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第三十六話

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 あれやこれやと話をまとめて、エルフたちを村へ運ぶ。
担げるのが二人までだから、何往復もして連れていく。

 全員を連れて行ったら、今度は『土魔法』で居住空間の拡張と変形。
ブルーオークとレッドゴブリンの分だと大したプラスにならなかったため、今までと変わらない魔力量だが、それでも数日の休みで十分に魔力はもとに戻った。

 眠っている年寄り組の住居には影響が出ないよう注意しつつ、外壁の拡大と補強、居住空間の増加と、農業ができそうな広い畑と水引き、本当の街を見てきたことだから、それを参考に地形を好き勝手作り変える。

 魔力は腐る程あるんだと、セナは底を尽きる勢いで注ぎ込む。
仮に改造する目途が立たなくても、魔力を潤沢に蓄えた土地ならそれだけ活力のある土壌になる。

 地面がうっすらと光るくらいの魔力量を含み、村は少しだけ強くなった。

「セナさんのその魔力量、やっぱり何度見ても規格外っていうか、僕も何度か自分の部屋の形を変えようとしたんですけど、全然無理で。」
「ハロの魔力も結構全部もらってるから、少し土が動いただけでもすごい方だと思うけどな。」

 そんな話をしながら、エルフたちの居住スペースを頑強にしていく。

「こいつらは人間を嫌っている。だけど悪いやつじゃない。俺がいない間、守ってくれ。」
「はい。僕の命に代えても。絶対に。」

 少し重いと思ったが、覚悟は強い方がいい。

 セナの魔力が尽きた頃、一本の塔のようなものができていた。

 魔力が尽きたので横になっていたセナは、朝日が昇るのを見ながらハロに聞く。

「なにか周辺で怪しい物を見たとか、凶悪そうな魔物を見たとか、そんなことはないか?」
「今のところはありませんが、セナさんが行った街、ここ数日の間に結構な人数が入っていましたね。冒険者がかなり多く、貴族風の身なりの者もいましたよ。」
「……知らなかったな。街の中で生活していると、そういうのには気づかない。」

 元々その街が出入りの多い街だったのならそれでもいいが、もし別の何かだったなら情報は集めておきたい。

 そう思いつつ、セナは朝寝としゃれこんだ。

◇◆◇

 それから、少しの間村の人たちと話して、起きてきたドルドさんに泣かれたりと、いろいろなことがあった。
 にぎやかで温かい気持ちを蓄えて、セナは夜にまた街の方に行く。

 ベルモットがついて来ようとして、セナが渋って、オーラが助け船を出して、結局街の中にはベルモットとユゥリがついてくることになった。

 少し不安に思いつつ、しかし、二人が一緒なことに心強いものも感じて、セナの足取りは少し軽やかだった。


 街の廃墟に着いたセナは、ベルモットとユゥリにステータスを振り分けた。
ステータスは入ったときとあまり変わらないが、スキルはそれなりの数だったので役割と用途に合わせて振り分ける。

「あと、これ、護衛。」

 【固有スキル】の中にあった【春スライム】というものを召喚する。
桃色で、馬のヒズメのような模様がついている、人の頭くらいのサイズのスライム。

 今後、セナが外出しているときにはこいつがセナの代わりに守る。

 もう一個、【鉄鋼龍メタドラ】というのも召喚できるらしいが、街中でドラゴンを召喚するのも問題になると思い自重した。

「こいつが二人の危険を察知して守ってくれる。それと同時に俺に危険を教えてくれる。」

 春スライムをユゥリに預け、セナは少しの間の仮眠に入る。
村の方でも少し休憩したが、睡眠があるのとないのとではやはり差があるらしい。

 セナに寄り添うように横になったベルモットの体温を感じながら、セナは眠りについた。
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