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羽ばたきの時

126話 空前絶後のハイマニューバ

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 高速で飛び掛かってくる黒い巨体をラウンドシールドで受けるてみせるオーディン。

 空中という踏ん張りの効かない中でも受け止められているのは、スラスターによる強引なホバリングによるものだ。

「喰らえッ!」

 ラウンドシールドで受け流したその0.2秒後、目にも止まらぬ疾さでグングニルを突きだす。
 突撃の勢いこそ無いものの、打ち出される杭打機パイルバンカーのごとし一撃は、ダークホークの横腹を強かに捉える。
 強烈な反撃を喰らい、ダークホークは慌てたように翼をはためかせて距離を取ろうとする。
 追撃を仕掛けようとするがしかし、途端にオーディンのスラスターの蒼炎が弱々しく明滅し、その高度を落としていく。

「えぇぃ、やはりオーバーヒートは避けられんか」

 せっかくの好機を、と歯噛みしながらも潔くスラスターを切り、オーディンはその場から落着する。
 元々、二次元的な地上戦に特化したマギアアームドでありながら、単純なバーニア出力だけで強引に飛行していたのだ、当然それだけ早くオーバーヒートも起こしてしまう。

 けれどダークホークを怯ませるほどの一撃を与えたこと大きい。

 そこへ、フェルテは火属性の魔法陣を顕現していた。

「――貫き穿て爆炎よ、焼き尽くせ――『バーンストライク』!」

 宝剣の切っ先から放たれるのは、ファイアボールよりも大きく鋭い、『炎の銃弾』。

 しかもその軌道は、距離を取ろうとするダークホークの後ろへ回り込むように。

 距離を取ろうと思えばいきなり炎が下から襲いかかってくるのだ、ダークホークはこれもすぐに反応、バーンストライクの爆発を躱すために前へと飛び下がり、

 そこへアロウとルナ、さらに加勢したカノラの三人が射撃の波状攻撃を仕掛け、多数の光弾や銃弾がダークホークの翼や羽毛を焼く。
 翼を傷付けられて、ダークホークは一瞬飛行のバランスを崩すものの、すぐに立て直す。
 まだ与えられたダメージは低いかもしれないが、それでも攻撃は効いている。
 アロウとルナは距離を詰めるべく接近し、カノラは強化魔術の重ねがけを行うために一度下がる。

 ダークホークは追撃をかけるアロウとルナの攻撃を振り切ると、詠唱を開始したカノラへ一気に迫る。

「まずいっ、カノラさん!」

「えっ?」

 カノラが標的にされていると察したアロウは、注意を促すものの、詠唱に集中しようとしていた彼女は反応が遅れ、
 気が付いた時には、ダークホークの後脚が目の前に広がり――派手に蹴り飛ばされてしまった。

「ッ、ぅ、あっ……!?」

 その勢いのまま壁に叩き込まれ、カノラはスタン状態に陥ってしまったのか、落下していく。

「カノラッさん……!」

 ルナは即座に反転して落下していくカノラを追い、どうにか受け止めるが、もつれ込んで地上にまで落下してしまう。

 二人が回復してから、あるいは地上でスラスターを放熱しているオーディンが援護に来るまで、時間がかかるだろう。
 それまでは、アロウ一人でダークホークを相手にしなければならない。
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