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羽ばたきの時

131話 お別れ会

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 酒場に帰還してから、メイプルとジルダがまだログインしているのを確かめて、アロウはすぐに二人をメッセージで呼び出した。

『フェルテの最後の儀式が完了しました、酒場でお別れ会をしましょう』と。

 送信してすぐに返信が来たのはメイプル。

『おつけすくいく』

 オッケーすぐ行く、と打つつもりだったのだろうが、急いで打ち過ぎて変換も間に合わなかったようだ。

 メイプルからの返信を確認して、少し間を置いてからジルダからも返信が届く。

『こっちもクエスト終わったからすぐ行くわ』

 ジルダはクエストに出掛けていたらしく、それもクリアしたのですぐに酒場に戻って来るようだ。

 先に酒場に来たのはジルダで、クエストカウンターで報酬を受け取ってから、アロウ達が陣取っていた席に着いた。

 その後すぐにメイプルも酒場に駆け込んで来た。



「えーとそれじゃぁ、ストーリーイベントのクリア、でいいかな。イベントクリアを祝して……」

「「「「「かんぱーい!」」」」」」

 アロウが音頭を取り、一斉にジョッキ同士が打ち鳴らされる。

「最後の儀式に立ち会えなかったのは残念だけど、おめでとうフェルテちゃん!」

 最初にメイプルがフェルテに祝の言葉をかける。

「あたしはマリーネ孤島の時ぐらいしか貢献してないけど、おめでとうね」

 とはいえジルダは少し後ろめたいものがあった。
 何せ、望むところでは無かったとは言え、フェルテを害して邪魔をするようなことをしたのだ。
 しかしフェルテは「何を言う」とすぐに反応する。

「"力"の儀でも、"智"の儀でも、汝ら二人の力があったからこそガーディアンを打ち破ることが出来たのだ。それも含めて、感謝している」

 フェルテの言葉に嘘や誇張はない。
 メイプルはベヒーモスやリヴァイアサンが相手でも怯むこと無く勇敢に立ち向かい、ジルダがいなければリヴァイアサンを倒すことさえ出来なかったかもしれないのだ。

「フェルテちゃんはこの後はすぐに、えぇと……創造神様?のところに戻るんだよね?」

 ジョッキのジュースをちびちびと飲んでいたカノラは、フェルテがこの後どうするのかを訊ねる。

「うむ。気が付けば随分な回り道をしたものだ。……いや、汝らと過ごした時間が無駄だったと言いたいわけでは無くてな」

 フェルテはジュースを一口飲んで言葉を選んでから。

「利害の一致から始まった我らの義だったが、我にとって汝らと共に戦った日々は、とても得難いものだったのだ。それに、汝らが我のことを「仲間だ」と言ってくれたこともな……」

 コト、とジョッキをコースターの上に置く。

「我一人だけでは、何も為せぬまま朽ち果てていただろう。誰かと共に力を合わせて、共に喜びを分かち合うこと。それはとても心地好いもので、我に欠けていたものだと気付かせてくれたのだ」

 そしてフェルテは、自身のアイテムボックスを開くと、テーブルの上に次々にアイテムを並べていく。

「これらはもう、我には必要ない物だ。汝らが受け取ってほしい」

 素材アイテムやポーション、その他様々なアイテムが雑多。

「こんなにたくさん……いいんですか?」

 ルナは困惑するが、フェルテは大きく頷く。

「この世界でしか使えぬものばかりだ。遠慮するな、受け取るがいい」

 持ち帰っても仕方ないのだ、と言う。

「それに、そろそろ行かなくてはならないようだ」

 唐突に、フェルテは席を立つ。

「最後にもう一度言わせてくれ。皆、今日まで我と共に戦ってくれたこと、感謝する」

「フェルテ」

 アロウも席を立ち、右手を伸ばした。

「俺も、フェルテと一緒に戦えて、楽しかったよ。ありがとう」

「うむ、握手だな。いいだろう」

 フェルテも手を伸ばし、互いの右手がしっかりと握られる。

「何と戦うのかは分からないけど、向こうでも頑張れよ」

「あぁ」

 互いの手を離したところで。
 フェルテの身体が光り輝き始める。

「では――さらばだ」

 シュンッ、と転移装置でワープしたように、フェルテの姿は消えた。
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