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第十二話

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「てめぇ!よくも裏切ったな!がっ!!」

 怒声が響き、盗賊の三班は全滅した。
セナの予想通り、ステータスを奪わなくても敵を一刀両断することができたし、その後は完全に絶命するまではステータスを奪えた。
 やりたい実験は終わらせたし、三班は全員殺した。
見ぐるみから何から全部剥ぎ取って、アジトの方に死体は全部詰め込んだ。

 すごい固有スキルには【アイテムボックス】や【異空間倉庫】なんかの収納スキルがあるらしいけど、セナは見たことがない。

 ということで、生き残りの奴に道案内をさせて、秘密の場所とやらに行く。

 それは、盗賊達がアジトにしていた洞穴がある山の反対側。
木で隠れていてちゃんとした道順じゃないと木に挟まってしまう場所に、小さな入り口の洞窟があった。

「オレたちは人攫いもやってまして、時々逃げ出す奴がいた時にこっそりくすねてここに集めてたんです。多分100万エル分くらいはありますぜ。」

 セナの肩幅くらいの大きさの箱に、硬貨や宝石、金属類が入っている。
 『鑑定』のスキルを持っていても、宝石の価値は分からないセナでも、売れると確信できる貴重なものばかり。

 しかし、セナの関心はそれ以外にあった。

「この骨は?」
「それは攫った奴の物でさぁ。女が逃げたと言ってここに押し込んで飽きるまでヤるんです。ま、飯も無いから数日で死ぬんですけど。あっ、そういえばさっき捕まえたガキがいまして。」

 ペラペラと聞きもしてないことを喋る盗賊の男について行き、洞窟の中の別室のような所につく。
 そこには、12歳くらいの少女が手足を縛られ、猿轡をしていた。
 泣き腫らした跡のある顔だが、服装は泥に塗れてるだけだ。傷もそんなに無い。

「昨日捕まえた一家の、長女だったかでしたね。確か3人姉妹と両親がいて、親父の方は殺したんですが、母親とは『楽しんで』、妹二人と売ったんですよ。やっぱ中古の母親は微妙で1万エルもしなかったんですけど、妹たちはそれぞれ15万エルもして、2人を売ったあたりでこいつが逃げ出したから、オレが先回って捕まえたんでさ。でも、他の奴らには逃げたって言って、だから三班にまで分けて来もしない冒険者を警戒してたんですよ。ま、結局ダンナが来たから意味はあったのか無かったのか。楽しめないまま死にたくなかったですし、ダンナもイッパツどうですかい?」
「そうだな。」
「でしょう!!さぁて、準備と致しまーーー」


「てめぇはステータスもスキルも要らねぇ。」

 頭からつま先まで、薪割りのように縦に斬られた盗賊は、それ以上何も喋られず、呻き声すらなく前後に別れた。

 胸糞悪い気分の話だったが、『怒りを抑える』練習と、『怒りを攻撃力に上乗せする』訓練に使えたから、ステータスとスキルは残してやった。

 いや、こんなカスのステータスが自分の中に入るのすら嫌だという、スキル強奪という特異性故の感性ってだけだが。
 実際、街の浮浪者やクソ女達のステータスが、セナに影響を与えているわけじゃ無い。
 だが、今のセナはそれを掃き捨てる余裕がある。
 というわけではないけれど。
 それだけ生理的嫌悪が激しいということ。

「んぐぅうううううう!!!」

 虚無を彷徨ってたセナの意識が、唸るような声で現実に引き戻される。
 拘束されてた少女の声だ。
視線を向けると、動かせない手足を芋虫のように動かして逃げようとしている。

 拘束用の縄を解こうと近づけば、それだけで更に暴れて逃げようとする。
 仕方なく強引に掴んで、盗賊の1人が持っていた『火魔法』で縄を焼き切る。
 口の猿轡は手で解けたが、誰だ片結びなんてしたやつ。

「ひ、ひ、人殺し!!!」

 解放された少女は後退り、腰が抜けたのか四つん這いで逃げようとする。
 しかし、出口はセナの後ろで、少女は袋の鼠の道を行っているだけだった。

「はぁ……命の恩人に向ける第一声がそれかよ。」

 仕方なしに、少女の首筋に強めの手刀を入れ、意識を刈り取る。
 『武術』のスキルにあった『当て身』という技能らしい。

気絶した少女を担ぎ上げ、ギルドへと戻ることにする。
 筋力も伸びたから、このへそくりは宿に置いてから行こう。
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