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約束の未来へ
134話 謎の大穴
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翌日。
今日は元々、ログインを控える日のつもりだったが、徹矢――アロウは結月や菜々花には黙って一人でログインしていた。
その目的は当然、昨夜にカインからのメッセージにて伝えられた、"大穴"の存在を確かめるため。
ストーリーイベント――ひいては、フェルテに何か関係があるのではないかとカインは見ているようだが、アロウ達でさえフェルテからは何も聞かされていない。
大穴の発生とフェルテの儀式完了は全く無関係で、たまたまタイミングが重なっただけ、と言う可能性もゼロではないが、アロウとしては何かしらの関係があると確信していた。
ログインして、アロウは自然体を装いながら、MAFのターミナルエリアに向かった。
ターミナルエリアは、一般プレイヤーでも立ち入ること自体は禁止されていないが、クエストを受けられるわけでもなく、何かしらの施設があるわけでもない、面白みと言える面白みは無い。
運営関係者が利用するためのエリアではないか、とプレイヤー達の間では噂されている。
アロウが来た時点でも、やはり誰もこのエリアにいない。
ターミナルエリアの中心部に大穴が発生した、とカインは言っていた。
アロウは中心部へと移動して、
すぐにその大穴は見つかった。
「これが、大穴か……」
ポッカリと、ドーム一つ分の面積はあるであろう暗闇が口を開けている。
その暗闇の中に、データ破損のテクスチャが蠢いている。
何故突然、こんなものが発生したのか。
「そこで何をしている!」
「ッ!?」
不意に、鋭い声が背中に突き刺さり、アロウは肩をすくませた。
慌てて振り向くと、そこにはカインとオーディンの二人が駆け寄って来ていた。声をかけたのはオーディンの方だ。
「……アロウ君、何故ここに」
カインは、アロウの顔を見て目を細める。
「あ、いや、その……」
「昨夜のメッセージには、『この件は内密にしてほしい』と送信していたはずだが?」
「す、すいません。でも、どうしても気になって……」
しどろもどろに頭を下げるアロウに、カインは溜息をついた。
「まぁ、気にするなと言う方が難しいものか。今回は何も言わないが、次は強制退去してもらうぞ」
「は、はい」
今回は仕方無しとして、お咎めも無しということにするカイン。
そのやり取りを尻目に、オーディンはアイテムボックスから双眼鏡を取り出し、大穴を覗く。
「……深過ぎて底が見えないな」
双眼鏡から目を離し、アイテムボックスに納める。
「データの破損が内部から発生しているとなると、迂闊に飛び込むわけにもいかないか」
カインはオーディンの隣について大穴を睨む。
「あぁ、下手をすればプレイヤーのアカウントにも異常が発生するかもしれん。運営に、ターミナルエリアへの立ち入りをブロックするように申請しておかねばな」
カインとオーディンの二人を見比べていたアロウは、ふと疑問に思ったことがあった。
「あの、カインさんとオーディンさんって、この大穴を調べてほしいって、運営から頼まれたんですか?」
彼の声に、二人は振り向く。
「……そうか、アロウ君達は知らなかったな」
「俺とカインは、MAFのベータテスターだ」
「ベータテスター!?」
よもやこの二人が、開発関係に関わっているとは思っていなかったアロウは驚愕する。
「フェルテ君の件も、運営に問い合わせたのだがな……答えは、「全く知らない」だそうだ。テスターにも非公式にしていた、というわけでもないようでな」
「それって、じゃぁ……フェルテは、NPCじゃなくて、もしかして、本当に……?」
電子の生命体――否、創造神の神子というのは、設定だけの話では無かったのか?
今日は元々、ログインを控える日のつもりだったが、徹矢――アロウは結月や菜々花には黙って一人でログインしていた。
その目的は当然、昨夜にカインからのメッセージにて伝えられた、"大穴"の存在を確かめるため。
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大穴の発生とフェルテの儀式完了は全く無関係で、たまたまタイミングが重なっただけ、と言う可能性もゼロではないが、アロウとしては何かしらの関係があると確信していた。
ログインして、アロウは自然体を装いながら、MAFのターミナルエリアに向かった。
ターミナルエリアは、一般プレイヤーでも立ち入ること自体は禁止されていないが、クエストを受けられるわけでもなく、何かしらの施設があるわけでもない、面白みと言える面白みは無い。
運営関係者が利用するためのエリアではないか、とプレイヤー達の間では噂されている。
アロウが来た時点でも、やはり誰もこのエリアにいない。
ターミナルエリアの中心部に大穴が発生した、とカインは言っていた。
アロウは中心部へと移動して、
すぐにその大穴は見つかった。
「これが、大穴か……」
ポッカリと、ドーム一つ分の面積はあるであろう暗闇が口を開けている。
その暗闇の中に、データ破損のテクスチャが蠢いている。
何故突然、こんなものが発生したのか。
「そこで何をしている!」
「ッ!?」
不意に、鋭い声が背中に突き刺さり、アロウは肩をすくませた。
慌てて振り向くと、そこにはカインとオーディンの二人が駆け寄って来ていた。声をかけたのはオーディンの方だ。
「……アロウ君、何故ここに」
カインは、アロウの顔を見て目を細める。
「あ、いや、その……」
「昨夜のメッセージには、『この件は内密にしてほしい』と送信していたはずだが?」
「す、すいません。でも、どうしても気になって……」
しどろもどろに頭を下げるアロウに、カインは溜息をついた。
「まぁ、気にするなと言う方が難しいものか。今回は何も言わないが、次は強制退去してもらうぞ」
「は、はい」
今回は仕方無しとして、お咎めも無しということにするカイン。
そのやり取りを尻目に、オーディンはアイテムボックスから双眼鏡を取り出し、大穴を覗く。
「……深過ぎて底が見えないな」
双眼鏡から目を離し、アイテムボックスに納める。
「データの破損が内部から発生しているとなると、迂闊に飛び込むわけにもいかないか」
カインはオーディンの隣について大穴を睨む。
「あぁ、下手をすればプレイヤーのアカウントにも異常が発生するかもしれん。運営に、ターミナルエリアへの立ち入りをブロックするように申請しておかねばな」
カインとオーディンの二人を見比べていたアロウは、ふと疑問に思ったことがあった。
「あの、カインさんとオーディンさんって、この大穴を調べてほしいって、運営から頼まれたんですか?」
彼の声に、二人は振り向く。
「……そうか、アロウ君達は知らなかったな」
「俺とカインは、MAFのベータテスターだ」
「ベータテスター!?」
よもやこの二人が、開発関係に関わっているとは思っていなかったアロウは驚愕する。
「フェルテ君の件も、運営に問い合わせたのだがな……答えは、「全く知らない」だそうだ。テスターにも非公式にしていた、というわけでもないようでな」
「それって、じゃぁ……フェルテは、NPCじゃなくて、もしかして、本当に……?」
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