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第十一話
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目覚めたセナは、頬に触れる柔らかい感触に違和感を覚えた。
そういえば、昨日はベルモットの膝の上で寝ていたはず。
膝の上にしては、骨っぽくない。
「……ぉぁぉぅ。」
「ぇ……ユゥリ?なんで。」
セナの頭は、ユゥリの腹の上にあった。
腹枕ということで、しかも目の前には二つの山がある。
「おはようございます。ユゥリ様の希望により、セナ様の枕を交換いたしました。ご容赦ください。」
「ぃや、ユゥリ、大丈夫なのか?俺の頭、重かっただろ。」
「んん……」
「『問題ない』とのことです。」
「……ありがとう。」
セナは、感謝の言葉を伝えてから、出かける支度をした。
涙はもう出ない。
セナはこれからもきっと迷う。
けど、昨日のことで分かったことがある。
自分の心に従うのは悪いことじゃない。
自分にとって大切なモノは手元に置いて、嫌いなモノを殺せばいい。
それだけできっと世界は華々しく輝く。
◇◆◇
「あ、セナさん!!昨日はなんで突然帰っちゃったんですか!?」
「ぇっと、すみません。ちょっと用事があって。」
「手の怪我も、そのままで帰っちゃって……アレ?治ってる。」
「あー、妻が、治癒魔法が使えるんです。」
「ぇ……結婚、なさってたんですか。」
「はい、ですので、流石に治療道具を使うのは勿体無いと思いまして。」
ギルドで昨日の受付嬢と話す。
そこに、昨日のおっさんも参加してきた。
「昨日はすみません。自分少し、人見知りなところがありまして。」
「そうかい、ま、警戒心が強いのは良いことだ。これからも気をつけな。」
どうにか誤魔化せたと思っているのは、多分セナだけだろう。
「Dランクへの昇格、おめでとうございます。セナさんのやりたがっていた『盗賊の討伐』が受注可能になりましたよ。」
「是非、受けさせてください。」
「わかりました。くれぐれも怪我などは最小限に、治療してくれる奥さんがいるのはこの町で、すぐ近くで回復してくれるわけじゃないんですからね。」
ここにいる親切な2人からは何も奪わない。
◇◆◇
街から西へ向かったところにある山。
そこに最近、15から20人程度の盗賊が住み着いて、西へ向かう人間を襲っているらしい。
2時間ほど掛けて歩き、目的の山の手前で軽く昼飯を食う。
『鑑定』と『究極的暴君』を発動できるよう、心の準備をしておく。
足跡を消すとか、気配を消すようなスキルは持ってない。
だから、見つかった瞬間から戦闘開始になる。
そんな緊張感を吹き飛ばすように、風に乗った笑い声がセナの耳に届いた。
盗賊達の笑い声。
内容はわからないが、なんとなく嫌な感覚がした。
「がははは!今日は悪くねぇ収穫だったなぁ!」
「護衛もつけないなんて馬鹿な商人もいたもんだ!れ
声の感じからして、5~6人程が何か喋っている。
情報のの半分以下だ。それは、外にも仲間がいるということ。
交代制ということかもしれない。
なら、帰ってくる前に……殺る。
「おー早かった……誰だお前。」
「っ!?侵入者だ!殺せ!」
入ってすぐの男に触れ、ステータスを奪取。
そのまま男を塊になってる3人組へ投げつけ、他の二人のうち、弓に手をかけている方へ駆け出して殴ると同時にステータスを奪い、もう一人の方も蹴った瞬間に奪う。
これで3人撃破。
もう死体になった男の下でもがいている男たちを一人一人殴って奪う。一人だけを残して、5人とも死んだ。
「他の仲間はどこだ?」
「そっ、外だ!今俺たちは休憩中で、同じ人数の班があと二つある!」
「戻ってくるまでどれくらいかかる?」
「1時間休憩して2時間外を回るのを三班で繰り返してんだ!あと30分はかかる!」
「そうか、ありがとう」
「じゃあ、俺は逃しっ!!?」
6人目のステータスも奪った。
実践経験豊富な奴らだからか、スキルのレベルも高い。
◇◆◇
「なんでっ、くそっ!!」
「やめっぶぁぁぁあああ!!」
10人目を殺す頃には、セナもステータスを失った人間の脆さを理解し始めた。
その頃には遂にステータスが【1000】を超えた。
ここまで来れば、Aランクとも変わらない戦力だ。
加えて、レベルは低いが戦闘アップ系のパッシブや対人技のアクティブが揃っていて、戦闘系としてはかなり整ってきてる。
「『スラッシュ』!!」
殴ってステータスを奪うのではなく、ステータスを奪ってからアクティブスキル『剣技』に収録されてる『スラッシュ』を使ってみる。
簡単に言えば袈裟懸けであり、その威力はスキル使用で1.2倍。
特殊効果はないが、魔力も使わないし便利なスキルではある。
そんな攻撃に対して、ステータスの鎧もスキルもない盗賊は豆腐よりも柔らかく斬られるだけ。
特に手応えもなく二つになった盗賊を尻目に、2班最後の一人に目を向ける。
「やっやめっ、知ってることはなんでも話す!」
「一つ目の班であらかた聞いたしな。」
「おっ、俺だけの秘密の場所がある!だから待って!」
「秘密の場所?」
興味深い話を持ちかけられて、セナの剣が止まる。
ステータスはまだ奪っていない。
今度はステータスのある敵を斬る練習をしたかったから。
「た、頼む!助けて!」
「三班目を皆殺しにするのを手伝うか?」
「……は?」
「三班目の6人を殺してお前だけ生き残り、盗賊の蓄えを半分手に入れる。もしくはこの場で死ぬ。どっちがいい?」
「いっ、生き残りたい!だから!」
そういえば、昨日はベルモットの膝の上で寝ていたはず。
膝の上にしては、骨っぽくない。
「……ぉぁぉぅ。」
「ぇ……ユゥリ?なんで。」
セナの頭は、ユゥリの腹の上にあった。
腹枕ということで、しかも目の前には二つの山がある。
「おはようございます。ユゥリ様の希望により、セナ様の枕を交換いたしました。ご容赦ください。」
「ぃや、ユゥリ、大丈夫なのか?俺の頭、重かっただろ。」
「んん……」
「『問題ない』とのことです。」
「……ありがとう。」
セナは、感謝の言葉を伝えてから、出かける支度をした。
涙はもう出ない。
セナはこれからもきっと迷う。
けど、昨日のことで分かったことがある。
自分の心に従うのは悪いことじゃない。
自分にとって大切なモノは手元に置いて、嫌いなモノを殺せばいい。
それだけできっと世界は華々しく輝く。
◇◆◇
「あ、セナさん!!昨日はなんで突然帰っちゃったんですか!?」
「ぇっと、すみません。ちょっと用事があって。」
「手の怪我も、そのままで帰っちゃって……アレ?治ってる。」
「あー、妻が、治癒魔法が使えるんです。」
「ぇ……結婚、なさってたんですか。」
「はい、ですので、流石に治療道具を使うのは勿体無いと思いまして。」
ギルドで昨日の受付嬢と話す。
そこに、昨日のおっさんも参加してきた。
「昨日はすみません。自分少し、人見知りなところがありまして。」
「そうかい、ま、警戒心が強いのは良いことだ。これからも気をつけな。」
どうにか誤魔化せたと思っているのは、多分セナだけだろう。
「Dランクへの昇格、おめでとうございます。セナさんのやりたがっていた『盗賊の討伐』が受注可能になりましたよ。」
「是非、受けさせてください。」
「わかりました。くれぐれも怪我などは最小限に、治療してくれる奥さんがいるのはこの町で、すぐ近くで回復してくれるわけじゃないんですからね。」
ここにいる親切な2人からは何も奪わない。
◇◆◇
街から西へ向かったところにある山。
そこに最近、15から20人程度の盗賊が住み着いて、西へ向かう人間を襲っているらしい。
2時間ほど掛けて歩き、目的の山の手前で軽く昼飯を食う。
『鑑定』と『究極的暴君』を発動できるよう、心の準備をしておく。
足跡を消すとか、気配を消すようなスキルは持ってない。
だから、見つかった瞬間から戦闘開始になる。
そんな緊張感を吹き飛ばすように、風に乗った笑い声がセナの耳に届いた。
盗賊達の笑い声。
内容はわからないが、なんとなく嫌な感覚がした。
「がははは!今日は悪くねぇ収穫だったなぁ!」
「護衛もつけないなんて馬鹿な商人もいたもんだ!れ
声の感じからして、5~6人程が何か喋っている。
情報のの半分以下だ。それは、外にも仲間がいるということ。
交代制ということかもしれない。
なら、帰ってくる前に……殺る。
「おー早かった……誰だお前。」
「っ!?侵入者だ!殺せ!」
入ってすぐの男に触れ、ステータスを奪取。
そのまま男を塊になってる3人組へ投げつけ、他の二人のうち、弓に手をかけている方へ駆け出して殴ると同時にステータスを奪い、もう一人の方も蹴った瞬間に奪う。
これで3人撃破。
もう死体になった男の下でもがいている男たちを一人一人殴って奪う。一人だけを残して、5人とも死んだ。
「他の仲間はどこだ?」
「そっ、外だ!今俺たちは休憩中で、同じ人数の班があと二つある!」
「戻ってくるまでどれくらいかかる?」
「1時間休憩して2時間外を回るのを三班で繰り返してんだ!あと30分はかかる!」
「そうか、ありがとう」
「じゃあ、俺は逃しっ!!?」
6人目のステータスも奪った。
実践経験豊富な奴らだからか、スキルのレベルも高い。
◇◆◇
「なんでっ、くそっ!!」
「やめっぶぁぁぁあああ!!」
10人目を殺す頃には、セナもステータスを失った人間の脆さを理解し始めた。
その頃には遂にステータスが【1000】を超えた。
ここまで来れば、Aランクとも変わらない戦力だ。
加えて、レベルは低いが戦闘アップ系のパッシブや対人技のアクティブが揃っていて、戦闘系としてはかなり整ってきてる。
「『スラッシュ』!!」
殴ってステータスを奪うのではなく、ステータスを奪ってからアクティブスキル『剣技』に収録されてる『スラッシュ』を使ってみる。
簡単に言えば袈裟懸けであり、その威力はスキル使用で1.2倍。
特殊効果はないが、魔力も使わないし便利なスキルではある。
そんな攻撃に対して、ステータスの鎧もスキルもない盗賊は豆腐よりも柔らかく斬られるだけ。
特に手応えもなく二つになった盗賊を尻目に、2班最後の一人に目を向ける。
「やっやめっ、知ってることはなんでも話す!」
「一つ目の班であらかた聞いたしな。」
「おっ、俺だけの秘密の場所がある!だから待って!」
「秘密の場所?」
興味深い話を持ちかけられて、セナの剣が止まる。
ステータスはまだ奪っていない。
今度はステータスのある敵を斬る練習をしたかったから。
「た、頼む!助けて!」
「三班目を皆殺しにするのを手伝うか?」
「……は?」
「三班目の6人を殺してお前だけ生き残り、盗賊の蓄えを半分手に入れる。もしくはこの場で死ぬ。どっちがいい?」
「いっ、生き残りたい!だから!」
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