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第二十四話

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真夜中、柵から侵入したセナは軽く街中を走り抜ける。

 夜といえど活動している人はいるし、衛兵なんかは見回りをしている。
 しかし、たかが一町村の衛兵のだらしない見張りなんて軽く出し抜き、セナはひたすら走り土地の構造、家屋の配置を把握していく。

 そうして見つけた一軒の廃屋。
屋根は穴が空いているし、壁もボロボロだが、悪く無い作り。
なにより大きい。

その廃屋の中に入ると、魔法を駆使して地面に穴を開ける。
地盤をある程度補強し、雨風どころか、侵入も困難な地下空間を作る。

そこにある程度の生活が可能な広さと複数の部屋を作る。
 これで、下準備は完了。

朝になるまで待つ。

◇◆◇

 朝、街中が賑わい、人々の話し声が聞こえる。
今や超人的な肉体機能を持つセナにとって、雑音は情報源として大いに役に立つ。

 商会の場所。ギルドの位置やギルドで活躍している冒険者の話、荒くれ者の話。有名人の話。

道端で転んだ。サリーちゃんがいない。晩御飯は野菜のスープ。税金が高い。呪いの井戸がある。

様々な話が飛び交い、様々な出来事が聞こえてくる。

「1.荒くれ者グループが二つ。レッドゴブリンとブルーオーク。2.サンクトル商会は跡目争い中。優勢は次男のラーヌ。3.冒険者の中ではAランクパーティ『白百合騎士』とBランクパーティ『ワイルドウルフ』、Aランク冒険者『灰砂』と『月姫』が険悪。4.町外れにある古井戸に近付くと行方不明になる。」

この四つが得た情報を整理した結果出た有益な情報。
 
「奴隷商は無かったか、噂にならないほど規模が小さいみたいだな。奴隷は人材としては有益だから何人でも確保したい。」

人材の確保は最優先。借金の肩代わりでも人身売買でも命の恩人としてでもなんでもいい。
 村の補強に人員は非常に重要。

「まずは荒くれものたちの処理か。」

◇◆◇

レッドゴブリン、ブルーオークは多人数で構成される反社会勢力のなりそこない。
反する社会が街というチンケな存在なので比例するように組織もチンケになる。
 レッドゴブリンは20人から30人の集団であり、各々の実力はそこまででもない。
 ブルーオークは10人程度の集団で、レッドゴブリンよりも個人の実力はあるが、どんぐりと松ぼっくりの背比べといったところ。

「ひ、ひ、ひぃ!なんなんだよぉおまぇ!!!」
「大将がやられた!逃げろ!」

 まず手始めに、レッドゴブリンがアジトと呼んでいる廃屋に突撃、手当たり次第にステータスを強奪して無力化。
 HPだけは残して、体が動かない状態にした。

「はい、こんにちは。」
「お、お前何者……オークどもの差し金か?」
「こんにちは」
「ど、どんな魔法を使いやがった!」
「こ・ん・に・ち・は」
「こ、こんにちわ?」
「はい、こんにちは。お前らレッドゴブリンはここにいるので全員か?」

 レッドゴブリンのメンバーは確認しただけで17匹。
明らかに少ない。
 勿論、最初から全員一気に殺せるとは思っていなかったから、問題無い。
 しかし、

「そこに転がってる女、子供はメンバーじゃないよな。」
「……」
「なんとか答えろよ。」
「身代金とか、体目的に拐ってきた奴だ。」
「カスが」

 ペッと唾を吐きかけ、次の質問に移る。

「今まで犯罪行為を行ってきた数と質が悪質な者はどいつだ?」
「……」
「ガボが一番ヤバい。」
「おまっ、仲間を売る気か!?」
「うるさい、ごちゃごちゃ騒ぐと全員殺すぞ。」

「……俺が一番殺している。ほか組織との抗争や、暗殺なんかもやってるからな。」

 名乗り出てきたのはわし鼻が特徴的な高齢の男。
性格の悪そうな顔と人を何人も殺してきたような目つき。
 その風貌に見合うだけの実績はあるようだ。

「名前は?」
「ダグ。今までに100と43人を殺している。うち、39人は拷問にかけたうえでだ。」

 聞いてもいない詳細な部分を話すダグに、視線だけを移す。
内容を聞いたのは、あくまでも組織全体のレベルを聞き出すためだけ。
 さっきの話が本当なら、街を裏から支配する組織と銘打つこともできるだろう。
 オークとゴブリンの二勢力が町で争っているということだから、こんなボロいアジトにいるんだろうけど。

「見せしめに殺したいのならそうしろ。俺は構わん。」
「俺は構うんだよ。お前らにはブルーオークに襲撃するときの鉄砲玉になってもらうつもりだからな。」
「は?あんた、オークの手先じゃないのか?」

 セナがブルーオークからの死角だと思っていた連中は、ざわざわと疑問を投げ始める。
 しかし、そんな質問に答える義理はなしと全員の首筋に当身をかまし、強制的に意識を刈り取る。

 その場には、十数人の気絶したチンピラと、三人の女子供。

セナはその女子供を町の隅で解放し、ゴブリンのアジトにまた戻った。
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