【完結】マギアアームド・ファンタジア

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)

文字の大きさ
上 下
158 / 159
約束の未来へ

155話 オフ会

しおりを挟む
 突如としてターミナルエリアに出現した"大穴"は、突如として消失、エリア各地のデータの破損も同時に消失した。

 ベータテスターとして"大穴"の調査を行っていたカインとオーディンは、自分達の体験談をそのまま開発チームに報告するかどうか迷ったものの、この『MAFと異世界とのリンク』現象はおいそれと他人に話すべきことではないと、二人の中だけで秘め、開発チームには「原因不明、全く分からない」と虚偽報告を行った。

 消失の原因は不明であったが、安全の再確認を行った後、MAFの運営はプレイヤー各人に再ログイン可能を通知、MAFは元の盛り上がりを取り戻した。

 そんな中で、ある一人のプレイヤーが退会通知もなくMAFから"消えた"ことに気づいた者はいない。



 そして、一ヶ月が過ぎた。

 徹矢達学生は夏季休暇を迎え、以前から立てていた、ある予定を実行しようとしていた。

 夏の日差しが遠慮なく差し込む真夏。
 都心部の駅前広場に、徹矢、結月、菜々花、楓の四人は集まっていた。

「ジルダさん、どんな人なんでしょうね」

 結月は、今この場にいないパーティメンバーを話題に出した。

「あの人、社会人らしいし。なんとか今回のオフ会にも予定を合わせたって言ってたけど、大丈夫かな?」

 楓がそう言ったように、徹矢達は夏季休暇であることを活かして、"オフ会"をやりたいと予定していた。
 学生四人はともかく、社会人らしいジルダはどうだろうかと思っていたが、当の本人は「ちょっと無理すれば行けるわよ」と答え、今回のオフ会にも参加すると言ってくれた。

「ちょっと無理すればって、その無理ってどのくらいの"無理"なんだろ……」

 菜々花は、普段のジルダの現実側の私生活を想像しようとして、不安になる。
 その隣で、徹矢はスマートフォンのMAFのアプリを開く。

「さっきのチャットで、「もう集まってますけど、慌てずに来てください」とは返信したけど」

 一応、集まりの時間は決めているし、ジルダにもその時間で問題ないかと確認しているため、何事も無ければそろそろ来る頃合いだ。
 この時間帯で高校生四人、内訳、男1:女3という面子で集まっているのが見えたら、きっと自分達のはずだとも伝えている。
 ふと、スーツ姿の長身の女性が声を掛けてきた。

「えぇーと、君ら?MAFの……」

「あっ、ジルダさん……ですよね」

 最初に徹矢が応対してみせる。

「あぁ良かった、合ってた。で、君がアロウね。ってか、みんなほとんどそのまんまね」

 結月、菜々花、楓も続いて名前を言い当てたところで。

「あたしは『三上純子みかみじゅんこ』。ジルダの名前は、まぁ響きの良さからなんとなくね」

 ジルダ――純子の自己紹介を終えたところで、徹矢が予め押さえておいたファミレスへ移動し、オフ会の開始だ。



 予約席に集まり、ドリンクバーから汲んできたソフトドリンクと、各々がオーダーした軽食やデザートが並んだところで。

「えーと、リアル側のパーティメンバーがひとまず揃いましたということで……乾杯!」

「「「「かんぱーい」」」」

 徹矢が音頭を取り、残る女性四人が(店内なので声のボリュームは控えめにして)続く。
 カチカチとコップを鳴らし合い、一口飲んだところで、最初に楓が純子に訊ねた。

「日曜日ならお仕事もお休みかと思ったんですけど……三上さん、体調とかは大丈夫なんですか?」

「んー?昨日までは仕事だったわよ。仕事が終わったらそのまま夜行バスに乗ってここまで来て、さっきまでちょっと時間潰してたとこ」

 このオフ会が終わったらまた夜行バスに乗って地元に帰ってまた仕事けど、と純子は事も無さげに言ってのける。どのくらいの疲労が伴うかはわからないが、相当無茶を押しているらしい。

「えぇと……、お疲れさまです?」

 聞いていた菜々花は恐る恐る頷く。

「それより、あんた達みんな高校生なんでしょ?若いっていいわぁ……」

 ウーロン茶をごくりと鳴らして嘆息をつくその様子は、社会人故の苦労か。未成年の前だからアルコールは飲まないのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎毎日朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...