、再度近づく。

「やめろ!なんだお前!クソッずるいぞ!なんでお前みたいなモブに!ボクが主人公なはずなのに!」

 なんかよくわからないことを叫んでいたが、手間を取られるのも面倒だからスパッと首を刎ねて、そのまま邸宅を脱出した。

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