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第四話

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 4匹のゴブリンが火だるまになってから、落ち着きを取り戻したセナは気絶した最初のゴブリンに近づいた。
 4匹は炭となって、耳も何も残ってないが、こいつだけはギリギリ耳を残して倒せそうだった。

「……ぅぅう、フンッッ!!!」

 先ほどよりも更に気合を入れて殴る。
中々死なない。
 そんな時、ふと思いつくことがあった。
ゴブリンだって、ステータスがあるはずだ。
 
 もし、魔物達からもスキルやステータスを奪えれば、他人からステータスを奪わなくて良い。
 危険な橋は渡らずに済む。

「コレは、なるほど」

『魔物スキル』として、俺自身は使えないスキルを手に入れた。
 ステータスはそのまま、少しだけ上がった。
属性は何も持ってなかった。

「いつか、魔物を使役する事があったら役に立つかな。」

 『召喚』や『使役』のようなスキルが存在する。
それらを使えば人間が魔物を使って戦うこともできる。
 中には、魔物と合体する特殊な【固有スキル】を持つ者もいるわけだが、セナの知るところではない。

「死んだ奴からは何も得られないのか。」

 炭となったゴブリンに触れてみても、『究極的暴君』は発動しなかった。
 
「殴った瞬間に奪うとか。」

ナイフを持ってないからゴブリンを捌く事はできない。そのため、耳を汚く千切ることしかできなかった。

「っっつぅ……」

 落ち着いてきて、アドレナリンの鎮痛作用が消えたのか、棍棒で打たれた箇所が痛む。

 次からはもっとスマートに勝ちたいと思いながら、セナは森の奥に入る。

◇◆◇

「ぃぃぃりゃあぁあああ!!!」

 気合を入れて殴りつける。
ステータスだけを奪ったが、スキルを奪うまでには至らなかった。
 一瞬だったからというより、スキル強奪に集中出来なかったから。
 セナの中の恐怖はまだ拭えない。

結局、10匹分の耳自体は楽勝で集まったわけだが、セナの視点で言えば最悪の数十分だった。

 とはいえ、初めての依頼が終わり、セナのステータスは200を超えた。

 ゴブリンを殺すのにも慣れてきた。
スキルも、ステータスも、無いと思う属性も奪えるようにはなった。

「で、いつになったら俺は勇敢な男になれる。」

 セナは思う。自分にもっと勇気があったらと。
セナに勇気があったら、ゴブリンだろうとウルフだろうと、もう二度と負けない男になれる。

 そう考えて、セナは帰る足を止める。

「もっと、もっとだ。ぶっ殺す。殺して俺の糧にする。」

 振り返り、もっと深く、森の奥へ入る。

◇◆◇

 もうゴブリンの耳は必要無い。
だから、殺してステータスだけを奪い去る。
 そんなことを繰り返して、ステータスが【300】を超えた辺りで、一つの疑問が浮かぶ。

「なんでこんなにゴブリンが多いんだ?」

 ゴブリンは個体数自体は多く無い。それが一般常識。
50匹も一つの森にいるのはおかしい。
 仮に50匹以上がいる森なら、どこかに【コロニー】が存在するはず。
 
 というか、これは明らかに【巣】がある。

「なんでギルドは放置する?【繁殖暴走スタンピード】の可能性だってあるのに。」

コロニー】の早期発見、早期排除が求められる理由の第一に上がるのが【繁殖暴走スタンピード】。
 【巣】があれば、魔物は際限無く増殖する。
ゴブリンやオークなどの繁殖力の塊なら尚更。

 まず、討伐依頼が常設されるのが異例すぎる。

魔物の発生は主に3通り。
 完全な自然発生、魔力の塊から発生するとも、地面から生えるとも言われる。
 次に繁殖。魔物同士もあるが、他種の胎を使う事で増えることもできる。
 最後は召喚。特別なスキルや、『召喚』スキルでなら、魔力や素材を媒介に魔物を発生させる事ができる。

 だから、常にその場にその魔物が確実に存在する保証は無い。
 スライムの常設なら3ギルドに1つくらいの割合であるが、それ以外は基本あり得ない。

 となれば、

「意図的に【巣】を使って金を稼いでるカスがいるみたいだな。」

 数時間前までは死にかけていた者とは思えない目がそこにはあった。

◇◆◇

 陽が落ちてかなりの時間が経った。
セナは落ち葉に身を包み、軽い休息を取ることにした。

 目を閉じて、何も考えない。
それだけでも、寝ているのと同じくらいの心的回復を得られる……と思い込んでいる。

 実際のところは耳に意識が集中していて何の休息も取れてないわけだが。

「目が覚めたら世界が滅んでますように。」

 そう呟き続けた。
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