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第四十五話

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「ということで、お前ら出ていけ。」
「「「……えぇっ!?」」」

 突然のラーヌの言葉に驚く三人。
なんだかんだ数日くらいは泊めてくれると思っていただけに、余計驚く。

「村や村民のことはこちらでどうにかする。契約を交わす用意もした。だからお前らにはこの街を出て国を回ってもらいたい。ということだ。」
「契約はするけど、なんで俺達に出ていってほしいんだ?」
「お前たちというか、セナ、貴様だ。貴様の元パーティとやらが街に滞在している以上、お前との接触はトラブルの種。ましてや勇者との戦闘を見た者も多数いたのだろう?なら、お前はこの街で良い顔はされない。そういうことだ。」
「そ、そうか。」

 普通に論理的にボコボコにされたセナはラーヌの話を黙って聞く。

「そしてこの機会にお前にはさらに強くなってもらう。つまり、南に行くんだ。」
「南」

 この国のある大陸。その南には聖アルマ法国と呼ばれる、『神聖教』の根城。
 そして、その先にあるのは魔神国。

 つまり、敵対国家がバチバチにぶつかり合っている魔境が大陸の南側。

「お前には人類の抑止力として魔神国と戦っている法国を潰してもらいたい。そして都合よく魔神国まで潰してもらいたい。……無茶なのはわかっているが、これから先にはそれらを全て奪った貴様の力が必要だ。頼む。」

 珍しく頭を深々と下げるラーヌに、セナはやはり驚く。

 今までの印象通りのラーヌであれば、絶対にセナに対して頭を下げるなんてことはしないから。

「俺も強くなるつもりだからそれは良いが、ホントに村のこと、頼めるのか?」
「ああ、ラーヌ・サンクトルの名誉と命に懸けて。」

 付き合いは短いが、その言葉を信じられるだけの信頼をラーヌはセナに対して示している。
 少なくとも、ベルモットやユゥリ、オーラやハロ達を除いた中では一番信じている。

「わかった。契約書を出してくれ。」
「これだ。」

 差し出された紙に名前を書くセナ。
やはり姓についての指摘をされ、書き足す。

「よし、これで契約成立。そして、貴様には言っておくことがある。」
「……なんだ?」

 契約を結んだ途端にそう言われて、警戒するセナは十分普通の反応だと思う。
それくらいラーヌの話の切り出し方は不自然だった。

「村の連中とも街の連中とも挨拶はできない。手紙を書くなら紙と筆は貸すし、ちゃんと渡す。」
「……あ、ああ、書くよ。」
「それと」
「……っ!」

 それとが多すぎるラーヌの話。
セナの警戒心は緩急のせいでぐちゃぐちゃだった。

「貴様のスキルにかけた【時間停止】は俺との距離が離れれば時間経過で解除されていく。街から出て……そうだな、数日程度で元の状態に戻るだろう。そうなったとき、どうなるかはわからない。」
「……そうか。」
「貴様には酷な課題となるだろうが、どうにかしてスキルを克服しろ。できるはずだ。」
「ああ、わかった。」

◇◆◇

 それから、村の人たちへの手紙、主にハロとオーラに対しての手紙を書いて、荷物をまとめると、セナ達は昼過ぎには出発の準備が整ってしまった。

 見送り人はラーヌとポール、そしてなぜか【灰砂】が来ていた。

「無事を祈っている。ふっ。」

 らしくない言葉に自分で吹いてしまうラーヌ。

「短い間でしたが……」
 
 執事らしく粛々と挨拶をするポール。

「あの手合わせ、手加減してたんだってな。」

 苦々しくそう言う【灰砂】。

「次に会ったときには、お前がどれだけ強くなっても勝てないくらい強くなってるからな。死ぬなよ。」

 そんな、なぜかライバル感を出してくる【灰砂】にふふんと笑い返して

「じゃあ、いってきます。」

 なぜかそんな感じで言ったセナは、気持ち軽い足取りで街を出た。

 目指すのは南。
話を聞いていた分で想像している。まだ見ぬ神聖教の増援軍。

 もしぶつかるとしたら、きっとそいつらだろう。
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